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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第80話

~空中庭園~



「さあ、お眠りなさい……」

ルシオラは自分に向かってくるルークを眠らせる為に鈴の音を鳴らして敵を眠らせるクラフト―――幻術・夢見の鈴音を発動してルークを眠らせようとした。

「効くかよ!雷神剣!!」

「っ!?」

しかし全状態異常から身を守る遊撃士協会が高ランクの遊撃士達のみに授けているアクセサリー―――”グラールロケット”を身に着けているルークには効かず、ルークは突きをルシオラに命中させると同時に雷を落とした。

「連撃、受けな!斬魔飛影斬!!」

「ひぅっ!?」

続けてルークは闇をも切り裂く一撃を連続でルシオラに叩き込みながらルシオラの頭上へと跳躍し

「大雪斬!!」

そのまま闘気を纏わせた剣をルシオラ目がけて振り下ろした!



「!!おさがりなさい……!」

上空からの強襲に対してルシオラは後ろに跳躍して回避した後火炎を纏った鉄扇をルークに投擲し

「っと………!」

投擲された鉄扇をルークは剣で次々と防いだ。

「ふふっ、素敵でしょう?」

「!チッ、分け身か……!」

クラフト―――影分身によって分け身を2体作ったルシオラは分け身達と共にルークを包囲し

「ふふふっ……」

分け身達と共に口から火炎を放つクラフト―――風魔火炎をルークに放った!

「粋護陣!!」

一方ルークは全身に闘気の結界を展開して全方位から来た火炎を防ぎ

「駆けろ、地の牙!魔王地顎陣!!

「ひぅっ!?」

火炎を防いだ後剣を地面に叩き付けて地割れを起こして広範囲の溶岩を噴出させて自分の周囲にいるルシオラを分け身達ごと攻撃し、ダメージを受けた事によって分け身達を維持する集中力が途切れたルシオラの分け身達は消えた。



「そこかっ!弧影斬!空破!絶風撃!!」

「っ!?」

分け身達が消えた事で本物のルシオラの位置を把握したルークは斬撃波を解き放つ技から一気に敵に詰め寄る技へと繋げてルシオラにダメージを与え続け

「砕け散れ!絶破烈氷撃!!」

「ひうっ!?」

更に前方に突き出した拳に氷塊を作り、それを砕いてルシオラに追撃すると共にふっ飛ばした。

「剛魔神拳!!」

ルシオラをふっ飛ばしたルークは攻撃の手を休めないかのように衝撃波をルシオラに命中させ

「秘技―――裏疾風!斬!!」

続けて電光石火の速さで斬撃を叩き込んだ後ルシオラの背後から凄まじい斬撃波を放った!

「っ!幻惑の鈴よ見せておやりなさい………」

最後に放たれた斬撃波を鈴の音を鳴らしてその場から消えて回避したルシオラは再び鈴の音を鳴らした。すると鈴の音によって幻術にかかったルークの目の前には巨大化したルシオラがいた。



「なっ!?まさかこれが幻術って奴か……!?」

「奥義・火炎地獄……さあ燃え尽きなさい!!」

そしていきなりの出来事に驚いているルークに巨大化したルシオラは炎を吐いたが

「させるかよ!うおおおおおお―――――っ!レイディアント………」

すぐに我に返ったルークは”超振動”の力を解放して自分の周囲に衝撃波を発生させて炎から自分の身を守り

「ハウルッ!!」

「キャアッ!?」

最後に溜め込んだ超振動の光を解放し、その光によって吐いていた炎が飲み込まれると共に余波を受けたルシオラはダメージを受け、元の大きさに戻った。

「これで決めてやる!全てを緋色に包む閃火の一刀!うおおおおおおおっ!!」

その隙を逃さないかのようにルークは闘気によって発生した凄まじい炎を剣に纏わせてルシオラに詰め寄って滅多斬りを叩き込み

「絶――――緋凰剣―――ッ!!」

最後に跳躍して炎を纏った剣を振るって巨大な鳳凰をルシオラに解き放った!解き放たれた鳳凰はルシオラに突撃するとドーム型の炎の大爆発を起こした!

「キャアアアアアアアア――――ッ!?迂闊ね……」

ルークの絶技にしてSクラフト―――終ノ太刀・緋凰を受けた事によってついに耐えきれなくなったルシオラは戦闘不能になり、地面に跪いた!



