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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第105話

~グランセル・夜~



「は~………何かえらい長引いたなぁ。まさかエリカ博士があそこまで食い下がるとは。」

「………そうですね。」

「しっかし、あの最後の一言には正直ぶっとんだわ。『それを持っていくなら代わりにその子を置いて行きなさい!』って………はは………アネラスちゃんやないんやから。」

「アネラスちゃん………?」

ケビンの口から出た知らない名前にリースは首を傾げた。

「おっと、すまん。リベールでの知り合いや。遊撃士やっとる子でたしかリースと同じくらいの歳やったと思うけど。」

「………そうですか。」

「はは………その…………………えっと………リースさん?」

淡々と答えるリースの態度にケビンは冷や汗をかきながらリースを見つめて問いかけたが

「………なんでしょうか?」

「その………ひょっとして怒っとる?今までロクに連絡も取らへんで………」

「―――グラハム卿。」

「は、はいっ。」

リースに唐突に呼ばれると姿勢を正した。



「………5年という歳月があなたを守護騎士という要職に就かせたのと同じように………この5年間で私もまた変わりました。今の私は星杯の従騎士。あなたを支え、守るためだけの存在です。」

「………リース………」

「………ですから気遣いは無用に願います。そうでなければ………私がこのような格好をしている意味がありません。」

「…………………」

リースの話を聞いたケビンは押し黙った。

「………国際定期便の最終便に乗るのでしょう?早目に発着場に向かった方がいいかと。」

「あ、おい………」

ケビンの返事を聞かずにリースが歩き出すとお腹が鳴る音が聞こえた。



「………今の。」

「……………空耳です。」

「へ…………」

「グラハム卿。お疲れのようですね?ありえない音が聞こえてしまうくらいに。船に乗ったら座席で少しお休みになった方が――」

自分が空腹である事を誤魔化そうとしたリースだったが、空腹を許さないかのように再びお腹が鳴る音が聞こえた。

「………少しお休みになった方がいいかと思います。」

「くっ…………はははははははっ!『きゅるるる~っ』って!お前、全然変わってへんやん!相変わらずいつも腹ペコやなぁ~!」

わずかに顔を赤らめてそれでも誤魔化そうとするリースの様子を見たケビンは腹を抱えて大声で笑った後安堵の表情でリースを見つめた。



「こ、これはただの生理現象というものです。この程度の生理コントロールが出来ないのは修行不足の証拠………自分の至らなさを痛感します。」

「至らなさって………クク、そういう問題ちゃうやろ。そやな~、やっぱりリースは腹ペコやないとあかんで。そんで厨房に忍び込んでつまみ喰いしては怒られて………」

「っ………もういいです!」

ケビンに自分にとって恥ずかしい昔話を出されたリースは顔を赤らめて無理矢理話を終わらせて、先に進もうとしたが

「ああ、待った待った!」

ケビンが慌てた様子でリースの進む先を防いだ。



「………邪魔です。どいて下さい。」

「悪かった。謝るって。懐かしかったからつい悪ノリしてもうた。」

「………別に。謝罪の必要はありません。あなたの謝罪ほどいい加減で、その場限りのものはありませんから。」

「おっと、調子が出て来たな。一つお願いやねんけど………それ、止めへんか?」

「………何のことですか?」

ケビンの頼みを聞いたリースは訳がわからない様子で尋ねた。

「その丁寧口調や。他の連中にならともかくくすぐったくて仕方ないわ。」

「……………………………」

「それとグラハム卿いうのも止めてくれ。昔通り呼び捨てでいい。」

「お断りします――と言ったら?」

「拝み倒す。お前が『うん』と言うまでひたすら土下座させてもらうわ。」

「………やっぱり。」

ケビンの答えをある程度予測できていたリースは予測通りの答えに呆れた様子で溜息を吐いた。



「ま、三つ子の魂百までとも言うからな。腐れ縁のノリっちゅうんはそうそう変わらへんってことや。」

