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戦国異伝

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第二百五十四話 決着その六

「無事では済まぬな」
「確かにな」
 全身から血を噴き出しつつだ、無明も言う。死相を浮かべつつ上を見上げている。
「これでわしもじゃ」
「最期じゃな」
「これからも生き」 
 無明も己の望みを言う。
「この怨みを晴らそうと思ったが」
「怨みだけで生きるか」
「それが我等よ」
「魔界衆か」
「その怨みでこの国を飲み込もうと思ったが」
「怨みで天下は望めぬ」
 家康は死にゆく無明に告げた。
「何も得られぬわ」
「そう言うか」
「それしかない御主達が滅ぶのは道理」
 至極落ち着いた目での言葉だった。
「そして我等が勝つのもな」
「道理か」
「そういうことじゃ」
「何を言うか、怨みこそは最も強い力」 
 無明は膝から崩れながら言った。
「まだじゃ」
「生きるつもりか」
「何としても、わしは」
 起き上がろうとしたがそれは適わずだ、無明は己の血の海の中に倒れ込んだ。そしてそれで完全にこと切れた。
 政宗は津々木にだ、まずは。
 短筒をだ、彼の腹にだ。
 放った、しかし津々木は。
 それを紙一重でかわした、左に動き。しかしその左への動きに対して。
 政宗はもう片方の、左手に持っていた刀をだ。駒を回す様にして。
 その左から右にだ、懇親の力を込めて振った。動く途中だった津々木は。
 それで身体を左の腰から右の腰まで切られた、それで断ち切られはしなかったが。
 動きを完全に止めてしまいだ、着地したところで崩れ落ち。
 血の海の中に沈んだ、しかし。
 それでも起き上がろうとしながらだ、政宗に言った。
「腰が動けずとも」
「まだ動くつもりか」
「まだじゃ、まだわしは」
「無理じゃ、もう御主は死ぬ」
 政宗はその津々木に告げた。
「最期位潔くせぬか」
「潔く死んで何になる」
 これが津々木の言葉だった。
「我等魔界衆は何としても生きるのじゃ」
「無理だとわかっているであろうがな」
「まだじゃ・・・・・・」
 何とか起き上がろうとするが。
 結局だった、彼も死んだのだった。
 そしてだった、高田も。
 鉄の刃を仕込んだ扇で元親を切ろうとしたがだ、その扇を持っている右手ごと元親に断ち切られてだった。
 元親に胸を貫かれてだ、右膝を崩れ落ちさせ死相で言った。
「抜かった・・・・・・」
「扇を使う手を切ればだ」
「攻められぬというか」
「そしてじゃ」
「突きを出してか」
「勝った、わしはな」
 見ての通りというのだ。
「その傷はもう助かるまい」
「しかし麿はまだ」
「生きるつもりか」
「この程度の傷で」
「無理じゃがな」
「いや、この程度の傷で」
 起きようとするが無理だった、そして。
 高田はそのまま動かなくなった、その彼の骸からだ。
 元親は刀を抜いてだ、その場を後にした。
 羽柴は素早くだ、崇伝の死角に回ろうとしていた、しかし。
 崇伝もまた素早く動き隙を見せない。そしてだった。
 羽柴を攻めもする、だが。
 次第に肩で息をしてきていた、しかし羽柴は。
 落ち着いている、崇伝はその彼を見て言った。
「疲れぬか」
「いやいや、わしもじゃ」
 羽柴は崇伝に笑って返した。 
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