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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第54話

~メーヴェ海道~



ルーアン市とマノリア村に行く分かれ道でエステル達とクロ―ゼはそれぞれの目的地に行くため、一端別れようとした。

「さてと、ここでお別れだね。」

「はい……。この数日間、本当にありがとうございました。」

ヨシュアの言葉に頷いたクロ―ゼはエステル達にお礼を言った。

「そんな……私も素晴らしい学園生活を送らせてもらって、本当にありがとうございました。」

「プリネの言う通り、あたしたちも楽しかったわ。それじゃあ……先生とあの子たちによろしくね。……ミントちゃん達を連れて行く時、必ず連絡するからね。」

「はい、お願いします。」

そしてエステル達とクロ―ゼが別れようとした時、孤児院の片づけをしていた男性の一人が慌てた様子でエステル達に走って近付いて来た。

「おお、あんたたちは!」

「あれ……」

「あなたは……確かマノリアに住んでいる……」

男性の顔を見て、エステルとヨシュアは不思議そうな表情をした。

「そういうあんたたちは確か遊撃士だったな!た、大変な事になったんだ!」

「大変なこと……?」

男性の言葉にプリネは首を傾げた。

「はあはあはあ……。ちょ、ちょっと待ってくれ。い、息が切れて……。ふーっ、ふーっ……。…………………………ふう……」

マノリアから全速力で走って来たため、息が切れていた男性は深呼吸をして落ち着いた後、話し始めた。



「……テレサ先生と子供たちがマノリアの近くで何者かに襲われた。」

「な……!?」

「あ、あんですってー!?」

「なんだって……!」

男性の説明にプリネは信じられない表情をし、エステルやヨシュアは驚いた。

「……………………あ…………」

クロ―ゼは男性の説明を聞くと、糸が切れたように膝をおった。

「だ、大丈夫!?」

「……しっかり。倒れている場合じゃないよ。」

「ヨシュアさんの言う通りです、クロ―ゼさん。詳しい話を聞かないと。」

膝をおったクロ―ゼをエステルが支え、ヨシュアとプリネが励ました。

「す、すみません……」

エステル達に励まされ、クロ―ゼは立って詳しい説明を男性の求めた。

「お願いします……。詳しいことを教えてください」

「あ、ああ……。学園祭から帰って来る途中で変な連中に襲われたみたいでな。子供たちにケガは無かったがテレサ先生と護衛の遊撃士の姉ちゃんが気絶させられたみたいで……」

「ええっ、カルナさんも!?」

「相当の手練みたいだね……」

「そうですね……まさか、正遊撃士の方まで気絶させられるなんて………」

「………………………………」

男性の詳しい説明を聞き、エステルやヨシュア、プリネは信じられない表情をし、クロ―ゼは悲痛そうな表情をした。



「それで、ギルドに連絡するはずが宿の通信器が壊れたみたいでな。仕方なく俺が大急ぎで走ってきたんだ。」

「そうですか……。協力、感謝します。ただ、できればこのままルーアンに行ってくれませんか?僕たちはこのままマノリアに急ぎますから。」

「ああ、わかった!」

そして男性はルーアンに向かって再び走り去った。

「さあ、僕たちも急ごう!」

「う、うん!」

「ええ!」

「………………はい!」

そしてエステル達は急いでマノリア村へ向かった。



~マノリア村宿酒場・白の木蓮亭の一室~



「あ……」

「ママ……」

「ご主人様……」

部屋に入って来たエステル達にクラムは気付き、クラムの声で気付きいたミントはエステルを見て涙目でエステルに抱きつき、ツーヤは悲痛そうな表情をしてプリネに近寄ってプリネの服を掴んだ。

「う……ひっく……先生が……」

「あたし……みんなのお姉さんなのに何もできなかった……」

ミントはエステルに抱きついてしゃっくりを上げて泣き、ツーヤは悔しそうな表情でプリネに言った。

「ミントちゃん……」

「ツーヤ……いいの。……その気持ちがあるだけでテレサさんは嬉しいと思うわ。」

泣いているミントにエステルは膝をついて抱きしめ、プリネはツーヤを優しく諭した。

「わあああん……」

「恐かったのー!」

ミントやツーヤがエステル達に抱きついたのと同時に、ポーリィやダニエルがクロ―ゼに近寄って泣いた。

「良かった……。みんなは無事みたいね。」

傷一つついていない子供達を見て、クロ―ゼは安堵の溜息をついた。そしてヨシュアはテレサとカルナを看護しているマノリア村の女性に容体を真剣な表情で尋ねた。



「すみません。先生たちの容体は?」

「安心しなさい。2人とも大した怪我じゃないわ。ただ、目を醒まさないからちょっと心配なんだけど……」

「……ちょっと失礼します。」

女性の答えを聞き、ヨシュアはテレサとカルナの様子を調べた。

「間違いない……。睡眠薬を嗅がされたみたいだ。」

「す、睡眠薬ぅ?」

確信を持ったヨシュアの答えにエステルは声を上げた。

「うん、かすかに刺激臭がする。副作用がないタイプだから安心してもいいと思うけど……」

「うーん……。ね、クラム。何があったのか教えてくれる?」

「………………………………」

エステルはミントを抱きしめて、泣いているミントを慰めるように優しく頭を撫でながらクラムに事情を尋ねたがクラムは黙って何も言わなかった。

「あたしが説明します……」

黙っているクラムに代わってマリィが話し始めた。



「あたしたち……遊撃士のお姉さんと一緒に海道を歩いていたんですけど……。いきなり、覆面をかぶった変な人たちが現れて……。遊撃士のお姉さんが追い払おうとしたけど……。覆面の人たちにすぐに囲まれちゃって……。先生もあたしたちを守ってあいつらに向かっていって……。……それで……ヒック……」

