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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第85話

~アルセイユ・ブリッジ~



「……………エ………テル…………。……エス……ル………起きて………」

「……大丈夫か……………エス……ちゃん……」

「…………エス………………起き………………」

「………きて……テル………」

「……ん…………」

自分を呼ぶさまざまな声に気付いたエステルは目を覚ました。



「あ……」

「よかった……目ぇ覚めたか。」

「フウ……一安心だな。」

「まあ、レンは最初から大丈夫だと思っていたけどね♪」

「大丈夫?どこかケガしていない?」

「ケガをしていたら私が再生術で治すよ。」

「フン、心配し過ぎだ。」

目を覚ましたエステルを見たケビンとルークは安堵の溜息を吐き、レンはからかいの表情で呟き、ヨシュアとソフィは心配そうな表情で声をかけ、二人の様子を見ていたリオンは呆れた表情で指摘し

「あ……うん……」

そしてエステルは体を起こした。



「……ちょっとヒジを擦りむいたくらいだけど……。…………みんなは…………?」

「ま、なんとか無事だぜ……」

「……あ、あうう~……」

「だ、大丈夫……です……」

「こちらも何とか無事だ……」

「やれやれ……スリル満点だったねぇ……」

「フッ……今のをスリルですませるとは、中々肝が据わった皇子だ……」

「ふう……さすがにダメかと思ったわ。」

「九死に一生を得たといったところか。」

「ま、俺とアーシアの場合はこれで九死に二生を得たな。」

「洒落になっていないわよ……」

エステルに声をかけられた仲間達は次々と立ち上がり

「大丈夫ですか、ステラ?」

「起きて、ください。」

「……ん……あ…………」

既に起きていたイオンとアリエッタに声をかけられて目が覚めたステラも立ち上がった。



「っ!!」

「わあ…………ステラさんって、ヨシュアお兄ちゃんやリオンさんと同じ黒髪なんですね。」

「そんな仮面をつけた怪しい女と僕を一緒にするな。」

(あの~、前にも言ったと思いますが坊ちゃんだけは彼女の事は言えないと思うのですが……)

墜落の衝撃によって深く被っていたフードも外れていた為ステラが立ち上がった際に腰まで届くステラの美しい黒髪が顕わになり、それに気付いたヨシュアは目を見開いて息を呑み、ティータはステラの黒髪に見とれ、ティータに不愉快そうな表情で指摘したリオンにシャルティエは冷や汗をかいて指摘した。

