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孤独の女王

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第三章

「数が少ないぞ」
「そういえばそうですね」
「数機しかいませんね」
「基地を攻撃するならより多い筈ですが」
「それが」
「だとすると」
 このことからだ、士官は言った。
「目標はやはり」
「ティルピッツですか」
「あの戦艦ですか」
「そうだな、しかしだ」 
 士官はこうも言った。
「艦載機で低空から攻撃するならともかく」
「はい、ああした空軍の戦略爆撃機で攻撃するとなると」
「相当難しいですが」
「日本海軍は出来ましたが」
「イギリス海軍に出来るでしょうか」
「ランカスターは爆弾の搭載量と航続距離だけだ」
 この二つだけが秀でている爆撃機だというのだ。
「防御用の武装も装甲も弱い」
「撃墜しやすういです」
「正直ここに確か航空戦力があれば用意に撃墜出来ます」
「そのランカスターで来ても」
「ティルピッツを沈められるでしょうか」
「ランカスターの搭載出来る爆弾の直撃を受けてもだ」
 士官はさらに言った。
「何発かなら耐えられる」
「そうですよね」
「ティルピッツなら」
「魚雷攻撃ならともかく」
「艦載機での攻撃も特にでしたし」
「幾らランカスターでも」
「流石にティルピッツを沈めることは」
 相当なことでもない限り無理だろうとだ、水兵達も思った。それでだった。
 彼等は損害は受けても今回は沈められないだろうと思っていた、しかし。 
 ランカスターの乗員達はだ、機内で決死の顔でいた。
 そしてだ、機長が乗員達に言っていた。
「いいな、これからだ」
「はい、ティルピッツをですね」
「沈める」
「絶対にですね」
「俺達の手で」
「これまで誰も出来なかったがな」
 ティルピッツを沈める、そのことがというのだ。
「それをだ」
「俺達がですね」
「するんですよね」
「これから」
「ああ、そうだ」
 その通りというのだった。
「絶対に直撃させるぞ」
「わかりました」
「やりましょう」
「じゃあ必ず」
「何としても」
「この日の為に訓練をして何度もミーティングもしてきた」
 機長は自ら操縦しつつ真剣な顔で言った。
「それならな」
「当てましょう」
「そして沈めましょう」 
 乗員達も言う、そしてだった。
 彼等は空からランカスターの上に近付いてだ、そのうえで。
 爆撃手が狙いを定めてだ、それからだった。 
 爆弾を投下した、爆弾は一つだったが。
 その爆弾が直撃するとだ、その一撃でだった。
 大きな爆発が起きてだ、ティルピッツは大きく揺れた。その揺れを見てだった。
 ドイツ海軍の者達が口々に驚いて言った。
「何っ!?」
「何だあの爆発は!」
「ティルピッツが揺らいだだと!」
「あのティルピッツがか!」
 まずはこのことに驚いた、そして。
 その噴き上がる炎と煙にもだ、彼等は驚いた。 
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