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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第31話

その後街を探索していたリィン達は地下水道へ続くと思われる扉を見つけた。



~バリアハート~



「……ここが地下水道の入口なんでしょうか?」

「ん……風が吹いてきている。けっこう広い空間が中に広がっているっぽい。」

扉を見つめたエマの疑問にフィーは答え」

「間違いなさそうね。って、やっぱり鍵がかかっているわね。」

エステルは頷いた後扉の取っ手を掴んで開けようとしたが扉には鍵がかかっており、開けなかった。



「壊した方が速くないか?」

「いえ………さすがに街中でそんな事をすると領邦軍が駆け付けてきますから、危険なので止めた方がいいかと………」

メティサーナの提案を聞いたリィンは橋のあたりにいる市民や貴族達を見つけて首を横に振って答え

「――ヨシュア、頼めるかしら?」

エステルはヨシュアに視線を向けた。



「任せて。この程度の鍵なら……………よし、開いた。」

視線を向けられたヨシュアはピッキングツールを取り出して鍵穴を弄って、なんと鍵を開いた!

「おおー。」

「凄いな……」

「遊撃士って、そんな事もできるんですね……」

その様子を見ていたフィーとリィン、エマは驚いた。

「―――これで地下水道に入れるな。準備を整えた後目立たないように入ろう。」

「はい。」

「ん。」

「ええ。」

「了解。」

「うむ!」

そしてリィン達は準備を整えた後地下水道に入って行った。



~地下水道~



「意外と綺麗な場所ですね……さすがは”翡翠の都”の地下といった所でしょうか。」

地下水道の広間に出たエマは驚き

「でも、面倒そうな魔獣が結構うろついてるみたい。」

「そのようだね。領邦軍にも気付かれない為にも戦闘はできるだけ迅速に終わらせた方がいいだろうね。」

「フフン、メティがいれば一瞬で終わらせてやるから無用の心配だ!」

周囲の気配を探ったフィーとヨシュアの忠告を聞いたメティサーナは胸を張り

「全く。よく領邦軍はこんな危ない所を放置できるわね……」

エステルは呆れた表情で溜息を吐いた。



「目指すは西―――領邦軍の詰所に通じる区画だ。何とか入口を探し出して捕まったマキアスを解放しよう。」

「はい……!」

「「了解。」」

「オッケー。って、そうだ。メティも元の姿に戻ったら?これから戦闘が起こる事は確実だし。」

「へ……?も、元の姿って……」

メティサーナに視線を向けて言ったエステルの言葉に訳がわからない様子のリィンが呆けたその時

「そうだな。」

エステルの言葉にメティサーナが頷いた後光に包まれた。すると町娘の姿をしていたメティサーナは鎧を身に纏うと共に自分の周囲には浮遊する盾を展開し、更に背中には左右に色が違う白と黒の翼が生えており、頭には光の輪っかが浮いていた。



「て、天使……!?」

「へえ。異世界に天使がいる事は噂には聞いていたけど、本当にいたんだ。」

「………………」

メティサーナの真の姿にリィンは驚き、フィーは目を丸くした後興味ありげな表情でメティサーナを見つめ、エマは真剣な表情でメティサーナを見つめていた。

「フフ、メティがいれば、どんな魔獣が現れてもこの鎌で真っ二つにして裁きを与えてやろう!」

驚きの表情のリィン達に見つめられたメティサーナは片手に持つ身の丈程ある大鎌を構えて勝ち誇った笑みを浮かべた。



「―――こんな場所までわざわざ入り込んでくるとはな。」

仕掛けを解き、時折襲い掛かってくる魔獣を倒しながら進んで行くと聞き覚えのある男子の声が聞こえてきた。

「え……」

「この声……」

声を聞いたリィンとフィーが驚いたその時、ユーシスがツーヤと共に別の道からリィン達に近づいてきた。



「ユーシス……!」

「それにツーヤもいるね。」

「よかった、ご無事でしたか。」

二人の登場にリィン達は安堵の表情をし

「フン……無事に決まっているだろう。まさか屋敷に戻るなり、ツーヤ共々行動の自由を奪われるとは思わなかったが……」

「あの後ユーシスさんと同じ部屋に通されて、見張り付きで外に出してもらえなかったのですが、ユーシスさんの機転で何とか出てきたんです。」

ユーシスは鼻を鳴らした後不愉快そうな表情で答え、ツーヤが説明を補足した。



「そうか……」

「どんな状況か大体知ってるみたいだね?」

二人の話をある程度予想していたリィンは納得している様子で頷き、フィーは尋ねた。

「ああ、革新派を牽制するために帝都知事の息子に濡れ衣を着せて拘束する……まさかそこまで露骨な事を父が企てるとはな。プリネの件で懲りて、そんな露骨な真似は控えると思っていたのだが……――――結局、俺と話すつもりは父には最初からなかったわけだ。」