「………………の方から………としたくせに…………」

「ん、何か言ったか?」

「―――いえ。仕方ありませんね。ご命令とあらば―――」

「ちゃうちゃう、命令やない、お願いや。そこんトコ間違わんといてや。」

「くっ…………ケビン。相変わらずワガママ過ぎ」。

ケビンの説明を聞いたリースはケビンを睨んだ後、目を閉じて考え込み、そしてかつてケビンと接していた口調でジト目でケビンを睨んだ。

「っ………ははっ………そうそう、それやで!」

ようやく見せたかつてのリースの口調や態度に驚いたケビンは安堵の表情でリースを見つめた。



「言っておくけど、言葉遣いを戻しただけ………あなたが守護騎士で、私が従騎士なのは変わらない。そこの所、間違わないで。」

「うん、そやな。昔に戻るなんて………そんなの出来るわけないもんな。」

「………………………………」

寂しげな笑みを浮かべて語るケビンにリースは何も返さず黙り込んでいた。

「さてと………もう一つ提案なんやけど。最終便までもう少しあるし、東街区にある百貨店に寄らへん?船ん中で喰えるパンでも買っとこうや。」

「………それは賛成。残り物はぜんぶ買い占めてもいいくらい。」

「そこまで腹ペコやったんかい………」

その後二人は百貨店で食料を買った後、百貨店を出た。



「まさかホントに残らず買い占めるとは………売り場のお姉さんもさすがに引いとったで?」

「これも女神のお導き。余って捨てられるくらいなら有効活用させてもらうだけ。」

ケビンはリースが持つ袋一杯になっている食べ物を見て呆れ、リースは満足げな様子で答えた。

「それにしたってなぁ………騎士団の俸給、食い物だけにつぎ込んでのとちゃうやろな?」

「……心配無用。私ほどタイムセールを愛している女はそういない。」

「はあ………まあええけどな。しかし、オレもいい加減胡散臭いカッコしとるけど………さすがにそのシスター服で残りモン買い漁るってのは………」

「ケビン、うるさい。……そろそろ時間だし発着場に行きましょう。私のお腹が悲鳴を上げてる。」

「へいへい。」

リースの提案をケビンが苦笑しながら頷いたその時

「あら?もしかしてまた何かあって、リベールに来たのかしら?」

アーシアがフレンと共に二人に近づいてきた。



「…………え…………」

「お、アーシアさんにフレンさんじゃないですか。久しぶりですな~。元気そうで何よりですわ。」

アーシアを見たリースが呆けている中、ケビンは懐かしそうな表情で二人に話しかけた。

「そっちも相変わらず元気そうだな。……隣のシスターは初めて見たが、もしかして神父の”同僚”か?」

「ええ、こいつはリースって言って、オレの昔馴染みですわ。」

リースに視線を向けたフレンの疑問にケビンは答え

「(大きくなったわね、リース………)……見た感じ、結構若いわね?ケビンさんより年下に見えるけど……」

心の中でリースを懐かしがっていたアーシアだったが、顔には出さずリースに一瞬視線を向けた後ケビンに訊ねた。



「ええ。確かオレの4つ下やったから……今年で18になりますわ。」

「……私の許可もなく勝手に私の年齢を答えないで。……ケビン、そちらの二人は知り合いなの?」

自分の年齢を答えたケビンにジト目で指摘したリースは気を取り直して二人の事を訊ねた。

「おっと、そうや。紹介しないとな。女性の方はアーシアさん、男性の方はフレンさんって言って”環”の件に最後まで関わった遊撃士の人達や。」

「”環”の……初めまして。”従騎士”のリース・アルジェントと申します。半年前の”異変”ではケビンがお世話になりました。」

「フフ、お世話になったのはお互いさまよ。」

自己紹介をしたリースにアーシアは微笑みながら答えた。



「…………………」

「え、えっと……私の顔に何かついているのかしら?(まさか………気づかれたかしら?)」

しかしリースにジッと見つめられたアーシアは冷や汗をかきながら訊ねた。

「………いえ。アーシアさんが知り合いに似ていましたので、少し驚いていただけです。」

「そうなの。フフ、私に似ているなんて、その人がどんな人なのかちょっと気になるわね。」

「……………えっと、お二人は何で王都に?もしかして遊撃士の仕事関係ですか?」

