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三度目で

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第五章

 力士もだ、彼と共に家を出てだった。
 夜の橋のところに来た、すると。
 暫く経って老人が来た、老人は二人のところに来ると微笑んで言った。
「左様、その日の早くというは」
「子の時になったですな」
「まさにその時」
「そういうことでしたな」
「一日は朝にはじまるに非ず」
「夜にですな」
「夜の子の時」
 まさにその時にというのだ。
「はじまるもの、よくわかられた」
「ようやく気付きました」
 張良はこう老人に答えた。
「遅かったです」
「このことに気付くとは見事、その貴殿なら」
 老人は懐から布を巻いたものを差し出した、そのうえで張良に言った。
「この六韜を授けられる」
「何と、六韜とは」
 その名を聞いてだ、この場ではこれまで黙っていた力士が言った。
「あの太公望か書き残したという」
「そう、あの書じゃ」
「まさか本当にあったとは」
「これを授けたい」
 老人は張良を見て言った。
「是非共」
「何故それを私に」
「一日の早くにと言って気付いたが故」
 そのはじまりにというのだ。
「貴殿に授けたい」
「そうですか」
「空を見られよ」
 老人はここで張良にこうも言った、そして力士と合わせて三人で夜空を見つつ言った。
「わかりますな」
「これは」
「はい、皇帝の星ですが」
 老人は空に一際大きく輝く星を指差し張良に話した。
「あの様にです」
「輝きが弱まっていますな」
「間もなく落ちます」
 皇帝のその星がというのだ。
「そして天下は乱れますが」
「あの赤い星は」
 張良は皇帝の星の場所から見て南西にある赤い星に気付いた、そしてその星を見つつ言うのだった。
「次第にですが」
「輝きは強くなっていますな」
「はい、そして大きさを増しています」
「あの星もあります」
 赤い星と共にだ、空には。
 青い星もあった、異様なまでに強い輝きを増している。 
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