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偶発的殺人

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第一章

                 偶発的殺人
 今デトロイト市警は頭を抱えていた、それは捜査が難航していたからではない。
 その事件の犯人達は自首して来たのだ、それで彼等の身柄は確保していた。
 しかしだ、問題はその事件の内容だった。
「目撃者もいましたし」
「その彼等の証言もか」
「はい、はっきりとしています」
 まさにというのだ。ウィルソン=マクレガー刑事は深刻な顔でロバート=ドーバー署長に話した。マクレガーは長身で顎が割れている青い目にブラウンの髪の逞しい身体の男だ、ドーバーは彼と同じだけの背で恰幅のいい身体に額がやや後退している黒髪に黒い目の男だ。二人共コーカロイドであるがどーバーの顔はやや中国系に似ている。
「容疑者の二人はです」
「被害者にだな」
「そうです、こっそりと駆け落ちしようとして」
 そしてというのだ。
「そこを家の主人、容疑者の一人の父親と家の者達に見付かりまして」
「抵抗を諦めてだな」
「そうです」
「そこで持っていた拳銃をだな」
「抵抗しないということの証明にです」
 まさにというのだ。
「拳銃を投げ捨てたのですが」
「男も女もだな」
「はい、被害者の娘アンナ=ローズも」
「そしてそのローズ容疑者の交際相手サムソン=リーもだな」
「そうです、二人共護身用に拳銃を持ってです」
 そのうえでというのだ。
「駆け落ちをしようとしましたが」
「そこで見付かりだな」
「被害者と家の者達に囲まれて抵抗を諦めて、です」
「拳銃を足元に投げ捨てた」
「両手を挙げた上で」
「どう見ても抵抗の意志はないな」
 ドーバーはここまで聞いてだ、眉を顰めさせて言った。
「容疑者二人には」
「目撃者も皆言っています」
「確かにだな」
「どの目撃者達もです」
 犠牲者と共に容疑者達を囲んだ家の者達がというのだ。
「そう言っています」
「容疑者側の証言もだ」
「嘘ではありません」
 無抵抗だったというのだ、容疑者達は。
「紛れもなく、しかし」
「その足元に放り捨てた拳銃がか」
「どちらも暴発しまして」
「放り捨てて地面に当たった衝撃でか」
「そしてその中にあった銃弾達がです」
「被害者に命中してだな」
「しかも二発共心臓にです」
 暴発した拳銃達のそれがというのだ。
「直撃しまして」
「即死だったということだな」
「そしてその駆け落ちしようとした二人がです」
 マクレガーもどうにもという顔でドーバーに話していく。
「家の者達に事故だと言うのに自首してきた」
「そうした話だな」
「被害者を検死した結果もです」
 そのことからの捜査状況もだ、マクレガーは話した。
「やはりです」
「銃弾は下からだな」
「撃たれたものでした」
「若し射殺していればだ」
 ドーバーはこの場合について語った。
「横からだな」
「下からはです」
「ないな」
「そうです、やはり地面に放り捨てた拳銃がです」
 暴発してというのだ。 
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