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女子高生!?

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5部分:第五章


第五章

 四人はそれぞれ映画館の前のチケット売り場でチケットを買った。だがその時だった。
「大人二枚よ」
「大人二枚ね」
 洋子と丸めの子がそれぞれ言った。この言葉だった。
「えっ!?」
「大人!?」
 今度はすぐに気付いた。しかも四人共。
「あれ、何で学生証を出さないの?」
「先輩達こそ」
 四人は互いの顔を見合って言葉を交えさせた。その映画館のチケット売り場の前で。道行く人のうちの数人かは彼等の方を見ながら歩いている。何だ、といった顔で。
「どうしてまた」
「学生証を」
「まさか。ひょっとして」
 切れ長の目の子がここで気付いたのだった。
「先輩達、まさか」
「あんた達もひょっとして」
 倫子の方が洋子より早く気付いた。
「あんた達もってじゃあ」
「先輩達は」
「うっ、ここじゃまずいわね」
 洋子は辺りの目に気付いた。そのうえで気まずい顔をして一同に言う。
「皆見ているわよ。とりあえずは」
「そうね。映画館の中に入って」
 倫子が言った。
「そこでお話しましょう」
「そうですね。それじゃあ」
「それで」
 二人の高校生かどうかわからなくなった二人もそれに頷く。こうして何はともあれまずは映画館に入って話をすることになった。
 幸い映画はまだ上映されていない。四人は映画館のロビーで話をするのだった。紙コップの紅茶やコーヒーをめいめい啜りながら話をする。
「それでだけれど」
「はい」
 洋子が話を切り出し丸い目の子がそれを受ける。
「実は私達二十四なのよ」
「高校生じゃなかったんですね」
「ええ、OLなのよ」
「そういうことだったの。まあ遊びでこんな格好してね」
「そうだったんですか」
「じゃあ僕達と同じですね」
 二人も白状しだした。紅茶とコーヒーの香りの中で。
「僕達は実は」
「大学生なんです」
「そうだったの」
「はい、二人共二年で二十歳です」
「高校も同じだったんでちょっとやてみようってことになって」 
 そうした理由からだったのだ。事情は大体二人と同じだった。
「まさかばれるなんて」
「こんなのことになるなんて」
「こんなことはお互い様よ」
 しかし洋子は笑ってこう言うのだった。
「私だってばれるとは思わなかったわよ」
「そうだったんですか」
「失敗したわ」
 その映画館の入り口のことだ。これも両方間違えたことだ。
「まさかとは思ったけれどね」
「ですよね、本当に」
「失敗しましたよ」
「それでも。よく考えなくてもおかしな話だわ」
 倫子はコーヒーを片手に呟いた。
「お互い。高校生でもないのに高校生の格好してここにいるんだから」
「そうですよね、本当に」
「こんなことになるなんて」
「こんなことでもなってしまったのは確かよ」
 洋子はもうそれを受け入れていた。
「だったら。もうそれでいいわ」
「いいんですか」
「これも何かの縁よ」
 かなりポジティブであった。これが洋子のいいところだった。
「デート、続けましょう」
「いいんですか、それで」
「僕達もう」
「別に浮気したとかそんなのじゃないからいいじゃない」
 これが洋子の考えだった。
「浮気だったら絶対に許さないけれどそういうことじゃないじゃない。年齢詐称位じゃね」
「構わないのね」
「こんなの芸能界じゃ常識よ」
 何故かここで芸能界の話を出す。的外れであるように思えてそうでもなかった。女にとって年齢は隠したいものであることは確かだからだ。
「だからいいのよ」
「戸籍では誤魔化し聞かなくても?」
 倫子は少し意地悪してさらに問うた。
「それでもいいのね」
「戸籍は戸籍、心は心」
 心の問題だと言い切る。
「だからいいのよ」
「わかったわ。じゃあそういうことでね」
「納得してくれたのね」
「あんまり強引だから呆れたのよ」
 口ではこう答える。
「それだけよ」
「何よ、面白くないわね」
「それでデートはするのね」
 今度は倫子から話を変えてきた。
「あんたはそのつもりなのね」
「ええ、そうだけれど」
 洋子は正直に倫子に答えた。
「あんたは?」
「それはこの子達次第だけれど」
 向かい側にいる二人の大学生を見て言う。高校の制服だが大学生なのだ。
「貴方達はどうなの?」
「僕達はまあ」
「お姉さん達がよければ」
 いいというのだった。主体性がないがそれ以上にデートできるということが有り難いらしい。そういうことだった。
「御願いします」
「是非」
「これで決まりね。じゃあそろそろ上演の時間だし」
「そうね」
 倫子が洋子の言葉に頷く。
「中に入りましょう。それで」
「それで?」
「今度はあれよ。高校生同士じゃなく」
 洋子はにこりと笑って大学生二人と倫子に対して告げた。
「普通のOLと大学生でね。デートしましょう」
「そうね、私ももうコスプレは嫌だし」
「あら、似合ってるのに」
「そういう問題じゃないわよ」
 倫子はこう洋子に言い返した。その顔を少し憮然とさせている。やはり好きになれないのだ。
「そういう問題じゃね」
「全く。付き合いが悪いんだから」
「普通のデートならいいわよ」
 そんなことを言い合いながらデートを続ける。高校生同士と思っていたがそれが大違い、けれどそこからまた話がはじまる。世の中というものは本当に何が起こるかわからないのだった。


女子高生!?   完


                    2008・5・2
 
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