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スペースノイド奮闘記

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第1話

 操縦桿を慎重に操作して、俺は旧ザクを格納庫の所定位置に停止させた。すぐにモニターの端にある獲得得点表に着陸点が加算されていく。

 マイナス評価転落ぎりぎりの数字だ。まあ仕方ない。何とか戦闘機やボールを狩って撃破ポイントを稼いだが、いくらニュータイプ補正を受けても旧ザクではジムやガンダムを相手にすればかなり分が悪い。まあ、僚機の支援を受けて何とか叩き出した数字だ。

「小林、そろそろイベントが始まる時間だけど、どうする?」

 旧ザクのモニターに友達の山下の笑顔が映し出された。高機動ゲルググで無双して撃破ポイントとゲーム内通貨を獲得しまくった山下としては、更なる高得点を狙って大規模イベントに参加したいのだろう。

 とはいえ、やはり僚機の俺が旧ザクなのが気になるようだ。イベントは敵も味方もニュータイプだらけという異質な戦場となる。そんなところにのこのことと旧ザクで突撃する高レベルプレイヤーが出てきたら、連邦プレイヤーにとって最高の鴨になるだろう。

 そのことに気づいたのか、山下はやる気満々の雰囲気を漂わせながら、心配そうに俺の意見を聞いてくれた。

 まあ、フリーミッションはトントンの成績だったし、イベントに参加してマイナス点を叩きだす日があってもたまにはよいかもな。一応、いくつかのパイロット能力の経験値が増えているし・・・

「せっかくだし参加しよう。ア・バオア・クー空域は嫌いじゃないからな」

「だったら小規模制限戦闘の方にしよう。モネ艦長。ムサイをイベントコードZ231に移動させてくれ」

 山下の指示を受けた宇宙攻撃軍ムサイ級巡洋艦ラルフシュタットは第4フリー戦闘エリアのある暗黒空域を離れた。物理法則を無視しているので、イベント空域となっているア・バオア・クーにすぐ着くだろう。

「ちょっとトイレに行ってくる」

 パイロット待機室で合流すると、山下は俺に伝えた。と言ってもムサイの中にあるトイレオブジェのことではなく、リアル山下邸トイレのことだ。

 俺達二人は山下の自宅用バーチャルゲーム機を使ってガンダムのアクションゲームをしている。

「あっ俺も」

 俺達はお手洗いを済ませてからついでにおやつの時間を設けた。それから体の入る大きなゲーム器に体をうずめる。それから十分後・・・

 俺と山下はア・バオア・クー防空司令部麾下のモビルスーツ中隊の一員として、連邦軍を迎え撃つことになった。

 サラミス級巡洋艦3隻と人型6機、球型3機、戦闘機3機が担当エリアに侵入してきた。ジオン側は俺と山下機プラスNPCの06F型からなる小隊とプレイヤーの09R型とNPCの06F型2機の小隊。これをガトル2機とムサイ2隻、要塞の対空砲台2基と対艦砲台1基、ミサイル発射機1基が支援している。

 もう一つのモビルスーツ小隊のプレイヤーとの話し合いで、向こうは要塞の砲台群及び艦艇を護衛して、こっちは攻撃を仕掛けることになった。

「小林。敵は2個小隊だ。先に前衛の小隊を叩くから牽制攻撃を頼む」

 デルタ機動で敵の側面に回り込んでいる最中に接触回線で牽制攻撃を頼まれ、俺は反射的に旧ザクを単騎小隊から分離した。ゲームで流行っている典型的なデルタ機動と時間差分離攻撃戦術だ。

 敵を中心に弧を描いて軌道する3機のうち、1機を早めに敵に突撃させて注意を引く。残った2機はそのまましばらく軌道を維持して、角度をずらして敵の側面を攻撃する。

 まあ、普通はプレイヤーが二人居たら最初に分離するのはNPCなんだけどね。

 いずれにせよ俺達の小隊はNPCの人型1機と球型1機。それからプレイヤーぽい人型1機と思われる小隊をあっという間に撃破した。そして・・・



「ジオン公国に栄光あれ」

 同じ小隊のNPCパイロットの悲痛な声がニュータイプ特典により機内に流れた。その直後、俺の旧ザクもやられた。


 後方に居た敵小隊によりによって白い悪魔が居た。ニュータイプの乗ったガンダム様に旧ザクに乗ったニュータイプな俺は俺とNPCは一蹴されてしまった。

 その後は山下の高機動ゲルググの活躍を見守ることになった。双方痛み分けという形で引き上げ、もう一つのジオン小隊も引き分けたので、戦術的には勝利だ。

「山下、おしかったな」

「あのガンダムのパイロットだって同じこと言っているんじゃね」

「かもな」

「こっちは旧ザクまじりだし勝ったようなものだろ。さて、そろそろ家に帰らないと」

 ちなみに俺の撃破ポイントはマイナスだった。もう旧ザクなんぞに乗らん。と内心思いながら俺は山下と同時にログアウトした。そして、これが俺の宇宙世紀生活の始まりとなったのである・・・
 
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