| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夜空の武偵

作者:コバトン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

プロローグ2。星空家の『普通』

「スーちゃん、スーちゃん」


(……え? 誰だ?)

目を覚ますと見知らぬ女性に抱かれていた。
うん、幻覚じゃないぞ~。
目覚めたら、某少年探偵よりも幼く(というか赤ちゃんに)なっていた……。

「バブー、バブー」(夢じゃなかったんだ……)

「あらあら、お~~よしよし……」

今俺を抱いてるこの人がこの世界での母親か……。
俺を抱いているその女性の容姿は黒髪で、かなりの美人な大和撫子を体現したかのような女性だった。
こんな美人……前世でもなかなかいなかったぞ?
まあ、あの神の言う通りならここは『緋弾のアリア』の世界だが。
確かにあのラノベやアニメでは皆んな美少女、美人さんしか出てこなかったけどさ。
あ、蘭豹や綴は別な。
いくら容姿がよくてもあの性格は勘弁だ!
って、何適応しようとしてるんだ俺は!
ここが『緋弾のアリア』の世界とか、そんなこと認めてたまるかー⁉︎
などと一人で考えていると。


「ただいま~。お、起きてたか~~!
いい子にしてましたか~~?」

そう言って男性が俺の顔を見下ろしてきた。
この人が……父親か。

普通のサラリーマンっぽいな。
何だ、ってきり、何処ぞのヤさんとか、警察官とか、武装職に就いている。
そんなイメージを持っていたけど。
思ったより普通の人でよかった。
安心したよ。
これなら原作になるべく関わらない、普通の人。すなわち一般人として生きていけそうだな。
原作になるべく関わらない!
それが長生きするには重要だ!

「おかえりなさい。お仕事ご苦労様。
新しい任務はもうなれました?」

「ああ、うん。ふー……疲れたな。官邸の警備はやっぱり疲れるね。
前やっていた強襲任務とかの方が僕には向いてるよ」


うん? 聞き間違いか?
なんだか今、物騒な話題が出たような?
それによく見るとスーツが若干、膨れているような……?

ま、まさかな……。

「今日は依頼も速く終わったし、パパと遊ぼうな~♪」

「あら、ダメですよ。これからおじいちゃんも来ますし。
武偵庁の人達もお祝いに来るんですから」

武偵庁?
武偵庁……武装探偵を管理する省庁。
……やっぱり武偵なのかよ!
うわぁ。家族が武装職に就いてるって嫌だなー。
これ、詰んでないか?
……いやいや。まだ諦めるな。まだ原作回避は出来るはずだ。
ところで依頼って何の依頼だ?

「あー……そういえば依頼主の大臣からも祝福されたよ。
写真見せたら総理大臣のところのお孫さんも昴と同い年だと解ってね。今度昴を連れて首相のご実家にお邪魔することにしたよ。公私共々よろしく、なんて言われたからね。はははっ!」

はははっ! じゃ、ねえよ⁉︎
何勝手に話進めてんの?
馬鹿なの? 死ぬの?
総理大臣とか、政治家とか、そんなもんに関わりたくないんだけどっ⁉︎
俺は普通の生活を送りたいの!
変なコネとかフラグはいらないの!
まぁ、どんな環境だろうとなんとかするけど。
なんとかしてやる、って思ってるけど。
だけど……それは今じゃない!

「オギャー、オギャー、オギャー‼︎」(お願い! 誰か止めてー!)

「あらら、おしめかしら? はいはい……ちょっと待っててね?」

違う。違うよ、マミー!
止めてー!お願いだからそこのお花畑脳な父を止めてー!
そんな風に騒いでいた、その時だった。
______ドカーン! っという扉を蹴破るような音が聞こえ。
ドカドカドカ、っと騒がしい足音が鳴り響き。

「ガハハハッ! こらー、光一! わしの孫はどこじゃあ!」

全身を鎧でガチガチに固めた武者姿のご老人が部屋に入ってきた。
え? 誰、この暑苦しい人?
鎧武者なご老人は両親と一言二言交わすと、その顔を俺の方に向けてきた。
目が合った!
と思ったら。

「足らんな!」

開口一番にそう呟いた。
WHAT?
何がでしょう?

