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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第93話

~アクシスピラー第四層・外~



リーン…………



エステル達が外に出ると鈴の音が聞こえてきた。

「フフ……よく来たわね。」

鈴の音の持ち主―――端末の傍で待ち構えていた”執行者”の”幻惑の鈴”ルシオラは妖しげな笑みを浮かべてエステル達を見つめていた。

「あ……!」

「”幻惑の鈴”……貴方か。」

「ルシオラ……姉さん。」

ルシオラを確認したエステル達はルシオラと対峙した。

「ブルブランとヴァルターを破ってここまで辿り着くなんて……なかなかやるわね、貴女たち。」

エステル達と対峙しているルシオラは自身が知る強者を破って自分の所まで辿り着いたエステル達を感心した様子で見つめていた。

「姉さん……約束を果たしてもらうわ。今度会った時には、ハーヴェイ座長のことをちゃんと話してくれるって……」

「ああ……彼を殺した理由だったかしら?」

「…………ッ…………」

決意の表情でルシオラに問いかけたシェラザードだったが、ためらいもなく恩人を殺した事を告げたルシオラの答えを聞くと複雑そうな表情で唇を噛みしめた。



「そうね……。………………………………」

一方目を伏せてしばしの間黙り込んでいたルシオラは試すような視線でシェラザードに問いかけた。

「……ねえ、シェラザード。貴女にとって、座長はどんな人だったかしら?」

「そ、そんなの決まってるじゃない!孤児だったあたしを拾って育ててくれた恩人よ!あたしは両親の顔なんて全然知らないけど……お父さんってこういう感じなのかなってずっと思っていた……。……なのに……それなのにどうして……!」

「そう……暖かくて優しい人だったわね。でもね、旅芸人の一座なんて優しいだけじゃやって行けないの。汚い取引をしたり、女の芸人に客を取らせたりするところもあるわ。でも座長は……あの人は一切そんなことをしなかった。そうして私財を使い果たして……莫大な借金を背負ってしまった。」

「う、うそ……!?だって座長、そんな素振りなんて全然……」

ルシオラの口から語られた今まで知らなかった真実を知って驚いたシェラザードは信じられない表情でルシオラを見つめた。

「フフ、人が良いくせにとても芯が強い人だったかしら。私たちに悟られないようあちこち資金繰りに奔走して……。……そして最後に一座を手放すことを決意した。」

「!!!」

「知り合いの裕福な貴族に一座を丸ごと預けようとしたの。自分がこのまま座長を続ければ私たちに苦労をかけることになる……。ならば、信頼のおける人に面倒を見てもらった方がいい……。……そう考えたみたいね。」

「そ、そんな、どうして……。相談してくれたらあたしたちだって協力して……!」

「話を打ち明けられた時は私も同じように説得したわ。でも、あの人は頑ななまでに聞き入れてくれなかった。不甲斐ない自分がいたら私たちのためにならない……そう思い込んでいたみたいだった。」

「………………………………。それが理由で…………姉さんは座長を……?」

そしてようやく真実を知り、ルシオラが恩人を殺害した理由を悟ったシェラザードは複雑そうな表情で訊ねた。



「ええ、そうよ。私にとって、彼の決断は許しがたい裏切りでしかなかった。安らぎと幸せを与えておいてそれを取り上げるなんて……そんな事をするくらいなら最初から手を差し伸べて欲しくなかった。だから、私はあの人を殺したの。」

「………………………………。……だったら…………あたしはどうなるの?」

「え……?」

迷う事もなく真実を答えたルシオラだったが、シェラザードの問いかけに驚いて呆けた声を出した。

「あたしは……座長と姉さんから安らぎを与えてもらったわ……。スラムで感じたことのない暖かい気持ちに満たされていた……。でも……座長が死んで…………姉さんまで去ってしまって……。そんなの…………もっと酷い裏切りじゃない!」

「……ふふ、そうね……。シェラザード。あなたは私を恨む権利がある。その恨みをもって立ち向かってくるといいわ。」

シェラザードの話を聞いたルシオラは皮肉気に笑った後、霧の式神を2体召喚した!

「姉さん……!」

「私ごときを倒せないようではこの上で待ち受ける者たちには遠く及ばないでしょう。”幻惑の鈴”の舞……見事、破ってごらんなさい。」

そしてエステル達はルシオラ達との戦闘を開始した!