フィーの疑問に頷いたユーシスはどことなく諦めの雰囲気を纏わせた。



「………………」

「……ユーシスさん……」

ユーシスの様子を見たリィンは目を伏せて黙り込み、エマは心配そうな表情で見つめた。

「―――まあ、俺のことはいい。この地下水道の構造は兄から聞いて大体把握している。領邦軍の詰所まで先導するからとっとと行くぞ。」

「ということは君は最初から……」

「ユーシス……」

ユーシスの言葉から最初からマキアスを助けるつもりである事を察したヨシュアとリィンは驚き

「ふふ、ツーヤさんと一緒にマキアスさんの事、助けに行こうとしてたんですね?」

エマは微笑みながら尋ね

「先月の実習とは大違い。」

フィーは目を丸くしてユーシスを見つめた。



「フン、父のやり方に納得いかなかっただけだ。それに、今頃ヤツも心細くてベソをかいているに違いない。それを目撃できるだけでも助けてやる価値はあるだろう。」

「アガットやメティと一緒で素直じゃないわねえ。」

「ハハ、確かにそうだね。」

「何!?メティはあんなむさくるしい男やそんな仏頂面の男と違うぞ!」

鼻を鳴らした後不敵な笑みを浮かべたユーシスの言葉を聞いたエステルとヨシュアは苦笑し、二人の言葉を聞いたメティサーナはエステルとヨシュアを睨んだ。



「……?さっきから気になっていたが、そいつらは何者だ。」

エステル達の声を聴いて眉を顰めたユーシスはエステル達に視線を向け

「エ、エステルさん!?それにヨシュアさんと、確か貴女はセリカさんの使い魔のメティサーナさん、でしたよね……?一体どうしてここに……」

エステル達を見たツーヤは驚きの表情でエステル達を見つめた。そしてリィン達はエステル達が同行している理由をユーシスとツーヤに説明した。



「なるほどな………―――リィン。かの”ブレイサーロード”がいれば、父や領邦軍の連中も手が出しにくいというその考えは悪くないが……一つだけ誤算がある。」

「誤算?」

事情を聞いて納得した様子で頷いた後自分を見つめて言ったユーシスの言葉が訳のわからないリィンは首を傾げ

「父上は遊撃士達を厄介者扱いしている事は兄から聞いているが……―――特に平民から貴族に成り上がった”ブレイサーロード”や”黄金の百合”の事は相当嫌っていると聞いた事がある。」

「なっ!?」

「どうしてそこまでエステルさん達の事を……」

「ま、四大名門の当主なら成り上がり者の”ブレイサーロード”達を嫌っていてもおかしくないね。」

ユーシスの説明を聞いたリィンは驚き、エマは不安そうな表情をし、フィーは静かな表情で呟いた。



「ま、そんなもんじゃないかと思ってたわよ。レンやサフィナさんからもエレボニア帝国の貴族の人達は血統主義が多いから、あたしとミントみたいな成り上がり貴族を嫌っている可能性は高いからエレボニア帝国領内で活動する時は気を付けておけって言われているし。」

「やっぱりか……」

「フン、血筋だけで全てを決めるとは愚かな人間達だ。」

一方エステルは驚いた様子はなく、呆れた表情で答え、ヨシュアは納得した様子で頷き、メティサーナは不愉快そうな表情で呟き



「……その、エステルさん。今からでも遅くはないで―――」

そしてリィンはエステル達を領邦軍に狙われないようにするためにある事を提案しようとしたが

「あ、先に行っておくけどここで帰れって言われても帰らないわよ?不当な理由で拘束された民間人をほおっておくなんて、遊撃士として見逃せないし。」

エステルが先に制して答えた。



「で、ですがユーシスの話通りならエステルさん達が領邦軍の兵士達に狙われる可能性は相当高いんですよ?」

「あたし達の事は心配いらないわよ。これでもそれなりの修羅場はくぐってきているし、領邦軍の兵士なんてあたし達からすれば雑魚よ、雑魚。どう考えても”結社”の連中よりも遥かに下だから、何百人かかってきてもかる~く、捻りつぶせるわよ!」

