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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第3話

その後、ケビンが去った後、エステル達は居間でこれからの方針を決めようとしていた。



~ロレント郊外・ブライト家~



「―――言ったように、もう俺はお前を止めるつもりはない。だが正直、今のお前の実力では結社の相手はあまりにも危険すぎる。そこでエステル……『ル=ロックル』に行ってみないか?」

「『ル=ロックル』?」

カシウスの口から出た知らない地名にエステルは首を傾げた。

「レマン自治州にある遊撃士協会が所有している訓練場だ。宿舎の周りには、様々な種類の本格的な訓練施設が用意されている。遺跡探索技術、レンジャー技術、サバイバル技術、対テロ技術……。実戦レベルの訓練を行うのにもっとも適した場所と言えるな。」

「そんな場所があるんだ……。でも、自治州ってことはその訓練場、外国にあるのよね?あたし……今、リベールを離れるわけには……それにミントを置いて行くなんて、あたしにはできないわ……」

「ママ…………」

カシウスの説明を聞いたエステルはリベールを離れたくない事や、ミントを置いて行きたくない事を言った。

「外国とはいっても国際定期船を使えば1日よ。訓練期間は、そうね……。1ヶ月もあれば一通り終わるわ。その間、何か情報が入ったらすぐに連絡できるように手配する。それならどう?」

「それとミントなんだが、これを機にル=ロックルで遊撃士の研修を一緒に受けてみたらどうだ?それならミントと共にいれるだろう?……ただし、通常の研修を短期間で全て受けさせるために、ほとんど休憩する暇はないぞ。……恐らく食事と寝る時以外は一緒になれないと思うぞ。」

「「………………………………」」

シェラザードとカシウスの説明を聞いたエステルとミントは考えていた。

「まあ、勧めはするが決めるのはあくまでお前達だ。よく考えてみるといい。」

「……ううん、もう決めた。あたし、訓練を受けてみる。ミントもいい?」

「うん!ママと一緒にいれるなら、ミント、頑張る!」

「あらま……親娘揃って、決めるのが早いわね………」

一瞬で決めたエステルとミントにシェラザードは驚いた。



「ふむ、思い切りがいい。どうやら自分でも思うところがあるらしいな?」

エステルの答えに頷いたカシウスは尋ねた。

「うん……まあね。考えてみれば、あたしってヨシュアに頼りきりだった。何か事件が起こったときはいつもヨシュアが導いてくれた。でも、これからは自分の判断が頼りなんだよね。だからあたし……その訓練場で自分を鍛えてみる。」

「ミントも早くママに追いつくために、頑張る!」

「そうか……。なら、明日にでも訓練場の利用を申請するといい。ロレント支部から出来るはずだ。」

「うん、わかった。」

「ミントの方はあたしが手配しておくわ。」

「ありがとう、シェラお姉さん!」

カシウスの言葉にエステルは頷き、そしてミントはシェラザードの申し出を聞いてお礼を言った。

「そう言えば、エステル。旅に出る前と比べて随分友達ができたようね?」

レナはパズモ達を見てエステルに言った。



「あはは………色々あって、今はこんなに友達ができたわ。……パズモはお母さんも知っているけど、ほかの子達は初めてよね。……サエラブ、テトリ、ニル。この人があたしのお母さんだよ。」

レナの言葉に苦笑したエステルはサエラブ達にレナを紹介した。

(………我は”狐炎獣”サエラブ。誇り高き”炎狐”!!事情があって、エステルと共に行動をしている。)

