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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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外伝~動き始める意志~前篇

同日、22:00―――



~クロスベル市・特務支援課~



”西ゼムリア通商会議”の開催地となるクロスベルにて、クロスベル警察の分室―――”特務支援課”のビルにて、”特務支援課”の面々はある裏組織に招待された仲間達が持ち帰ってきた情報を聞き終えた。



「……そんな事が……」

話を聞き終えたマクダエル議長の孫娘にしてリウイの正妃イリーナの妹―――エリィ・マクダエルは不安そうな表情をし

「本当に……とんでもない連中みたいですね。」

クロスベル警備隊から出向しているノエル・シーカーは溜息を吐き

「下手をしたらギュランドロス達より危険な存在かもしれないわね……」

様々な事情で”特務支援課”に配属したエルフの娘―――エルファティシア・ノウゲートは真剣な表情で考え込んでいた。



「まあ、お前が”闘神”ってのを継ぐって話はともかく……色々収穫はあったみたいだな?」

”特務支援課”の課長であるセルゲイ・ロウは真剣な表情で元猟兵のランディ・オルランドを見つめた。

「ああ……連中が今、受けてるのは1億ミラ相当の契約……契約相手は、流れからしてエレボニア政府なのは間違いねぇだろ。」

「それと、8月下旬から忙しくなりそうとか言ってたから……時期的に考えてやっぱり通商会議の期間中に何かしでかすつもりみたいだね。」

ランディに続くように少年―――クロスベル市の旧市街の不良グループのリーダーをしていたワジ・ヘミスフィアは話を続けた。



「フム、そうなるとその1億の契約の内容だが……――ロイド、どう思う?」

二人の説明を聞いて考え込んだセルゲイは”特務支援課”の若きリーダー―――ロイド・バニングスを見つめて尋ねた。

「……あ、はい。……これはカンですが……鉄血宰相は帝国内に、かなりの敵対勢力を持つと言われています。このクロスベルで、そうした勢力から宰相を守るというのはあり得るかと。」

「あ……!」

「……なるほど……そいつはアリそうだな。」

「ほう………………」

セルゲイに尋ねられ、答えたロイドの推理を聞いたエリィは声を上げ、ランディは真剣な表情で頷き、警察局長にして”六銃士”の一人―――ヴァイスハイト・ツェリンダー―――ヴァイスは感心した様子でロイドを見つめていた。



「クク……いい目の付け所だな。」

ロイドの推理を聞いたセルゲイは満足げな笑みを浮かべた。



「んー、でもそれだと逆に1億ミラは少し多すぎないかい?宰相だって自分の護衛は引き連れてくるんだろうし。」

「確かに……エレボニアにしてもカルバード、そしてメンフィルにしてもかなりの護衛将校を同行させるそうですね。」

「……もちろん、そういう表向きの護衛とは違うだろう。ただ、彼らの動向を見る限り様々な形でクロスベルという土地を把握しようとしているのは確かだ。」

「アルモリカ村、マインツ、そしてベルガード門での目撃情報がそれを物語っているかもしれないね。食糧調達や七耀石の売買というもっともらしい理由があったみたいだけど……」

「ああ、各地を訪れていた本当の目的は別にあったんだと思う。それこそ俺達や遊撃士と同じく、何かあっても即座に対応できるように。」

「確かに……そんな風には感じられたわね。」

「……………………」

それぞれの意見を出し合っている中、ランディは真剣な表情で考え込んでいた。



「―――ま、現時点で推測できるのはここまでだろう。9日後は各国首脳が来訪し、オルキスタワーの除幕式がある。ああ、ちなみにお前らにも現場に出て貰うぞ?」

「えっ…………」

「現場ということは……除幕式へ?」

セルゲイの口から出た意外な話を聞いたロイドとエリィは目を丸くした。



「どうやら”赤い星座”の方に目を奪われているみたいだからな。―――防諜(ぼうちょう)やテロ対策なんてのは本来、お前らの仕事じゃない。ここらで気分を切り替えてもうちょっと状況を俯瞰してみろ。」

