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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第86話

その後エステル達は大使館の情報でエルベ周遊道まで探しに行き、魔獣に襲われかけたシスターを助けた後、また魔獣が現れたがそこにジンが加勢して事なきを得た。その時、見回りの特務兵と出会ったがなんとかトラブルを避けた後、エステル達はジンを探していた理由を話した。そして落ち着いた場所で話し合うためにエステル達は先ほどの居酒屋に向かって、テーブルに座って話し始めた。



~グランセル市内・居酒屋サニーベル・イン~



「……なるほど、そういう事かい。ひとつ聞いておくが、なんで武術大会に出たいんだ?」

ジンはエステル達に武術大会に出たい理由を尋ねた。

「えっと……。予選を見てたら身体がウズウズしてきちゃって。手強い相手と、思いっきり戦いたくなっちゃったのよね~。」

「僕たちは、正遊撃士を目指して王国各地を旅してきました。今までの修行の成果を試してみたくなったんです。……それに今ま僕達の旅を助けてくれたリフィア達や”大陸最強”と名高いメンフィルでも1,2の実力を争う将――カーリアンさんとも一度、手合わせをしたかったんです。」

「ふーむ……。いいぜ。一緒に組むとしようや。明日、大会が始まる前に選手登録をすりゃあ大丈夫だ。」

エステル達の理由を聞いたジンは頷いて答えた。

「やったあ♪……て、即答しちゃってもいいわけ?」

「お前さんたちの腕前は前に見させてもらってるからな。助っ人としては十分すぎるぜ。」

「えへへ……。ありがと、ジンさん!あたし、精一杯がんばるから!」

「よろしくお願いします。」

ジンの了承の言葉を聞いたエステルは喜び、ヨシュアは軽くお辞儀をした。

「ママ!ミント、応援するからね!」

「ありがと。ミントの応援の言葉を聞いたらパワー全開よ~!」

ミントの応援の言葉を聞いたエステルは元気良く答えた。



「こちらこそよろしくな。しかし、1人でどこまで通用するか挑戦してみるつもりだったが……。助っ人が加わったからには優勝を目指さないと話にならんな。」

「モチのロンよ!出場するなら優勝あるのみ!」

「でも、そうなって来ると1人足りないのは苦しいですね。団体戦の定員は4人ですから。」

ヨシュアは現状を考えて、難しそうな表情で答えた。

「ねえ、ママ。だったらミントも出たらダメ?」

エステル達のためにミントは自分も何か力になろうと思って、エステルを見て提案した。

「アハハ……さすがにミントにはまだ早いわ。心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ!いざとなったらあたしが契約している子達の誰かを参加させればいいし!実際プリネもそれをして、数合わせをしていたから大丈夫でしょ。」

ミントの提案をエステルは苦笑しながら必要ない事を言った後、名案を思い付いたかのように言った。

「そうか……それがあったな。…………僕達のバトルスタイルを考えればテトリあたりが妥当かな?」

エステルの提案にヨシュアはハッとした後、呼びだす必要のある人物を言った。

「さっきから気になっていたんだが、契約している子がどうとか言っているがどういう事なんだ?」

一方事情がわからないジンはエステル達の会話に首を傾げて尋ねた。

「あ、ジンさんは知らなかったわね。実は…………」

事情がわからないジンにエステル達はエステルが契約している精霊や幻獣の事を説明した。

「ほ~………カシウスの旦那から話には聞いていたけど、魔術が使えるだけでなく、そんな事もできたのか。………それでそのテトリとやらはどんな戦い方をするんだ?」

「うん。テトリの戦い方は後方支援よ。弓矢での攻撃に加えて地属性の攻撃魔術、それと治癒魔術も使えるわ!」

ジンに尋ねられたエステルは胸を張って答えた。

「フム……確かに現時点での俺達のメンバーを考えれば、ピッタリの人物なんだが………気になったのだが、その召喚とやらをして、お前さんに負担がかからないのか?」

「ん~……まあ、召喚している間はちょっとだけど魔力とか落ちるわ。でも、大丈夫よ!今まで問題なかったし!」

ジンの疑問にエステルは今までの戦闘を思い出しながら答えた。

「いや、上を目指すんだったら準備は万全にしておくべきだぜ。戦いってのは(コブシ)を交える前からすでに始まっているもんだ。」

「そうだよ、エステル。相手はクルツさん達だけでなく、リフィア達や”大陸最強”と名高いあのメンフィルの中でも指折りの実力を持つカーリアンさんが相手なんだよ。自分自身の力を弱めるような事をしないほうがいいと思うよ。」