「マリィちゃん……」

気丈に話していたマリィだったが、最後には目に涙を溜めたのでクロ―ゼはマリィの頭を撫でて慰めた。

「……あいつら……先生からあの封筒を奪ったんだ……。オイラ……取り戻そうとしたけど思いっきり突き飛ばされて……。ヨシュア兄ちゃん……オイラ……守れなかったよ……」

クラムは悔しそうな表情で涙をポロポロと流し始めた。

「……そんなことないさ。君たちが無事でいるだけで先生はきっと嬉しいはずだから。だから……自分を責めちゃだめだ。」

「でも……オイラ……オイラ……」

「ヒック……ヒック……」

「許せない……!どこのどいつの仕業よ……」

泣いている子供達を見て、エステルは思わず叫んだ。

「………………………………。はっきりしているのは……犯人たちは相当の手練ということです。遊撃士の方がなす術もなく気絶させられたわけですから……」

「クローゼ……」

一番ショックが大きいクロ―ゼが冷静に推測している様子にエステルは驚いた。

「そしてもう1つ……。計画的な犯行だと思います。狙いはもちろん先生の持っていた寄付金と宝石……。孤児院を放火したのもおそらくその人たちでしょう。」

「うん、その可能性が高そうだ。」

「クローゼさん……。やっと落ち着いたみたいですね。」

冷静になったクロ―ゼを見て、プリネは安心して尋ねた。

「はい……。落ち込んでいても仕方ありませんから。今はとにかく、一刻も早く犯人の行方を突き止めないと……」

「……そいつは同感だな」

そこにアガットが部屋に入って来た。



「あら……」

「あーっ!」

「アガットさん……」

アガットの姿を見てプリネは目を丸くし、エステルは声を上げて驚き、ヨシュアも驚いた。

「話はギルドで聞いたぜ。ずいぶんと厄介な事になってるみたいじゃねえか。」

「ひ、他人事みたいに言わないでよ!カルナさんだってやられちゃってるんだから!」

「判ってる……。きゃんきゃん騒ぐな。確かにカルナは一流だ。相当、やばい連中らしいな。大ざっぱでいいから一通りの事情を話してもらおうか。」

「はい……」

そしてエステル達は一通りの事情をアガットに説明した。

「ふん、なるほどな……。妙な事になってきやがったぜ。」

「妙って、何がよ?」

アガットの意味深な言葉が気になり、エステルは尋ねた。

「ああ、実はな……。『レイヴン』の連中が港の倉庫から行方をくらました。」

「そ、それって……。やっぱりあいつらが院長先生を襲ったんじゃ!?」

「いや、それはどうかな。彼ら程度に、カルナさんが遅れを取るとも思えない。」

「ええ。あの人達は意気がってはいましたが、戦いに関しては素人に感じられましたし……いくら複数でかかっても、正遊撃士の方には敵わないと思います。」

アガットの答えを聞きロッコ達を疑ったエステルだったが、ヨシュアとプリネは冷静に否定した。



「そっか、確かに……。あの連中、口先だけでろくに鍛えてなかったもんね。」

「しばらく睨みを利かせて大人しくなったと思ったが……。今日になっていきなり姿をくらましやがって……。そこに今度の事件と来たもんだ。」

「犯人かどうかはともかく何か関係がありそうですね。」

「ああ、だが今はそれを詮索してる場合じゃない。新米ども、とっとと行くぞ。」

ヨシュアの答えに頷いたアガットはエステル達に自分について来るよう促した。

「なによ、いきなり……。いったい、どこに行くの?」

「わかんねえヤツだな。犯行現場の海道に決まってるだろ。あのバカどもがやったかどうかはともかく……。できるだけ手がかりを掴んで犯人どもの行方を突き止めるんだ!」

「あ……なるほど。」

「分かりました、お供します。」

アガットの言葉にエステルとヨシュアは納得し、頷いた。

「あ、みなさん。私は念のためにこちらで残っておきますね。」

「確かに先生達が完全に安全になったとは言いきれないからね……じゃあ、先生や子供達の事を頼むよ、プリネ。僕達より感覚が鋭い君なら大丈夫だと思うし。」

「はい。……そうだ!……ペルル!マーリオン!」

テレサ達を護るために残る事を提案し、任されたプリネは使い魔達を召喚した。



「はーい!」

「お呼びですか……プリネ様……」

「な、なんだぁ!?こいつらは……!?」

召喚された使い魔達を見てアガットは驚いた。

「あの2人はプリネの使い魔達です。……以前エステルがアガットさんの前にパズモを呼びましたよね?あの時と同じです。」

「こいつらがか……!?」

ヨシュアの説明にアガットは驚いた。

「私の代わりにエステルさん達を手伝ってあげて下さい。」

「うん!」

「了解……しました……」

主の言葉に使い魔達は頷いた。

「……という訳です。この2人も戦力として連れて行って下さい。」

「ありがとう、助かるわ!」

プリネにお礼を言った後、エステルは心配そうな表情で自分を見ているミントと顔を合わせた。

「ママ………」

「ミントちゃん……先生達を酷い目に合わせた悪い奴らを今からとっちめてくるから、いい子にして待っててね。」

「うん……ミント、いい子にして待っているから無事に帰って来てね、ママ。」

「モチのロンよ!」

心配そうな表情をしているミントを元気づけるようにエステルは明るい笑顔で答えた。



そしてエステル達はテレサ達を襲った襲撃者達を調べるために一端外に出た……… 
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