| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第94話

エリゼの先導によって先を進んでいたリィン達は驚くべき光景を見た。



~マルーダ城・中庭~



「リスティの翼、フカフカして気持ちいい~♪」

「フフ、くすぐったいですよ~。」

「ねえねえ、リスティ!鬼ごっこをしよう!」

一人の睡魔の女性と子供達は中庭で遊び、その光景を見たアリサ達は戸惑いの表情でプリネ達に尋ねた。



「えっと……あそこにいる睡魔族の女性や子供達って貴族なの?」

「服装からして、どう見ても平民にしか見えんが……」

「―――睡魔の女性はリスティさん。リウイ陛下の使い魔です。リスティさんは子供好きですから、普段はああして子供達と遊んでいるんです。」

「それとユーシスさんの予想通り、子供達は貴族ではなく”平民”ですよ。」

戸惑いの表情をしているアリサとユーシスの疑問にツーヤとプリネがそれぞれ答えた。



「ええっ!?へ、”平民”!?」

「何で”平民”が城の中庭に……」

プリネの説明を聞いたエリオットは驚き、マキアスは信じられない表情をした。

「――――”幻燐戦争”終結時よりリウイ陛下の意向によって平時は城の中庭を解放して、憩いの場にし、シルヴァン陛下の代になっても変わらず続けているのです。」

「リウイ陛下が……」

「何でそんな訳のわからない事をしているの?」

エリゼの説明を聞いたガイウスは驚き、フィーは首を傾げて尋ねた。



「元々は子供好きのリスティさんが子供達を城に引き入れて遊んでいた事がきっかけだそうでして…………城に務めている方達は勿論、側室の方々も子供達の無邪気な笑顔は好きで、お父様もそう言った事を気にしない方ですから、そのままなし崩し的になって、今では中庭には平民の方達でも気軽に入れるようになっているんです。」

「へえ?エレボニアでは”魔王”と恐れられている人物とはとても思えないわね♪」

「サ、サラ教官……」

口元に笑みを浮かべたサラ教官の言葉を聞いたエマは冷や汗をかき

「ハハ……街のみんなと一緒に遊んだ時が懐かしいな、エリゼ。」

「ええ……最初は驚きましたけどね。誰でも城の中庭に入れるなんて。」

リィンとエリゼは懐かしそうな表情をし

「とても民に優しいお方ですね……」

「うむ。皇として懐が広い方だな。」

微笑みながら言ったセレーネの意見にラウラは頷いた。



「エレボニアでは信じ難い光景だな……」

「アハハ、確かに。」

驚きの表情のユーシスの言葉にエリオットは苦笑しながら頷き

「……異世界の皇族というのは、皆リウイ陛下やプリネ達のような方達なのか?」

ある事が気になったガイウスはプリネ達に尋ねた。

「アハハ………残念ながらメンフィル皇家は他の国の皇族と比べると”型破り”で特別ですよ。」

ガイウスの疑問にツーヤは苦笑しながら答え

「ええ。―――かつて反乱で国を乗っ取ってメンフィル王に即位したお父様は当初、民達から恐怖の存在として見られていましたが……善政を敷き、とても一国の王がする事とは思えない程型破りな事ばかりして、民の信頼を得たんです。」