「こんなのはどうかな?」

自分に向かってきたリオンにブルブランはクラフト―――マジックナイフを放ち

「臥竜閃!!」

襲い掛かって来た無数の短剣をリオンは跳躍して剣を一閃して撃ち落とした。

「幻影刃!まだだっ!!」

「はっ!?」

そして地上に着地した瞬間目にも止まらぬ速さでブルブランに斬撃を叩き込み

「魔神剣・双牙!!」

続けて衝撃波をブルブランに放った。



「!それっ!!」

襲い掛かる二つの衝撃波を側面に跳躍して回避したブルブランはカードをリオンに投擲し

「下らん!」

(坊ちゃん、準備はできました!」

「喰らえ―――エアプレッシャー!!」

「な―――まさかこれは魔法(アーツ)……しかもこのアーツは……!?グゥゥゥゥッ!?」

リオンは投擲されたカードを剣で切り捨てた後昌術でブルブランの動きを封じ込めた後ブルブランに一気に詰め寄って攻撃を仕掛けた。

「爪竜連牙斬!月閃光!まだだっ!粉塵裂破衝!!」

「っ!?」

凄まじい速さで次から次へと技を連携させてブルブランに次々とダメージを与えたリオンは剣と短剣に暗黒の炎を纏わせてブルブラン目がけて放った!

「塵も残さん!奥義――――浄破滅焼闇!!」

「!!」

リオンの奥義をブルブランは間一髪後ろに跳躍して回避した。



「フフ、なるほど。謎の魔法(アーツ)を使う黒髪の剣士……と言う事が君がボースでレーヴェを破った剣士か。」

「フン、それがどうした。貴様らの中で最も腕が立つあの銀髪の剣士を破ったこの僕が相手だとわかり、臆したか?」

ブルブランの言葉を聞いたリオンは鼻を鳴らして嘲笑した。

「まさか。むしろ最後の関門を超えるのが難しい程、その関門の先に待つ宝石の価値は高まるというもの!”怪盗紳士”の名にかけて、必ずリベールの希望を盗み出してくれよう!」

「そんな仮面で顔を隠した怪しい奴がこの僕に勝てると思ったのが間違いである事をその身に刻み込んでやる!」

(あの~……仮面の件については坊ちゃんも人の事を言えないと思うのですが……)

ブルブランの叫びに対して答えたリオンにシャルティエは苦笑しながら指摘した。



「逃げ場はないぞ………!」

そしてブルブランは広範囲に赤い光を降り注がせて敵にダメージを与えるクラフト―――奇術・アカシックレインを放ち

「させるか!」

リオンは全身に闘気の結界を展開して上空から襲い掛かる赤い光を防いでいた。

「君にふさわしい最期を贈ろう……」

その時ブルブランはSクラフトを発動してリオンを棺桶に閉じ込めたが

「下らん!」

リオンは剣で一瞬で棺桶の蓋を斬り裂いて棺桶から脱出し

「さあ、美しく散るがいい!!」

「散るのは貴様の方だ――――デモンズランス・ゼロ!!」

ブルブランが投擲した剣を跳躍して回避すると共に昌術によって発生した暗黒の魔槍をブルブランに放った!

「な――――グアッ!?」

暗黒の魔槍に命中したブルブランは地面に叩き落され、そこにリオンが一気に詰め寄って技を連携させた!

「空襲剣!崩龍斬光剣!」

「っ!?」

空中を翔けてブルブランにZ字の斬撃を叩き込んだリオンはすぐに態勢を戻してブルブランに目にも止まらぬ速さの連続突きを繰り出した!

「見切れるか! 喰らえ! 翔破裂光閃!!」

「グアアアアアア―――――ッ!?う、美しい………」

そしてリオンの奥義を見切れる程の接近戦の心得がないブルブランではリオンの奥義は見切れず、白を基調とした自身の衣装やマントをリオンの奥義を受けた事によって出血した自身の血で真っ赤に染めて地面に跪き

