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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第63話

~夕方・トールズ士官学院・屋上~



「…………………………」

エリスが走り去るとリィンは肩を落として黙り込んだ。

「ちょっと……!何をボケっとしてるの!?」

するとその時アリサの声が聞こえ、声を聞いたリィンが驚いて振り向くとアリサ達がリィンを見つめていた。



「ちょ、何で……」

(うふふ、みんなして盗み聞きね♪)

(ふふふ、まあ、問答無用でご主人様を連れていったから気になるのも無理はありませんが。)

アリサ達の登場にリィンは驚き、ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべた。

「ああもう、聞いちゃったのは謝るけど……!早く追いかけなさいってば!」

「妹さん、泣いていましたよ?」

「!!」

エマの言葉を聞いたリィンは目を見開いて驚いた。

「色々あるんだろうけどまずは追いかけてあげないと!」

「ああ、それが兄の義務だろう。」

「……わかった。みんなも妹を見かけたら声をかけてやってくれ!」

エリオットとガイウスの言葉に頷いたリィンは真剣な表情でアリサ達を見つめた。



「ああ、とっとと行きたまえ。」

「フッ、平手打ちのひとつでも貰ってくるんだな。」

「ユ、ユーシスさん……」

「エリスさんのあの様子だと、現実になってしまいますよ……」

マキアスと共にリィンを促したユーシスの言葉を聞いたプリネとツーヤはそれぞれ冷や汗をかいて苦笑した。その後リィンはエリスを探して校舎内を駆け回り、途中で誰かを探している様子のラウラを見かけて声をかけた。



~校舎内~



「ラウラ……!もしかしてエリスを!?」

「うん、先程連絡を受けてな。探している最中だ。」

「ありがとう……恩に着る。」

「いや……まだ成果は出てない。礼など後にとっておくがよい。……それよりも、大まかな事情は聞いたぞ。」

リィンに礼を言われたラウラは首を横に振った後リィンを見つめた。



「……そうか。……悪い。身内のいざこざに付き合わせてしまって。」

「……貴族というものには様々なしがらみがある。特に、そなたの事情は貴族の中にあっても特殊だ。そなたの気持ちもわからないでもない。」

「ラウラ……」

「だが、今回の一連の話を聞いてひとつだけ思ったこともある。―――そなたの見出した道は、決して『逃げ』ではない……妹御に胸を張ってそう言えるか?」

「………………!」

ラウラの問いかけにリィンは目を見開いて黙り込んだ。



「……いや、よそう。現時点で迷いのある私が偉そうに言えることでもないな。」

「そんなことはないさ。こっちはよろしく頼む。俺は別の場所を探してみるよ。」

「うん、任せておけ。」

その後エリスを探し回っていたリィンは今度はフィーを見かけ、エリスの手がかりを探す為に声をかけた。



~グラウンド~



「ん……ここにもいないか。」

「フィー……?もしかして、エリスを探してくれているのか?」

周囲を見回して誰かを探している様子のフィーを見たリィンは尋ねた。



「……ん、ARCUSで連絡があったから。今のところは収穫なしだけど。」

「そうか……助かるよ。」

「……妹さんや実家のことで色々あるみたいだね。」

「……はは、聞いたか。俺は由緒正しい血は引いていない。他の貴族とは事情が全然違う。かといってメンフィル帝国に認められるような功績を立てたわけでもないしな。だからこそ、俺は最後には家を出なくちゃならない。エリスも。それくらいは理解してくれていると思っていたけど……」

フィーに言われたリィンは苦笑した後決意の表情で答えた。



「……わたしも、猟兵団に拾われるまではひとりぼっちだった。本当の親も知らない……だから、リィンの気持ちも少しだけわかるかも。」

「フィー…………」

「……でも、団はわたしにとって”家族”だった。『自分が出て行くべき』なんて発想自体をさせてくれなかった。……リィンの”家族”はそうじゃなかった?」

「そ、それは……」

フィーに問いかけられたリィンは口ごもった。



「ま、わたしが言えたことじゃないのかもしれないけど。……今は妹さんを探そう。」

「……ああ、そうだな。そっちは頼む、フィー。」

「ん。」

そしてエリスを再び探し始めて一通り校舎を見回ったリィンは校門に戻った。



~校門~



「……参ったな。街の方に戻ったのか?でも、何となく学院内に居そうな気配もするんだが……」

「よ、後輩。何してんだ?」

リィンが考え込んでいたその時クロウがリィンに近づいてきた。



「クロウ先輩……いえ、ちょっと人を探していまして。」

「なんだ、Ⅶ組のお仲間か?それとも2年の女子あたりに告られてトラぶったのかよ?」

(うふふ、似たようなものだけどね♪)

(ふふふ、そうですね。)