「あら………もしかしてこれがエステルとパズモが普段していた”念話”という会話かしら?フフ……まさか私も体験する事になるとは思わなかったわ。」

サエラブの念話に驚いたレナだったが、初めての体験に微笑んで答えた。

「……ユイチリのテトリです。エステルさんには助けて頂いた恩があったので、こうしてエステルさんの使い魔をやらせて頂いています。」

「フフ………エステルの事、これからもよろしくお願いしますね。」

テトリに微笑んだレナは最後にニルを見た。

「それにしても……まさか、天使様までエステルに力を貸して下さるとは思いませんでした。」

「フフ……ニルに敬称や”様”なんていらないわ。ニルは天使の中でも変わりものだもの。」

「あら、そうなの?本当の天使ってどんな方なのかしら?」

ニルの言葉に驚いたレナは尋ねた。

「……普通、天使は滅多な事がない限り、人間に力を貸さないわ。まして”闇夜の眷属”達と親しい人間を見たら、目の色を変えて襲って来ると思うわよ?」

「へっ!?なんで!?」

ニルの説明を聞いたエステルは驚いて尋ねた。

「光に属する”天使”は闇に属する”闇夜の眷属”の事を忌み嫌っているのが天使の普通よ。だから”闇夜の眷属”や彼らと親しい人間は凄く嫌っているし、中には攻撃を仕掛けて来る好戦的な天使もいるわ。」

「光と闇………まさに相反する存在だからこそ、歩み寄れないのか………」

ニルの説明を聞いたカシウスは難しそうな表情で納得した。

「あれ?じゃあ、貴女ってなんでエステルに力を貸しているのかしら?それに貴女、リフィアさん達とも親しそうに話していたわよね?」

シェラザードはある事に気付き、ニルに尋ねた。

「……まあ、以前はニルも他の天使と同じで”闇夜の眷属”はあんまり好きではなかったわよ?前のニルの主が魔神や睡魔、飛天魔や幽霊とか従えていたし、メンフィルの王達はかつて共に戦った戦友。”闇夜の眷属”もニルや人間と変わりない存在だってわかったからね。だからリフィア達とは親しいし、さまざまな種族に慕われているこの娘の将来を見てみたいからね。だから、契約しているのよ。」

「え”!?ゆ、幽霊って存在するの!?」

ニルから出たある言葉にエステルは驚き、恐る恐る尋ねた。

「もちろんいるわよ?幽霊どころか、不死者……エステル達にわかりやすくいえば、ゾンビね。そういった既に死んでいて彷徨っている存在なんて、ニルの世界にはたくさんいるわ。」

「ひ、ひえええ~!!」

「ニルさん達の世界にはお化けさんがいるんだ……ミント、怖い……!」

ニルの説明を聞いたエステルは悲鳴を上げた。また、ミントも怖がった。

「あら?もしかして、エステル………幽霊や不死者とかダメなの?」

「あ、当たり前でしょ!?怖いに決まっているじゃない!」

首を傾げているニルにエステルは怒鳴った。

「……それにしても、貴女の前の契約者って色々と凄いわね………ファーミシルス大将軍のような”飛天魔”や最強の存在である”魔神”すらも使い魔にしていたって………一体、どんな化け物よ?」

一方シェラザードはニルの前の主がどんな人物か気になった。



「あ、セリカ?セリカは”神殺し”だから、その呼び名の通り、神を超えている存在だからね。人によっては化物と呼ぶかもしれないわね……」

「か、”神殺し”!?何よそれ!?」

ニルから出た物騒な呼び名にシェラザードは驚いた。

「その呼び名の通り、”神”を”殺して”、その肉体を奪って生きている存在よ。……”神殺しが居る所に災いあり”と語られるほど、セリカは世界から敵扱いされているわ。………まあ、セリカを襲って来た者達はほとんど、セリカの剣技か魔術で瞬殺されているけど。神の力を持つセリカが放つ魔術はすさまじい威力だし、セリカの剣技――”飛燕剣”は伝説クラスの剣技でもあるし、その剣技をセリカは悠久の時を生きながら常に使い続けているから、そこらへんの剣豪には負けないわ。」