「幻惑の鈴よ見せておやりなさい…………奥義・火炎地獄。」

戦闘開始早々ルシオラはSクラフトを発動してエステル達に大ダメージを与えようとしたが

「もうその技は見切っているぜ!うぉぉぉぉっ!レイディアント―――ハウル!!」

「ひぅっ!?」

ルークが超振動の力で巨大化したルシオラを攻撃してルシオラを怯ませると共に幻術を解いた。

「幻術の最中に割り込むなんて品がないわね…………そんな品のない人達は貴方達が相手しなさい。」

「「………」」

ルシオラの指示によって式神達は動き出し、それを見たエステル達は二手に分かれて式神に向かい、シェラザードは一人でルシオラに向かった。



「……………」

「喰らうかよ!」

近づいて腕で攻撃した敵の攻撃をルークはバックステップで回避し

「せいっ、はっ!」

「烈震天衝!!」

ヨシュアとエステルは敵の左右からそれぞれ攻撃を叩き込み

「崩襲脚!烈破掌!!」

二人の攻撃が終わるとルークが空から強襲して闘気を込めた掌底を叩き込んで闘気を爆発させて敵をふっ飛ばした。



「……………」

ルークの攻撃を受けてふっ飛ばされた敵は纏めてエステル達を攻撃する為に力を溜め込み始めたが

「おぉぉぉぉ……!」

ヨシュアの魔眼によって動きを封じ込められた。

「駆けろ、地の牙!」

「一撃入魂!」

そこにルークとエステルが同時に敵に詰め寄り、クラフトを放った。

「「魔王地顎陣!!」」

二人が同時に放った凄まじい威力が秘められた同じ技を受けてダメージに耐えきれなくなった敵は消滅した!



「物理攻撃を吸収か……―――アリエッタ、俺が時間を稼ぐからお前は強力な威力の譜術やアーツで奴を攻撃しろ。」

「了解、です。オーブメント駆動…………」

自身の戦術オーブメントに装着している敵の情報もわかるクオーツ―――”天眼”で敵の特徴がわかったバダックはアリエッタに指示をした後敵に向かって行った。

「火竜爪!!」

「…………」

バダックが振るった炎を纏った大鎌の一撃を受けた敵だったが、物理攻撃を吸収した為平気な様子でバダックに攻撃した。

「ぬるい!烈火衝閃!!」

敵の攻撃をバダックはバックステップで回避した後遠距離から火炎を放って敵の注意を自分に惹きつけていた。

「無慈悲なる業火は、汝らの心をも燃やし尽くす! ―――クリムゾンフレア!!まだっ!アークプロミネンス!!」

「―――――!?」

その時譜術の詠唱とオーブメントの駆動を終えたアリエッタが2種類の業火による魔法攻撃を敵に叩き込み、高火力かつ魔力が高いアリエッタの2種類の魔法攻撃を受けた敵は大ダメージを受けた。



「……………」

大ダメージを受けた敵は一気に二人を無力化する為に全身に力を溜め込み始めた。

「させん!あの奥義で止めを刺すぞ、アリエッタ!」

「うん……っ!解放、闇の力!!」

その時バダックの呼びかけに頷いたアリエッタは霊力が込められたぬいぐるみを両手で掲げてバダックの大鎌に黒き炎の刃を宿らせた。

「おぉぉぉぉぉ……!」

そしてバダックは一気に敵に詰め寄り、黒き炎の刃と化した大鎌で敵を薙ぎ払った!



「「ペンヴェヌート・エンフェルネ!!」」



暗黒の炎の刃で全てを斬り裂くバダックとアリエッタの協力技(コンビクラフト))――――ペンヴェヌート・エンフェルネを受けて霧状の体を真っ二つにされた敵はそのまま暗黒の炎に燃やし尽くされ、消滅した!



「はっ!!」

「ふふ………」

エステル達が戦っている一方シェラザードはルシオラに攻撃を仕掛けたが、ルシオラは分身して回避した。

「それっ!!」

「はあっ!!」

分け身達と共に放ったルシオラの鉄扇をシェラザードは鞭で周囲を薙ぎ払って撃ち落とし

「ふふふっ!」

「そこっ!!」

幻術による炎を凄まじい速さで鞭を振るった事によって発生した真空の刃で相殺した。



「フフ………予想以上にやるわね、シェラザード。なら、これはどうかしら?」

シェラザードの強さに妖しい笑みを浮かべて感心していたルシオラは鉄扇を両手に持って、舞い始めた。

「花は散ってこそ花…………」

「オーブメント駆動……!あたしの全て……耐えられるものなら、耐えてみなさい!ハァァァァァ……!」

一方シェラザードはオーブメントを駆動させた後鞭を横に構えて円を描くように舞った。するとシェラザードを囲むように竜巻が発生し、舞を終えた二人は同時にSクラフトを放った!

