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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第86話

~地下墓所~



「き、消えた……」

「くっ、またしても面妖な術を……」

「しかもテロリスト達にまで逃げられてしまったな……」

「捕まえる絶好のチャンスだったんですけどね……」

ブルブランが消えるとエリオットは呆け、ラウラやマキアス、ツーヤはそれぞれ悔しそうな表情をし

「……陛下、リフィア殿下、それにペテレーネ神官長。エリスの為に動いて頂き、本当にありがとうございました……」

「ありがとうございます……お蔭でエリスを無事、奪還する事ができました。」

リィンはリウイ達を見つめて頭を下げ、リィンに続くようにエリゼも頭を下げた。



「フフ、気にしないで下さい。妹さんが無事で本当によかったですね。」

「うむ!それに自国の民を救うのも皇族として当然の事だ!」

「…………エリゼにはリフィアの件でいつも世話になっているからな。その礼の一部を返したまでだ。」

二人にお礼を言われたペテレーネは微笑み、リフィアは胸を張り、リウイは静かな表情で答えた。するとその時

「……ん……?」

「わたくし……どうして……」

エリスとアルフィン皇女がそれぞれ目覚めた。



「エリス!」

「姉様……?」

「殿下、ご無事ですか!?」

「リ、リィンさん……?ええ、何とかお蔭様で……それより一体どうなって――――え。」

エリスと共に目覚めたアルフィン皇女はリウイ達に気付いた。



「リ、リウイ皇帝陛下!?それにリフィア皇女殿下やペテレーネ神官長まで……!一体どうしてこちらに……」

「陛下達はエリス達の救出の為に駆け付けてくれたんだ。」

リウイ達を見て驚いているエリスにリィンが説明し

「ええっ!?陛下達が私の為に……ですか?一体どうして……」

説明を聞いたエリスは驚いた後不思議そうな表情でリウイ達を見つめた。するとその時



「アルフィン殿下!」

「あ……」

「この声は……!」

聞き覚えのある声が聞こえ、声を聞いたエリオットは目を丸くし、マキアスが驚いたその時クレア大尉とサラ教官が駆け付けて来た。



「殿下、お怪我はありませんか!?」

「クレア大尉……ええ、大丈夫です。」

「……どうやら全員無事のようね。」

クレア大尉がアルフィン皇女を心配している中、サラ教官はリィン達を見回して安堵の表情をした。



「お、おかげさまで……」

「ええ……リウイ陛下達が駆け付けてくれたお蔭で何とか……」

「というか、一足遅すぎ。」

エリオットとマキアスはそれぞれ答え、フィーはジト目でサラ教官を見つめた。

「ゴメンゴメン……って、あれ?テロリスト達は?もしかして逃がしちゃったの?」

「……リウイ陛下達が彼らを追い詰めたのだが”怪盗B”によって、逃がされてしまいました。」

「”怪盗B”ですって?どうして奴が……」

ラウラの答えを聞いたサラ教官は眉を顰めた後真剣な表情で考え込んだ。

「……どうやら”身喰らう(ウロボロス)”の”計画”の為にテロリスト達が必要だったようです。――――”幻焔計画”と言っていました。」

「”幻焔計画”…………どうやら連中は今度はエレボニアで”リベールの異変”のような事を起こそうとしているかもしれないわね……」

「ええ……恐らくそうでしょうね。」

リィンの話を聞いて真剣な表情で考え込んで呟いたサラ教官の言葉にツーヤは頷いた。



「………………リウイ陛下。殿下達の救出に陛下達自らが動いて下さった事やテロリスト達の仕業によって帝都内に放たれた魔獣や人形兵器の掃討にメンフィル軍に協力させて頂いた事、誠にありがとうございました。」