「………話が大きすぎて、夢物語を聞いているような気分よ………」

「ふ~む……機会があれば、ぜひ手合わせをしたいな………それにその”飛燕剣”とやらがどういった剣技なのかも気になるな………」

「もう………いい年をして、何を言っているんですか…………」

ニルの説明を聞いたシェラザードは溜息を吐き、カシウスはセリカと手合わせをしたいと思ったりセリカの剣技が気になり、その様子を見たレナは呆れて溜息を吐いた。

「ふんだ。”神殺し”か何だか知らないけど、自分が契約していた子を忘れる薄情者はいつかあたしがぶん殴る!!テトリどころか、パズモやニルの主でもあったようだからね………当然、忘れているだろうから、2人の分も込めた最高の一撃でぶん殴ってやるわ!」

「あ、あわわ…………前にも言いましたが私なんかの為に、そんな事止めて下さい!下手したら殺されちゃいますよ!ご主人様、冗談とか本当に通じない人ですし!」

一方エステルは頬を膨らませていつかセリカを殴る事を言い、その様子にテトリは慌てた。

「フフ……神を恐れぬどころか”神殺し”をも恐れないなんて、エステルぐらいよ。本当に面白い娘ね♪」

ニルは”神殺し”であるセリカを恐れないエステルを見て、口元に笑みを浮かべていた。

(……”神殺し”か。我も知識として知っていたが、まさかお前達の以前の主だったとはな………)

(………セリカは決して自分から望んで”神殺し”にはなっていないわ。……さまざまな運命が絡み合った結果、そうなってしまったのよ……)

サエラブはパズモを見て、見られたパズモはセリカが”神殺し”になった経緯を思い出し、悲しそうな表情をした。

「……とりあえず、話を戻すぞ。………ル=ロックルにはパズモ達は連れて行くな。」

「え!なんで!?」

カシウスの言葉にエステルは驚いた。



「ル=ロックルはお前自身の実力を上げる訓練所。パズモ達がいれば、お前は彼女達に頼ってしまうだろう?自分自身の実力を底上げするためにも彼女達は連れて行かない方がいい。」

「う”~……仕方ないか………悪いけど、しばらくの間、留守番をしてもらっていてもいい?」

カシウスの説明に納得したエステルは唸った後、パズモ達に確認した。

「わかりました。エステルさんもミントさんも頑張って下さい。」

(……今後の戦いのためにもエステル自身、強くならないとダメだものね。いいわよ。)

(………しっかり修練して、見違えて来い。)

テトリやパズモ、サエラブは頷いて了承の返事をした。

「う~ん……エステル達が修行に行っている間、何もする事がないから暇になるわね……」

ニルは暇ができた事に退屈そうに溜息を吐いた。

「ああ、その心配は必要ないぞ?」

「え?」

そしてカシウスの言葉にニルは驚いた。

「エステル達がル=ロックルにいっている間……4人には遊撃士協会を手伝ってもらうつもりだ。……実力ある者が4人も暇を持て余しているんだ。クーデターの件もあって、今のリベールの遊撃士協会は

猫の手も借りたいほどだ。きっと歓迎されるぞ?」

「………ちょっと、父さん?まさかそっちが本命だったりとかしないわよね?」

カシウスの話を聞いたエステルはジト目でカシウスを見た。

「ギクッ……そんな事はないぞ?」

ジト目で見られたカシウスはエステルから視線を外した。

「あっやしいわね~………まあいいわ。みんな、どうする?」

ジト目でカシウスを見ていたエステルは気を取り直して、パズモ達に尋ねた。

(私は別にいいわよ。魔力もエステルの魔力と繋がっているから、活動にも問題ないし。)

(……構わん。少しでも退屈を紛らわせるなら別にいい。)