プリネは優しげな微笑みを浮かべながら説明を続けた。



「一国の王としては型破りな事って……一体何をしたの?」

プリネの説明を聞いてある事が気になったアリサは尋ねた。

「そうですね……お母様から聞いた話なのですが……鉱山で事故が起これば自らが兵達を率いて救出活動をし……時には民達と共に畑を耕した事もあったそうです。」

「ええっ!?」

「一国の王が畑を耕す!?」

「あの外見で畑を耕すとか、正直似合わない。」

「確かにそれは言えてるわね~。」

「フィ、フィーちゃん、サラ教官……でも、正直信じられない話ですね。」

説明を聞いていたエリオットとマキアスは驚き、呆れた表情で答えたフィーと苦笑しているサラ教官の言葉に冷や汗をかいたエマは信じられない表情をした。



「ふふっ、確かに一国の王とすれば型破りな方ですね。ですが民達にとっては接しやすい王ですね。」

「なるほどな。近しくて接しやすい王だからこそ、反乱で乗っ取った国王を民は認めたのか。」

「フフ、どんな光景だったのか、少し興味があるな。」

セレーネは微笑み、ユーシスは納得した様子で頷き、ラウラは静かな笑みを浮かべた。その後リィン達は客室がある通路に案内された。



「うわ~……!」

「セントアークの時に泊まったホテルとも比べ物にならないくらい凄いな……」

自分達が泊まる客室を見たエリオットとガイウスは驚き

「ほ、本当にこの部屋を一人一部屋使っていいんですか……?」

「士官学院の実習なんだから、ここまでの高待遇はする必要はないと思うんだが……」

「そ、そうよね……?正直、この広さなら一部屋で班の男女別ごとで寝れるから4つで十分だと思うわよ……?」

エマとマキアス、アリサは表情を引き攣らせてエリゼに尋ねた。



「フフ、今の皆様は陛下によってメンフィル帝国に招待された”客人”なのですから、これくらいは当たり前です。」

「ま、この城の主が使っていいって言ってんだから、ありがたく使わせてもらいましょ♪王城の客室を一人で使えるなんて、多分2度と体験できない事でしょうし♪」

「そだね。」

微笑みながら答えたエリゼに続くようにサラ教官とフィーはそれぞれが決めた部屋に荷物を置き始め

「バレスタイン教官の言う通り、俺達が城の客室に泊まる事を陛下が許可しているのだから、臆する必要はあるまい。」

「うむ。修行中の我々が王城の客室を個人で使える等正直畏れ多いが、ここで断るのも我らの為に客室を手配してくれた陛下に失礼だしな。」

「お姉様!わたくしはお姉様と一緒のベッドで眠りたいのですが一緒の部屋でもよろしいですか……?」

「うん、別にいいよ。一緒のベッドで眠るなんて久しぶりだしね……」

「フフ、私が客室に泊まる事で城務めの方達が慌てないといいのですが……」

ユーシスとラウラは動じていない様子で、嬉しそうな表情をしているセレーネと共にツーヤ、苦笑するプリネはそれぞれが適当に決めた部屋に入って荷物を置き始め

「ハハ、貴族や皇族出身は全く動じていないのはさすがだよな……」

その様子を見ていたリィンは苦笑した後二人に続くように自分が泊まる部屋を適当に決めて荷物を置き始め、臆していたエリオット達もそれぞれ適当に部屋を決めてそれぞれの荷物を置き始めた。その後荷物を置いたリィン達はエリゼの先導である場所に向かっていると、メイド達がエリゼに話しかけて来た。



「申し訳ございません、エリゼ様!お客様をご案内中の所申し訳ないのですが、仕事でわからない事があってお尋ねしたい事がございまして……」

「少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「―――わかりました。皆様、少しの間だけお待ちください。」

メイド達に呼び止められたエリゼはメイド達に様々な指示を出していた。



「す、凄いわね、エリゼ……」

「う、うん……あのメイドさん達、どう見ても僕達より年上……というか相手が大人なのに、エリゼちゃん、ためらいもなく普通に指示をしているし、メイドさん達もエリゼちゃんに頭を下げて指示に従っているし……」

その光景を見ていたアリサとエリオットは驚き

「フッ、さすがは皇族の専属侍女長と言った所か。」

「恐らく侍女としては相当高い地位なのだろうな。」

「エリゼお姉様はメイド長のような存在なのでしょうね……」

ユーシスとラウラ、セレーネは感心した様子で見守り

「……あたしも一応専属侍女長なのに、どうして話しかけてこなかったんでしょう?」

「う~ん、ツーヤは”伯爵”だから話しかけにくかったんだと思うわ。それにツーヤの場合はどちらかというと親衛隊長としてのイメージが強いし。」

不思議そうな表情で首を傾げているツーヤを見たプリネは苦笑した。



「そう言えば兵士達もエリゼに敬意をはらっていたね。」

「え、ええ……メイドさんならまだわかるのですが、どうして兵士の方達まで……」

フィーの指摘に気付いたエマは戸惑いの表情をし

「な、なあリィン。エリゼ君は一体どれ程高い地位についているんだ……?」

「今までの様子から察するに、エリゼは城の中で相当高い地位だと思うのだが………」

「いや、俺に言われてもメイドに関する地位は知らないし。えっと、皇族の専属侍女長ってそんなに高い地位なのか?」

マキアスとガイウスに尋ねられたリィンは戸惑いの表情をした後城の事情をよく知っているプリネとツーヤに視線を向けて尋ねた。



「ええ。皇族の専属侍女長は侍女の中では最高位に値する地位ですから、侍女達が目標とする地位ですね。」

「―――更に専属侍女長はいざという時仕えている皇族の護衛も務めていますから軍の階級である”少佐”と同等の地位が与えられているんです。ですから兵士の方達がエリゼさんに敬意をはらっていてもおかしくないですね。」

「ええっ!?しょ、”少佐”!?」

「それじゃあエリゼ君は軍で言えばナイトハルト教官と同じ階級なのか!?」

「………………」

プリネとツーヤの説明を聞いたエリオットとマキアスは驚き、また他の仲間達も驚きや信じられない表情でエリゼを見つめ、リィンは口をパクパクしていた。



「ちなみに給料は毎月どのくらい貰っているの?」

「フィ、フィーちゃん。」

ツーヤに尋ねたフィーの質問を聞いたエマは冷や汗をかき

「えっと………専属侍女長の給与は確か毎月80万のはずで、更に年に1回だけある特別給与は400万のはずですが……」

ツーヤは考え込みながら答えた。



「は、80万ミラに加えてボーナスが400万ミラ!?ラインフォルトグループでもそんな高給取りは母様くらいよ!?」

「一月が80万ミラなら、全て合わせて1年で1500万ミラ近くを稼いでいるという事になるな。」

「1500万ミラもあったら、家も普通に買える値段だぞ……」

「というか郷の民達がシュバルツァー家に毎月治めている税金もそんなになかったと思うんだが……それ以前に訓練兵だった頃の俺の給料の4倍は軽く上回っているんだが……」

「わあ……!エリゼお姉様って、お金持ちなんですね♪」

「う、羨ましい……!あたしの給料の3倍以上はあるじゃない!しかもボーナスは400万ってもらいすぎよ!あたしでも毎月25万ミラでボーナスは70万ミラなのに……!」

ツーヤの答えを聞いたアリサは驚き、ガイウスは目を丸くし、マキアスとリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、セレーネは尊敬の眼差しでエリゼを見つめ、サラ教官は羨望の眼差しでエリゼを見つめた。