リィン達の話を聞いて黙って考え込んでいたクレア大尉は気を取り直してリウイに会釈をした。

「礼は不要だ。―――それより今回エリスが攫われかけた責任……エレボニア帝国はメンフィル帝国に対してどう取るつもりだ?」

「え…………」

「なっ!?」

「ええっ!?せ、責任!?」

「い、一体どういう事なんですか……!?」

「!!まさか……!」

「………………」

リウイの言葉を聞いたエリスは呆け、リィンとエリオット、マキアスは驚き、何かに気付いたラウラはサラ教官と共に真剣な表情でリウイを見つめ

「………ッ……!………私如きの身では判断しかねます。」

クレア大尉は唇を噛みしめた後すぐに気を取り直して静かな表情で答えた。



「あ、あの……エリスが攫われてしまった責任とはどういうことですか……?」

その時アルフィン皇女が戸惑いの表情で尋ねた。

「ハア……―――アルフィン皇女。お主、エリスがメンフィル帝国の貴族の子女とわかっていての質問か?」

アルフィン皇女の質問に呆れた表情で溜息を吐いたリフィアは真剣な表情でアルフィン皇女を見つめて尋ねた。

「え…………………――――!!あっ…………!」

リフィアの指摘に呆けたアルフィン皇女だったが、他国の貴族の子女が自分の傍にいたせいで、誘拐に巻き込まれてしまったという事実に気付いて表情を青褪めさせた。



「―――加えてエリスさんの姉―――エリゼさんはリフィア殿下の専属侍女長を務め、将来はリフィア殿下にとってなくてはならない臣下へと成長する事を期待されている方です。万が一、エリスさんがテロリスト達によって攫われてしまった場合、テロリスト達がエリスさんの身を盾にエリゼさんやメンフィル帝国に何らかの要求をしてきた可能性も考えられます。もしそうなった場合、間違いなく国際問題へと発展してしまうでしょうね。」

「……………」

「……ぁ………………」

「エリス…………」

静かな表情で語ったペテレーネの推測を聞いたエリゼは目を伏せて黙り込み、エリスは自分が誘拐されかけた事が国際問題に発展しかける可能性がある事を指摘されて表情を青褪めさせ、エリスの様子に気付いたリィンは辛そうな表情をした。



「―――それとエリスとアルフィン皇女にも言いたい事がある。シュバルツァー家がエレボニア皇家と(ゆかり)がある事は知っている。その関係でエリスがアルフィン皇女の付き人を務めている事も別に構わんが……付き人を務めるならせめてどちらかからメンフィル帝国(俺達)に一言言って欲しかったのだがな?下手をすればエレボニア皇家による引き抜き行為、もしくはエリスの実家――――シュバルツァー家の裏切り行為にも見られてしまうぞ。」

「も、申し訳ございません!(わたくし)の軽率な行動で陛下達にご迷惑をかけた所か、不信感まで抱かさせしまって……!―――どうか罰するなら、姫様ではなく私を罰して下さい!今回攫われかけてしまった件については私の責任ですし、私達―――シュバルツァー家は祖国を裏切るつもりなどございません!」

「エ、エリス!?」

リウイの指摘を聞いて慌てた様子で答えて頭を下げた後決意の表情でリウイを見つめ、自分を罰するように言ったエリスの言葉を聞いたリィンは表情を青褪めさせた。



「エリスの責任ではございませんわ!エリスが攫われかけてしまった責任はわたくしにありますわ!わたくしがエリスがメンフィル帝国の貴族の子女と承知していながら、陛下達に許可を取る事なくエリスを付き人に指名した件もそうですし、エリスがわたくしの付き人を務める事によって起こる危険の可能性も考えずに護衛の配慮すらしていませんでしたもの……!どうか罰するならわたくしを罰して下さい!」

その様子を見たアルフィン皇女は血相を変えてリウイを見つめた後頭を下げ

「姫様…………」

「…………アルフィン皇女殿下の責任ではございません。エリスさんがメンフィル帝国の貴族の子女と承知しながら、警護を怠った事や他国の貴族の子女であるエリスさんがアルフィン殿下の付き人に指名された事を承知していながら陛下達にご報告しなかった私達に責任があります……どうか罰するなら殿下ではなく私達を罰し下さい。」

