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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第78話

~山猫号~



「あ、ありえない……」

翌日偶然リベール領空に訪れていたカプア一家は浮遊都市に気づき、望遠鏡で浮遊都市をジョゼットは信じられない表情で見つめ続けた。

「な、なんなのアレっ!?あの大きさ……メチャクチャすぎるよっ!」

「ありゃあ、間違いなく5千アージュ以上はあるな……。巨大な浮島ってところかよ……」

「いや……基本は人工物みたいだな。島っていうよりは浮遊都市って言うべきかもしれん……」

ジョゼットの言葉にドルンは呆けた表情で答え、キールは真剣な表情で見つめ続けていた。

「ふ、浮遊都市……」

「……こうしちゃいられねえ……」

ドルンの言葉にジョゼットは呆け、一方ドルンは口元に笑みを浮かべて頷いた後、指示をした。



「……よーし、野郎ども!このまま浮遊都市に乗り込むぞ!」

「あ、兄貴!?」

「ほ、本気なの!?」

ドルンの指示を聞いたキールとジョゼットは信じられない表情でドルンを見た。

「本気も本気、大本気だぜ!もしも”結社”の連中がアレを甦らせたってんなら……ドデカイお宝がわんさと眠ってるに違いねえ!」

「か、勘弁してくれよ~……。さすがにアレは俺たちの手に負えないぜ!ジョゼットもそう思うだろ!?」

ドルンの説明を聞いたキールは呆れた表情で溜息を吐いた後、ジョゼットに同意を求めたが

「う、うーん……。ボクも、ここまで来た以上色々と確かめてみたいかも……」

「ガクッ……」

唯一の味方であったジョゼットまで同意した事に肩を落とした。



「ま、まあ、昨夜から様子が変だし用心はした方がいいと思うよ。導力通信も全然入ってこないし……」

「確かに、軍やギルドはともかく民間の通信も入らねえってのは―――」

ジョゼットの説明にドルンが頷いたその時、金色の光の波が山猫号に差し込んだ。

「うおっ……」

「な……」

「ひ、光の波……?」

突然の光にドルン達が驚いたその時、山猫号内の機能が全て停止した。

「ええっ!?」

「何だ、故障かよ!?」

「お頭、大変だっ!」

機能が全て停止した事にジョゼットとドルンが驚いていたその時、一人の空賊団員が慌てた様子でブリッジに入って来た。



「導力機関、飛翔機関共にいきなり停止しちまったぁ!」

「な、なんだと~!?」

「ど、どうなってるわけ!?」

「……こりゃあマズイな……。飛翔機関による反重力フィールド低下……。ついでに舵も無反応ときた。」

団員の報告を聞き、ドルンとジョゼットが驚いている中、キールは冷静な様子で答えた。

「ちょ、ちょっと待て!?」

「な、何とかならないの!?」

キールの言葉を聞き、冷や汗をかいた2人は慌てた様子で尋ねた。

「………………………………。……この段階で俺たちに出来ることは1つしかない。」

「「それって!?」」

キールの言葉の続きをジョゼットとドルンは声を揃えて尋ねたその時

「このまま天に召されないよう女神達に祈ることくらいかな……」

キールが疲れた表情で答えると山猫号は重力に任せて落下し始め

「うそおおおおおおおっ!?」

「どえええええええええっ!?」

そして山猫号はどこかに落下した。



導力停止現象により、各地は混乱していた。ルーアンでは跳ね橋が上がった状態で停止して、住民達は困り――



――ツァイスでは市民たちは中央工房に押し寄せ、事情の説明をマードック工房長に求め―――



――ロレント近郊の街道では王国軍の警備艇が街道の真ん中に墜落していた――



そしてヴァレリア湖では墜落を免れていたアルセイユの甲板でユリア大尉とラッセル博士が今後の事を話し合っていた。



~遊撃士協会・ボース支部~



その頃、エステル達はボースのギルドで今回の件を受付のルグランに報告していた。