「う……確かにそうかも。こういう時に、シェラ姉がいてくれたら心強いんだけど……。ね、エルナンさんに頼んでロレントに連絡してもらわない?」

ジンやヨシュアの言葉にたじろいだエステルは提案した。

「うーん、でもシェラさんもかなり忙しいと思うよ。父さんも、僕たちもいないからロレント支部は手薄だと思うし……」

「そ、そうだった……。あーもう、誰でもいいから協力してくれる人いないかしら!」

エステルが絶叫したその時



~~~♪



「フッ……。その言葉を待っていたよ。」

階段からリュート鳴らして降りて来たオリビエが現れた。

「あ、オリビエさんだ!」

ミントはオリビエを見て、声を上げた。

「出たわね~。このスチャラカ演奏家。まさか2階に潜んでいたとは。」

「ひょっとして……。今の話、聞いていたんですか?」

呆れた表情でエステルはオリビエを睨み、ヨシュアは尋ねた。

「フフフ……。余すことなく聞かせてもらったよ。これはボクの出番だと思ってね。……あ、ミント君。すまないがエステル君の膝の上に移動してくれないかい?」

「はーい!」

オリビエは髪をかきあげながら降りて来た後、椅子に座っているミントを移動させて、ミントが座っていた椅子に座った。

「あ、ちょっと……。なに勝手にミントを椅子からどかしているのよ?」

「ミント、ママの膝の上でも大丈夫だよ?それとも、ミントがママの膝の上に乗るの、ダメ?」

ミントはお願いする時の表情でエステルを見上げた。

「う………(そんな目で見られたら、断れないわよ~!全く、このスチャラカ演奏家め!純真で可愛いミントを利用して!後でシメてやる!)そんな事ないわよ!ミントを肌で感じられるからあたしは嬉しいわよ?」

「ホント!?えへへ…………」

オリビエに対する怒りを秘めたエステルに気付かず、ミントは笑顔になった。



「たしか、ピアノを弾いてる演奏家の兄ちゃんだったな。お前さんたちの知り合いか?」

オリビエと知り合いのように話すエステル達にジンは尋ねた。

「知り合いっていうか、早くも腐れ縁というか……」

「……まだ知り合ってそんなに経っていないのにね。」

ジンの疑問にエステルはオリビエの出会いや共にした時、見せた行動を思い出して呆れながら答え、ヨシュアも苦笑しながらエステルの言葉に頷いた。

「ボクはオリビエ・レンハイム。エレボニア出身の旅の演奏家さ。エステル君とヨシュア君とは前にある事件で知り合ってね。それ以来、タダならぬ関係なのさ。」

「誤解を招く言い方はやめい!」

オリビエの紹介の仕方にすかさずエステルが突っ込んだ。

「ふーん、よく判らんが俺の方も名乗っておこうか。ジン・ヴァセック。カルバード出身の遊撃士で武術の道を志している。あんたのピアノにはいつも楽しませてもらってるよ。」

「フフ……。お誉めにあずかり光栄至極。ボクの方も、大会予選でのあなたの武勇は耳にしている。毎年優勝している美しく、扇情的なあの”戦妃”が予選で見せたように4人を相手にしてたった1人で圧勝したそうだね?」

「特務兵相手に圧倒勝ちした”戦妃”ほどじゃないさ。素人相手で運が良かっただけだ。で、その演奏家さんが俺たちに何の用だい?」

ジンが尋ねようとしたその時

「ちょっと待ったあああ!」

エステルが声を上げて話をさえぎった。

「オリビエさん……。ひとつ確認しておきますが……。ひょっとして最近、かなりヒマだったりしますか?」

エステルと同じように次の展開が予想できたヨシュアはオリビエに尋ねた。

「さすがヨシュア君。鋭い質問じゃあないか。王都に来てから1月あまり……。一通り観光をしてしまって残るはグランセル城くらいだが無粋な兵士が入れてくれない……。他の地方にも行ってみたいが生誕祭が迫っているから今、王都から離れるのも忍びない……」

「よーするに、かなりヒマだと。」

芝居をしているかのように話すオリビエの言葉をエステルは省略した。

「そこに降って湧いたような定員が1人足りないという話……。さらにトドメに、優勝者には豪華な晩餐会へのご招待……。まさに女神の天啓といえようっ!」

「はあ……」

「そんな事だろうと思いました。」

案の定予想していた展開になり、エステルとヨシュアは溜息を吐いた。



「というわけで、ボクも武術大会の仲間に入れてくれないかな~って。」

「いいんじゃねえのか?」

「わあ………それだったら、4人揃うね!よかったね、ママ!」

オリビエの頼みにジンは頷き、ミントは喜びの表情でエステルを見上げた。

「ちょ、ちょっとジンさん。そんな簡単に……。オリビエがどんな戦い方をするのかも知らないんでしょう?」

オリビエが最後のメンバーに入る事をあっさり了承したジンに驚いたエステルは尋ねた。

得物(えもの)は導力銃だろ?戦術の幅も広がるし、いいチームになると思うがね。」

「ええ~っ!」

武器も出していないオリビエの得物まで言いあてたジンにエステルは驚いて声をあげた。

「これは……驚いたな。やはり脇の下のふくらみと歩き方で判ってしまうものかな?」

同じようにオリビエも驚いた後尋ねた。

「それと視線の動かし方だな。武術家だろうが剣士だろうが動く対象のとらえ方は線だが……。あんたは、相手の動きをポイントごとにとらえている。銃使いに特有の視線の動きさ。」

「ひょええええ、プロだわ……」

「なるほど……。確かに理屈ではそうなりますね。」

「ふえ~………凄いね、ジンさん!」

言いあてた理由を話すジンにエステルは驚き、ヨシュアは納得した表情になり、ミントは尊敬の眼差しでジンを見た。

「フム……。今後、気を付けておくとしよう。で、その達人の目から見てボクは合格という事でいいのかな?」

「ああ、よろしく頼むぜ。」

「うーん。一抹(いちまつ)の不安は残るけど……」

「オリビエさん。よろしくお願いします。」

その後、エステルたちは明日からの大会に向けて、夕食を堪能した。そして翌日、エステル達は武術大会に参加するためにグランアリーナに向かった…… 
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