「メティはこれでも数多くの戦争を経験しているし、悪魔共も数えきれないほど葬ってきた!無用な心配だ!逆に返り討ちにしてやろう!」

リィンに心配されたエステルとメティサーナは胸を張って答え

「まあ、確かにそれは言えるね。正直、兵の練度からして違う上、”化物”揃いの”執行者(レギオン)”とか、領邦軍では絶対に敵わないだろうし。」

「!………………」

エステルの言葉に納得して頷いたフィーの言葉を聞いたヨシュアは驚いた後、真剣な表情でフィーを見つめた。



「”結社”……?」

一方ある事が気になったリィンは首を傾げ

「エステルさん……さすがに口が軽すぎるのでは?」

リィンの様子を見たツーヤは呆れた表情で指摘した。

「アハハ、つい口がすべちゃったわ。―――詳しい説明は省かせてもらうけど、その”結社”って連中は2年前の”リベールの異変”を起こした張本人達なのよ。」

「”リベールの異変”だと……?」

「確か……”導力停止現象”が起こった事件ですよね?私達が先月特別実習をした町―――”紡績町パルム”もその”導力停止現象”の被害を受けたそうですが……」

苦笑しながら答えたエステルの話を聞いたユーシスは眉を顰め、エマは考え込みながら言った。



「そ。それであたし達はその事件を解決する為にクローゼ―――リベールのクローディア姫やあたし達の仲間達と一緒に解決したの。」

「ちなみにその解決メンバーの中にはオリヴァルト皇子とオリヴァルト皇子の護衛役―――”帝国の双璧”と名高い”ヴァンダール家”のミュラー少佐も協力してくれたんだ。」

「ええっ!?」

「エ、エレボニア皇族の方が自らですか……」

「しかも”ヴァンダール家”って言ったら、ラウラの実家―――”アルゼイド家”と並ぶエレボニア帝国の武の名門だね。」

「その話は聞いた事がある。社交界でも一時期、持ち切りになった話だからな。」

エステルとヨシュアの説明を聞いたリィンとエマは驚き、フィーとユーシスは静かに呟いた。



「ま、そういう訳であたし達は修羅場慣れしているから、心配ないわ。メティだって、あたし達以上に修羅場を潜り抜けているし。」

「ああ!メティ達に歯向かう愚か者達は全て返り討ちにしてくれる!」

「は、はあ……そこまで言うのでしたら引き続きお願いします……(い、一体どんな修羅場をくぐりぬけたんだ……?)」

エステルとメティサーナの力強い言葉にリィンは戸惑いながら頷いた。



「そう言えばエステルさん。ミントちゃんは?」

一方ある人物がいない事を疑問に思っていたツーヤはエステルに尋ね

「ミントはフェミリンスと一緒にバリアハートへの護衛依頼をやっていたんだけど……こっちに来る前にさっき連絡したら護衛の依頼は無事終えたって話を聞いたから、二人にはマキアス君を救出後バリアハートから脱出する際の援護にいつでも迎えるように、バリアハート市内に待機しているわ。」

「そうですか。」

「え……じゃあ、エステルさん達以外の遊撃士の方達もバリアハート市内にいるのですか?」

ツーヤに説明したエステルの話を聞いたエマは目を丸くして尋ね

「うん。今は脱出ルートで領邦軍に見つからないように待機しているけどね。」

「す、既に脱出ルートまで考えていたんですか……」

「さすが遊撃士。抜かりないね。」

(……”フェミリンス”?どこかで聞いた名前ね……)

