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異世界にて、地球兵器で戦えり

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第十六話 イタリカの戦い2

イタリカに入るのに多少はトラブルが起きたが、その後に第三偵察隊の伊丹と島田はピニャにフォルマル伯爵の館に招かれて、イタリカで起きている現在の状況を説明された。

「なるほど盗賊化した敗残兵か……現状の戦力比を考えればこちらが防御側と言っても不利なのは変わらないな。アルヌスに援軍を要請するか」

「こっちも駐屯地に報告しますよ」

島田も伊丹も、現状の戦力だけでは防衛が難しいと判断してアルヌス駐屯地と野戦基地に援軍を要請する案を決定した。

「では今は……」

「ええ、一時休戦としましょう。今はイタリカを防衛する事だけを考えるべきです。」

「ならば貴殿達に守ってほしい場所がある。それは南門だ」

「理由は?」

この南門は一度門が破らており、現在も門の修復は完了していないので、そこが手薄であるため守ってほしいと言う。これに対して島田はピニャに対してある事を進言する。

「わかりました。ピニャさんの言う通りにしましょう。ですが、もし万が一に南門以外の場所を攻めてきたら自分達は独自に動いてもよろしいですか?」

島田の進言に対してピニャの後ろで待機して会議を聞いていたハミルトンが何か言おうとしたが、その前にピニャが「いいだろう」と言って独自に動くことを許可した。


「独自に動くなど、姫様の前で無礼です!」

「全くです。どうして許可を出したのですか!?」

先ほどの第三偵察隊の会議の内容に対してハミルトンとボーゼスがピニャに対して不満そうな表情で詰め寄る。

「文句が言えるほど妾達の現状は良い物なのか?」

ピニャの言葉に二人は「う」と、気まずい表情になる。確かに現状の戦力と士気では盗賊達を相手にするのは難しいからだ。

「例え敵国人でもイタリカを守る為に共闘してくれるだけでもありがたいと思え」

「ですが……」

「不満は分からなくもない。だが『緑の人』がイタリカ防衛に参加してくれると分かって市民兵達のどん底であった士気が回復している。」

『緑の人』それは第三偵察隊の隊員達に助けられたコダ村の避難民達が着けた名である。炎龍がコダ村の近くにいると分かり避難する事を決定したが、これに対して『緑の人』が手伝うと来てくれたのだ。何の報酬も要求する事もなく、逆に食料や水が不足したと分かれば『緑の人』は巨大な龍を呼んで食料や水を運んでくるように命令を出して、避難民の自分達に無償で提供した。

炎龍と遭遇した時も『緑の人』が放った鉄の筒から放たれた攻撃魔法で空中にいる炎龍を叩き落して、そこからは『緑の人』達のとてつもない攻撃魔法が炎龍を襲い、後から加わった緑の鬼が放った攻撃魔法で炎龍を絶命させた。まるで絵本に出てくる英雄伝説を見ていたようだと、コダ村の住民達は避難した村でそのように興奮する様子で語ったという。

その噂は最初こそ信じるもはいなかったが、コダ村の住民達の多くが同じような証言をして、何より翼龍の鱗とはくらべものにならないほど希少性がある古代龍の鱗を見せた事により、炎龍を倒した事が本当であったと知る事になった。真実だとわかると、その話は凄まじいスピードで拡散していき、このイタリカにも情報が回ってきたのだ。

そのため噂で聞いた『緑の人』の特徴が一致した第三偵察隊の格好を見て、イタリカの住民達は熱烈な視線を第三偵察隊に向けて歓迎しているのだ。だからピニャは、これで士気が回復するなら彼らを一時的にせよ味方にしようと判断したのだ。

ーーー。

場所は変わって南門では第三偵察隊は準備を敵に備えての準備を進めていた。自衛隊が使用するミニミ軽機関銃とアカツキ帝国軍で使用する68式突撃銃と弾薬の互換性がある68式汎用機関銃も設置されている。