クロウの問いかけを聞いたベルフェゴールとリザイラはそれぞれ口元に笑みを浮かべ

「いえ、俺の妹で学院生じゃないんですが……」

リィンは呆れた様子で答えた。



「へ~、妹なんていたのか。俺様のカンじゃ、一人っ子っぽい気がしたんだが。」

「…………それは…………」

クロウの問いかけにリィンが複雑そうな表情で答えに詰まったその時

「ああ、それじゃあさっきの子か。帝都にある”聖アストライア”の制服を着た黒髪の子だろ?」

「ええ、多分それです!どこで見かけましたか!?」

クロウの答えを聞き、血相を変えて尋ねた。



「さっき、学院裏手の道で白服と話してるのを見かけたぞ。ほら、あの偉そうな1年……パトリックの坊ちゃんだったか。」

「あいつと……!?」

先月のパトリックの自分達に対する暴言を思い出したリィンが厳しい表情をしたその時

「―――今の話、詳しく聞かせて頂きませんか?」

なんと私服姿のエリゼが2人に近づいてきた。



「エ、エリゼ!?」

「おおっ!?ど、どうなってんだぁ!?さっきは学院の裏手にいたのに………それに服もいつの間に着替えたんだ??」

エリゼの登場にリィンは驚き、クロウは戸惑い

「―――お初にお目にかかります。エリゼ・シュバルツァーと申します。恐らく貴方が見かけたのは私の双子の妹のエリスかと。―――それより兄様。一体何があったのですか?」

「……実は――――」

そしてリィンはエリゼに事情を説明し始めた。一方リィンがクロウと出会う少し前、エリスが涙を流しながら学院の裏手を歩いていた。



「……兄様のバカ…………いつもいつも……自分ばかり押し殺して……わたしのバカ…………いつも…………素直になれないで………」

立ち止まったエリスは肩を落として呟いたが見覚えのない周囲に気付いて不思議そうな表情をした。

「………………どこかしら…………ここ?」

「君は……?」

するとその時パトリックが話しかけてきた。



「帝都にある”聖アストライア女学院”の制服だったか……どうしてこんな所にいる?」

「す、すみません……ぐすっ……」

「いや、別にその責めている訳じゃないぞ?そうだ……せっかくだし名乗っておこう。―――僕の名前はパトリック。パトリック・ハイアームズだ。聞いた事くらいあるだろう?」

涙を流したエリスに慌てたパトリックは言い訳をした後自己紹介をした。



「ハイアームズ家の………お初にお目にかかります。メンフィル帝国に所属しているシュバルツァー男爵家の娘、エリス・シュバルツァーと申します。」

「エリスか………いい名前だな。ま、待て……!シュバルツァーと言うとリィン・シュバルツァーの妹か?というかよく見たら君はエリゼ・シュバルツァー……!」

エリスがリィンの妹であったパトリックは驚いた後エリスの顔を見て表情を引き攣らせた。



「?はい。リィンはわたくしの兄で、エリゼはわたくしの双子の姉ですが。」

「くっ………よりにもよってあのいけ好かない男と生意気な女の妹とは…………待てよ、養子ということは血は繋がっていなく、あの女とこの娘が本物のシュバルツァー家と言う訳か…………」

エリスの事を知ったパトリックは唇を噛みしめた後ある事に気付いてエリスの顔をジッと見つめたが

「―――どうやら兄と姉と何か確執がおありのご様子。ご不快にさせたくありませんので失礼いたします。」

パトリックが呟いた言葉から兄や姉の”敵”である事を悟ったエリスはパトリックを睨んだ後その場から走り去った。

「い、いや、別に不快ということは……」

エリスが走り去るとパトリックは慌てて言い訳をして呼び止めようとしたが

「おい――――そっちは!」

エリスが向かった方向―――魔獣が徘徊している旧校舎である事に気付いて真剣な表情で声を上げ、そしてエリスの後を追った。



一方リィンはクロウの案内によってエリゼと共にクロウがエリスを見かけた所に向かい、旧校舎に辿り着いた。



~旧校舎~



「くっ……どこに行った?この建物には普段、鍵がかかっている筈だし……」

旧校舎に到着したリィン達が見た光景は旧校舎の前で誰かを探しているパトリックがいた。

「パトリック……!」

パトリックを見つけたリィン達はパトリックに駆け寄った。



「お、お前……そ、それにお前は……!」

リィンを見た後エリゼに気付いたパトリックは表情を引き攣らせ

「おい、エリスはどうした!?まさか俺の時みたいに絡んで恐がらせたんじゃないだろうな!?」

「それとも私に負けた腹いせであの娘に何かしたのですか!?」

「そ、そんな事はしていない!僕はただ、彼女が涙ぐんでいたからどうしたのかと声をかけただけで……そしたらこっちに走って行ったので心配になって追いかけてきただけだ!」

リィンとエリゼに睨まれたパトリックは慌てた様子で答えた。



「くっ…………」

「エリス……」

説明を聞いたリィンは唇を噛みしめ、エリゼは心配そうな表情で考え込んだ。

「どうやらこっちの方に来たのは間違いなさそうだな。お前らが毎月探索してるっていうその旧校舎はどうなんだ?」

「いや、ちょうど先程扉を施錠したばかりですが……」

クロウの疑問に答えたリィンは念の為に旧校舎の扉を調べると、なんと施錠していたはずの扉が開いた!