「何が足りないのですか、お義父さん?」

恐る恐るマミーが聞くと。
祖父は神妙な顔つきをして。

「この子には……『筋肉』が足らん!
こんなぷにぷにな身体では銃弾を生身で弾き返せないではないかー⁉︎
困ったのう。わしの秘技『筋肉(マッスル)返し(バスター)』の継承がこの子の今の筋肉では出来ないのぅ」

と言った。

ちょっと待て______⁉︎
『筋肉返し(バスター)』って何?
赤子の肌がぷにぷになのは『普通』だろうが!
生身で銃弾を弾き返す、ってどこの筋肉ダルマですか⁉︎
心の中で叫ぶ俺を他所に。
祖父はニカッ! っと笑い。

「この『一騎当千』の継承者が筋肉なしなしではいかん!
決めた! わしはこの子を世界最強の筋肉剣士にしてやろう」

満面の笑みを浮かべてそう宣言した。

NO______筋肉! YES______普通!

俺は普通の生活が送りたいの!
そう思った俺は、両親に助けを求めたが……。

「困りますよ、父さん。昴はごくごく『普通の』Rランク武偵になるんですから……」

「あら、貴方。何言ってるの? スーちゃんは立派な陰陽師になるのよ?
この子は『土御門家』の血を引いているのだから、陰陽師になるのが『普通』でしょう?」

……駄目だ、コイツラ。早くなんとかしないと。

「ガハハハッ! 何を言っとるんじゃ! この子は『鬼』の血を引きし者。即ち『剛』の者になるのじゃ!
その為には『筋肉』がなければいかん! 筋肉さえあれば敵なし!
これ、この世の真理じゃ!」

……誰か、『普通』の定義をこの人達に教えてやってください!
早急に!



そして。目覚めたあの日から、一年ほどたったある日。
1歳になった俺は両親と祖父に連れられて、何処ぞの上流階級のパーティに参加していた。
参加すると言ってもまだ1歳なので、言葉もろくに話せないし、動くのも人前……とりわけ両親の前ではハイハイしかしていない。本当は拙いヨタヨタ歩きではあるが1人で自由に歩けるし、言葉も普通に話せるのだが。あの両親のことだ。
普通に会話が出来て、歩けると解ったら何をされるか……彼らが知った後の行動は容易に想像がつくので出来ない振りをして過ごしている。
下手に出来る子アピールして、変な英才教育とか始まったら俺が求める普通の生活。『一般人』として過ごすという当たり前の夢が遠ざかるからな。
などと、母親の腕と胸の間に抱かれながら考えていると。

「あら? あの人がそうかしら?
……なるほど。出来るわね」

母親の呟きが聞こえて。
そちらの方に視線を向けると。

膝にまで届きそうなくらいに髪を伸ばした、俺の母親にもひけをとらないほどの美女が顔に笑みを浮かべながら近づいてきた。その女性の髪は日本人にしては少し明るくブラウンかかった、ふんわりウェーブの髪をしている。その女性の姿は何処か神々しく感じる。
まるで……女神様が具現化したかのような______。
そしてその女性の腕には赤子を抱いていた。
その赤子の髪は金髪で。
肌は色白い。
どう見ても純粋な日本人ではない。
女性の子ではないのか? と思ったが。

「うふふ。こんにちは。初めまして。神崎かなえです。この子は娘のアリアです。よろしくね? スバルさん」

母親に挨拶を終えた女性が気を遣ってか、俺にも挨拶をしてくれた。
その女性の腕に抱かれていたのは。
女の子だ。
何処かで見たことがある。
……って俺のバカ、見たことがある、じゃねえ。
どっからどう見ても彼女は……。

(り、現実(リアル)アリアちゃん1歳♡ めっちゃくちゃ可愛い〜……じゃねえ!)

なんでここにいんの⁉︎
英国(イギリス)で暮らしてるんじゃないのかー?
メインヒロインとの遭遇イベントとか、何このテンプレ?
こんなテンプレいらないんだけど!
そんな風に内心叫んでいると、アリアと目が合って。

「あー、うー、だー!」

すまん。何を言ってるのかまったく解らん。

「うふふ。どうやらアリアもスバルさんのことが気に入ったみたいね。これからも(・・・・・)よろしくね? スバルさん」

何をどうよろしくするんですか?