「敵であるはずの帝国軍をどうして助けるのだ?」

第三偵察隊の行動に対して疑問があるようでアナが島田に質問する。

「イタリカの市民達を守るためだ」

「どうしてだ?そんな義理などジエイタイにもアカツキ帝国軍にもないはずだが」

島田の説明に対して納得いく理由を言えと視線で島田に訴えるアナ。

「例え敵国人でも戦争と関係ない市民を守るのが俺達の仕事だ。それに、俺達と戦争を続ける無意味な事だと分かってもらうためでもある。」

「確かにな……アカツキ帝国軍の武力は次元が違い過ぎる」

身をもってその武力を味わった事があるアナは、島田の答えに納得がいった様子で頷いた。

「やっぱり帝国は許せそうにないのか」

先ほどから冷静な口調で喋っているアナであるが、何処かしら棘がある口調で喋っている事に島田は気になっていた。

「シマダ殿には隠し事は出来ないか……無論、ここにいる市民達は帝国軍とは関係ない事は分かっている。だが、それでも割り切るのな中々難しいものだと痛感している」

「人の感情はそう簡単に割り切れるものじゃないさ。別にアナが変というわけじゃないよ」

「すまないな、シマダ殿」

そんな風に島田とアナが二人で喋っている所で遠くで部下である清水、宮本、クリストフ、アニエスの四人は見ていた。

「遠くから見ればいい雰囲気なんすけど会話が……」

「うん、色気ゼロだよね」

二人の会話を聞いてそう呟くのが清水と宮本。

「アナさんって大尉の事、好きなのかな?」

「いえ、あれは恋愛感情ではありませんね」

宮本の言った事に対してクリストフは違うと反論する。その理由をアニエスは「どうして?」と、クリストフに聞く。

「アナさんが大尉に抱いている感情は、どちらかというと親愛に近いものですね」

アナはブルーム王国の王族の姫君でもいっても側室の子供であったので、扱いこそは王族待遇ではあったが王位継承権も一番低い位置にいるので王位継承する事はないと分かりきったアナが選んだ道は軍属であった。そもそもアナの母親は軍属の家系でもあったので、そこで少しでも自分が生きていく糧を得るために軍で生きていく事を決めたアナは、当初は現役の軍属の者たちから「女が軍に所属しなくても」と、王族の一種の英雄伝の憧れから訓練を受けており、直ぐに根を上げるだろうと判断したが、そんなブルーム王国の将軍達の度肝を抜く程の才能を、アナは示した。

剣や槍で、どれ程の屈強な男たちも叩きのめして、そして盗賊団が現れたら同等の数の兵士を率いて迅速に行動を起こして盗賊団達を壊滅させた。演習でも当初は軍を率いる事に慣れていなく老練な将軍達に負けはしたが、数回の演習で直ぐに千の兵士を率いても問題がない程の用兵を見せた。数をこなしていくつれてついには万の兵を率いる程になるほどに成長を遂げた。これには20歳にも満たずに、万の兵士を統率する事が可能となったアナには、ブルーム王国の将軍達は驚愕したという。

この異才とも言える程の才能を示したアナに、アナの父親であるダルト王は「もしアナが男で側室の子でなければ王位は継げただろう」と証した程であった。ブルーム王国は帝国の属国であるため、帝国が何かしら戦争を起こせば、ブルーム王国も帝国の援軍という形で軍を派遣する事もあり、そのため前線で戦う機会が多く、ブルーム王国の家臣達の中には軍人としての異才を見せつけたアナに王位を継がせるべきだと異議を唱える家臣も少なくなかった。

だが、それが原因で王位継が最も近い長男との関係に亀裂が走る。アナの長男であるバート自身は、特に絵に書いたような無能ではないが、アナのような異才を一つも持ち合わせていない。所謂平凡な人間である。特に問題を起こしている訳でもないので、王族の王位継承で争う事を避ける意味もあってバートの次期王として決定はしていたが、しかしアナのように突出した才能を持ち合わせていないバートは常にアナを厄介者扱いしていた。表にこそ出さないが、実際にアナも兄であるバートが自分を嫌っている事を自覚しており、ダルト王も余計な混乱を避ける為にバートを支持するようになり親子の間では冷めた関係となり、アナ自身は実際に王位に興味はないのだが、しかしそれでも武闘派の家臣達がアナの王位継承を支持している為に、それが余計にダルトとバートの神経を逆撫でしてしまい、余計に距離を置くようになったという。

「そんな事もあり、自分に対して親しくしてくれるのは年上の将軍達や下級兵士だったそうです。アナさんは大尉に対して自分に親しくしてくれた将軍や下級兵士達を重ねているので、歳の離れた兄ような感情を抱いていると思いますよ。」

「大尉を歳が離れた兄のように思っている……ねえ」

「全然、頼りになるとも思えないけど」

それを聞いたアニエスと宮本は、このような任務ならば自分の隊長でもある島田は頼りになるとは思っているが、普段が普段なだけにとても頼れる兄貴分とは思えなかった。何しろ普段は自分の趣味を優先する傾向が強く、この前など伊丹と一緒に自衛隊とアカツキ帝国軍の交流会だといって、伊丹が好きなアニメである『めい☆コン』のOPを同じ趣味を持っている自衛官達と合唱しているのを目撃しているからだ。


そんな感じに話し合っていた時に無線でアルヌス野戦基地より援軍を送る事は許可は出たが、送ってくる援軍の規模と部隊を聞いて島田は驚く。

「え、それは本当ですか?は、はあ……わかりました」

とりあえず援軍が来てくれるのは嬉しかったが、援軍に来る部隊を聞いて伊丹も島田と同じように驚いた。

「いや、第四戦闘団が援軍に来てくれるのは嬉しいけど」

第四戦闘団とは、特地に派遣された健軍一等陸佐率いるヘリコプター部隊を中心に編成された空中機動部隊である。

「こっちは空軍の第23航空団と陸軍は10式だけで構成された第3空挺装甲歩兵中隊も派遣されるからな」

「オーバーキルじゃないですか」

空軍で使用されている烈風が8機、流星が12機と10式戦術装甲歩行機が12機と共に、アルヌス駐屯地で編成された第四戦闘団と一緒に援軍にくるというのだ。伊丹のいった通りにオーバーキル過ぎると島田は思っていた。

伊丹に関しては、日本の咽るロボットアニメに出てくる兵器が盗賊相手にする光景が、自分の携帯の着信音にしているあのテーマが流れて蹂躙する光景が浮かんだ。

「盗賊達は蹂躙されるだろうな」

島田は、そう呟くのだった。若干ではあるが、イタリカに攻めてくる盗賊達に同情するのであった。

 
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