「貴様に見切れる筋もない!」

奥義を放ち終えたリオンはもはやブルブランに興味はないかのようにブルブランに背中を向けた。



「せいやぁーっ!!」

「シェルスロー!!」

ヴァルターに向かったソフィは自分に襲い掛かって来た足技によって発生した衝撃波を跳躍して回避すると同時にヴァルターの頭上から光子の無数の短剣を投擲した。

「!こおぉぉぉぉっ……」

頭上から降り注ぐ短剣を回避したヴァルターはその場で力を溜めた後着地したソフィに一瞬に詰め寄って強烈な一撃を放った。

「ふん!」

「双撞掌底破!!」

対するソフィは両手に溜めこんだ気を放ってヴァルターが放った零距離の攻撃―――ゼロ・インパクトを相殺し

「双月!旋幻舞!烈孔斬滅!!」

そのまま格闘技を連携してヴァルターに攻撃した。



「クカカ……!思った通り、格闘も中々やるじゃねぇか………!」

ソフィが次から次へと繰り出す格闘技をヴァルターは楽しむかのように次々とソフィの技を防いだ後反撃をした。

「そら、そらぁ!」

「させない!」

ヴァルターの拳と蹴りによる連携技をソフィはそれぞれ自身の武器でガードし

「オラオラァッ!」

「ユベルティ!!」

拳の連打によって衝撃波を生み出すヴァルターの連続攻撃―――ソニックシュートに対しては両足を両剣のように回転させて相殺した。

「クク、いいねぇ!フンッ!!」

繰り出した自身の技を全て防いだソフィに対して戦闘意欲が高まったヴァルターは一旦ソフィから距離を取って拳から闘気の球体をソフィに放った。



「スカラーガンナー!!」

襲い掛かる闘気の球体をソフィは光子を砲撃して相殺し

「カタストロフィ!!」

「うぉっ!?」

自身を光子と化し超高速で強襲してヴァルターにダメージを与え

「光よ、集え!!」

「あぁっ!?」

「マークリバース!!」

続けて全身から光子のレーザー放って追撃した後光子のブーメランを投擲した。



「!!クク……おい、ガキ。テメェ、まさかとは思うが”劫炎”のような”異能”を持っているのか?」

光子のブーメランを回避したヴァルターはソフィが放った謎の攻撃―――自らの体内から光子を発生させて攻撃するクラフトが自身が知る”結社”のある”執行者”の戦い方と似ている事に気づく、凶悪な笑みを浮かべてソフィに問いかけた。

「………”異能”かどうかは知らないけど、これが私の”力”。――――ただそれだけ。アストラルベルト!!」

ヴァルターの問いかけに静かな表情で答えたソフィはヴァルターに詰め寄って剣に変化させた光子で居合い斬りを放った!

「!クク、いいねぇ!?テメェとの殺り合いにはとことん楽しませてもらうぜ!」

そしてソフィの居合い斬りを後ろに跳躍して回避したヴァルターが凶悪な笑みを浮かべて声を上げたその時!

「――――私は貴方のように戦いを楽しむような趣味はないし、貴方と決着を付けるのはジン。ジンの為にも私は貴方を殺すつもりはない。だけど、私の友達を守る為にもそろそろ勝負を決めさせてもらう。―――解放します!穿て裂閃!無限の拳閃!蒼空を駆けよ!」

「な、何だこの速さは……グアアアアアア――――ッ!?」

ソフィは無数の光子を放つと同時に自身も光子となって超高速でヴァルターに怒涛の攻撃を叩き込み始め、ソフィの姿すら捉えられないヴァルターは為す術もなくソフィの攻撃を受け続け

「ゼロ・ディゾルヴァー!!」

「ガアアアアアアアアアアアアッ!?ガハッ!?クソが……」

最後に強烈なアッパーで上空へと打ち上げられた後地面に叩き付けられたヴァルターは戦闘不能になった!



「クスクス、死んじゃえ!」

「伍の型―――残月!!」

クラフト―――クレセントエッジで襲い掛かって来たユウナを抜刀の構えで待ち構えていたレンは襲い掛かる大鎌を身体を僅かにずらして回避した後素早く二振りの小太刀を抜いてユウナに攻撃した。

