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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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外伝~それぞれの動き~後篇

同日、23:40――――



~リベール王国上空・巨大飛行戦艦”グロリアス”~



「……………………」

赤を基調とした巨大な戦艦の甲板でどこか大人びた雰囲気を纏わせる漆黒を基調としたフリフリドレスを着たレンは複雑そうな表情で外を見つめていた。



「……ここにいたのか、レン。」

その時リフィアがエリゼと共にレンに近づいてきた。



「リフィアお姉様。ちょっと風に当たりたくてね…………」

「…………そうか…………やはりヘイワース夫妻の事が気になるか?」

「……まあ、ね。……けど、大丈夫よ。今のレンなら正面を向いてあの人達と話せる。…………メンフィル皇女、レン・H・マーシルンとして。」

リフィアの問いかけにレンは複雑そうな表情で答えた後真剣な表情でリフィアを見つめて言い

「ほう…………この間まで自由気ままな生活をしていた癖に言うようになったではないか。お前もようやく、メンフィル皇女としての自覚が出てきたようだな。」

レンの言葉を聞いたリフィアは口元に笑みを浮かべた。



「…………その台詞、リフィアが言えるの?頻繁に政務を投げ出した上外出して、挙句の果てには皇女とはとても思えない型破りな行動をするリフィアが。」

するとその時エリゼはジト目でリフィアを見つめて言い

「ぬ……余はメンフィルをより良い未来にする為に城の中では学べない事をだな……」

ジト目で見つめられたリフィアは唸った後答えかけたが

「シルヴァン陛下が帝位を継いだ年齢をとっくに過ぎている上、リウイ陛下達と共に邪龍討伐、リベールの”異変”、そして”影の国”に関わっておいてまだそんな事を言っているの?」

「クッ…………ええい!お主、前々から思っていたが専属侍女長の癖に遠慮がなさ過ぎじゃぞ!それでも余専属の侍女長か!?」

エリゼの指摘に唸った後リフィアは反論した。



「リウイ陛下やシルヴァン陛下、カミーリ皇妃からは貴女に対して遠慮する必要は一切ないと言われている上貴女に対してある程度無礼な態度や行動をしていいと許可をもらっているし、さらに『首根っこ捕まえてでもリフィアを回収していい』って言われているし。」

「クッ!リウイや父達も余計な事ばかりエリゼに吹き込みおって……!」

しかしエリゼの指摘にリフィアは悔しそうな表情をし

「リウイ陛下達は貴女やメンフィルの未来を心配して私に言っているのよ?……それに私が初めて貴女に挨拶をした時、貴女自身が私に貴女に遠慮する必要はないと言ったでしょう?」

「むう、確かにそう言ったが、まさかあれだけ清楚で礼儀正しかったお主がここまで変わるとはな余も予想していなかったぞ。」

「私がここまで変わったのは貴女のせいでしょうが。カシウス准将から鍛え上げてもらえるように手配してくれた事については陛下達に感謝しているけど、まさか秘書みたいな事をさせられる事になるとは思わなかったわよ…………ハア…………」

エリゼは呆れた表情でリフィアを見つめた後溜息を吐いた。



「クスクス♪メイドに呼び捨てされ、さらには政務関係もできるメイドを持つ皇女なんてリフィアお姉様ぐらいよ♪」

「……リフィアの型破りさに付いて行き、さらにフォローができるようにならないと、リフィアの専属侍女長はやって行けませんので。」

小悪魔な笑みを浮かべるレンに見つめられたエリゼは疲れた表情で溜息を吐いた。



「クスクス、いいじゃない♪パパも貴女がリフィアお姉様を見張ってくれているおかげで大分手間が省けたってぼやいていたし、貴女自身、”剣聖”や”姫将軍”さんから剣術や魔術、政務関係を教えてもらって色々と成長したじゃない♪」

「……まあ、だからこそ余もお主にエステル達のように私的な場では呼び捨てで余の名前を呼ぶ事や、気軽な態度で接する事を許したのだしな。……余の忠実にして優秀なる下僕にして信頼ある友になったからには絶対に手放さないから、覚悟しておけよ?」

「だから下僕じゃなくて、”臣下”って呼びなさいよ。ねえ、リフィア。前々から聞きたいと思っていたけどメンフィルは本当にリフィアの提案を実行するつもりなの?」

リフィアの発言に呆れた表情で溜息を吐いたエリゼはすぐに気を取りなおして複雑そうな表情でリフィアを見つめて尋ねた。



「む?何のことじゃ?」

「……当主が父様から兄様に代替わりした際、シュバルツァー家の爵位を上げる話よ。」

「おお、その話か!何が不満なのだ?お主の出世や兄の活躍によって実家の爵位も上げる事は親孝行に繋がると思うが?」

「別に不満とは思ってないわ。貴族の爵位では一番低い”男爵”のシュバルツァー家の爵位が上がる事は勿論シュバルツァー家の一員として嬉しいし、兄様の活躍を認めてくれた事に関しても私個人としても嬉しい話よ?でも、幾ら何でも一気に2段階も爵位を上げて”伯爵”にするのは特別扱いをしすぎていると思うのだけれど。私としては爵位を”子爵”に上げてもらうだけでも十分嬉しいわよ?」

