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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第70話

地下道の探索をしていたリィン達は退治を依頼された魔獣を見つけた。



~帝都・東地下水道~



「あ、あれが……」

「どうやらホテルから手配された魔獣らしいな……」

「今までの”特別実習”で仕留めた手配魔獣と比べるとかなり大きいですね……」

手配魔獣を見つけたエリオットは不安そうな表情をし、マキアスとツーヤは真剣な表情をし

「フィー、ラウラ、行けるか?」

「……当然。」

「悪いが、私とフィーで仕掛けさせてもらいたい。」

リィンに視線を向けられたフィーとラウラはそれぞれ頷いた。



「”戦術リンク”だね?」

「ふむ……いい機会かもしれないな。」

「わかった。ラウラとフィーを中心に目標に仕掛けるぞ……!」

そしてリィン達は手配魔獣との戦闘を開始した。ラウラとフィーは最初は戦術リンクも結べて順調にダメージを与えていたが、戦闘の途中で戦術リンクが途切れてしまい、その影響でラウラとフィーは苦戦し始め、リィン達は二人のフォローに回りながら手配魔獣を撃破した。



「「……………………」」

戦闘が終了し、戦闘の疲労によって地面に膝をついているラウラとフィーは何も言わず黙り込み

「そ、その……なんだ。もう無理に”戦術リンク”に拘らなくてもいいんじゃないか?」

その様子を見たマキアスは慰めの言葉をかけた。



「う、うーん……拘りたいという気持ちはちょっとわかるんだけど。」

そしてエリオットが考え込んだその時

「―――いや。これ以上、そなたたちの足を引っ張るのは本意ではない。今回の実習中、私は後方支援に徹するとしよう。」

ラウラが予想外の申し出をした。



「っ…………!」

「ラ、ラウラさん!?」

「ちょ、いきなり何を……!?」

「ラウラが前で戦わないってそんなのおかしくない……!?」

ラウラの申し出を聞いたフィーは唇を噛みしめ、ツーヤやマキアス、エリオットは驚き

「…………………」

リィンは真剣な表情黙ってラウラを見つめた。



「……ふざけないで。外れるとしたらわたしの方が外れるべき。戦力的にもその方が合理的。」

するとその時座り込んでいたフィーが立ち上がってラウラを睨んで反論した。

「いや、今回に限っては私の未熟の結果によるものだ。そなたを心のどこかで受け容れられぬ事も含めてな。」

「…………ぁ……………………」

しかしラウラの答えを聞いたフィーは呆けた後辛そうな表情でラウラから視線を外し

「すまない……自分がこんなに心が狭いとは思わなかった。そのせいで、そなたにも苦しい思いをさせたと思う。部活でも気付かされたが……やはり私は未熟なままのようだ。」

「ラウラ…………」

「ラウラさん……」

「………………」

ラウラの話を聞いたエリオット達は心配そうな表情でラウラを見つめた。



「リィン、そういう事ゆえ、以後の戦いでは私を―――」

ラウラはリィンを見つめて申し出たが

「―――いや。サポートの方は俺が回らせてもらおう。」

「!?」

リィンの突然の提案に目を見開いた。



「え。」

「ちょ、ちょっとリィン!?」

「ま、また君は……唐突に何を言い出すんだ?」

「リィンさんが抜けて、何か意味があるんですか?」

ラウラに続くようにフィーたちもそれぞれ戸惑いの表情でリィンを見つめた。



「しばらく戦ってみて一つ気付いた事がある。ラウラ、それにフィー。君達の戦闘スタイルが本来、最高の組み合わせだってことを。」

「あ……」

「……それは…………」

リィンの指摘にラウラとフィーは呆け

「そ、そうなの?」

「ぼ、僕にはちょっとわからない話だが……」

エリオットとマキアスは戸惑い

「―――なるほど。同じ前衛でもタイプが異なるラウラさんとフィーさんが組めば互いの弱点をカバーできる……そういう事ですね?」

ツーヤは納得した様子で頷いてリィンに視線を向けた。



「ああ。ラウラは理想的な重剣士……圧倒的な剣技を揺るぎなく振るう、まさに”主戦力”だろう。一方フィーは理想的な前衛……圧倒的な機動力と速度で敵を崩し、主力の突入を助けるアタッカーだ。実技テストも、二人に組まれたら本来勝ち目があるはずがないんだ。」

「「…………………」」

「なるほど……確かに言われてみれば。」

「”戦術リンク”が使えれば鬼に金棒って感じだよね。」

「ええ……これで協力技(コンビクラフト)まで使えればまさに”最強の組み合わせ”と言ってもおかしくないですね。「

リィンの説明を聞いたラウラとフィーは黙り込み、マキアス達はそれぞれ納得した様子で頷いた。



「ああ、そしてその事は二人とも気付いているんだろう?だからこそ何とかしたいのに”何か”が上手くかみ合わない……そんなもどかしさをずっと感じて来たんじゃないのか?」

「………………」

「……ああ、そなたの言う通りだ。」

リィンの指摘に二人はそれぞれ頷いた。

「なら、ここでどちらかが引っ込むなんて馬鹿げている。戦力的なバランスを考えたらむしろ俺が援護に回るべきだ。その方が、お互いの問題に気付きやすくなるんじゃないか?」