「旋風よ、砕き散らしなさい!奥義、華散風魔の舞!!」

「秘技―――ハリケーンウィップ!!―――クロックアップ改!!これで決めてみせる……!」

二つの竜巻がぶつかりあうと、Sクラフトを放った直後に自分にかけたアーツの効果による身体能力を上昇させたシェラザードが鞭を構えてルシオラに迫った。

「!!」

迫ってくるシェラザードにルシオラは防御の構えをしたが

「はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!クインビュート!!!」

「キャアアアッ!?迂闊ね…………」

シェラザードが次々と放つ怒涛の鞭による連続攻撃に防御を崩され、ダメージに耐えきれなくなったルシオラは戦闘不能になり、地面に跪いた!

「フフ……なるほど。これならば……上に進む資格があるかもしれないわね。」

戦闘不能になり、地面に跪いていたルシオラは立ち上がり、満足な様子で微笑みを浮かべてエステル達を見つめた。

「……姉さん。ひとつだけ訂正させて。あたしは姉さんを恨むことなんてできないわ。あたしの元を去ったことも、座長を殺めてしまったことも。ただ……どうしようもなく哀しいだけよ。」

「シェラ姉……」

「………シェラザード……」

シェラザードの答えを聞いたエステルは心配そうな表情で見つめ、恩人を殺し、シェラザードにとっての家族をバラバラにさせた張本人である自分を恨む事無く哀しむシェラザードをルシオラは呆けた表情で見つめていた。

「それに、やっぱり信じられない。姉さんがそんな理由で座長を殺めてしまっただなんて……。あたしたちのことを思って辛い選択をした座長のことを……」

「………………………………。……ふふ……さすがに誤魔化せなかったか。」

そしてシェラザードの本音を知ったルシオラは皮肉気に笑って答えた。



「え……」

「さっきの話にはね……続きがあるの。あの人を説得しようとしてそれでも決意が固いと知った時……私は、ずっと秘めてきた想いをあの人に打ち明けてしまっていた。」

「!!!姉さんが……座長のことを……。……そう……だったんだ……」

ルシオラが語った自分も知らないルシオラの恩人への秘めたる思いを知り、驚いたシェラザードは目を伏せて呟いた。

「ふふ、親子ほども離れていたから想像できなかったでしょうね。そして……それはあの人にとっても同じだった。娘のように大切に思っているけど想いに応えることなど考えられない。一時の感情に流されず、相応しい相手を見つけるといい……。……そう、諭すように拒まれたわ。」

「………………………………」

「拒まれたこともショックだったけど、私はそれ以上に怖くなってしまった。私を惑わせないように……相応しい相手を見つけられるように。あの人が、本当の意味で私から離れていってしまう可能性が。」

「あ……」

「……そう悟った瞬間、私の奥底で何かが弾けていた。……離れていかないように……永遠に私のものにするために……。その囁きに従って……あの人をこの手にかけていた。」

「……ルシオラ……姉さん……」

ルシオラが語った真実を知ったシェラザードは悲痛そうな表情でルシオラを見つめた。



「自分の中に潜んでいた闇に気付いたのはその時からよ。私は、その闇に導かれるように”身喰らう蛇”の誘いに応じて……いつの間にか……こんな所にまで流れてきてしまった。フフ、そろそろ潮時かもしれないわね。」

「え……」

ルシオラの口から出た答えにシェラザードが驚いたその時、ルシオラはシェラザード達を見つめたまま後ろへと下がり

「お、おい!それ以上後ろに下がったら……!」

「まさか……自ら命を絶つつもりか!?」

ルシオラが”アクシピスラー”から飛び降りて自らの命を絶とうとした事を悟ったルークとバダックが血相を変えて声を上げたその時

「姉さん、だめええっ!」

ルシオラが落ちる瞬間、シェラザードは鞭を振るって、ルシオラの片手に鞭を巻き付けた!



「くっ……」

間一髪ルシオラの落下を防いだシェラザードだったが、女性であるシェラザードでは落下していくルシオラの重みに耐えられず、シェラザードも塔から落ちそうになった!

