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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第52話

6月28日、06:30―――――



翌朝、リィン達はウォーゼル家が用意してくれた朝食を取っていた。



~ノルドの集落~



「ふう……ごちそうさまでした。」

「朝からたくさん食べてしまいましたね……」

「昨日、宴会でたくさんご馳走を頂いたんですけど…………」

「ふふっ、育ち盛りですものね、」

リィンやプリネ、エマの言葉を聞いたファトマは微笑み

「馬に乗るのは体力がいる。そのくらいむしろ普通だろう。」

ガイウスは静かな表情で言った。



「……アリサ?さっきから黙っているけど大丈夫か?」

その時食事を終えて顔を俯かせているアリサに気付いたリィンは訪ねたが

「えっ!?え、ええ、大丈夫よ!何もしていないわよ!」

「???」

(?前と違ってリィンが好きって気持ちがアリサから凄く強く感じてくる……何でだろ??)

(うふふ♪初心な反応ね♪)

(ふふふ、先が思いやられますね。)

真っ赤な顔で慌てた様子で否定したアリサの言葉に首を傾げ、その様子をミルモは不思議そうな表情で、ベルフェゴールとリザイラは微笑ましそうに見つめた。



「え、えっと……おかわりはいりますか?」

「いや……さすがに遠慮しておこう。」

「余った鶏飯があれば竹の皮に包んでおいてくれ。実習中に頂くとしよう。」

「うんっ!」

「リリーもてつだう~。」

「じゃあ、冷やしたお茶も竹筒に入れておきますね。」

「はは……どうもありがとう。」

「うーん、何から何までお世話になりっぱなしね……」

色々と世話をしてくれるガイウスの弟達の優しさにリィンは微笑ましそうにトーマ達を見つめ、アリサは申し訳なさそうな表情をした。



「気にすることはない。客人には当然のもてなしだ。さて―――今日の実習だが課題を用意してある。」

そしてラカンはリィンに実習内容が書かれてある封筒を渡し、リィン達は実習内容を確認した。

「―――昨日よりも依頼の数は絞らせてもらった。残る1日は、ある程度君達の好きなように過ごすといいだろう。」

「……了解しました。」

「ご配慮、ありがとうございます。」

ラカンの話を聞いたリィンとエマはそれぞれ会釈した。



「ふふ、何ならアリサさんはお祖父様とゆっくりしたら?昨日はあまり一緒に過ごせなかったみたいだし。」

「そ、それは…………」

ファトマの提案を聞いたアリサは驚いた後口ごもり

「そういえば、昨日グエンさんは長老さんの所に泊まったんだよな。」

「そろそろ起きてらっしゃる時間だと思いますし……」

「午前中は俺達に任せて祖父孝行でもしたらどうだ?」

「そうですね……数年ぶりに会えたのですか、それもいいかもしれませんね。」

「で、でも…………」

ユーシスとプリネの提案を聞いたアリサは答えに困った。するとその時

「ラカン!……ラカンはおるか!」

「長老……?ええ、おりますが。」

長老とグエン、ノートンが住居に入ってきた。



「あら、皆さんおそろいで。」

「お、お祖父様?」

「ノートンさんも……」

「うむ、みんなおはよう。」

「お邪魔させてもらうよ。」

「……………………」

「……どうやら何かあったようですね?」

3人からさらけ出されている緊迫感を感じ取ったガイウスは真剣な表情で黙り込み、ラカンは気を引き締めて尋ねた。



「うむ―――ゼンダー門から先程連絡があった。どうやら帝国軍の監視塔が何者かの攻撃を受けたらしい。」

「!?」

「なに……!?」

「えっ!?まさかその攻撃をした相手は……!」

長老の話を聞いたガイウスとユーシスは驚き、プリネは厳しい表情をし、リィン達もそれぞれ気を引き締め

「今日の真夜中の話らしい。し、しかもそれだけじゃなくて…………」

「どうやら共和国軍の基地も攻撃を受けたらしくてな。これは少々……騒がしくなるかもしれん。」

ノートンは信じられない表情で答え、グエンは重々しい様子を纏って答えた。



同日、8:00――――



一方その頃、ノルド高原の上空に現れたエレボニア帝国軍、カルバード軍共和国軍の飛行艇がそれぞれの軍施設に向かった。



~監視塔~



「………………共和国お得意の空挺機甲師団の先駆けか。戦車部隊が到着するのも時間の問題のようだな……」

焼けた監視塔の城壁から双眼鏡で高原の上空の様子を見ていたゼクス中将は重々しい様子を纏って呟いた。