「ふむ、四輪の塔でそんな事があったとはな……。まったくご苦労じゃったな。ともあれ、お前さん達には報酬を渡しておくとしよう。」

エステル達の報告を聞き終えたルグランは疲れた表情で頷き、エステル達に報酬を渡した。

「……しかし、とんでもない事態になってしまったものじゃ。まさか、オーブメントが使えなくなってしまったことがこれほどの混乱を呼ぶとはの……」

「うん……日頃どれだけオーブメントの恩恵を受けていたのか思い知らされたわ……」

「そうだね……。通信、交通、国防、生産ライン……。国家機能がマヒしたのと同じだからね。」

(”オールドラント”で言えば、”音素”が無くなるようなものか……)

ルグランの言葉にエステル達が同意している中、バダックは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「市民にとって心配なのは照明と暖房でしょうね。昨日の夜はずいぶん街が混乱したんじゃないの?」

「うむ……。ギルド、工房、市長邸に市民が押し寄せて大変じゃった。何が起こっているのか聞かれてもこちらも答えようがなくてのう。おかげで寝不足じゃよ、ふう。」

シェラザードに尋ねられたルグランは頭を抑えて答えると溜息を吐いた。



「そっか……お疲れさま。」

「例の浮遊都市の件もあるし、かなりマズイ状況みたいだな。パニック一歩手前ってところか。」

「まあ、リベールは治安がいいから暴動の心配はなさそうだが……この状況が続けば皆、参ってしまうかもしれん。」

「うむ……早急に対策を取らなくてはな。―――で、お前さんたち。ラッセル博士から託された起死回生の策というのは何かね?」

アガットとジンの推測に頷いたルグランはエステル達を見つめて尋ねた。

「起死回生というほど大げさなものじゃないけど……」

「ラッセル博士が、新発明の試作品を提供してくれたんです。」



~昨夜・アルセイユ・作戦室~



「―――これが試作品の『零力場(ゼロりきば)発生器』じゃ。」

「零力場……発生器?」

ラッセル博士が自分の目の前に出した装置の名前を聞いたエステルは首を傾げた。

「簡単に言うと、”ゴスペル”が発生させる特殊な波長の導力場……。それによる共鳴を相殺する力場を発生する回路というわけじゃ。」

「…………ちっとも簡単に聞こえないんですけど……」

「す、すみません……私もイマイチ理解できなくて……一体どういう意味なのでしょうか?」

「要するに『導力停止現象』を阻止できるって事でしょう?」

ラッセル博士の説明を聞いてもエステルとステラが理解できていない中、既に理解していたレンはラッセル博士に確認した。



「ええっ!?」

「ほ、本当ですか!?」

「うむ……その通りじゃ。結局、『導力停止現象』とは”ゴスペル”を通じてオーブメントの導力が吸収されるという現象じゃ。『何処へ』というのが謎じゃったがここへ至ってようやく明らかになった。」

「あの浮遊都市……”輝く環”ということですね。」

ラッセル博士の説明を続けるようにクローゼは呟いた。

「うむ、その通りですわい。”輝く環”は、異次元から”ゴスペル”という穴を通じて『導力停止現象』を起こしていた。その穴は余りに小さかったため影響範囲は狭くてすんでいたが……。”輝く環”が解放されたことでその範囲は一気に広がってしまった。それこそ王国全土を巻き込んでしまうくらいにな。」

「王国全土……」

「それが今回の現象ですか……」

「市民達の生活に間違いなく影響を与えているだろうね……」

「―――それに軍にも大打撃を与えているだろうな。この世界の兵器は”導力”を必要としているのだからな。」

ラッセル博士の説明を聞いたエステルは呆け、ヨシュアは真剣な表情をし、レイスは厳しい表情で考え込み、リオンは静かな表情で呟いた。



「うむ、おそらく王国にあるありとあらゆるオーブメントが動かなくなってしまっているはず。じゃが、この『零力場発生器』は《環》の干渉を阻止できる働きがある。―――言い換えれば、これの側にあるオーブメントは問題なく動くということなんじゃ。」