「みなさんが私の力を望むのでしたら、存分に使って下さい。………できれば手配魔獣を倒すとかそういった戦いの仕事はやめてほしいですけど。」

「フフ………退屈凌ぎにはちょうどいいですわ。」

エステルに尋ねられたパズモ達はそれぞれ頷いた。

「決まりだな………早速エルナンに知らせて、王都の仕事を手伝わせよう。今の王都は大変だろうしな。」

「あ、先生。一人ぐらいはこっち(ロレント)に廻して下さいよ?こっちも常に人手不足なんですから。」

「もう、パズモ達の契約者であるあたしの目の前でそういう話はやめてほしいわ………」

ノリノリにパズモ達の手伝いの事を相談しているカシウスとシェラザードを見て、エステルは溜息を吐いた。



「フフ………さて、エステル。話も落ち着いたようだし、その娘の事……私にも紹介してくれるかしら?」

「あ、うん。ミント。」

「はーい!」

レナに言われたエステルはミントを呼び、呼ばれたミントは元気良く返事をした。

「……遅くなったけど、この娘があたしの娘になったミントよ。ミント、この人があたしのお母さんよ。」

「ミントです!初めまして、お祖母ちゃん!!」

「あらあら………この年でこんな大きくて可愛い孫ができるなんて思わなかったわ。……よろしくね、ミント。」

ミントの自己紹介を聞いたレナは微笑ましそうな表情でミントの頭を撫でた。

「えへへ………お祖母ちゃんって、若くてとっても綺麗だね!」

「フフ、ありがとう、ミント。……さて、エステル?クラウス市長に伝えた私の伝言……もちろん覚えているわね?」

「は、はい!」

レナに笑顔を向けられたエステルはクラウスの伝言を思い出した後、体を震わせて姿勢を正した。

「ど~し~て~?私に何の相談もなく、この娘を引き取ったのか~し~ら?」

「ヒッ!い、今話します!」

「ハァ……レナさんに相談もなく、そんな事をしたの、エステル。………たっぷり怒られなさい。」

「………………………ブルブル………」

レナの凄味ある笑顔を見てエステルは思わず敬語になり、シェラザードは呆れて溜息を吐き、カシウスは次は自分の番である事を理解し、エステルよりさらに怒られるとわかっていたので体を震わせていた。そしてエステルはレナ達にミントを引き取る事になった事情を説明した。



「こ、この娘が”竜”!?本当なの、エステル!?」

ミントの正体を知ったシェラザードは驚いてミントを見て、エステルに尋ねた。

「…………………………」

カシウスは驚きの表情で黙ってミントを見ていた。

「うん。それとこの娘の友達のツーヤって子が言ってたんだけど、まだ大人になっていないから”竜化”はできないんだって。」

驚いているシェラザード達にエステルは説明した。

「…………話はわかったわ、エステル。でも、一つ聞かせて頂戴。どうして”母”になったの?”姉”ではいけないの?」

エステルの話を聞き終えたレナは静かな声で尋ねた。

「そ、それは……………」

「………何もこの娘を引き取った事には反対していません。でもね、エステル?あなたの年で”母”を務めるなんて、並大抵の事ではないのよ?」

「で、でも!ミントは10年近くもあたしの事、待っていたんだよ!?」

「それは”パートナー”の話でしょう?………ねえ、ミント。よかったら私達があなたのパパとママになってもいいかしら?」

エステルの反論をバッサリ切ったレナはミントに優しい微笑みを見せて、尋ねた。

「やだっ!ミントの”ママ”はママだけなんだから!」

レナの申し出にミントは思いっきり首を横に振って答えて、エステルの手を強く握った。

「ミント…………」

ミントの答えにエステルは感動し、ミントの手を強く握り返した。

「フフ……どうやら、ちゃんと”母親”をやっているみたいで安心したわ。」

「へっ!?」

いきなり態度を変えたレナを見て、エステルは驚いた。

「レ、レナさん!?さっきまで反対していたのに、なんでいきなり態度を変えたんですか?」

レナの心変わりにシェラザードは驚き、尋ねた。



「フフ………ミントがエステルに抱きついて、泣いているのを見て、迷子の子供が母親を見つけたのと同じようだなって思って、ミントがエステルの事を実の母親のように慕っているってすぐに気付いただけよ。