「―――閣下!守備兵2名の死亡を確認!残る3名も重傷ですが何とか助かりそうです!」

その時兵士がゼクス中将に報告した。



「……そうか。救護車が到着しだい急いで運んでやれ。」

「は!」

そして兵士に指示をしたゼクス中将は馬に乗り

「―――ゼンダー門に連絡!第三機甲師団、出撃準備!私が戻るまでに装甲車両を動けるようにしておけ―――!」

整列した監視塔の兵士達に指示をした。



同日、09:30―――



~ノルドの集落~



一方その頃集落にいる民達は戦いに巻き込まれない為に集落から離れる行動を始めていた。

「その、本当に俺達も手伝わなくていいんですか?」

「うむ、その必要はない。変事があった時の移動など手慣れたものだからのう。」

「…………………………」

リィンの申し出を断った長老の様子をガイウスは黙って見つめ

「ガイウス、お前も同じだ。ゼンダー門のゼクス殿に状況を確かめに行くのだろう?ノルドの民としてではなく―――士官学院の一員として。」

「……ああ、行ってくる。」

ラカンの言葉に静かな表情で頷いた。



「お祖父様は……こちらに残るんですね?」

「うむ、これも何かの縁じゃ。運搬車も使えるし、移動の準備を手伝おうと思う。」

「……わかりました。どうかお気をつけて。」

グエンの決意を知ったアリサは静かな表情で頷いた。

「すみません……長老、ラカンさん。肝心な時にお手伝いもできないで。」

一方ノートンは申し訳なさそうな表情で長老たちを見つめた。



「なあに、それがお前さんの仕事だろう。」

「風と女神の加護を。気を付けて行ってきなさい。」

「はい……!」

「とにかく急いでゼンダー門に向かうぞ。」

「そうですね……詳しい状況を確かめないと。」

「ええ……!」

こうしてリィン達はノートンをゼンダー門に送り届ける為と状況を確かめる為に馬を急がせてゼンダー門に向かった。

同日、10:00――――



リィン達がゼンダー門に到着すると既に戦車の部隊が次々と出撃準備を始め、いつでも戦いを始められるようにしていた。



~ゼンダー門~



「……………………」

「エレボニア帝国軍、”第三機甲師団”か……」

「まさかこんな形でまた見る事になるなんて…………」

出撃準備をしているゼンダー門の様子をガイウス、リィン、プリネは真剣な表情で黙って見つめ

「フン……出撃準備も着々と進んでいるようだ。」

ユーシスは鼻を鳴らした後重々しい様子を纏って呟いた。



「君達、ありがとう!とりあえず撮影許可を貰いに行ってみるよ!」

そしてノートンはリィン達から去ってエレボニア帝国軍に交渉を始め

「えっと……ゼクス中将はどちらに―――」

「とにかく詳しい話を聞かなくちゃ……!」

エマとアリサがリィン達と共にゼクス中将を探そうとしたその時

「――おぬしら、来たか。」

高原から馬に乗ったゼクス中将がリィン達に近づいてきた。



「中将……!」

「ど、どちらに行かれてたんですか?」

「念のため、もう一度視察にな。―――それより、おぬしら。いいところに戻ってきた。ちょうど30分後にルーレ行きの貨物列車が出る。今回の実習は切り上げてそれで早めに帰るがいい。」

「ええっ!?」

「それは一体……」

ゼクス中将の言葉を聞いたアリサは驚き、エマは戸惑い

「……………………」

「……私達を戦場に巻き込まない為。―――そう言う事ですね?」

ガイウスは真剣な表情で黙ってゼクス中将を見つめ、プリネは静かな表情で尋ねた。



「はい………………共和国軍(むこう)の出方しだいだが……あと数時間もしないうちに戦端が開かれる可能性は高い。既に集落の方にも伝えていたはずだが?」

プリネの問いかけにゼクス中将は重々しい様子を纏って頷いてリィン達を見回した。

「クッ、だからと言って……」

「こんな中途半端な形で帰るわけには……!」

ゼクス中将の説明を聞いたユーシスとリィンが唇を噛みしめて悔しそうな表情をしたその時、ガイウスが前に出てゼクス中将を見つめて口を開いた。

「―――ゼクス中将。今回の一件、どちらが先に手を出したのですか?」

「ガイウス……」

「……確かにそれは気になるところだけど……」

ガイウスの問いかけにリィンは驚き、アリサは考え込み

「―――調査中だ。もちろん先にも後にも帝国軍が動いた事実はない。にも関わらず、監視塔は破壊され守備兵からは死傷者も出た。ゼンダー門を任された者としてこのまま見過ごす訳にはいかん。」