ヨシュアの説明を聞いたリィンは驚き、フィーは感心し、ある人物の名前を聞いたベルフェゴールは首を傾げていた。



「脱出ルートと言っているが……どのような算段でこのバリアハートから脱出して、トリスタに向かうつもりだ?」

その時ある事が気になったユーシスはエステル達を見つめて尋ねた。

「まずは君達のクラスメイトを保護してこの地下水道から出た後、北クロイツェン街道に向かうわ。」

「え……ど、どうして街道に?」

エステルの説明を聞いたリィンは不思議そうな表情で尋ね

「恐らくだけどバリアハート市内の駅は勿論、飛行場も領邦軍によって見張られているだろうしね。だからまずは徒歩でケルディックに向かう。」

「確かにマキアスさんの脱走に気付かれたら真っ先に移動手段を封じてくるでしょうね……」

「実際私達の部屋も領邦軍の兵士達が調べていましたから十分に考えられますね……」

ヨシュアの話を聞いたツーヤとエマはそれぞれ真剣な表情で考え込んだ。



「――なるほどね。メンフィル領のケルディックに入ってしまえば領邦軍も手を出せないから、ケルディックの駅に来る鉄道からなら安全にトリスタに帰れるね。しかもケルディックの臨時領主の一人はツーヤの義母だから、ツーヤがいれば顔パスで国境を越えさせてくれると思うし。」

フィーは納得した様子で頷いた後ツーヤに視線を向け

「……ええ。あたしはプリネさんの親衛隊長を務めている影響でメンフィル軍内には顔が知れ渡っていますし、義母さんが率いる”竜騎士軍団”の方達はあたしとサフィナ義母さんの関係を知っていますから、大丈夫かと。」

視線を向けられたツーヤは静かな表情で頷いた。

「――加えて”民間人の保護”を謳う遊撃士、更にはメンフィル皇帝直々から爵位を貰っている”ブレイサーロード”もいる事によって、少なくてもメンフィル軍は俺達の事を不審者扱いしないだろうしな。……メンフィルを手駒にしようと暴走した結果がここでも返ってくるとは、”因果応報”としか言いようがないな……フッ、父上には良い薬だ。」

ユーシスは静かな表情で呟いた後嘲笑し

「ユーシスさん……」

その様子を見ていたエマは心配そうな表情で見つめた。



「バリアハートから脱出する際に領邦軍による妨害もあるだろうが……メティがいれば、全て薙ぎ払ってやるから安心しておけ!」

「一応言っておくけど殺しはダメだからね。さすがに殺しちゃったらとんでもない問題へと発展しちゃうし。」

「と言うかそれ以前に今回の脱出作戦は領邦軍と戦うのは必要最低限の予定だから。」

胸を張って言ったメティサーナの言葉を聞いたエステルはジト目で指摘し、二人の言葉を聞いたヨシュアは疲れた表情で指摘し

(ぶ、物騒すぎる会話だな……)

(何事もなく、無事にバリアハートから脱出できればいいのですけどね…………)