「サラの場合はむしろ貰いすぎ。」

「全くだな。給料泥棒と言ってもおかしくないくらい仕事をサボっているからな。」

「なんですってぇ~?」

ジト目で呟いたフィーと呆れた表情で答えたユーシスの言葉を聞いたサラ教官はジト目で二人を睨み

「アハハ……あれ?って事はツーヤも同じくらい貰っているって事だよね?確かツーヤはプリネの専属侍女長なんでしょ?」

その様子を見守っていたエリオットは苦笑した後ある事に気付いて不思議そうな表情でツーヤを見つめ

「加えて親衛隊長も務めている上に”伯爵”でもあるから、相当の金額を毎月貰っているのではないか?」

「う”っ…………」

興味ありげな表情をしているラウラに見つめられたツーヤは表情を引き攣らせた。



「ええ。親衛隊長としての給与が90万。専属侍女長としての給与が80万。そして”伯爵”ですから当然国民が毎月治めている税の一部―――100万ですから合計270万は毎月貰っているはずですよ?」

「プ、プリネさん!」

プリネの答えを聞いたツーヤは焦り

「毎月に、270万ミラ……」

「途方もない金額ですね……」

「というかラインフォルトグループだったら新人の一般社員の年俸も超えているんだけれど……」

「凄いです、お姉様!」

マキアスとエマ、アリサは冷や汗はかき、セレーネは尊敬の眼差しでツーヤを見つめ

「そりゃそれだけもらっていたらセレーネの分の学費なんて余裕で払えるだろうね。」

「というかそんなに毎月貰っているんだったら、日頃世話になっているあたしに飲み代くらい奢ってよ!?薄情な生徒ね~……」

フィーは呆れた表情で呟き、サラ教官は悔しそうな表情でツーヤを睨んだ。

「フッ、今の話を聞く限り(エリゼ)がそれだけもらっているのだから最低でも親衛隊長くらいにまで出世しないと、兄としての面子が保てなさそうだな?」

「う”っ……」

そしてからかいの表情のユーシスに見つめられたリィンは唸り声を上げた。



「アハハ……でも、リィンさんも17歳のわりに結構毎月もらっているはずですが……」

「へ……」

しかし苦笑しながら言ったツーヤの言葉を聞いたリィンは呆け

「―――訓練兵としての給与が15万に加えて私の護衛という特別任務にもついていますから、特別手当てとして20万毎月もらっているはずですから計35万は毎月もらっているはずですよ?」

「何ですって!?」

「ええっ!?というか俺も初耳なんだけど……」

プリネの説明を聞いたサラ教官は声を上げてリィンを睨み、リィンは信じられない表情をした。



「そ、そう言えばリィンは訓練兵だったな……」

「訓練兵とはいえ兵士には変わりないのだから、当然給与もあるだろうな。」

「というか何でリィン自身がそんなに貰っている事を知らないの?」

話を聞いていたマキアスは冷や汗をかき、ラウラは納得し、フィーは首を傾げて尋ねた。



「いや、訓練兵としての仕事を休んで学生としてしばらく生活するから当然給料なんて入らないと思って残額とか全然確かめなかったんだが……」

「フフ、でしたら機会があれば確かめたらどうですか?4月から私の護衛を務めていますから150万ミラ近く貯まっているはずですよ?」

「……………………」

プリネに微笑まれたリィンが冷や汗をかいて表情を引き攣らせたその時サラ教官はポンとリィンの肩に手を置き

「リィン、以前トマス教官にあたしを売った時の”借り”、あんたが学院を卒業するまでずっとあたしの飲み代を奢る事で許してあげるわ♪」

「ええっ!?」

「生徒に酒代をたかるとは教官としてのプライドもないのか?」

「アハハ……」

満面の笑みのサラ教官の言葉にリィンは驚き、ユーシスは呆れ、エマは苦笑していた。



「―――お待たせしました。あら?どうされたのですか、皆さん。」

その時戻ってきたエリゼは驚きや信じられない表情で自分を見つめるⅦ組の面々の様子に首を傾げた。

「えっと、何て言うか……」

エリゼの疑問にエマは答えを濁し

「ふふっ、改めてエリゼの凄さを知っただけだ。」

「???」

静かな笑みを浮かべて答えたラウラの言葉を聞いたエリゼは再び首を傾げた。



その後エリゼの先導によってリィン達は会議室に通された。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