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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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外伝~もう一人の共存を謳いし”王”~

~工匠都市ユイドラ・近郊~



「ユエラ、エミリッタ!右翼の軍が苦戦している!援護に行ってくれ!」

「わかった!行くぞ、エミリッタ!」

「ラジャであります!」

一人の青年の指示に頷いた腰まで伸ばした美しい黒髪の女剣士――ユエラと大きな鈴を着けた杖を武器に持つ桃色の髪を腰までなびかせて戦う魔術師の女性――エミリッタが大量の下級魔族――ゴブリンやオーク達の軍団に苦戦しているユイドラ兵達の援護に向かった。

「ハァッ!」

「「「「ギャアアアッ!?」」」」

ユエラが放った神速の剣撃は一振りするだけで複数のゴブリン達の身体を分かれさせ、絶命させた!

「行っくよ~!………流星よ、落ちよ!小隕石召喚!!」

エミリッタが詠唱し、放った魔術によって空より小隕石がいくつもゴブリン達の上に落ちて来た!

「「「「「「ウギャアアアッ!?」」」」」」

隕石に命中したゴブリン達は隕石に押しつぶされ、絶命した!

「シャルティ、ラグスムエナ!」

「はいは~い!」

「………ウィルとユエラの敵は殺す………!」

青年に呼ばれた睡魔――シャルティと大鎌を持った死神――ラグスムエナが意気揚々と目の前の敵陣に突っ込んだ!

「そ~れっ!」

「「「「「ガッ!?」」」」

シャルティの技――ごろごろを受けた下級悪魔達は吹き飛んだ!そこにラグスムエナが大鎌を大きく振りかぶった後、思い切り震った!

「フン!」

「「「「!!……………」」」」

ラグスムエナの震った大鎌は敵の身体を真っ二つにして、絶命させた!



「!!ウィル!左翼もおされています!」

そして正確無比な射撃で敵を射抜きながら戦場の状況を見ていたエルフの女性がユエラ達を指揮している自分の夫でもある青年――ユイドラ領主、ウィルフレド・ディオン――ウィルに警告した。

「わかった、セラウィ!メロディアーナ、頼む!」

エルフの女性――ウィルの妻のセラヴァルウィ・ディオン――セラウィの警告に頷いたウィルは自分を護るように戦っている第八位天使の上位にあたる大天使(アプサエル)と呼ばれる天使族の女性――メロディアーナに声をかけた。

「わかりました!」

ウィルの言葉に頷いたメロディアーナは不死者と幽霊の軍団に苦戦しているユイドラ兵達の元に自分に付いている翼で飛んで行き、自分の武器である槍に光を纏わせ、そしてそれを震った!

「ハァァァァァァ!!彗星の光槍!!」

メロディアーナが槍を振るうと、いくつもの光の槍が不死者や幽霊の軍団に降り注いだ!

「「「「「ギャアアアアアアアッ!?」」」」」

弱点である神聖属性の槍を受けた不死者と幽霊の軍団は断末魔を上げながら、消滅していった!

「ハアッ!」

仲間達の活躍に続くようにウィルも自分の武器としている鉄槌――『匠王の神槌』で目の前の敵を倒していた。

「ハッ!」

そしてウィルを援護するようにセラウィが弓矢で的確に敵を射抜き、倒していた。



「クッ………キリがないな……!」

敵を倒し、一息ついたウィルはまだまだいる魔物達を見て、顔を歪めた。

「倒しても倒しても、湧いて来るように出て来て~!一体、どれだけいるのよ!」

「泣き言を言う暇があったら、詠唱して目の前の敵を倒せ!ハァッ!」

右翼のユイドラ兵達を援護しているエミリッタは敵の多さに泣き言を言い、それを見たユエラは叱咤しながら敵を斬りまくった!

「せめて、水那達がいれば、もう少し戦況はよくなるんですけどね………」

敵を射抜きながらセラウィはこの場にいない仲間達の事を言った。

「仕方ないよ。水那達には他の仲間達に援軍を頼みに行って貰っているんだから。……水那達が仲間達を連れて来ると信じて、俺達はここで食い止める!」

実はウィル達には他にも心強い仲間がいるのだが、彼女達は周辺の水精や土精、エルフ。そしてかつての仲間であった仲間達の協力を頼むためにユイドラを留守にしていて、そのせいで戦力不足となり、ウィル達は苦戦していた。

「ええ!ユイドラの、全ての種族のために……そして、家で待っているセティ達のためにも必ず勝たないと!」

夫の言葉に勇気づけられたセラウィは頷いた後、弓矢で敵を射抜き、そして魔術を使って味方の治癒や敵への攻撃をした。

(……我はまだ出なくていいのか?ウィル。)

そこにウィルが着けている腕輪が光り、ウィルにある人物の念話が来た。

「………アスモデウスはディアーネが出て来た時に、出て来てもらう!」

(……それはいいのだが、このままでは数に押されてしまい、壊滅してしまうぞ?)

「わかっている!(クッ………街の防衛に着いているレグナー達をこちらに廻すか?でも、そんな事をすればユイドラががら空きになるし……!)」

腕輪から聞こえた念話――ソロモン一柱の魔神アスモデウスの言葉に答えたウィルはユイドラの主力である親友であり、ライバルでもあり、そして領主である自分の右腕でもあるレグナー率いる工匠達――いざという時に温存しているユイドラの主戦力を前線に出すかどうか迷った。その時、考え込んでいるウィルの隙を狙い、一匹の下級悪魔が襲いかかった!

