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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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外伝~”六銃士”~後篇

~マルーダ城~



「しかし……話を聞く限り、クロスベルという地域にはお父様どころかかのユン・ガソルの国王ギュランドロス・ヴァスガンと”三銃士”達が共に手を取り合っているのですから、近い将来クロスベルは”覇道”を歩む事になるかもしれませんね。」

「クロスベルが”覇道”を歩むだと……?」

「一体それはどういう意味なのですか?」

メサイアの推測を聞いたユーシスは眉を顰め、ラウラは尋ねた。

「――――元ユン・ガソル国王”暴君”ギュランドロス・ヴァスガンと彼に仕える三人の英傑達――――”三銃士”はお父様や(わたくし)達―――メルキア帝国が最も苦戦した相手ですから。」

「えっと……具体的にはどんな凄さなの?父さんやナイトハルト教官の部隊を破ったんだから、相当だと思うけど……」

メサイアの話を聞いてある事が気になったエリオットは不安そうな表情で尋ねた。



「まず”三銃士”。ギュランドロス国王の妃でもあるルイーネ・サーキュリーは内政と外交能力、エルミナ・エクスは軍師としての能力、パティルナ・シンクは兵士達を率いる者としての能力とそれぞれ天賦の才を持ち、全員武術も相当の腕前ですから。―――戦場に”三銃士”が揃えばどのような劣勢であろうと、彼女達は互いに協力して優勢へと変えましたから。」

「話を聞く限りまさに”化物”だね。」

「何だかおとぎ話で出てくるような方々ですね……」

メサイアの説明を聞いたフィーとエマは目を丸くし

「―――いいえ。”化物”と呼ぶべき存在はやはりギュランドロス国王ですね。彼の者はお父様と同じ資質―――”覇王”の資質を秘めていますし、彼の者が戦場に出れば味方には熱狂を、敵には恐怖を刻み込みましたから。」

「そ、そんな凄い存在がクロスベル警察や警備隊の上層部に何でいるんだ!?」

「というか国王や国の将軍が何でクロスベルにいるのかも意味不明よね……?」

「ギュランドロスさんが元国王だったなんて……」

メサイアの説明を聞いていたマキアスは信じられない表情で声を上げ、アリサは戸惑いの表情で呟き、ガイウスは驚きの表情で呟いた。



「――ご本人達の話では転移門によって過去からこの時代へと飛ばされたそうです。」

「プリネさん?」

「まさか本人達と話した事があるのかしら?」

プリネの言葉を聞いたリィンは不思議そうな表情をし、サラ教官は尋ねた。

「ええ。ちなみにギュランドロスさんの話では”六銃士”がクロスベル警備隊の上層部についた理由は”ゼムリア大陸の時代を動かす”事です。」

「”ゼムリア大陸の時代を動かす”…………」

「一体どういう意味なのだ?」

ツーヤの話を聞いたエリゼは呆け、ラウラは尋ねた。



「フッ、俺も最初聞いた時は正気かと思った程だぞ?何せギュランドロス・ヴァスガンはクロスベルをいつか支配し、ゼムリア大陸の国家間の力関係を変えてクロスベルを大国へと成長させると豪語していたからな。」

「クロスベルを支配してゼ、ゼムリア大陸の国家間の力関係を変えるって…………」

「まさか……クロスベルと隣接しているエレボニア帝国かカルバード共和国に戦争を仕掛ける気なのか?」

「…………………」

静かな笑みを浮かべて言ったレーヴェの話を聞いたアリサは表情を引き攣らせ、ユーシスは真剣な表情で尋ね、サラ教官は目を細めて考え込んでいた。



「―――その可能性はあるかもしれませんね。」

「ええっ!?」

「プリネさんは何か知っているのですか?」

静かな表情で答えたプリネの言葉を聞いたエリオットは驚き、エマは目を丸くして尋ねた。

「元々エレボニア帝国軍がクロスベル警備隊との合同演習をした理由は汚職を持ちかけてきた帝国派議員を次々と逮捕している”六銃士”達の行動や、そんな”六銃士”達の行動によってクロスベルの市民達が彼らを慕う事に危機感を抱いたオズボーン宰相が提案したそうです。」

「オズボーン宰相が!?」

ツーヤの話を聞いたマキアスは驚きの表情で声を上げた。



「エレボニア帝国に真っ向から逆らうかのような行動をしているギュランドロス司令達に”釘刺し”のつもりで合同演習を提案したと思われるのですが……―――結果はサラ教官も仰ったように、ギュランドロス司令率いる警備隊によってエレボニア帝国軍は”全滅”。そしてクロスベル警備隊に敗北したという失態を隠す為にクレア大尉がギュランドロス司令達に忠告したそうですが……―――逆にギュランドロス司令達に合同演習によって作ってしまったオズボーン宰相の失態を黙る事を条件に脅迫された挙句オズボーン宰相への”釘刺し”をされたそうです。」

「クレア大尉が!?」

「へえ?あの女が脅迫されるなんてねぇ?」

プリネの話を聞いたリィンは信じられない表情をし、サラ教官は興味ありげな表情をした。

「しかも”鉄血宰相”へ”釘刺し”ができるほど謀略にも長けているだと……?」

「”鉄血宰相”に堂々と歯向かうくらいなんだから、もしかしたら本気でカルバード共和国かエレボニア帝国に戦争を仕掛けるつもりかもしれないね。」

「で、でも普通に考えたら国力や戦力差で圧倒的に不利よ……?」

「それにそのような無謀な事に他の者達もついていかないと思うがな……」

ユーシスは目を細め、フィーが呟いた言葉を聞いたアリサは不安そうな表情で答え、ラウラは真剣な表情で考え込み

「「「……………………」」」

アリサの言葉を聞いたプリネとツーヤは複雑そうな表情で、レーヴェは静かな表情でそれぞれ黙り込み

(お姉様、どうされたのかしら?)

