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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第94話

~グランアリーナ・観客席~



「やっ……………たーーーーーーーー!!ママ達が勝った~!!」

「凄い……!エステルさん達、優勝したね!」

エステル達の勝利を見て、ミントやツーヤは大はしゃぎした。

「う~ん、エステルちゃん達、凄く輝いていていいね~。」

ドロシーはエステル達をカメラで写真を撮りまくっていた。

「まさか本当にカーリアン様に勝つなんて……!」

「うむ!さすがはエステルだ!それにカーリアン婆が負けるのをこの眼で見る事になるとは……ぷっくく!駄目じゃ、笑いが止まらん!フハハハハ!」

「エステル達、強くなったね。エヴリーヌ、エステル達と遊びたくなって来たよ、キャハッ♪」

一方プリネはエステル達の勝利に驚き、リフィアはカーリアンが負けた事に笑いを抑えられず大笑いをし、エヴリーヌはエステル達と戦いたくなった。



「フフ……お見事。近い内必ず会いに行くわね、エステル。」

また、上空から試合を見ていたニルは口元に笑みを浮かべた後、どこかに飛び去った。



~グランアリーナ~



「はあ、はあ………やったああああっ!」

自分達の勝利を宣言され、安心したエステルは地面に倒れ込んだ後、地面に手をついたまま、嬉しさの絶叫をした。

「勝った……勝てたのか……」

「はあはあ……。さ、さすがに疲れたねぇ……」

地面からなんとか立ち上がったヨシュアは自分達の勝利に未だ信じられない思いでいて、オリビエはかなりの疲れた表情で息を切らせていた。

「ああ。まさかあの”戦妃”に勝てるとは本当に思わなかったぜ!」

ジンは嬉しそうな表情でカーリアンに勝てた事を信じられない思いでいた。

「フフ……見事よ。まさか私を破るなんて思わなかったわ♪優勝、おめでとう♪」

一方カーリアンはオーブメントの回復アーツで自分を治癒した後、エステル達に近付いて、エステル達の勝利を称えた。

「えへへ……でも、なんで回復アーツや薬を使わなかったの?そしたらあたし達に勝ち目はなかったかもしれないのに。」

カーリアンの賛辞に照れたエステルは立ち上がった後、カーリアンが回復アーツを使わなかった事に首を傾げて、尋ねた。

「今まで武術大会を連覇していたこの私が、そんな無粋な事をする訳ないでしょ?それにピンチになればなるほど、試合が面白くなるしね♪後、貴女達にはやるべき事があるでしょ?」

「え……」

「もしかして僕達の事を考えてわざと負けたんですか?」

カーリアンの答えにエステルとヨシュアは驚いた。

「半分当たりで半分はずれよ♪一時とはいえ、本気を出したのは事実だし。それにここで私が完全に本気を出して、貴女達を負かしたら大人げない上、悪者でしょう?」

「む~………なんか納得いかないんですけど………」

悪戯が成功したようなカーリアンの笑顔にエステルは唸った。

「フフ………でもこの私に一時とはいえ、本気を出させた事は誇るべき事よ。そんな貴女達に敬意を表して、最後に放った貴女の最高の技を全て受けてあげた訳♪」

「む~………次に戦う時は絶対、本気状態で倒してやるわ!」

カーリアンの言葉を聞き、エステルはカーリアンを睨んで宣言した。

「楽しみにしているわ♪さて……と。そろそろ行くわね。」

「ロレントに帰るんですか?」

カーリアンの言葉を聞き、ヨシュアは尋ねた。

「まあ、普通ならそうする所なんだけど……ね。今年の王都は色々と起こりそうだから、もうちょっと滞在するつもりよ♪」

「それって………」

「……………」

カーリアンの答えを聞き、思い当たる事があるエステルは何かを言いかけたが、すぐに言うのをやめた。また、ヨシュアは複雑そうな表情をしていた。

「フフ………私の力を借りたいなら、いつでも私が泊まっているホテルの部屋に来なさい♪プリネ達には私が泊まっている部屋を伝えてあるわ。言ってくれれば、力を貸してあげるわ♪」