「ウィル!」

「!!クッ!」

セラウィの警告に我に返ったウィルは自分に襲いかかって来る下級悪魔を迎撃しようとしたその時

「我が魔術にひれ伏しなさい!……粒子弾!!」

「!?ガアアアアッ!?」

突如雷が籠った魔力弾が下級悪魔を襲って、命中した下級悪魔は断末魔をあげながら地面に倒れて動かなくなった。



「えっ!?今の声と魔術は……!」

自分を援護した魔術に驚いたウィルだったが、聞き覚えのある声に表情を明るくさせ、魔術が来た方向に向いた。

「全く………精霊王女たるこの(わたくし)を破っておきながら、なんという体たらくですか。以前と比べて、腕が少し落ちたんではなくて?」

そこには槍を持ち、得意げに胸を張ったフィニリィが嬉しさを隠せない表情でウィルを見ていた。

「フィニリィ!最近姿を見ないと思っていたから心配していたけど、無事でよかった!」

フィニリィを見たウィルは嬉しそうな表情で言った。

「うっ……!(あの反則の笑顔は相変わらずですわね、ウィルは。)」

ウィルの笑顔を見たフィニリィは自分が唯一好意を持ち、身体を許した相手に笑顔を向けられ、一瞬顔が赤くなり、そして小声でセラウィに話しかけた。

(フフ……惚れ直しましたか?)

小声で話しかけられたセラウィは微笑みながら小声で答えた。

(な、何の事よ!それに妻の貴女がよくそんな事が言えるわね……)

セラウィの答えにフィニリィは一瞬焦った後、呆れて溜息を吐いた。

(ウィルと恋人同士だった頃から、貴女や水那達がウィルに好意を持っている事や抱かれている事は知っていますし、今更じゃないですか。)

(……私達の事、なんとも思わないの?)

(フフ……確かにたまに嫉妬をする事はありますが、それも含めてこそのウィルなのですから。……それに古来から『英雄、色を好む』とありますし、貴女達相手なら私は何も言いませんよ。……というかセティが産まれた1年後に産まれたシャルティとウィルの娘――シャマーラと、シャマーラと同じ時間に産まれたウィルとメロディアーナの娘――エリナの事は貴女も知っているでしょう?)

(貴女って人は………………)

セラウィの答えを聞いたフィニリィは呆れて溜息を吐いた。

「?2人とも一体何を話しているんだい?」

セラウィとフィニリィの会話が聞こえなかったウィルは首を傾げて尋ねた。

「なんでもありませんわ!それよりここは戦場なのですから、油断は禁物……ですわ!」

ウィルに答えたフィニリィは自分に襲いかかるゴブリン槍で倒しながら言った。

「そういえば……どうして俺達がここにいるってわかったん……だい!」

同じく自分に襲いかかかる魔物を倒しながらウィルはフィニリィに自分達を探し当てた理由を尋ねた。



「どうせ、あなたの事だから最前線にいるのはわかりきっている事ですわ。全く領主の癖に、なんでそんな真似をするのですか!少しは領主としての自覚を持ったらどうかしら?」

「あ、あはは……でもみんなに任せて、俺だけ安全な所でみんなの戦いを見ているだけなんて事できないよ。」

フィニリィに怒られたウィルは苦笑しながら答えた。

「フフ……ウィルらしいですね。それより水那達が貴女を見つけて、今のユイドラの状況を教えてくれたんですか?」

「いいえ………貴女の学友とやらが教えてくれましたわ。」

「え……?」

フィニリィの答えを聞いたセラウィが首を傾げたその時

「ハアッ!そこっ!」

戦場に乱入したフォーチュラが走りながら弓矢を放って、敵を射抜きながらセラウィの所に来た。

「久しいな、セラウィ。」

フォーチュラは懐かしそうな表情でセラウィを見た。

「フォーチュラ様!どうしてこちらに?」

フォーチュラの登場にセラウィは驚いた後、尋ねた。

「フフ……かつて共に学んだ友を助けに来て、どうしてそんなに驚く?」

「フォーチュラ様………助力、ありがとうございます!」

「フフ……気にするな。それに私以外の心強い援軍も来ているぞ?」

「援軍……?」

フォーチュラの言葉にセラウィが首を傾げたその時

「これで……終わりよっ!」

女性の声が聞こえた後、ゴブリンの軍団の一部の中心に轟音と爆発が起こり、爆発の中心地にいたゴブリン達は絶命して地面に倒れていた。

「間に合ったようね、ウィル。」

「ロカさん!?なんでここに……!」

鎧に付いている魔導砲でゴブリンの軍団を葬った女性――ロカの登場にウィルは驚いた。

「たまたま酒場で出会ったフォーチュラ殿から今のユイドラの状況を聞いてね。……この魔導鎧を作ってくれた恩返しに来たのよ。」

「そんな……!報酬ももらったなのに恩返しだなんて……!」

ロカの答えにウィルは恐縮しながら答えた。

「それにここに来たのは私個人、あなたに協力したいと思ったから。だから、気にしないで。」

「……ありがとうございます!」

そしてロカは槍を構えて、メロディアーナ達が戦っている不死者と幽霊の軍団に突撃した。

「ハァァァ!」

ロカの洗練された聖なる力を宿した槍は次々と不死者達を葬っていった。

「やりますね……さすが軍神の神官戦士。……ですが、私も負けてはいられませんよ!………光よ、我が仇名す者達を吹き飛ばせ!……光燐衝撃!!」

ロカの活躍に口元に笑みを浮かべたメロディアーナはロカの活躍に負けないよう、魔術を放って敵を吹き飛ばし、倒していった!そしてユエラ達等、他の場所で戦っているウィルの仲間達の所にも次々と予想外の援軍が到着し始めた……!




 
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