「気のせいでしょうか……?どこかで見覚えがあるような気がするのですが……」

「クローゼも?実はあたしも今のステラさんを見ていたらステラさんみたいな人をな~んか、どっかで見たことがあるような気がするのよね……?」

不思議そうな表情でステラを見つめているクローゼの言葉にエステルは頷いた後首を傾げた。

「え……―――!!」

一方エステル達の会話に一瞬呆けたステラは足元に落ちているフードに気づくと慌てた様子でフードを拾って顕わになった髪を纏めて被りなおした。

「うふふ、どうしてそんなに綺麗な髪を隠すために慌ててフードを被りなおしたのかしら♪」

「え、えっと……仮面の件同様髪も隠さなければならない事情があるのよ。」

小悪魔な笑みを浮かべているレンの指摘にステラは冷や汗をかきながら答えた。

「あ、そうなんだ。」

「……………(やっぱりステラさんは………)」

ステラの説明にエステルが納得している中ヨシュアは辛そうな表情でステラを見つめながら黙り込んでいた。



「……えへへ~……。そんなにたくさん……食べられないですよ~……」

「はあ……ったく。こらドロシー!もう朝だぞ!」

その時まだ寝ぼけているドロシーに呆れたナイアルは怒鳴り

「ほえ……ナイアル先輩……?」

ナイアルに怒鳴られてドロシーはようやく起きて立ち上がった。

「そちらの方はどうだ?」

「……問題ない。」

「な、何とか無事じゃ。」

「……問題ありません……」

「こ、こちらも何とか……」

「し、死ぬかと思いました……」

そしてユリア大尉がミュラー少佐達に声をかけるとミュラー少佐やラッセル博士達もそれぞれ起き上がって答えた。



「……まさに奇跡だな。それとも……ただ手を抜かれただけなのか……」

「そ、そうだ!さっきアルセイユを攻撃した黒いヤツに乗ってたのって……」

アルセイユが落とされる前の出来事を思い出したユリア大尉が苦々しい表情をしている中、ある事を思い出したエステルはヨシュアに視線を向けた。

「……ああ。間違いなくレーヴェだと思う。」

「……野郎か」

「フン、次に相対した時はマリアンの件も含めて纏めて倍にして返してくれる。」

「レーヴェ……」

エステルの視線にヨシュアが頷いている中、アガットとリオンはレーヴェの顔を思い浮かべて目を細め、ステラは辛そうな表情で呟いた。



「となると確かに手を抜かれたのかもしれんな。奴さんがその気だったら完全に撃墜されていただろう。」

「……なんか複雑ね。」

「何の為に手加減したんだろう?」

「………………………………」

ジンの推測を聞いたエステルは疲れた表情で溜息を吐き、ソフィは考え込み、ヨシュアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「つーか、生身で飛行船を落とすとかありえねぇだろ……」

ルークも疲れた表情で溜息を吐いて呟いたが

(フッ、少なくても超振動を一人で起こせる奴だけは人の事は言えないと思うがな。)

(同感、です。)

(ア、アハハ……)

それぞれ小声で呟いたバダックとアリエッタのルークに対する指摘が聞こえていたイオンは苦笑していた。

「そういえば……私たち、どこに落ちたのでしょう?」

「浮遊都市の周縁部のようですが……。まずは外に出て状況を確認した方が良さそうですね。」

そしてエステル達は外に出た。



~リベル=アーク市~



「こ、ここって……」

「うわぁ……キレイ……」

「うふふ、中々の景色ね♪」

「こ、これはもう撮って撮って撮りまくるしか~!」

「おいおい……。感光クオーツを使い切るなよ?」

エステル達が周りの景色に目を奪われている中、興奮して写真を撮りまくっているドロシーにナイアルは冷や汗をかいて指摘した。

「しかしここは……えらく浮世離れした場所やね。都市っちゅうよりは庭園といった方が良さそうや。」

「そうですね……。大都市における公園のような場所なのかもしれません。」

「た、確かにそんな雰囲気だけど……。それにしては、同じような場所が遠くまで続いてるんですけど……」

「やれやれ……。とてつもないスケールだねぇ。」

「問題は我々が今どのあたりにいるかだな……」

「ピューイ!」

仲間達がそれぞれ話し合っているとジークが飛んできた。



「ジーク!?」

「ピュイピュイ!」

「よかった……。はぐれたのかと思ったわ。大丈夫……私たちも平気よ。」

「ピューイ♪ピュイ!ピュイピュイピューイ!」

「そう……分かったわ。どうやら私たちは、浮遊都市の最西端に不時着したようです。そして”グロリアス”はちょうど反対側の東側に停泊しているみたいですね。」

その後エステル達は今後の方針を決める為に会議室に集まった。



~アルセイユ・会議室~



「―――アルセイユの損傷はそこまで深刻なものではない。導力機関はほとんど無傷じゃし、反重力発生機関の損傷も軽微じゃ。じゃが、スタビライザーをはじめ、細かい導力系統に不具合が生じておる。このままでは、まともに浮き上がることもできんじゃろう。」

「そうですか……」

「とにかく人手をかき集めて修理を始めるしかないだろう。及ばずながら自分も協力させていただく。」

「……かたじけない。」

「アルセイユはそれでいいとして問題は、この都市のどこかに存在する”輝く環”の方だろうね。どうやら”結社”の方は着々と準備を進めているようだ。」

「はい……。彼らの手に”輝く環”が渡ったらどのような事になってしまうか……」

オリビエの意見に頷いたクローゼは不安そうな表情をした。



「まあ、どう考えてもロクな事にはならないでしょうね。今までの事から判断する限り。」

「絶対に彼らに渡す訳にはいかないわね。」

「ヘッ……違いねえ。こりゃ、すぐにでも動いた方が良さそうだな。」

「だが、闇雲に動いたらかえって混乱を招く恐れがある。ここはやはり、探索班を組むべきだろうな。」

「確かに……。まずは移動ルートを確保しないと”輝く環”も探しようがないしね。」

「………………………………」

仲間達が話し合っている中、ヨシュアは黙って考え込んでいた。

「どうしたの、ヨシュア?」

「いや……何でもないよ。―――とりあえず、探索班にはバックアップも必要だと思います。アルセイユに戻ってきたらすぐに交替できるようにするのが望ましいかもしれません。」