「うふふ、甘いわよ♪」

「甘いのはそっちよ♪四の型・改―――紅葉散華!!」

「キャッ!?」

自身の反撃をユウナが大鎌で防ぐとすぐに再び双剣を鞘に収めたレンはユウナの背後へと駆け抜けて抜刀してユウナを中心に鎌鼬を発生してユウナにダメージを与えた。

「空破――――絶掌撃!!」

「!!うふふ、これでも喰らえ!」

自身の背後に回った後一瞬で詰め寄って来たレンの剣技を側面に跳躍して回避したユウナは大鎌をレン目がけて投擲した。



「えいッ!鳳凰天駆!!」

襲い掛かる大鎌をレンは跳躍して回避した後そのまま双剣をクロスさせて全身に闘気の鳳凰を纏ってユウナ目がけて突撃した。

「!斬り裂いちゃえ!!」

レンの攻撃を側面に跳躍して回避したユウナは大鎌を振るって鎌鼬を放つクラフト―――ゲイルエッジをレンに放った。

「二の型・改―――双波洸破斬!!」

対するレンは神速の抜刀で放った鋭い衝撃波で襲い掛かる鎌鼬を相殺し

「二の型・改―――裏疾風!双牙!!」

「いたっ!?」

続けて電光石火の速さでユウナに斬撃を叩き込んだ後二振りの小太刀から二つの斬撃波を放って追撃した。

「魔神剣・双牙!!」

「!!」

「二の型・改―――疾風追連!!」

「キャッ!?」

更にレンは双剣を振るって発生した衝撃波をユウナに回避させた後、回避した瞬間を狙って電光石火の速さで斬撃を叩き込んでユウナのダメージを重ねた。



「うふふ、どうしたの、ユウナ?レンの予想より歯ごたえがないけど、まさかそれが貴女の本気なのかしら?それとも元おねえちゃんのレンと戦いたくなくないって気持ちがあって、手を抜いているのかしら?」

「……っ……!ふざけないで!これで殺してあげる……っ!」

レンの挑発に対して唇を噛みしめたユウナは声を上げた後全身に膨大な殺気を溜め込み

「クスクス、だったらレンは元おねえちゃんとして、犯罪者にまで成り下がった元妹にこれでとっておきのお仕置きをしてあげるわ♪―――その身に刻み込みなさい、滅びの太刀を!」

対するレンは大技の構えをした。

「ユ・ラナンデス!!」

そして殺気を溜め込んだユウナが突撃して大鎌を振るったその時!

「ハァァァァァ……!」

レンは全身に膨大な闘気を纏って跳躍してユウナのSクラフトを回避した後地上に突撃した!

「絶―――――黒皇剣――――ッ!!」

レンが地上に突撃して二振りの小太刀を地面に叩き付けると、レンを中心に風のエネルギーが爆発すると共に無数の鎌鼬がユウナを襲った!

「え――――キャアアアァァァッ!?そ、そんな………」

”八葉一刀流”の”二の型”を皆伝した者達のみが扱える絶技―――終ノ太刀・黒皇によって大ダメージを受けて戦闘不能になったユウナは信じられない表情で地面に跪いた!

「クッ……全員敗れてしまったか……」

「さすがは”剣聖”カシウス・ブライト……まさかこの状況でありながらこれ程の戦力を温存して、私達への対策にするとはね……レーヴェが同行しなかった事がここで響くとは思わなかったわ……」

戦闘不能になったブルブランは周囲を見回して他の”執行者”達も全員戦闘不能になった事を悟ると唇を噛みしめ、ルシオラは冷静な様子でカシウスに感心していた。するとその時エステル達がその場に駆けつけた!