アルフィン皇女の行動を見たエリスは驚き、クレア大尉は少しの間考え込んだ後リウイを見つめて頭を下げた。



「クレア大尉……」

「…………」

リウイ達の様子を見守っていたマキアスは辛そうな表情になり、ツーヤは複雑そうな表情で黙り込み

「ねえ。この場合、誰が悪い事になるの?」

「ぼ、僕に聞かれてもわからないよ……」

「……………………」

フィーに尋ねられたエリオットは不安そうな表情になり、ラウラは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「………………―――恐れながら陛下。本来なら俺のような訓練兵如きが意見を述べるのは筋違いと承知していますが、どうか聞いて頂いてもよろしいでしょうか?」

するとその時考え込んでいたリィンは静かに前に出てリウイを見つめて申し出た。

「ほう?」

「「に、兄様……?」」

「リ、リィンさん……?」

リィンの申し出を聞いたリフィアは興味ありげな表情をし、エリゼとエリス、そしてアルフィン皇女は戸惑いの表情でリィンを見つめた。



「言ってみろ。誘拐されかけたエリスの家族―――シュバルツァー家の跡継ぎであり、”七大罪”の一柱と”精霊王女”を我らメンフィルの戦力として引き込んだ功績を残しているお前にも当然発言の権利はある。」

「ハッ、ありがとうございます。まずはエリスが陛下達に無許可でアルフィン皇女殿下の付き人を務めていた件についてですが……昨日(さくじつ)大使館を抜け出してお忍びで帝都に来訪し、エリス達と出会っているリフィア殿下がエリスがアルフィン殿下の付き人に指名されている事を知る事もできたと思われます。」

「なぬ?それはどういう事じゃ?」

「に、兄様……?一体何を……」

リウイの問いかけに答えたリィンの推測を聞いたリフィアは眉を顰め、エリゼは戸惑いの表情でリィンを見つめた。



「昨日、リフィア殿下はエリスとアルフィン皇女殿下が親しくしている所を御身の目で見ていました。――――皇族が特定の貴族と親しくなる。この意味は聡明な陛下やリフィア殿下ならお分かりになるかと愚考いたします。」

「―――なるほどな。通常皇族が特定の貴族と親しくしていると、その貴族は大抵付き人に命じられる。確かにその事に気付かずに友人同士と思われる程親しい様子を見せているアルフィン皇女やエリスに二人の関係すら尋ねなかったリフィアの落ち度だな。」

「むう………言われてみれば確かにそうじゃな……」

リィンの指摘に納得した様子で聞いていたリウイは口元に笑みを浮かべてリフィアを見つめ、リフィアは唸った後疲れた表情で溜息を吐いた。



「そしてエリスが攫われかけてしまった件ですが…………ここは陛下の寛大な御心で、大目に見て頂けないでしょうか?幸いエリスは”陛下が常任理事を務めているトールズ士官学院に所属する俺達が無事奪還する事ができ”、目立った傷もありません。」

「……つまりはエレボニア帝国の不手際を見逃せ、と言いたいのか?」

リィンの言葉を聞いたリウイは真剣な表情でリィンを見つめて問いかけた。

「―――はい。誘拐未遂で終わった事件を追及しすぎてしまっては、”大陸最強”と称えられているメンフィル帝国の”器”が小さいのではないかと、エレボニア帝国だけでなく他国から勘違いされてしまう恐れも考えられます。」

「………………………」

「ほう……?リウイを相手に随分と大きく出たな……?」

「「に、兄様…………」」

リィンの推測を聞いたリウイは目を細め、リフィアは不敵な笑みを浮かべ、エリゼとエリスは表情を青褪めさせ、周囲の人物達がそれぞれ息を呑んで見守っていた。するとその時



「―――リィンさんの言う通りですよ、あなた。」

優しげな女性の声が聞こえて来た。

「え…………」

聞き覚えの声を聞いたツーヤが呆けたその時、戦衣装を身に纏っているイリーナがエクリアと共にリウイ達に近づいてきた。

(うわっ、凄い美人の人だね……)

(しかもスタイル抜群だね。隣にいるメイドと容姿が似ているけど……姉妹なのかな。)

イリーナの容姿を見たエリオットは驚き、フィーはイリーナの傍に控えているエクリアの容姿とイリーナの容姿を見比べて首を傾げ

(なっ!?あの方は……!)