「……なるほど……」

「ハハ……耳に痛ぇ突込みだな。」

セルゲイの話を聞いたロイドは頷き、ランディは苦笑した。



「えっと、除幕式ということは警備に参加するという事ですか?」

「ま、名目上はそうだがそれより除幕式の様子を観察することに専念しておけ。通商会議が始まる時の空気……首脳どものオーラなんかをな。また違った視野が持てるはずだ。」

「……了解しました。」

「フフ、それじゃあ特等席から鑑賞させてもらおうかな。」

セルゲイの言葉にロイドは頷き、ワジは静かな笑みを浮かべていた。



「そういえば、ヴァイス。先程聞きそびれましたけど、貴方は”赤い星座”の件、どう思っていますか?貴方もロイドやセルゲイと同意見ですか?」

「いや…………俺はもっと違う事を予想している。」

その時”六銃士”の一人にしてヴァイスの秘書兼護衛を務めているアル・ノウゲートに尋ねられたヴァイスは静かな笑みを浮かべて答え

「え………」

「ど、どういう事ですか!?」

「…………局長。一体何を予想しているんですか……?」

ヴァイスの答えを聞いたロイドとノエルは驚き、セルゲイは目を細めて尋ねた。



「…………俺の予想では……”赤い星座”を利用したエレボニアによるクロスベルの支配だ。」

そしてヴァイスは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「なっ!?」

「い、一体どういう推理をしたんですか……!?」

「「……………………」」

ヴァイスの口から出た予想外の答えを聞いたロイドは驚き、エリィは真剣な表情で尋ね、セルゲイとエルファティシアは目を細めて黙り込んでいた。



「現在のクロスベルの状況や…………”鉄血宰相”の状況……そしてこのクロスベルを支配したい側として考えたら、結構簡単に答えが出て来るぞ?」

「クロスベルを支配したい側として………………」

「………………駄目です。考えても全然わからないです。」

「………………………………局長。話してもらっていいですか?」

ヴァイスの話を聞いたノエルは複雑そうな表情で考え込み、エリィは考え込んだ後溜息を吐き、ロイドは真剣な表情でヴァイスを見つめて言った。



「まずはクロスベルの状況についてだが……”不戦条約”が締結されるまでクロスベルの帰属をめぐってエレボニアとカルバードは緊張状態であった。これは知っているな?」

「え、ええ……」

「そして”鉄血宰相”…………かの宰相の革新的な政治によって宰相を敵対勢力は多い。そしてロイド。お前はそんな者達から身を守る為に”赤い星座”を雇ったと言ったが……俺の予想ではもっと違う事の為に奴等を使うつもりだと思っている。」

「違う事…………」

「それがクロスベルを支配する為の目的ですか?」

ヴァイスの話を聞いたロイドは考え込み、エリィは尋ね

「ああ。……―――ルファディエル。お前ならここまで言えばわかるだろう?」

尋ねられたヴァイスは頷いた後口元に笑みを浮かべてロイドを見つめて言った。するとその時ロイドと”契約”している天使ルファディエルがロイドの傍に現れ

「ええ。…………そこまで予想しているとはさすがはクロスベルをいつか支配すると豪語しているだけはあるわね?」

現れたルファディエルは頷いた後口元に笑みを浮かべてヴァイスを見つめた。



「フッ。”この程度”王として……そして隙あらば他国に攻め入る元帥の立場であった者として考えれば割とすぐに思いつくぞ?」

「……ルファディエル姐さん、局長。もったいぶらないで俺達にも教えて貰ってもいいッスか?」

その時、ランディは目を細めてヴァイスやルファディエルに視線を向けて尋ねた。

「いいだろう。まず肝心の”赤い星座”の役割だが…………」

「”鉄血宰相”の命を狙う敵対勢力。通商会議の際に暗殺を仕掛けて来る彼らの”殲滅”が恐らく”赤い星座”の役割ね。」

「”殲滅”…………」

「………………」

ルファディエルの話を聞いたロイドは考え込み、ランディは黙り込んだ。



「そしてその”殲滅”を口実とし、クロスベルの防衛力があまりにも低すぎる事を指摘し、クロスベルの警備隊や警察の解散を指示、そして自国―――エレボニア帝国軍の駐留させる事だ。」