「え――――」

そしてリィン達が旧校舎に到着する少し前、エリスは旧校舎の中を歩いていた。



「……ここは……鍵はかかっていなかったけどこの建物って……?」

エリスが周囲を見回していると猫の鳴き声が聞こえ、声に気付いたエリスが振り向くとそこにはセリーヌがエリスを見つめていた。

「猫……?」

「………………」

セリーヌはエリスを見つめた後奥へと向かい

「あ………」

セリーヌが心配になったエリスは奥へと向かった。



「これって……機械……?でも、それにしては……」

エリスはエレベーターまで移動し

「……あの猫……どこに行っちゃったのかしら?隠れるような場所なんて無さそうだけど……文字……?」

エリスがエレベーターの装置に気付いたその時、エレベーターは動き出した!

「え―――きゃあっ!?」

突如動き始めたエレベーターは現在いける最下層―――4階に到着した。



「エ、エレベーターだったのね。ずいぶん下まで降りてきちゃったけど……」

エレベーターに驚いたエリスだったがすぐに気を取り直して立ち上がり、赤い扉に近づいた。

「あ、赤い扉……?飾り……なのかしら。あまりに大きすぎるけど……」

そしてエリスが赤い扉に更に近づいたその時!



――第四拘束解除後ノ”初期化”完了。



「えっ…………」

赤い扉から謎の声が聞こえてきた!



”起動者”候補ノ波形ヲ50あーじゅ以内ニ確認。コレヨリ『第一ノ試シ』ヲ展開スル―――



そして扉が開き、巨大な人形兵器がエリスに近づき

「…………ぁ………………」

エリスは恐怖のあまり、腰が抜けて近づいて来る人形兵器を見つめた。



「エリス……どこだ!?」

「んー……ここにはいねぇのか?」

「一体どこに……」

「まったく、どうして僕が……」

一方リィン達はパトリックと共に旧校舎内に入ってエリスを探していたその時、少女の悲鳴が聞こえてきた!



「「エリス!?」」

「悲鳴……!?」

「奥だ!」

悲鳴を聞いたリィン達は慌てて奥のエレベーターホールに向かった。



「下から……!?」

「まさかあれは……エレベーター……!?」

「な、なんだここは……!?」

「へえ、噂には聞いてたがこんな風になってたのか。」

そしてエレベーターが戻ってくるとリィンとエリゼがエレベーターに乗り

「お、下に行くつもりか?ほら坊ちゃん、俺達も行くとしようぜ。」

「ぼ、坊ちゃんは止めろ!」

クロウとパトリックも続くようにエレベーターに乗り、リィン達は最下層へと降りた。



「!?」

「な、なんだありゃあ!?」

「きょ、巨大な甲冑ッ……!?」

「!!」

最下層に到着しかけるエレベーターから見えた光景を見たリィン達は驚き

「あ――――」

「エリスッ!!」

人形兵器の前で倒れているエリスを見つけたパトリックは呆け、エリゼは血相を変えて声を上げた。



「エリスううううっ!!」

そしてエレベーターから降りたリィンが叫んだその時、人形兵器は倒れているエリスに向かって剣を振り下ろそうとした。するとその時かつての自分にとって忌まわしい出来事がフラッシュバックしたリィンの胸に膨大な気が集束し始め

「オオオオオオオオッッッッ!!!」

天井に向かって咆哮した!するとリィンの全身に膨大な禍々しい何かの気が纏うと共にリィンの黒髪は銀髪に、瞳は紅へと変化した!



「こ、こいつは……!」

「ひいっ……!?」

「兄様……!」

(フフ、久しぶりに見せてくれたわね。)

(これは一体…………ふふ、やはり唯の人間ではありませんでしたか。)

変わり果てたリィンの姿を見たクロウは驚き、パトリックは悲鳴を上げ、エリスは真剣な表情で声を上げ、ベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情でリィンを見つめた。

「ッシャアアアアアッ!!!」

そしてリィンは咆哮を上げた瞬間、一瞬で人形兵器の目の前に移動し

「―――加勢します、兄様!」

リィンに続くようにエリゼは腰に付けている鞘から太刀を抜いてクラフト―――裏疾風で使う”無拍子”による移動でリィンの隣へと移動し

「オオオオオオッッッ!!」

「―――参ります!!」

リィンと共に戦闘を開始した! 
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