「ふふ……なかなか鞭さばきも上達したじゃない。最初の頃はあんなに不器用だったのにね。」

「シェラ姉!」

シェラザードの鞭さばきにルシオラが感心しているとエステル達がシェラザードに駆け寄った。

「エステル、ヨシュア……。少しの間でいいから……このままこの娘と話をさせて。」

「で、でも……!」

「ルシオラ……貴女は……」

「は、話なんかしてる場合じゃないでしょう!?引っ張り上げるから掴まってて!」

ルシオラの頼みにエステルは戸惑い、ルシオラの決意を悟ったヨシュアは複雑そうな表情をし、シェラザードは血相を変えてルシオラを見つめた。



「ねえ、シェラザード……。あの人を手にかけた事は今でも後悔していないけれど……唯一、気がかりだったのが貴女の元を去ったことだった。貴女がどうしているか、それだけが私の心残りだった。でも、私がいなくても貴女はしっかりと成長してくれた。自分の道を自分で見つけていた。」

「姉さん……お願いだから……」

「それが確かめられただけでもリベールに来た甲斐があったわ。本当は貴女に私のことを裁いてほしかったのだけど……。さすがにそれは……虫が良すぎる話だったわね……」

「……お願いだからちゃんと掴まっていてよおっ!」

まるで死を望んでいるかのように鞭に捕まることなく、自嘲気に笑うルシオラにシェラザードは悲痛そうな表情で悲鳴を上げた。

「フフ……お酒もいいけど……程々にしておきなさいね。さようなら……私のシェラザード。」

「ルシオラ姉さあああんっ!」

そしてルシオラは鉄扇を取り出して、シェラザードの鞭を切って、落下して行った!



リーン………



ルシオラが落下して行くと、鈴の音が寂しげに響いた。

「……………………………………」

「シェ、シェラ姉……」

「シェラさん……」

「…………大丈夫………………。……あの姉さんが落ちたくらいで死ぬはずない。いつの日かきっと……きっと……また会えるわ。」

心配そうな表情で自分を見つめているエステル達にシェラザードは静かな表情で答えた。

「う、うん……きっとそうよ!だって、あんな凄い式神とか転位術とか使える人なんだもん!絶対に…………絶対に大丈夫だってば!」

「ふふ……そうね……。………………………………」

「シェラザード、無理はするな。一旦、アルセイユに戻った方が………」

「ああ……後の事は俺達に任せていいんだぜ?」

寂しげに笑うシェラザードにバダックとルークは慰めの言葉をかけた。

「ううん……その必要はないわ。……ここでへこたれてたら姉さんに笑われてしまうから……。だから、今は先に進みましょう。」

「シェラ姉……。うん……分かった。」

「それじゃあ……端末を解除しましょう。」

その後エステル達はゲートのロックを解除した後、一端態勢を整える為にアルセイユに戻り、エステル、ヨシュア、ティータ、レン、ルーク、イオンのメンバーで先に進み、また同じようにゲートが先を阻んでいたので、外にあると思われる端末を操作する為に外を出て進んで行くと聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。



~アクシスピラー第五層・外~



「クスクス……やっぱりここまで来たわね。」

聞こえてきた少女の声を聞いたエステル達が声が聞こえてきた方向に視線を向けると執行者―――”殲滅天使”ユウナがエステル達を待ち構えていた。

「あ……」

「……ユウナ!」

「やっぱり君か……」

「うふふ、性懲りもなくまた現れたわね。」

ユウナを確認したティータは不安そうな表情をし、エステルとヨシュアは気を引き締め、レンは小悪魔な笑みを浮かべた後仲間達と共にユウナに近づいてユウナと対峙した。



「あの3人を倒すのはけっこう大変だと思ったけど……でもユウナは信じていたわ。エステルとヨシュアがユウナの所に来てくれるってね。―――勿論レンもね。」

「クスクス、あれだけ痛い目にあわされたのにレンが来ることも信じていたなんて、ちょっと驚いたわ。」

ユウナの答えを聞いたレンは意味ありげな笑みを浮かべてユウナを見つめ

「ユウナ………」

「それでも……君は戦うつもりなんだね?」

エステルは真剣な表情でユウナを見つめ、ヨシュアは複雑そうな表情でユウナを見つめていた。

「うふふ、どうしようかしら。せっかく約束していたのにお城で会った時には殺しそこねちゃったし……エステルとレンの態度しだいでは見逃してあげてもいいわよ?」

「あたしとレンの……態度?」

「お城ではレンに負けた癖に、見逃すとは随分と大きく出たわねぇ……」

ユウナの話を聞いたエステルは首を傾げ、レンは呆れた表情で溜息を吐いた。



「うふふ……簡単なことよ。エステルはこの間、ユウナに言った事を取り消して、レンはユウナに謝るだけでいいわ。」

「へ!?」

「…………一体何を謝って欲しいのかしら?」

ユウナの要求にエステルが驚いている中、レンは真剣な表情でユウナを見つめて問いかけた。

「エステルは前に、ユウナが”結社”にいるのが間違ってるって言ってたわよね。エステルはあの言葉を取り消して、レンはユウナより先に”幸せ”になった事を謝るだけでユウナはこの場を退いてあげるわ。どう、悪い取引じゃないでしょう?」