「うふふ、謙遜する事はないと思うわよ。エリゼお姉さんがリフィアお姉様の専属侍女長を務めている事自体も十分凄いのに、リィンお兄さんは”七大罪”の一柱に加えて”精霊王女”の協力まで取り付けたんだから。それにツーヤの妹のセレーネと将来結ばれる可能性が非常に高いんだから、別に迷う必要はないと思うわよ♪あ、後ラインフォルトグループの会長の娘やアルフィン皇女にも好意を抱かれているんだったわね?だったら、リィンお兄さんに好かれている女の子達をみんな幸せにする為に爵位が上がる事はむしろ好都合じゃないかしら♪改めて思うとリィンお兄さんって凄いわね♪自分の実家より”格”が上の家の女の子達を次々と落としているんだから、シュバルツァー家は政略結婚という方法を使う必要がないじゃない♪」

「レ、レン!」

からかいの表情で言ったレンの発言を聞いたリフィアが表情を青褪めさせたその時

「フ、フフッ。確かに言われてみればそうですよね?さすが兄様ですね。少し目を離した隙に、次々と増やしていってるんですから。それも権力のある家のご息女達ばかりを。結婚したら、私とエリスに誰よりも多く子供達を孕ませてもらいますから今から楽しみにしていてくださいね?ウフフフフフフフ………!」

「……………………」

「クスクス、シュバルツァー家の未来は子沢山で、賑やかな家庭になりそうね♪」

エリゼは膨大な威圧を纏って、目にも見えるほどの怒気をメラメラ燃やしながら微笑み、その様子を見たリフィアは表情を青褪めさせて身体を震わせ、レンはからかいの表情になった。



~クロスベル市・ジオフロントB区画~



「―――ウフフ、なるほど。なかなかどうして使いやすい端末じゃないか。」

一方その頃片腕の少年がクロスベルの地下水道のどこかの部屋にある端末を操作していた。



「財団きっての天才SE、ヨナ・セイクリッド少年か。旧式のネットワークとはいえここまでの環境を構築するとはね。”殲滅天使”が捕捉されたっていうのもあながちマグレじゃなさそうだな。」

少年が端末を操作すると端末の画面になんと蛇が自身の尾を喰らっている姿の紋章が現れた!



「”星辰(アストラル)のコード”のインストールを完了……それじゃあ始めようかな。―――位相空間にアクセス。導力ネットの全領域を開始。複数ルートからの侵入経路を確保。第一、第二、第三防壁をクリア……ロジックキーの解除に成功、メイン端末への最終防壁への攻略……」

少年が端末の操作を追えると画面に”MISSION COMPLETE"という文字が現れた!



「フフ、さすが博士が自慢するだけはあるかもね。さてと、お楽しみは取っておくとして仕掛けのネタを漁ろうかな。」

するとその時、警告する画面が出てきた。

「おっと……こっちでふんじゃったか。ウフフ……やるねえ、ソバカス君。でも、この仕掛けだと明日くらいまでバレないかな?せっかくだから色々、愉しませてもらおうっと♪」

その後少年は端末の操作を続けていた。





同日、25:30――



~アルゼイド子爵邸~



「…………………」

全員が寝静まったその頃、アイドスは夜空に浮かぶ月を見つめていた。



え……アストライアお姉様があのエステルって娘に!?



ああ……その証拠にエステルは”天秤の十字架(リブラクルース)”を扱え、”正義の大女神”の力も解放できる。それがサティアが宿っている証拠だ。



「女神の子孫でありながら、女神の末裔である事を気にせず、そしてお姉様―――女神の魂を宿し、多くの異種族達に加えて、果ては女神や魔神の協力も取り付けている人間、か。”感情”がなければ、そのような奇蹟、絶対に起こらないでしょうね。みんなが手を取り合う世界を目指す為にも、私は”人”自身をもっとよく知るべきだったのね……」

屋敷に泊めてもらった際、セリカから聞いたある事情を思い出したアイドスは目を閉じて考え込み

「光と闇、両方の気配を感じさせる黒髪のあの子………彼に待ち受けている多くの人々との出会いや別れ、そして多くの仲間達と共に立ち向かう”運命”……………なら”人”を知る為に私は―――――」

そして決意の表情になって夜空を見上げたその時

「……まだ起きてらっしゃったんですね。」

シュリがアイドスに近づいてきた。



「確か貴女はシュリ……だったわね。私に何か用かしら?」

「え、えっと、その……アイドス様はこれからどうなさるのか、気になっていまして……」

「少しの間だけは貴方達と行動するけど、近い未来貴方達と別れて行動するつもりよ。」

「え……ど、どうしてですか?」

アイドスの答えを聞いたシュリは驚きの表情で尋ねた。



「お姉様の容姿や声を持つ私が傍にいても、セリカもそうだしお姉様の事を良く知る貴女達も辛いでしょう?それにお姉様が愛するセリカを取るつもりなんてないわ。」

「アイドス様……」

アイドスの答えを聞いたシュリは辛そうな表情をした。

「心配しなくても私もこれからの自分が進む道を見つけているわ。」

「え……ど、どのような道を進むおつもりなのですか?」

「フフ、”人”を知り、お姉様のように心から信頼できる人達を見つける為に、大いなる運命が待ち受け、多くの仲間達と共に立ち向かう”人”と共に行動するだけよ。」

そして戸惑いの表情をしているシュリにアイドスは優しげな微笑みを浮かべて答えた。



その後二人はそれぞれの客室に戻って明日に備えて休み始めた。


 
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