リースの答えを聞いたアーシアは苦笑し、複雑そうな表情で黙り込んでいたケビンは話を変えて二人に訊ねた。

「ああ。俺達は王都のギルドを拠点にしているからな。今日は最後の依頼がちと長引いてしまってな……その帰りだ。」

「せやったんですか。それにしてもこんな夜遅くに二人一緒に帰るなんて、もしかしてお二人は付き合っているんですか?」

フレンの話を聞いたケビンは冗談半分で訊ねた。



「フフ、残念ながら私達が借りている部屋のアパートが同じだから帰り道が一緒なだけよ。」

「それ以前にアーシアと俺が付き合っているとか絶対ありえねえって。俺には将来一緒になる事を約束した女性がいるしな。」

「へっ!?それは初耳ですな~。一体どんな人なんです?」

その後4人は雑談を少しした後、別れようとした。

「ほな、最終便の時間も迫っていますし、オレ達はそろそろ行きますわ。」

「ああ、また会う日を楽しみにしているぜ―――」

そしてケビンの言葉にフレンが頷いたその時

「「「……………」」」

何かの気配に気付いたケビンとアーシア、フレンはそれぞれ真剣な表情をしていた。

「3人ともどうしたの………………!……………」

3人の様子を不思議がっていたリースだったが、3人と同じように何かの気配に気づき、そしてジト目で黙り込んだ。



(………悠長にパン喰っとる場合じゃなくなったみたいやな。)

何かの気配に気付いたケビンは苦笑しながら小声でリースに言った。

(……許せない……誰だから知らないけど半殺しにしてもいい………?)

(ハハ、中々面白いシスターだな?)

(もう……”従騎士”になっても食いしん坊な所は全然治っていないようね……)

静かな怒りを見せるリースを見たフレンに視線を向けられたアーシアは呆れた表情で溜息を吐いた。

(……気持ちはわかるけど落ち着き。それにしてもえらい下手ば尾行やな………)

(素人に毛が生えた感じ………ただし訓練は受けてるみたい。)

(やな………仕方ない。最終便は諦めるとするか。二人はどうしますか?)

(せっかく居合わせたのだし、手伝うわ。もしかしたら相手の狙いは私達かもしれないし。)

(そうですか。助かります。)

(どこかで仕掛ける………?)

(ああ………こういう時のためにうってつけの場所がある。)

そしてケビン達はどこかに向かった。



~グランセル・波止場~



「くっ………どこに行った………!?たしかこちらの方に入って行った筈なのに!」

ケビン達を尾行していた人物――ダルモアの秘書をしていた頃に来ていた服装のギルバートはケビン達を見失い、慌てていた。

「なんや……兄さんやったんか。」

するとその時ケビン達がギルバートの背後から現れた。

「なっ………ば、馬鹿な………この僕の完璧な尾行術に気付いていたというのかっ!?」

「いや、勘の鋭い奴なら素人でもわかるバレバレの尾行だったぜ?」

「完璧って……ハハ、相変わらずやなぁ。」

「……誰?」

自分の尾行に気づかれたいた事に信じられない思いでいるギルバートにフレンとケビンが苦笑している中、4人の中でギルバートの事を知らないリースは不思議そうな表情でケビンに訊ねた。



「一応、”蛇”の手先や。無数にある尻尾の先っちょくらいやけどな。」

「………確かにそれっぽい。」

「さ、先っちょ言うな!それに、そこの小娘!それっぽいとはどういう意味だ!?」

ケビンの言葉に頷いたリースをギルバートは睨んだが

「…………………どこからどう見ても小物にしか見えませんし。勢い込んで空回りした挙句、勝手に自滅するタイプ………しかも懲りない。」

「なっ………!?」

リースに今までの行動を言い当てられると驚きのあまり絶句した。



「お、やるじゃねぇか。あんな短時間でそこまで言い当てるなんて驚いたぜ?」

「あ、相変わらずやな。よく初対面でそこまで見抜けるモンや………」

「フフ、中々の観察眼を持っているわね。」

「この人の雰囲気はわかりやすい………見事なまでの小物っぷりを漂わせているもの。」

3人に感心されたリースは静かな表情で淡々と答え

「き、貴様………!ククク、いいだろう。そこまで言ったからには覚悟してもらうぞッ!」

リースの態度に業を煮やしたギルバートは秘書の服装をその場で脱いで猟兵姿になり、銃を構えた!