それに2人のお互いを見る目や態度を見ていたら、誰でもわかるわ。」

「いや、そんなすぐにわかるのなんて、レナさんだけと思うのですが………」

「さすがレナだな………」

レナの答えを聞いたシェラザードは驚き、カシウスは感心した。

「って!もしかしてあたし、試されていたの!?」

驚いていたエステルだったが、ある事に気付き声を上げた。

「フフ……ごめんね、エステル。まだ成人もしていないあなたが本当に母親をやれているか、どうしても心配でね?ちょっと、試させてもらったわ。」

レナは優しい微笑みを見せて、謝った。

「もう……お母さんったら………」

レナの答えを聞いたエステルは呆れて溜息を吐いた。

「それにせっかくできた可愛い孫娘に嫌われたくなんてないもの。」

そう言ったレナはミントの頭を撫でた。

「えへへ………」

頭を撫でられたミントは気持ち良さそうな表情で喜んでいた。

「結局はそこなのね……もう~、みんなして、ミントに甘いわね~。」

((……………………))

「ア、アハハ………………」

「……その子を一番甘やかしている貴女がそれを言う?」

エステルの言葉を聞いたパズモとサエラブは呆れている様子で黙っていて、テトリは苦笑し、ニルは呆れて溜息を吐いた。



「フフ……さて………と。話はここまでにして、エステルの正遊撃士になったお祝いと新しい家族や友達の歓迎会をしなくちゃね。」

「あ!あたし、久しぶりにお母さんのオムレツ、食べたいな!」

「オムレツ!?ミントも食べたい!ミント、卵が大好きだもの!!」

レナの提案にエステルは真っ先に反応し、ミントは大好物の卵料理を聞くと、目を輝かせた。

「フフ、そう。ブライト家のオムレツは特製だから、楽しみに待っていてね。…………………うん、こんなものかしら。じゃあ、悪いけど今から買物に行ってくれるかしら?私は今から下ごしらえを始めるから。」

メモに買って来る物を書いたレナはエステルに渡して頼んだ。

「うん!ミント、みんなも一緒に行こう!ついでにロレントを案内するわ!!」

「はーい!」

(フフ……すっかり元気が戻ったようね。)

(ああ。)

「フフ……ニル達を見て、騒ぎにならなきゃいいけどね。」

「ア、アハハ……(どう考えても天使のニルさんがいる時点で騒ぎになりますよ………)」

そしてエステル達は買物をするためにブライト家を出た。

「それじゃあ、あたしもエステルの事、ギルドに報告して来ますね。ご馳走、楽しみにしていますよ、レナさん。」

「ええ、腕によりをかけて作るから期待していていいわよ、シェラちゃん。ただし、お酒はほどほどにね?」

「タハハ……了解しました。」

レナの言葉に苦笑したシェラザードはエステル達と同じようにブライト家を出て行った。

「フフ……ミントを見ていると、新しい子供が欲しくなって来るわ。」

カシウスと2人だけになったレナは微笑みながら、とんでもない事を言った。

「そ、そうか?よーし、それじゃあ早速今から部屋で頑張ろうじゃ……」

レナの言葉に反応したカシウスは口元に笑みを浮かべて言いかけた所を

「別にいいけど、もちろん常識の範囲内で。私はこれからあの子達の祝いのためのご馳走の支度があります。そ・れ・に!今夜は寝かせないつもりだから安心していいわよ、ア・ナ・タ?」

「…………ハイ………………」

レナの凄味のある笑顔を見たカシウスはさっきレナに言われた事を思い出し、顔を青褪めさせて縮こまりながら答えた。



そしてエステル達はレナのご馳走を食べ、ブライト家に泊まった後、しばらくの間ブライト家から通いながらロレントで仕事をし、その後エステルとミントはグランセルに行き、パズモ達と一端別れた後ル=ロックルに向かい、訓練を始めた。



一方、エステルがヨシュアを連れ戻す決意を決めてから、2カ月近く。ディル・リフィーナの大陸の中で2番目に大きい大陸、ラウルバーシュ大陸のアヴァタール地方。その中でも最も勢力がある国で、土着神――『水の巫女』を崇め、世界の敵――”神殺し”セリカ・シルフィルを客将として受け入れている国、レウィニア神権国。レウィニアの王都、プレイアで因縁の再会の時が迫っていた……! 
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