「わぁ……!」

「す、凄いじゃない!」

「ヘッ、そいつを使えば万事オッケーってわけか。」

「ああ、それがたくさんあれば国内の混乱も収まるんじゃねぇのか?」

ラッセル博士の説明を聞いたティータ、エステル、アガット、ルークは表情を明るくしたが、ラッセル博士は難しい表情で説明を続けた。



「いや……そこまで都合は良くない。まず第一に、この試作品が守れる対象は限られておってな。せいぜい両手で持てる大きさくらいのオーブメントくらいなんじゃ。」

「両手で持てる大きさ……」

「むう、そうなるとかなり限られてきちまうな……」

「どんなオーブメントだったらいいんだろう……?」

「フム……思いつく限りで言えば通信器や戦術オーブメントに導力を使う武器……と言った所か。」

ラッセル博士の話を聞いた仲間達が考え込んでいる中首を傾げているソフィの疑問にバダックは答え

「それに”第一に”という事は他にも欠点があるという事ですよね?」

「そう、ですね。話を聞く限り、かなり高度な技術で創られていますから、恐らくは数に限りがあると、思います。」

「うむ……その通りじゃ。カシウスに頼まれていたとはいえ、16個しか完成できなかった。」

イオンとアリエッタの推測に頷いたラッセル博士は話を続けた。



「16個……結構多いと思うんだけど。って、父さんに頼まれていた?」

「うむ……しばらく前にわしの所に来て開発を依頼していったんじゃよ。その時は、こんな騒ぎになるとは夢にも思っておらんかったが……」

「そ、そうなんだ……」

「さすが旦那。先の先まで読んでいたわけか。」

「フフ、さすがは名高き”剣聖”ね。」

(ハハ、同じ”剣聖”でもあいつにそこまでの能力はねぇだろうな……)

ジンと共にアーシアが感心している中、フレンはある人物を思い浮かべて苦笑していた。



「しかしそうなると……16個の使い方というのはほぼ決まってしまいますなぁ。」

するとその時”零力場発生器”の用途を推測できたケビンは苦笑しながら答えた。

「ほう……お前さん、なかなか鋭いな。」

「え、え、どういうこと?」

「混乱の最中で一番重要なんは何をおいても素早く正確な情報や。結社の連中が現れたとしても、必需品をどこかに運ぶにしても、情報が届かんかったら対処できん。そうなると……」

「各地にある通信器を回復させるために使う……つまり、そういう事ですね?」

理解できていない様子のエステルにケビンが説明し、ヨシュアがケビンの説明を続けた後、確認した。



「ビンゴや♪」

「そっか、確かに……」

「軍としても、導力銃や飛行船が使えなくなったのは致命的だが……。司令部や各部隊との連絡が途絶してしまったのも深刻だ。特に王城、ハーケン門、レイストン要塞の間の連絡は早急に回復しておきたい。」

「ギルドにしてもそれは同じ……。支部間の連絡が取れなかったら何か起こっても対処できないわ。」

「ふむ、異存はないようじゃの。それではユリア大尉。王国軍には10個の『零力場発生器』を渡そう。それだけあれば、アルセイユ、王都、レイストン要塞、ハーケン門、各地の関所がカバーできるじゃろ。」