「ホント!?」

「リウイ皇帝陛下の許可もなく、そんな事をしていいんですか?」

カーリアンの申し出にエステルは表情を明るくし、ヨシュアは驚いた表情で尋ねた。

「な~んで、この私がいちいちリウイの許可を取らなきゃなんないのよ。私がどうしようが私の勝手よ。」

ヨシュアの疑問にカーリアンは溜息を吐いて答えた。

「そういう問題じゃないと思うんですが……」

「本人がいいって言ってるんだから、いいじゃない!えっと……じゃあもし頼む時があったら、遠慮なくお願いするわね!」

カーリアンの答えに呆れて溜息を吐いているヨシュアにエステルは気にしないよう言った後、カーリアンに頼んだ。

「ええ。……じゃあね♪貴女達が私に声をかけるのを楽しみに待っているわ♪」

そしてカーリアンはエステル達にウインクをした後、アリーナから去って行った。その後、優勝者であるエステル達の表彰式が始まった。



「それではこれより、優勝チームに公爵閣下の祝福の言葉が贈られます。代表者、ジン・ヴァセック選手!どうぞ、前にお進みください」

「は。」

司会の言葉を聞き、ジンはデュナンに一礼してデュナンの前に出た。

「おお、近くで見ると本当に大きいのだなあ……。東方人というのは皆、そなたのように大きいのか?」

デュナンはジンの体の大きさを見て驚き、尋ねた。

「いや、自分は規格外ですな。幼き頃より、良く食べ、良く眠り、鍛えていたら自然とこうなり申した。生来、物事を深く考えない質ゆえ図体ばかり大きくなったのでしょう。」

「ハッハッハッ、なるほどな。うむ!気に入ったぞ、ジンとやら!賞金10万ミラと晩餐会への招待状を贈るものとする!」

「ありがたき幸せ。」

そしてデュナンはジンに賞金10万ミラと晩餐会への招待状を渡した。

「そなたと、そなたの仲間に女神達の祝福と栄光を!さあ、親愛なる市民諸君!勝者に惜しみない拍手と喝采を!」

デュナンの宣言に応えるかのように観客達は惜しみない拍手をし、大きな喝采の声を上げた。



こうして、波乱に満ちた武術大会は幕を閉じた。



~グランアリーナ・選手控室・紅の組~



「フフ、面白い者たちが優勝することになったものだな。」

一方選手控室から表彰式を見守っていたリシャールは口元に笑みを浮かべた。

「まったく……。恥を知りなさい、ロランス少尉。決勝に行くどころか2回戦で、しかも他国の皇女に遅れを取って閣下の顔に泥を塗るなんて……。日頃のふてぶてしい態度はどうやらコケ(おど)しだったようね?」

「……恐縮です。」

カノーネはロランスがプリネに負けた事を責めた。責められたロランスは静かに頭を下げた。

「はは、カノーネ君。そう責めないでやってくれ。実は私の方から、ロランス君に全力を出さないように頼んだのだ。」

「えっ……!」

「…………………」

リシャールの言葉にカノーネは驚き、ロランスは黙っていた。

「情報部はその性質上、黒子の役に徹せねばならない。今回のように、華のあるチームが優勝する方が望ましいだろう。」

「なるほど……。公爵閣下も、あの東方人を予想以上に気に入られた様子……。目くらましにはもってこいですわね。」

リシャールの説明を聞いて納得したカノーネは不敵な笑みを浮かべた。

「しかし……今年の大会は残念だったな。親衛隊のシュバルツ中尉やモルガン将軍が参加していればもっと華やかだっただろうに。」

「うふふ、お(たわむ)れを……。そういう事なら、閣下ご自身が出場なさればよろしかったのに。あの小癪(こしゃく)なユリアなど足元にも及ばぬ腕前なのですから。それに閣下なら単独であの目触りな”戦妃”に勝てるのではないですか?」

「はは、私はそれほど自信家ではないつもりだよ。本気を出したロランス君にもあまり勝てる気がしないからね。」

「……お戯れを。閣下は少々、私のことを買いかぶりすぎているようだ。軍人とは名ばかりの猟兵あがりの無骨者(ぶこつしゃ)にすぎません。」

自分に対するリシャールの評価を聞いたロランスは謙遜して答えた。



「これでも人を見る目は確かなつもりだ。君に対抗できるとすれば、それこそあの男やメンフィルの名高い武将達やリウイ皇帝陛下くらいだろうな。」

「………………………………」

リシャールの言葉を聞いたロランスは何も言わず黙っていた。

「その彼のことですが……。このままでは、彼の子供たちがグランセル城に入ってしまいますわ。……それにメンフィルの重要人物達が4人も王都にいますが、何らかの処置を講じましょうか?」

「放っておきたまえ。公爵閣下が約束してしまったことだ。今更、遊撃士協会が介入しても計画が止まることはありえない。それにいくら実力が飛びぬけているメンフィルの者達が介入した所で所詮は個人だ。大した事はない。」

「で、ですが……」

リシャールの説明を聞いても、未だにカノーネは納得していない様子で何かを言いかけたが、リシャールはカノーネから目線を外してロランスに尋ねた。

「……ロランス君。計画の進行度はどのくらいだ?」

「現在90%を越えました。一両日中には、最終地点へ閣下をご案内できるかと思います。」

「よし、いいぞ。」

ロランスの報告を聞き頷いたリシャールは数歩前に出た。

「……王国の夜明けは近い。たとえ逆賊の汚名を受けても……必ずやこの手で明日を切り拓くのみ。2人とも、これからもさらなる活躍を期待しているよ。」

リシャールは決意の表情になった後、口元に笑みを浮かべてでカノーネとロランスに声をかけた。

「ハッ。」

「どこまでも閣下に着いて行きます!………(さて……博士奪還を許したあの者達や武術大会で敗北したあの者達がいても邪魔なだけね……計画が完了するまで謹慎でも言い渡しておきましょう。)」

リシャールの言葉にロランスは軽く礼をし、カノーネも礼をした後、心の中で博士奪還を許してしまった特務兵達や武術大会で敗北した特務兵達の処分を考えていた。

そしてリシャール達は表彰式が終わった後、デュナンを護衛しながら城に向かった…… 
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