「「……………………」」

「ユウナちゃん……」

「何でそこまでして、二人から取り消しや謝罪の言葉を聞きたいんだ……?」

「恐らく自分が正しいと言いたいのでしょうね、彼女は……」

ユウナの取引にエステルとレンが黙り込んでいる中ティータは複雑そうな表情をし、ルークの疑問にイオンは重々しい様子を纏って答えた。



「ユウナ……そんな取引は間違っている。たとえ望んだ言葉を引き出せても本心が違っていたら何の意味も……」

「ヨシュア……いいの。ここは……あたしに任せてくれないかな?」

ヨシュアがユウナに指摘しようとしたその時エステルが制した。

「エステル……わかった……頼む。」

「……ありがと。それとレン、あんたも余計な口出しせずに黙っていてよ。あんたが口を出したら、ややこしい事になるし。」

「うふふ、エステルに任せた所で結果は一緒だと思うけど、ユウナを”結社”から抜けさせる事についてレンは余計な口出しをしないって約束したものね。―――ま、可能性は限りなくゼロに近いでしょうけど頑張ってね、お・ね・え・ちゃん♪」

「ぐっ……応援するならせめて、茶化さずに真面目な態度で応援しなさいよね……」

からかいの表情で自分を見つめるレンに唸り声を上げてジト目で指摘したエステルは気を取り直して前に出てユウナと対峙した。



「うふふ、やっとその気になってくれたみたいね?さあ、まずはエステルが言ってちょうだい。ユウナが”結社”にいることは間違ってなんかいないって。」

「ユウナ………甘ったれるのもいい加減にしなさいよね。」

「………え。」

エステルの口から出た予想外の答えに驚いたユウナは呆けた表情をした。

「世界はユウナを中心に回っているわけじゃないわ。ユウナのために都合よく変わってくれるものでもない。たとえユウナが、物凄く大きな力を持っていったとしても……あの大きなパパとママ(パテル=マテル)が助けてくれたとしても……それでも……人の心までは自由にはできない。」

「……………………」

(う”っ……地味に効くぜ、エステルの今の言葉……昔の俺はユウナ以上に我儘な奴だったからな……)

(ま、まあまあ……今の貴方は昔とは比べものにならないくらい見違えていますから、気にする必要はありませんよ。)

エステルの主張を聞いたユウナが真剣な表情でエステルを見つめている中、エステルの主張で過去の自分を思い出して疲れた表情になって小声で呟いたルークをイオンは苦笑しながら慰めの言葉をかけた。



「ユウナに結社にいて欲しくないのはたしかにあたしのエゴかもしれない。だから無理強いするつもりはないけど……でも、できればユウナ自身に気づいて欲しいと思う。いつでもヨシュアみたいに後戻りができるんだって……」

「……エステル………」

「……………そう………………せっかくチャンスをあげたのに棒に振っちゃうんだ……救いようのない大バカねぇ。」

そしてエステル達を殲滅する事を決めたユウナは大鎌を空に掲げてパテル=マテルを呼び、その行動を見たエステル達は後退しながら武器を構えた。

「……みんな、ゴメン。ひょっとしたら避けられた戦いだったかもしれないけど……」

「……謝る必要はないよ。君は……僕が言いたい事をあの子に全て伝えてくれた。」

「わ、わたしもお姉ちゃんの言う通りだと思う。ユウナちゃんがこのままなんて……そんなのイヤだから……」

「うふふ、エステルは”人として”間違った事はしていないから、ヨシュアの言う通り謝る必要なんてないわよ♪」

「気合いを入れた方がよさそうですね。」

「ああ……間違いなく”アレ”も出てくるしな。」

「みんな……」

謝罪するエステルをヨシュアとティータ、レンがエステルの行動を正しいと認めている中、ユウナとパテル=マテルを同時に相手にしなければならない事を悟っていたイオンとルークは表情を引き締め、避ける事ができた戦いを敢えて避けなかった自分を一切責めない仲間達の答えにエステルが嬉しそうな表情をしたその時パテル=マテルが上空から現れ、ユウナの傍に着地した!



「……気に入らないわ……本当の本当に気に入らない……”パテル=マテル”!リミッターを解除しなさい!出力全開でエステル達を殲滅するわよ!」

「―――――――!!」

そしてエステル達はユウナとパテル=マテルとの戦闘を開始した! 
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