「ちっ………」

「ま、こうなるわな。」

「一斉攻撃で制圧するわよ。」

そしてケビン達がそれぞれ武器を構えてギルバートと戦おうとしたその時

「……………」

「ぶぎゃっ!」

なんとリースが自分の得物――法剣(テンプルソード)を構え、ギルバートに強襲してギルバートをふっ飛ばした!



「!法剣(テンプルソード)……それがお前の得物か。」

「………ケビンがボウガンを選んだように私もこれを選んだ。ただ、それだけのこと。」

「………そうか…………………………」

「………………」

ケビンとリースの意味ありげな会話を聞いたアーシアは静かな表情で黙り込み

「ば、馬鹿な………い、今のはなんだ………全然見えなかったぞ………!?」

一方攻撃されたギルバートは信じられない様子でリースを見つめた。



法剣(テンプルソード)………星杯騎士団に伝わる武具でな。刃が幾つもの節に分かれてワイヤーで結ばれとるから伸縮自在っちゅうカラクリや。」

「……アーシアさん。何故、貴女が騎士団に伝わる法剣を持っているのですか?ボウガンはまだわかりますが、法剣(それ)は騎士団にしか伝わっていない武具なのですが、一体どこでそれを?」

「そう言えば言ってなかったわね。私は元”星杯騎士”よ。事情があって、騎士団を辞める事になったのだけど……騎士団時代に使っていた得物を今でも使っているの。」

「そうだったんですか………ケビン、もしかして騎士団にいた頃のアーシアさんとも会った事があるの?」

星杯騎士でもないアーシアが法剣を持っている事に疑問を持っていたリースだったが、アーシアから事情を聞くと納得してケビンに訊ねた。

「いや、俺は一度も会った事はないけど、総長の話やとアーシアさんはルフィナ姉さんに色々と面倒を見てもらっていたそうで、その時に武術も見てもらっていたそうやで。」

「!そう………だから、アーシアさんの得物は姉様と同じなんですね………」

「………………」

ケビンの話を聞いて複雑そうな表情になったリースに見つめられたアーシアは目を伏せて黙り込んでいた。



「くっ………」

一方自分を無視して会話をしていたケビン達の行動に屈辱を感じていたギルバートはケビン達を睨みながらケビン達の隙を伺い、ケビンは気を取り直してギルバートに問いかけた。

「さてと、そろそろ事情を聞かせてもらおかな。なんで指名手配中のアンタがグランセルになんかいるんや?―――どこまでこちらの事情を知っとる?」

「フ、フン………誰が貴様らなんかに―――」

ケビンに尋ねられたギルバートは鼻を鳴らして答えようとしなかったが

「………」

「ひっ………」

無言で法剣を構えて一歩近づいたリースの行動に悲鳴を上げて後ずさった。



「往生際が悪いですね………とっとと口を割りなさい。」

「あー、オレのツレ、腹減って機嫌悪いんや。素直に話した方が身のためやで。」

「くっ………くぬぬ………―――かくなる上は!」

リースの命令とケビンの忠告を聞いたギルバートは歯ぎしりをした後

「どうか勘弁してください!こんな場所にいるのも運悪く不時着したからで!偶然あなた達を見かけたから後をつけてみただけなんです!」

なんとその場で何度も土下座をしながら説明し始めた!

「………訂正。ある意味、只者じゃないかも。」

その様子を見たケビン達は脱力し、武器を収めたリースは静かな表情で呟いた。



「それは同感や………それで、一体どういうことや?不時着ってことはどこかに”結社”の飛行艇があるんかいな?」

「そ、それが違うんです!不時着したっていうのは飛行艇なんかじゃなくて――」

ケビンに尋ねられたギルバートが慌てた様子で説明し始めるとギルバートの背後にある海から何かが出ようとした。

「―――コイツのことさあああっ!」

そしてギルバートが不敵な笑みを浮かべて叫ぶと、海から飛行する人形兵器が現れた!



「な、なんや!?」

「人形兵器……?」

「今まで見たことのないタイプか……!」

「恐らく結社が新しく開発した人形兵器でしょうね……!」

人形兵器の登場に驚いたケビン達が武器を構えて人形兵器を警戒しているとギルバートは素早く銃を拾って、銃を構えた。

「ふはは、形成逆転だな!さあ!G-アパッシュよ!その大いなる力をもってこいつらを叩きのめすがいい!

そしてケビン達はギルバート達との戦闘を開始した! 
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