「なっ!?」

「それは……!」

「自国の軍を駐留――――実質的な支配かよ。」

「……………………」

そして不敵な笑みを浮かべて説明するヴァイスの話を聞いたロイドは驚き、エリィとランディは厳しい表情をし、セルゲイは目を細めて黙り込み

「なるほどね。それなら1億ミラという大金も納得できるかもしれないね。」

「しょ、正直信じられないやり方です。もし”赤い星座”が”鉄血宰相”の敵対勢力を”殲滅”―――殺害したら、さすがに他国の非難が集まると思いますし……」

ワジは静かな表情で頷き、ノエルは信じられない表情をした後呟いた。



「…………例え、その事を指摘されたとしても『自分の身を守る為に雇った』という口実でも作るでしょうね。」

しかしノエルの意見を否定するかのようにエルファティシアが重々しい様子を纏って推測し

「そして”赤い星座”にはエレボニア政府の権限で”鉄血宰相”の敵対勢力の殲滅許可でも出して、クロスベル側からの反論を封じるのでしょうね。」

アルが最後はどんな結果になるかを答えた。



「あ…………」

「……………………」

2人の話を聞いたノエルは呆け、エリィは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



「―――そういう意味ではカルバードも同じ考えをしているかもしれないわよ?あの国の大統領―――ロックスミス大統領も”鉄血宰相”と同じように多くの敵対勢力がいるのだから。」

「あ……!」

「遊撃士協会で聞いた情報――――カルバード政府と黒月の長老が何らかの取引を行ったっていう話か……!」

そしてルファディエルが呟いた言葉を聞いたロイドとランディは声を上げ

「確かにそれも考えられるな。もし、それが実現しちまったら下手をすれば互いの国が自国の軍の駐留を主張し合って、”不戦条約”が結ばれる前のクロスベルに戻っちまうな…………」

「なんてこと…………」

「何でそこまでして、クロスベルを…………!」

セルゲイは重々しい様子を纏って頷き、エリィは表情を青ざめさせ、ノエルは怒りの表情で呟いた。



「ま、これもあくまで俺の予想だ。あんまり深く考えすぎるなよ?セルゲイ、今日はもういいだろう?」

その時空気を変えるかのようにヴァイスはロイド達に言った後セルゲイに尋ね

「え、ええ。お疲れ様でした。」

尋ねられたセルゲイは戸惑いながら頷いた。



「ああ。―――さてと。明日も早い事だし、さっさと休むとするか。アル、エルファティシア、行くぞ。」

「フフ、休むと言いつつ、しっかり私達とも”する”つもりなのですね?」

「まあ、それがヴァイスハイトだしね♪」

そしてヴァイスに促されたアルとエルファティシアは微笑み

「きょ、局長…………」

「少しは私達がいる事を考えて発言して下さいよ……」

「お願いしますから、ちょっとは控えて下さい…………」

「畜生!わざと見せつけやがって!このリア充王め!爆発しろ!」

「フフ、僕達の部屋に聞こえない程度で楽しんでくれよ?」

「ハッハッハッ!悔しかったら女性にモテるようにもっと女性の事を勉強しろ!」

3人の会話を聞いたロイドは脱力し、エリィとノエルは疲れた表情で溜息を吐き、ランディは悔しそうな表情でヴァイスを見つめ、ワジは静かな笑みを浮かべて言い、そしてヴァイスは笑いながらアル達と共に部屋を出て行った。



「そ、それにしても局長もそうだけど、ルファ姉、とんでもない事を推測しているんだな……」

「普通なら絶対に考え付きませんよ、さっきみたいなとんでもない推理……」

ヴァイス達が部屋を出た後ロイドは苦笑しながらルファディエルを見つめ、ノエルは疲れた表情で溜息を吐いて言った。



「フフ、いつも言っているように私はさまざまな可能性を考えているわ。―――そう言えばセルゲイ、今日メンフィル帝国政府から知らされたあの件を話さなくていいのかしら?」

「そういや、まだ言ってなかったな。」

「へ……」

「メンフィル帝国政府から一体何を知らされたのですか?」

ルファディエルに促されたセルゲイは頷き、二人の会話を聞いていたロイドは呆け、会話の内容の意味がわからなかったエリィは尋ねた。


 
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