「え……ル、ルーク兄にレン!?」

「それにリオンさんとソフィもどうしてここに……」

「お、エステル達も来たか!」

「うふふ、みんな、お疲れさま♪」

「フン、ようやく来たか。」

「クローゼ達を拘束する為に攻めてきた”執行者”達は私達が全員制圧したから、もう大丈夫だよ。」

自分達の存在に驚いているエステル達をルーク達はそれぞれ声をかけた。



「へ?”執行者”達を全員制圧したって……ええっ!?」

ソフィの言葉に呆けたエステルだったが目の前で跪いている”執行者”達に気づくと驚き

「王都を攻めていた”執行者”達が全員無力化されているわ……!」

「おいおい……どうなっているんだ!?」

「そう言えばカシウスさんがお前達に頼む事があるから、お前達はレイストン要塞に向かったって話だが……まさかカシウスさんはこうなる事も予想していたのか!?」

アーシアとアガットが信じられない表情をしている中、フレンは驚きの表情でルーク達に訊ねた。

「ああ。王国全土の導力が使えない今の状況で、”結社”は次に何をするかを悟った父さんがその対策の為に俺達をここに配置したんだよ。」

「うふふ、そしてあわよくば襲撃して来た”執行者”達を捕えて”結社”の戦力を大幅に減らそうと考えて、”執行者”達を確実に撃退できるレン達を最後の砦にしたのよ♪」

「………………」

「フッ、さすがはカシウス。もはや奴の先読みの能力は神がかっていると言ってもおかしくないな。」

「つーか、冗談抜きでチート過ぎだろ……」

ルークとレンの説明を聞いたエステルは驚きのあまり口をパクパクさせ、バダックは口元に笑みを浮かべ、フレンは苦笑していた。



「”執行者”達もルークさん達との戦いで満身創痍の状態……拘束して、”結社”の戦力を大幅に低下させる絶好の機会ね。」

「へっ、どうやら年貢の納め時が来たようだな?」

アーシアの意見に続くように勝ち誇った笑みを浮かべて呟いたアガットはエステル達と共に武器を構え

「チッ、舐めやがって……!」

「……気に入らないわね……」

アーシアとアガットの言葉を聞いたヴァルターとユウナはそれぞれ不愉快そうな表情をした。

「……念の為に一応確認しておく。アリシア女王かクローゼの身柄を狙ったのは”教授”の指示か?」

「フフ、そうよ。各地の通信を部分的に回復させたみたいだけど……。どうやら教授はそれがお気に召されなかったらしくてね。あなたたちの苦しむ姿をもう少し見たいのだそうよ。」

「……っ……!ふ、ふざけんじゃないわよ!そんな事のために王都を襲わせたっていうの!?」

「……あの人らしい。」

「フン、悪趣味にもほどがあるぞ。」

ルシオラの説明を聞いたエステルは怒鳴り、ヨシュアは静かな表情で呟き、リオンは呆れた表情をしていた。



「―――で、それを引き受けた”執行者”達がまんまとパパの罠にはまったって事♪”剣帝”はいないようだけど、大方あの浮遊都市の攻略を任されているって所かしら?」

「……ええ、そうよ。―――それよりも、まさかもう勝ったつもりでいるのかしら?」

レンの問いかけに答えたユウナは不敵な笑みを浮かべて問いかけた。

「……どういう意味?」

「うふふ、グランセル市街は未だ猟兵達によって制圧されているのよ?そっちはどうするのかしら?」

ソフィの質問にユウナは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「ああ、その事。市街の方なら”パパじゃない別の人”が既に手を打ったわよ?―――ほら、ちょうど来たわよ。」

「えっ……!?」

レンの答えにエステルが驚いて仲間達と共に市街地の方に視線を向けたその時、市街地では驚くべき光景があった。



~グランセル市街地~



「これより人形兵器と猟兵団の掃討を始める!市民の保護、及び正規軍の支援は最優先で行いなさい!」

「イエス・マム!」

市街地ではなんとカノーネ率いる元情報部の特務兵達が市街地で猟兵達との交戦を繰り広げ始めた!



「おいおい、マジかよ!どうして特務兵がいきなり現れやがるんだ!?しかも”結社”の手先を攻撃しているみたいだが……」

特務兵達が交戦を繰り広げ始める一方、茂みでドロシーと共に隠れていたナイアルは驚きの表情で特務兵達を見つめていた。

「うふふ、きっと反省して助けに来てくれたんですよ~♪こういうのって汚名挽回っていうんでしたっけ?」

「汚名を挽回してどうする……。それを言うなら汚名返上だろ。ああ、もうどうでもいい!せっかくカメラが使えるようになったんだ!約束の時間が来るまで撮って撮って撮りまくれ!」

「アイアイサー!」

ドロシーの言葉に脱力したナイアルは気を取り直してドロシーに指示をし、指示をされた交戦の様子をカメラで撮りまくっていた。



~空中庭園~



「と、と、特務兵!?」

「おいおい……何で連中が結社の猟兵や人形兵器と戦っているんだ!?」

「確か特務兵は”殲滅天使”が起こした”お茶会”によって全員拘束されたはずだが……」

特務兵達の登場にエステルとアガットは信じられない表情をし、バダックは呆けた表情で呟き

「……カシウスさんではない人が手を打った……――――まさか、彼らを動かした人物と言うのは……!」

「リシャール大佐か!?」

特務兵達を動かした人物が誰であるかを考え込み、やがて答えが出たアーシアの言葉に続くようにフレンが声を上げたその時!

「フフ、その通り。」

レイスの声がどこからともなく聞こえた後、”執行者”達の両方の側面からシード中佐とかつて身に纏っていた黒い軍服を来たリシャール、そしてエステル達の背後の上空からジークがそれぞれ”執行者”達に強襲した!



「っ!?」

「チイッ……っ!?」

「キャッ!?」

「くっ!?」

シード中佐達の強襲をそれぞれ受けた”執行者”達が怯んだその時、女王宮からレイスが現れて瞬時に”執行者”達に攻撃した!

「爪竜斬光剣!!」

「「キャアッ!?」」

「グアッ!?」

「グッ!?」

レイスの剣技によって巻き起こった大爆発を受けた”執行者”達はそれぞれふっ飛ばされた!