「……かたじけない。早速、伝令を出して各地に届けさせるよう手配します。」

「うん……分かったわ!」

「間違いなく届けます。」

ラッセル博士の言葉にユリア大尉とエステル、ヨシュアはそれぞれ力強く頷いた。



~遊撃士協会・ボース支部~



「なんと……通信器が使えるようになるか!それは助かる!早速、その『零力場発生器』とやらを試してもらえんかね?」

「オッケー。」

「ティータ、お願いできるかな?」

「うん。ちょっと待っててね。」

ヨシュアに頼まれたティータは頷いた後、通信器の蓋を開いて『零力場発生器』を設置した。



「………………………………。……うん。これで設定は完了だよ♪」

「なんだ、えらく早いな?」

「えへへ、通信器の中に固定しちゃうだけですから。それじゃあ……」

アガットの疑問に答えたティータは通信機のスイッチを入れた。すると、通信器の電源が灯った。

「おお……!」

「やった……!」

「ふふ、どうやら本当に『導力停止現象』の影響を受けずに済むみたいね。」

「えっと、それじゃあ続けてちゃんと通信が届くかテストしてみますね。アルセイユに残っているおじいちゃんに連絡してみます」

通信器が動いた事に表情を明るくしているルグラン達にティータは答えた後、アルセイユにいるラッセル博士に通信をした。



「もしもし……。あ……おじいちゃん!?うん!今、ボースのギルドにいるの。だいじょうぶ。ちゃんと動いているから。……うん……うん。おじいちゃんも頑張ってね!えへへ……ちゃんと通信も繋がりました。」

通信を終えたティータはエステル達に笑顔で答えた。

「えへへ……ちゃんと通信も繋がりました。」

「やった!」

「さすが博士の新発明だね。」

「いやはや、博士には何とお礼を言ったらいいものか。ところで、ラッセル博士はアルセイユに残ったようじゃが……。姫殿下と王子殿下、”星杯騎士団”の面々、それにルークとレン、後はソフィとリオンはどうしたのかね?」

ルグランは安堵の溜息を吐いた後、エステル達と共にいた人物たちがいない事に気づいて尋ねた。



「あ、クローゼとレイスさん、ケビンさん達なら親衛隊の隊士さんたちと一緒に朝一番で王都に向かったわ。クローゼとレイスさんは女王様と、ケビンさん達は大司教さんと、それぞれ話し合うつもりみたい。」

「なるほど……。王家には王家の、教会には教会の有事における務めがあるようじゃな」

「それと、王都のギルドに『零力場発生器』を届けるのは彼女達が引き受けてくれました。しばらくしたら、こちらにも連絡が入ってくるかもしれません」

「そうか……助かるわい。……それでルークとレン、ソフィとリオンは何故いないのじゃ?」

エステルとヨシュアの説明を聞いたルグランは質問をつづけた。



「あ、うん。何でもあたし達が”塔”の探索をしている間に父さんからアルセイユに連絡が来たらしくて、”塔”の異変の解決が終わったらルーク兄達に頼みたい事があるって内容だったらしくて、4人はレイストン要塞に向かったわ。」

「フム……?ルークとレンはともかく、ソフィとリオンにまで頼みたい事とは一体なんじゃろうな……?」

「……恐らくラッセル博士に”零力場発生器”の開発を頼んだ時のように、今回の件に対する何らかの対策の為でしょうね。ちなみにツァイスのギルドには兄さん達が届けてくれるそうです。」

「そうか……ではお前さんたちはこれから残りのロレントとルーアンのギルドを回ってくれるというわけじゃな?」

ヨシュアの話に頷いたルグランはエステル達を見回して訊ねた。



「うん、そのつもり。……本当なら、あの浮遊都市を何とかしたいところなんだけど……」

「そうね……。すでに”結社”の連中は乗り込んでるみたいだし……」

「だが、飛行船が使えねえんじゃあ手も足も出ねぇからな……。ヘッ、どうにも歯がゆい状況だぜ。」

「………………………………」

「ま、焦っても仕方あるまい。今は自分たちが片付けていくしかないだろう。」

「……だな。」

「ええ……気合いを入れていきましょう!」

その後メンバーを編成したエステルとヨシュアはまず最初にルーアン支部に向かった。 
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