「うふふー」

かなえさんは笑みを浮かべたまま、しばらく微笑んでいた。
アリアとはよろしくしたくはないが。かなえさんとならよろしくした「ぅえええ〜〜〜〜ん‼︎」スミマセン、アリアさん。冗談です。だから泣き止んでください。
今日のことは絶対に忘れてください。将来的にガバで撃つとかしないで!
絶対だからな! 絶対に撃つなよ! 絶対だぞ!

と、そんなバカなことを思っていると。

「おお、ここにいたか。探したぞ。ほれみろ光一。ちゃんと孫の『筋肉』の反応があったではないかー」

「あはは……まさか、昴君の『筋肉』が動く時の音を感知して居場所を探るとか、さすがですね。父さん」

俺の平穏を妨げる『逸般人』日本代表共がやってきた。
筋肉が動く時に出る音(?)を感知する祖父とか、それを当たり前のように受け入れてる父親とか。
もう、嫌だ______こんな家族⁉︎

「ガハハハ! 何、『筋肉感知』できなくては『筋肉』を極めた者の証である『一騎当千』を名乗れないからな。光一もできるじゃろ?」

「まあ、昔から貴方に鍛えられて生きてきましたからね。敵の動きを筋肉の動きで探る『筋肉感知(マッスル・レーダー)』や相手の筋肉を断裂させる『筋肉殺し(マッスル・ミレニアム)』とかならできますよ」

さらりととんでもないことを言う父親。
何だよ、『筋肉感知』って。何だよ、『筋肉殺し』って。
何でもかんでも、筋肉で解決しようとするなよ! この脳筋共。
ジト目を向けているとそんな俺に気づいたのか、母親が声をかけてきた。

「あらあら。いやですわ。この子ったら……そんな死んだ魚のような目をして……」

何気に酷いな。なんだよ、死んだ魚のような目って。
魚は陸に上がれば死ぬんだよ!
それと同じで、普通に生きたい俺に普通じゃない生活させたら即死だからね!
ねえ、解ってる? レベル1のスライムにドラゴンと遊べって言ってるようなものだからね!
そんなことを考えていた俺は母親に引き連れられて。
華やかな社交会の会場の奥。
一曲踊れそうなくらい(実際ダンスとか踊ることもあるのだろう)広いスペースに連れて行かれた。
連れて行かれる途中で、ふと父親と祖父の方に視線を向けると。
二人は小声で何やら会話していた。
会話の内容を知ろうにも周りの雑音で二人の声が特に小さめだったせいか聞き取れない。

(こんな場所で密談? ……気になるな)

父親と祖父の会話が気になった俺はその会話の内容を知ろうと意識を集中させた。
______その瞬間。
それまでの騒がしい雑音が嘘のように聞こえなくなり、祖父と父。
二人だけの声がバッチリ聞こえてきた。
それと同時に声と共にドク、ドクッという筋肉が動く心臓の鼓動やギッ、ギッといった感じの何か……筋が伸縮するような音のようなものも聞こえる。

(何だ______これは⁉︎)

その感覚に戸惑いながらも、「ま、集中してるせいか。集中してると周りの雑音が聞こえなくなることなんてよくあるよな」と1人納得して、会話を聞いた。
内容はこんな感じだ。



「なんじゃ、光一よ。お主に託したあの技(・・・)はまだ使えんのかのう」

「……残念ながら。あの技をやるにはあの刀を使いこなす必要がありますから。
僕には父さんのように力尽くであの刀を屈服させることは最後までできませんでしたから」

「うーぬ。腐っても妖刀なことはあるのぅ。光一でもあの刀を使いこなせぬか……」

「まあ、僕には無理でもきっと昴君ならできますよ!」

「うぬ。そうじゃな。わしらの目に狂いはなければ此奴には『才』があるからのぅ。
あと二、三年したら毎日のように遊んでやろうぞ」

「ほどほど、に。お願いしますよ?」

「ガハハハ! 心配いらぬ。悪いようにはせぬ。この『一騎当千』、星空玉星(ぎょくせい)に任せなさい」

……寒気がしたのは気のせい……と思いたい。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