「「………………」」

リィンに問いかけられた二人はそれぞれ黙り込んで互いの顔を見て頷いてリィンを見つめた。

「……そなたに感謝を。」

「しばらく申し出に甘えさせてもらう。」

「ああ、喜んで。」

「ふう……やれやれ。僕の時もそうだったが……君、大胆不敵すぎやしないか?」

「えっ……そうか?」

二人を諭す自分様子を見守っていたマキアスの指摘にリィンは首を傾げた。



「あはは、自覚がないのもリィンらしいっていうか。でも、何だかちょっと光明が見えてきたみたいだね?」

「ええ……!」

リィンの様子を見て苦笑するエリオットの言葉に頷いたツーヤはリィン達と共にラウラとフィーを見つめた。



「ああ……何とか掴んでみせよう。」

「とりあえずホテルに戻らなくちゃ、だね。」

その後ホテルに戻ろうとしたリィン達だったが、帰り道で聞こえて来た音楽が気になり、音楽が聞こえて来た方向を調べると隠し扉があり、仕掛けを解いて隠し扉の先にある階段で地上へと出て音楽が聞こえて来た方向に近づくとそこには学生達が楽器で曲を演奏していた。



~マーテル公園~



学生達が演奏を終えるとエリオットが拍手をした。

「あっ……」

「……エ、エリオット君!?」

「わ~、帰ってきてたんだ~!」

拍手に気付いた学生たちはエリオットを見るとそれぞれ驚いたり嬉しそうな表情をしてエリオットに近づいた。



「久しぶり、モーリス。ロン、それにカリンカも。」

エリオットは懐かしそうな表情で学生たちを見回した。

「はは、そっちも……本当に久しぶりだなあ!」

「ふふ、元気そうでなによりだわ。えっと、後ろの人たちは……?」

エリオットを懐かしそうな表情で話しかけていた女学生はリィン達に気付いて尋ねた。



「俺達はトールズ士官学院のエリオットのクラスメイトだ。」

「同年代のようだしお見知り置き願おう。」

「君達もエリオットの友人みたいだな。その制服、どこの学校なんだ?」

学生達の見慣れない制服が気になったマキアスは学生達に尋ねた。



「うん、僕達は音楽院に通ってるんだよ~。」

「音楽院……」

(アムドシアスさんが知ったら、喜々として行きそうな場所ですね……)

学生の答えを聞いたフィーは呆け、ツーヤは苦笑していた。

「この街区の外れにあって、音楽を専門に教えているんだ。有名な演奏家なんかも何人も輩出しているんだよ。」

「なるほど、演奏があんなに上手だったのも頷けるな。」

エリオットの説明を聞いたリィンは学生達の演奏を思い出して納得した。



「はは、ありがとう。」

「うちの学校では毎年、夏至祭で開かれるコンサートに出演することになっていてね。放課後に仕上げを行っていたところだったの。」

「なるほど……ここなら確かにうってつけだろうな。」

「うんうん……みんなすっごく良かったよ!前よりも格段に上達してる。……いっぱい練習したんだね。」

学生達の演奏を思い出したエリオットは嬉しそうな表情をした後、羨ましそうな様子で学生達を見回した。



「そ、そうかな~?」

「まあ、毎日練習漬けだしなぁ。」

「ふふ、ちょっとは上手くなってないとバチが当たるわよ。……でも、エリオット君にも音楽院に来て欲しかったな。」

「それって……」

女学生が呟いた言葉を聞いたリィンは目を丸くして学生達を見回した。



「ああ、もちろん君達のことを悪く言っているわけじゃないさ。その、士官学院でもバイオリンは弾いているのかい?」

「うん、部活でね。一応吹奏楽部に入ったから。」

「そっか……よかった。」

「エリオットは本当に上手だったもんね~。いつか機会があったらまたセッションしたいな~。」

「あはは、そうだね。」

学生の一人が呟いた言葉を聞いたエリオットはその光景を思い浮かべて笑顔になった。



「っと、つい話し込んじゃったな。そろそろ音楽院に戻って練習の続きをしないと。」

「ふむ、さすがに熱心だな。」

「ふふ、よかったら夏至祭はみんなで聞きに来てね。士官学院のみなさんも、お待ちしているから。」

「ああ、楽しみにしておくよ。」

「それじゃあエリオット、また会おうな~。」

「うん、それじゃあまた。」

そして学生達はその場から去って行った。



「エリオット……」

「その……ひょっとして。」

去って行く学生達の様子を見つめて何かを察したリィンとマキアスは尋ねかけたが

「あはは……違うってば。ホテルに報告に行ったら、今日はそろそろ帰ろっか?姉さんが夕食の準備をしてくれてるはずだしね。」

エリオットは首を横に振って否定した。

「……そだね。」

「それでは、行くとするか。」

その後ホテルに報告しに公園を出ようとしたリィン達だったが、突如目の前が閃光に包まれた。



「……っ!」

「これは……!」

「閃光弾……!?」

閃光に驚いたリィンやラウラ、フィーは咄嗟に片手で目を守り

「ま、まぶしっ!?」

「な、なななななな、こんな街中で一体何が……!?」

「………………」

エリオットとマキアスは閃光の光によって咄嗟に目を閉じ、ツーヤは片手で目を守りながら周囲の警戒をしていた。



そして光が収まるとそこにはティアラを頭に乗せた蒼銀髪のドレス姿の女の子が倒れていた………… 
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