「そうだな……。早速各自の役割分担を話し合ってみることにしよう。」

その後エステルとヨシュアは最初の探索班にルーク、レン、クローゼ、ステラを選んだ。



「残りの者は待機メンバーとして船体の修理を手伝ってもらいたい。」

「はいっ!」

「……おっと、そうじゃ。ちなみに朗報が1つあってな。どうやら浮遊都市の上では”導力停止現象”は起こらんらしい。アルセイユから離れていても戦術オーブメントが使えるはずじゃ。」

「ほ、ほんと!?」

「ど、どうして分かるの?」

アーツが使えるという朗報を聞いたエステルは驚き、ティータはラッセル博士に尋ねた。

「実は、例の『零力場発生器』が不時着の衝撃で壊れたんじゃが……。それにもかかわらず、艦内の装置を問題なく動かすことができたんじゃ。どうやらケビン神父達の推測がおおよそ当たっていたようじゃな。」

「どういうこと、ケビンさん?」

「”環”は外界に存在する異物を排除しようとする機能を備えている……。つまり、都市の中にいる限り、オーブメントは異物としては認識されんちゅうわけですな?」

「うむ、そういうことじゃ。」

ケビンの推測にラッセル博士は頷いた。



「は~、良かった。さすがに探索している時にアーツ無しじゃキツそうだし。」

「それでは、艦内にある工房施設も使えそうですか?」

「うむ、そちらも問題ない。更なるオーブメントの改造も可能じゃから立ち寄るがいい。」

「了解!」

「分かりました。」

その後エステル達は仲間達と解散した。



「さてと……。早速、艦の外に出て捜索活動を始めちゃおうか?」

「ええ、そうですね。」

「……ごめん、エステル。色々と装備を切らしていて補充しなくちゃいけないんだ。少し待っててくれるかな?」

「あ、そうなんだ。何だったら、手伝おうか?」

ヨシュアの話を聞いたエステルは頷いた後申し出た。

「いや、それには及ばないよ。30分くらいで戻るから休憩室で待っててくれるかい?」

「そっか……わかったわ。」

「エステル、レンも装備の補充が必要だからちょっとだけ席を外すわね。」

「え……レンちゃんも?」

「何なら手伝うぞ?」

レンの申し出を聞いたステラは呆け、ルークは申し出た。

「大した時間を取らないから大丈夫よ。ヨシュアが戻ってくるまでにすませられるわ。」

「……わかったわ。それじゃあ、休憩室で待っているわよ。」

そしてエステル達は休憩室に向かい、レンは階段を下りて行った。



「やれやれ……君もいいかげん罪作りやね。」

ヨシュアがその場に一人になるとケビンが会議室から出てきてヨシュアに近づいてきた。

「……すみません。」

「謝るんならエステルちゃんに謝り。……ホンマにええんか?」

「もう、決めた事ですから。ケビン神父……どうかよろしくお願いします。」

「ったく、しゃあないな……。よし、時間もないことやしとっとと医務室を借りるか。」

ヨシュアとケビンが医務室に向かったその頃、レンは外に出て人気のない物陰で立ち止まった。



~リベル=アーク・公園区画”カルマーレ”~



「………このあたりでいいわね。――――もう出てきてもいいわよ。」

「やれやれ、今回ばかりはさすがの私も肝が冷えたぞ。」

周囲を見回して誰もいない事を確認したレンが呟くとレンの背後の空間から銀が現れた!

「さて……こんな所にまで私を同行させて何をさせるつもりだ?」

「うふふ、それは勿論貴方にピッタリな仕事よ♪」

「クク……まさか私に”執行者”を暗殺させるつもりか?」

レンの話を聞き、レンが自分に何をやらそうとしているのかを察した銀は口元に笑みを浮かべて問いかけた。

「それも魅力的な話だけど違うわ。貴方にやって欲しい事は――――――」

そして銀との密談を終えたレンはアルセイユに戻り、休憩していたエステル達と合流し、ヨシュアも戻ってくるとエステル達と共に浮遊都市の探索を始めた。 
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