ゼクス中将は真剣な表情で答えた。



「「……………………」」

「やっぱり亡くなった方もいらっしゃるんですね……」

死傷者が出たという事実を知ったアリサとプリネはそれぞれ真剣な表情で黙り込み、エマは悲しそうな表情をし

「―――仮に共和国軍の偽装工作だったとしてだが。あちらの基地の被害はどの程度のものだったんだ?」

「……幾つかの施設にダメージを受けたようだ。被害はこちらと同等……いや、遥かに上には見えた。」

ユーシスの問いかけにゼクス中将は重々しい様子を纏って答えた。



「そ、それって……!」

「どう考えても、何かがおかしいということでは!?」

「ええ……!偽装工作にしては自軍の被害が大きい事等怪しすぎます……!」

「だが、もはや悠長に様子を伺う時期は過ぎている。全面戦争は避けたい所だがある程度の衝突は覚悟の上だ。我らにしても、彼らにしてもな。」

アリサやリィン、プリネの言葉にゼクス中将は重々しい様子を纏って答えた。

「そんな……」

「…………フン…………」

状況がどうにもならない事にエマは辛そうな表情をし、ユーシスは何もできない自分の不甲斐なさに不愉快そうな表情で鼻を鳴らした。



「……………―――でしたら中将。どうか今回の事件の調査はオレにお任せください。」

その時真剣な表情で考え込んでいたガイウスは決意の表情でゼクス中将を見つめて申し出た。

「……………………」

ガイウスの申し出にゼクス中将は黙り込み

「ガ、ガイウスさん…………?」

「ちょ、調査って……」

「いつ戦端が開かれるかわからない危険な状況なんですよ……?」

エマとアリサは戸惑い、プリネは心配そうな表情でガイウスを見つめた。



「ご存知のように、この一帯ならばオレの知らない所はありません。ノルドの静けさを乱す今回の不可解な”事件”……必ずや原因を突き止めてみせます。」

「……お前…………」

ガイウスの話を聞いたユーシスは驚き

「……………………――――及ばずながら俺達も力になります。」

「これも”特別実習”の一端と言えるでしょうから。」

リィンとアリサもガイウスに続くように申し出た。



「いや―――待ってくれ。これはノルドの……オレの故郷に関する問題だ。(いくさ)が始まる前にせめてお前達だけでも―――」

「水臭いですよ、ガイウスさん。」

「アルバレアの名に賭けて……尻尾を巻いて逃げだす無様を晒すわけにはいかないからな。」

「ええ……!私達は仲間ですし、それにお世話になったノルドの民達にも恩返しをしたいですし……」

「私だって、身内がこちらにご厄介になってるのもあるし。」

「それにガイウス自身、帝都駅で言っていたことだろう?『全員が無事に戻ってくるのが何よりも重要だ』って。」

「……!」

クラスメイト達の申し出、そしてリィンの言葉にガイウスは目を見開いて驚いた。



「フフ……一本取られたな、ガイウス?」

その様子を微笑ましそうに見守っていたゼクス中将はガイウスに問いかけた。

「中将…………」

「現在、10:05――――12:30までの調査を許可する。それまでは戦端が開かれぬようこちらも力を尽くしてみよう。」

「あ……」

「閣下……ありがとうございます!」

「そうと決まれば善は急げですね……!」

「とりあえず、砲撃された監視塔に行ってみるか。」

「ええ、そうね!」

ゼクス中将から調査の許可が出た事にリィン達は表情を明るくしたその時

「――――団結力を高めている所を悪いが……プリネ皇女は25分後に来る貨物列車に乗ってヘイムダルに向かってもらう。」

レーヴェがゼンダー門から歩いてリィン達に近づいてきた。



「レ、レオンハルト教官!?」

レーヴェの登場にリィンは驚き

「……一体いつこちらに来たのだ?」

「―――夜中に連絡を受け、エレボニア軍が特別に手配した飛行艇に乗って1時間前にゼンダー門に到着したばかりだ。」

眉を顰めたユーシスの疑問にレーヴェは静かな表情で答えた。



「そ、それよりプリネさんはヘイムダルに向かってもらうって言ってましたけど……」

一方ある事が気になったエマは心配そうな表情でプリネとレーヴェを見比べ

「まさか皆さんを置いて戦場から逃げろと言うの!?」

プリネは真剣な表情でレーヴェを見つめて言った。



「今回の件を知ったユーゲント皇帝の依頼だ。留学している他国の皇族にはいつ戦端が開かれるかわからない危険地帯からは一刻も早く避難して欲しいとな。」

「!!」

「ええっ!?」

「ユ、ユーゲント皇帝陛下直々の依頼ですか……!?」

「………ありえない話ではないな。戦端が開かれる可能性が高い危険地帯とわかっていて何の対処もせずに他国の皇女であるプリネに何かあれば国際問題へと発展するだろうしな。」