(せ、”聖皇妃”――――イリーナ皇妃じゃないか……!どうしてここに……!)

イリーナの正体がわかっていたラウラとマキアスは信じられない表情をした。



「あ、貴女は……!」

イリーナの姿を見たリィンは目を見開き

「イ、イリーナ様!?どうしてこちらに……!?」

イリーナの登場に驚いたペテレーネはイリーナを見つめて尋ねた。

「―――テロリストによる騒動が収まったと聞いて、リウイがエレボニア帝国軍にエリスさんが攫われかけてしまった件についての責任を追及しすぎていないか心配になってこっちに来たのよ。―――それよりあなた。エレボニア帝国に無許可で軍を帝都に投入した件やレンがテロリスト達を勝手に処刑した件もあるのですから、悪いのはお互い様ですよ。」

「……しかしそれをする原因になったのはエレボニア帝国の不手際なのだが?」

「それでも、です。幾ら何でも無許可で帝都内に軍を投入する事や犯罪者の処刑をするのはやりすぎです。帝都内の市民の方達は勿論、軍の方達もかなり混乱しているでしょうし…………招待された”客人”がやっていい事ではありませんよ?」

「………………………………」

イリーナの指摘にリウイは黙って考え込み

「――――いいだろう。まずはエリス、それにアルフィン皇女。エリスがアルフィン皇女の付き人を俺達に無許可で務めていた件については不問にしておく。今後公式の場でエリスがアルフィン皇女の付き人を務める際はエリス本人がメンフィル帝国(俺達)に報告するようにするか、もしくはアルフィン皇女あるいはエレボニア帝国がエリスが公式の場でアルフィン皇女の付き人を務める件を報告するようにしろ。」

やがて答えを出してエリスを見つめて言った。



「!は、はい……!寛大な御心遣い、ありがとうございます……!」

「ありがとうございます……!今後はエリスの手を煩わせず、わたくし自身が報告の手配をさせて頂きます……!」

リウイの言葉を聞いたエリスとアルフィン皇女はそれぞれ明るい表情で会釈をし

「よかったわね、エリゼ……」

「はい……」

エクリアに微笑まれたエリゼは静かな笑みを浮かべた。

「―――ただし。わかっているとは思うがエリスは我らメンフィル帝国に所属する貴族の子女だ。アルフィン皇女はエリスが女学院を卒業すれば自分から離れなければならない身である事はしっかりと覚えておくように。エリスもアルフィン皇女と友情を深めるのは構わんが、線引きはしておくように。でなければ、実家どころかリフィアや俺達に信頼されている(エリゼ)にまで迷惑をかける事になるぞ。」

「…………はい。」

「かしこまりました。以後気を付けます。」

「此の度は妹がご迷惑をかけた上陛下達にお手数をかけて申し訳ございませんでした……今後はこのような事がないよう、私が妹にメンフィル帝国の貴族の子女としての心構えを教育させて頂きますので、どうかご安心ください。」

そしてリウイの言葉にアルフィン皇女は一瞬辛そうな表情をした後すぐに表情を戻して会釈し、エリスとエリゼもそれぞれ会釈をした。



「そしてエリスが攫われかけてしまった件についても、無許可でメンフィル軍を帝都内に投入した事やレンがテロリスト達を処刑した件に目をつぶる事を条件に追及はしないでおく。」

「重ね重ね、本当にありがとうございます……!」

「寛大なお心遣い、ありがとうございます……!今後2度とこのような事がないよう、エリスさんの護衛に細心の注意を張らせて頂きます……!」

リウイの答えを聞いたアルフィン皇女は安堵の表情で会釈をし、クレア大尉は安堵の表情で会釈をした後すぐに気を取り直して真剣な表情で敬礼をした。

 
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