ツーヤの様子に気付いたセレーネは首を傾げた。

「―――1つ言っておきましょう。”覇王”の資質を秘めている方が戦場の指揮をすればどのような逆境であろうと勝利に導くのが”覇王”です。実際かつてそれほど領地がなかったセンタクス領の領主であったお父様も各国や他のメルキア領に戦争を仕掛け、全て勝利しましたから。―――しかもお父様に加えてギュランドロス国王や”三銃士”もいるのなら、もはや手は付けられないと思いますよ?」

「……”六銃士”―――特に”黄金の戦王”と”紅き暴君”の過去を聞く限り、下手をすればかのドライケルス大帝以上の人物かもしれないわね。」

メサイアの話を聞いたサラ教官は真剣な表情で呟き

「し、しかもそんなとんでもない人物が2人もいるって話ですよね……?」

「……クロスベルはエレボニアとカルバードの領有問題の関係で過去様々な事件が起こっているから、戦争を仕掛ける理由としては充分だわ……」

マキアスとアリサは不安そうな表情をし

「―――フン、馬鹿馬鹿しい。たった6人と警備隊で国を滅ぼす等幾ら何でも非現実的すぎる。」

「その”六銃士”とやらがどれ程の使い手なのかはわからぬが、戦力や国力差はわかっているだろうから、そのような愚かな事はしないと思うがな。」

「それにギュランドロスさん達を知っているオレにはあの人達がそのような事をする人には見えないんだが……」

ユーシスは鼻を鳴らし、ラウラは真剣な表情で推測し、ガイウスは静かな表情で答え、その場は重苦しい雰囲気に包まれた。



「……その話は一端置いておきまして……―――メサイア皇女。何故メルキア出身の貴女がはるばるメンフィルに訪れたか聞いても構いませんか?」

そして重苦しくなった空気を変える為にプリネはメサイアを見つめて尋ねた。

「はい。メルキアにいるとお父様達の事を思い出してしまうのが辛いですから、他国に行こうと思いまして。それでメンフィル帝国は私のような亜人族でも受け入れてくれる国ですからメンフィル帝国に向かう事にしたんです。ミルスまでの船賃を支払った際にお恥ずかしながら路銀がつきてしまって、手っ取り早く路銀を手に入れる為に”斡旋所”の”依頼”を達成する為に魔物達と戦ったのですが……路銀がなかった為昨日の昼頃から何も食べていなく、後は皆様もご存知の通りです。」

「”依頼”?もしかしてオレ達の”特別実習”の課題のようなものなのですか?」

メサイアの話を聞いてある事が気になったガイウス尋ねた。



「はい。”斡旋所”とは市民達が傭兵達に請けて欲しい”依頼”を紹介する所です。要は傭兵達の仕事を紹介する場所ですね。」

「へえ。その”斡旋所”って所の役割は少し遊撃士協会に似ているわね……」

エリゼの説明を聞いたサラ教官は興味ありげな表情をし

「でも何故メンフィルに?”闇夜の眷属”達によって治められているエディカーヌ帝国でも亜人族は受け入れてくれますよね?」

ある事が気になったツーヤは首を傾げて尋ねた。

「エディカーヌにも行きましたが何となく空気が私には”合わない”と感じましたからエディカーヌで過ごす事は止めにしたのです。」

「その……ご両親の方々の元に戻りたいとは思わないのですか?メサイア皇女がいなくなって、とても心配しているでしょうし……」

「その点は大丈夫です。私が過去からこの時代に来る前にお父様とお母様も寿命でこの世を去りましたから。」

心配そうな表情のセレーネに尋ねられたメサイアは寂しげな微笑みを浮かべて答えた。



「寿命でこの世を去ったって……」

「―――こんな事を尋ねるのは失礼かと存じ上げますが、メサイア皇女は一体どれ程の年月を過ごしていらっしゃるのですか?」

メサイアの話から見た目とは裏腹にメサイアが相当の年齢である事に気付いたエリオットは表情を引き攣らせ、エマは戸惑いの表情で尋ねた。

「私の年齢ですか?私は今年で50歳になります。」

「50歳!?20代くらいかと思っていました……」

「あ、相変わらず異種族の年齢って見た目とは裏腹に滅茶苦茶歳を取っているな……」

メサイアの年齢を聞いたアリサは驚き、マキアスは表情を引き攣らせ

「フッ、そうなると同じ異種族のプリネとツーヤも年齢を詐称している可能性が出て来たな?」

ユーシスはからかいの表情で二人を見つめた。



「もう……私達は年齢を詐称していませんよ?」

「アハハ……無理もありませんよ。それよりプリネさん。今日はもう遅いですし、メサイア皇女にも客室に泊まっていってもらいますか?」

「そうね。エリゼさん、急で悪いのですけれど客室を1つ使えるようにしてもらえますか?」

「かしこまりました。」

「そ、そんな!夕食をご馳走になっただけでも凄くありがたいのに、申し訳ないです……」

エリゼに指示をしているプリネの様子を見たメサイアは慌てた様子で辞退しようとしたが

「フフ、気にしないで下さい。世界は違えど知り合いの娘が困っている所を見過ごせませんから。」

「今夜は城でゆっくり休んで、今後どのように生きるか考えて下さい。」

「…………わかりました。そこまで仰るのでしたらお言葉に甘えさせて頂きます。」

プリネとツーヤの好意を受け取り、会釈をした。その後リィン達はそれぞれの客室で明日に備えて休み始めた。 
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