「ああ…………」

レーヴェの説明を聞いたプリネは目を見開き、アリサとエマは驚き、ユーシスの推測を聞いたリィンは重々しい様子を纏って頷いた。



「なお、今回の”特別実習”を中断させる代わりにヘイムダルの王宮にてアルフィン皇女やセドリック皇子と他国の皇族同士、親睦を深めて欲しいとの事だ。」

「そんな……皆さんを置いて逃げた挙句、私は呑気にお茶会をしろというの!?」

レーヴェの説明を聞いたプリネは怒りの表情で反論したが

「―――”カリン”。気持ちはわかるがここは大人しく依頼を受けておけ。ただでさえアルバレア公爵の暴走とは言え、ケルディック、バリアハートと”特別実習”を行った地で立て続けに国際問題へと発展する状況に陥りかけた事はわかっているだろう?皇女であるお前の身を心配してのユーゲント皇帝直々の依頼を蹴れば、お前の()の為にエレボニア帝国の面子を潰す事になるぞ。」

「それは…………」

「……………………」

レーヴェの指摘を聞いて複雑そうな表情で黙り込み、ユーシスは目を伏せて黙り込んだ。



「プリネ姫……御身の辛い気持ちは重々承知しておりますが、どうか陛下の頼みを請けてください……!」

「中将……」

そしてゼクス中将に頭を下げられて複雑そうな表情をした。

「それに今回の件を知った”放蕩皇子”からも通信でお前がユーゲント皇帝の依頼を請けるよう、言い聞かせてくれと頼まれている。」

「!!あの方が…………」

レーヴェの説明を聞いたプリネは驚きの表情になり

「”放蕩皇子”――――まさかオリヴァルト殿下の事か?」

ある事が気になったユーシスはレーヴェに尋ねた。



「ああ。そしてプリネ皇女達の士官学院への留学を依頼したのは放蕩皇子だ。」

「なっ!?」

「ええっ!?」

「オ、オリヴァルト殿下がですか……!?」

「なるほど……ユーゲント皇帝陛下の勅命書をプリネ達が持っている時点でエレボニア皇族が関わっている事には気付いていたが、オリヴァルト殿下が関わっていたのか……」

「しかしそのオリヴァルト殿下が一体どのような理由でプリネ達の留学を依頼したのだ?」

「………………」

レーヴェの説明を聞いたリィンとアリサ、エマは驚き、ユーシスは納得し、ガイウスの疑問を聞いたゼクス中将は黙り込んでいた。



「その件についてはいずれ話す時が来る。それでどうするつもりだ?」

「…………わかったわ。」

レーヴェに促されたプリネは疲れた表情で頷き

「―――すみません、皆さん。肝心な時に力になれなくて…………」

「そ、そんな。気にしなくていいわよ!」

「ああ……それにプリネさんを護衛している身としてもそちらの方が安心できるよ。」

「プリネさんの辛い立場は良くわかっていますので、気にしないで下さい。」

「朗報を必ず届けてやるから、安心してヘイムダルに行って来い。」

「ノルドの平和を守りたいという気持ちだけでもとても嬉しかった。だからオレ達の事は気にするな。」

申し訳なさそうな表情で謝罪するプリネにクラスメイト達はそれぞれ慰めの言葉をかけた。



「皆さん…………――――ペルル、フィニリィ、アムドシアス!」

リィン達の慰めの言葉に驚いたプリネはペルルとフィニリィ、アムドシアスを召喚し

「3人とも、私の代わりにリィンさん達を助けてあげてください。」

「任せて!それにノルドの人達には美味しいご飯をご馳走してもらったんだから、恩返しもしたいし!」

「ええ。それに自然を大切にしている者達の平和を守る事も精霊女王としての義務ですわ!」

「うむ!それにこのような歴史ある大自然を戦場にする等許し難い行為だ!古き芸術を愛する魔神として、そ奴等に力を貸してやろう!」

プリネの頼みに3人の頼もしき使い魔達はそれぞれ力強く頷いた。



その後プリネとレーヴェ、ゼクス中将と別れたリィン達は馬を急がせて監視塔に向かった。 
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