「やあ、みんなご苦労だったね。」

「ルーク達もご苦労だったね。お陰で”執行者”達が隙だらけになって奇襲も容易に成功したよ。」

「シード中佐にレイシス王子殿下……!それに貴方は……!」

シード中佐とレイスは親し気にエステル達に声をかけ、驚きの表情で二人を見つめたアーシアはリシャールに視線を向け

「おいおい……」

「フッ、特務兵達が現れた時点でまさかとは思っていたが……」

「リ、リ、リ……リシャール大佐っ!?」

懲役中の身であったリシャールの登場にアガットは信じられない表情をし、バダックは目を丸くし、エステルは驚きのあまり声を上げた。



「はは……久しぶりだ、エステル君。今の私は、階級を剥奪された服役中の国事犯にすぎない。大佐と呼ぶのは止めてくれたまえ。」

「や、止めてくれたまえって……」

「フフ、カシウス殿から話には聞いていたが私も最初は驚いたよ。だが、君が戻って来てくれて本当に心強いよ。」

リシャールの答えにエステルが呆れている中レイスは苦笑しながらリシャールに視線を向け

「……ありがたき幸せ。」

レイスの答えを聞いたリシャールは口元に笑みを浮かべて答えた。



「も、もう何がなんだか……」

「僕たちが知らない間に事態が動いていたみたいだね。」

一方その様子を見守っていたエステルとヨシュアは苦笑し

「クッ……この絶好のタイミングで”剣聖”を継ぐ2人と姫殿下の兄君でもある”リベールの若獅子”の増援か……!」

「ふふ……少し遊びすぎたようね。」

更なる援軍の登場にブルブランは唇を噛みしめ、ルシオラは自分達に勝ち目がない事を悟られないようにいつものように静かな笑みを浮かべていた。

「フッ……こちらとしては助かったがね。………さて、どうする。”身喰らう蛇”の諸君?この期に及んで我々とやり合うつもりはあるかな?」

「ルーク達との戦いで敗北した事に加えて私達の奇襲を受けた事によって君達はもはや満身創痍の状態だ。五体無事で帰還したいのならば陛下やクローディアの身は素直に諦めて撤退する事をお勧めするが?」

そしてリシャールとレイスはそれぞれ”執行者”達を睨んで問いかけた。



「……チッ……」

「……気に入らないわね……ユウナ達がここまでやられて、黙って帰ると本気で思っているのかしら?こうなったらパテル=マテルを呼んで―――」

二人の言葉にヴァルターが表情を歪めて唇を噛みしめ、不愉快そうな表情をしていたユウナが呟いてパテル=マテルを呼ぼうとしたが

「止めたまえ、ユウナ。我らは機を逃したのだ。これ以上拘るのは美しくないだろう。」

「女王陛下と姫殿下の確保も可能ならばという条件よ。二人とも、ここは引きましょう。」

「フン……仕方ねえな。」

「……………」

ブルブランとルシオラの説得によってヴァルターと共に納得し、パテル=マテルを呼ぶことを止めた。そしてブルブランはステッキを構えてヴァルター達と共に消えようとしていた。



「それでは諸君……我々はこれで失礼しよう。だが次なる試練は君たちの前に控えている。気を抜かないようにしたまえ。」

「次なる試練……」

「な、なによそれ!?」

「ふふ……すぐに分かるでしょう。それでは皆様、ご機嫌よう。」

エステル達に捨て台詞代わりに忠告を告げた執行者達は去って行った。

「あ……!」

「退いてくれたか……」

執行者達が撤退した事にエステルは声を上げ、ヨシュアは安堵の表情で溜息を吐いた。



「ふむ、これで猟兵どもも市街から撤退を始めるだろう。深追いができないのが残念だがまあ、贅沢は言うまい。」

「うん……って、それよりも!どうして大佐がこんな場所にいるわけ!?服役中じゃなかったの!?」

リシャールの意見に頷いたエステルだったが、すぐにリシャールがいる事に疑問を感じてジト目で訊ねた。

「だからもう大佐ではないんだが……まあいい。」

「とりあえず今はこの混乱を収めることが先決だ。君たちも手伝ってくれないか?」

「う、うん……それはもちろん。」

「まずは消火と怪我人の手当てをする必要がありそうですね。」

こうして……”結社”による王都侵攻作戦は辛くも食い止められた。エステル達は、軍の部隊と共に消火と混乱する市民へのフォローに回り……その内に、連絡を受けて駆けつけた他の仲間達とも合流する事できた後一通り落ち着くと謁見の間に集まった…………… 
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