二人の会話を聞いていたリィンとエマはそれぞれ冷や汗をかいて疲れた表情になった。

その後リィン達は探索を再開し、詰所に繋がっていると思われる鉄の扉の前に到着した。

「こ、これは……!」

鉄の扉を見たユーシスは驚き

「鉄の扉?それにしては……」

エマは戸惑いの表情で扉を見つめた。



「鍵穴も何もない。多分、向こう側からしか開かない造りみたいだね。」

「地下からの侵入者対策か……」

「やっぱりそう簡単にいかないわね。」

「何か仕掛けはないのか?」

フィーの説明を聞いたヨシュア、エステル、メティサーナはそれぞれ真剣な表情で鉄の扉を見つめていた。



「もしかしてここが領邦軍の詰所の……?」

「……ああ。地下に通じていた場所だ。だが、まさか一方通行のゲートを用意していたとは……」

リィンに尋ねられたユーシスは頷いた後厳しい表情で鉄の扉を睨んだ。



「こ、困りましたね。鍵穴もないとさすがに……」

「……俺の剣で断ち切るのも難しそうだな。」

「じゃあ――――」

扉を見てそれぞれ考え込んでいるリィンとエマの様子を見たエステルがある事を提案しかけたその時

「……うん。これなら何とかなるかも。」

扉をジッと見つめていたフィーが静かにつぶやいた。



「フィー?」

「フィーちゃん?」

「下がってて。」

そしてフィーの指示に頷いたリィン達は扉から下がり、フィーは扉に近づいて何かの仕掛けを施した。



「……なんだ?」

「一体何をするつもりだ?」

その様子を見守っていたユーシスとメティサーナは不思議そうな表情をし

「ヨシュア、まさかあれって……」

「うん、この匂い……間違いない。」

仕掛けの正体を見破ったエステルに尋ねられたヨシュアは真剣な表情で頷いた。



そしてフィーは扉から離れ

「??」

「おい、一体何を―――」

フィーの行動にエマが首を傾げ、不審に思ったユーシスを声をかけようとしたその時

「”起動(イグニッション)”。」

フィーが扉に向けて銃撃を放った。すると扉に備え付けられた何かは一斉に爆発した!



「な―――!?」

「ええっ!?」

爆発を見たユーシスとエマが驚いたその時、鉄の扉はフィーの前に倒れて先が進めるようになった。



「おおっ!扉が倒れて先に進めるようになったぞ!」

「……ん。上手くいった。」

その様子を見たメティサーナは感心し、フィーは静かに呟き、フィーの呟きを聞いたリィン達は冷や汗をかいた。

「上手く行ったって……」

「フィーちゃん……」

「今のは……爆発物か?」

「携帯用の高性能爆薬。可塑性もあるからこういった工作には便利。」

「ば、爆薬……」

「何でそんな物を常に携帯しているのだ?」

ユーシスの質問に答えたフィーの話を聞いたエマは表情を引き攣らせ、メティサーナは尋ねた。



「……フィー。この際だから教えてくれるか?君は一体、何者なんだ?」

「……………………」

「ちょ、ちょっと、リィン君?」

「リ、リィンさん……」

リィンに問いかけられたフィーは黙り込み、聞き辛い事を口にしたリィンの質問を聞いたエステルは慌て、エマは心配そうな表情で見つめた。



「思えば入学式の日も、君は身体能力が元々俺達と違うプリネさん達を除いて一人だけ床のトラップを回避していたように見えた。俺達より2歳年下なのに身体能力では引けを取らない……そして、戦闘力に至ってはセーブすらしてるんじゃないか?」

「なに……!?」

「ええっ!?そ、それって前のヨシュアみたいな感じ……!?」

リィンの推測を聞いたユーシスとエステルは驚き

「いや……彼女の場合は多分、意図的に力をぬいているんだと思う。」

エステルの推測を聞いたヨシュアは真剣な表情でフィーを見つめながら呟き

「何?ならば何故、戦闘で手を抜くのだ?」

ヨシュアの推測を聞いたメティサーナは眉を顰めた。



「……まあいっか。―――士官学院に入る前、わたしは”猟兵団”にいた。爆薬も、銃剣(ガンナーソード)の扱い方もそこでぜんぶ教わった。ただ、それだけ……」

「えっ!?」

「あ、あんですって!?こ、こんな小さな子供が元猟兵……!?」

「やっぱりか……」

「”猟兵団(イェーガー)”……そうだったのか。」

フィーの説明を聞いたツーヤとエステルは驚き、ヨシュアとリィンは納得した様子でフィーを見つめ

「……聞いた事があります。一流の傭兵部隊のことをそんな風に呼ぶ習慣があるって。」

「……信じられん。”死神”と同じ意味だぞ。」

エマは静かな表情で呟き、ユーシスは信じられない表情でフィーを見つめた。



「わたし、死神?どっちかっていうとそこの天使の方がよっぽど死神っぽいけど。鎌を持っていて、いかにも死神だし。」

「何だと!?メティは誇り高き天使だ!あんな連中と一緒にするな!」

「まあまあ。」

「というかそれ以前に死神と会った事があるの?」

「まあ、メティサーナさんだと実際に会っていてもおかしくはないですが……」

首を傾げて呟いたフィーの指摘を聞いて憤ったメティサーナの様子を見たヨシュアは苦笑しながら諌め、エステルは呆れた表情で指摘し、エステルの指摘を聞いたツーヤは苦笑していた。

「いや……―――そうだな。名に囚われる愚は冒すまい。」

一方ユーシスは戸惑った後重々しい様子を纏ってフィーが死神である事を否定した。



「ええ、私達にとってフィーちゃんはフィーちゃんです。」

「……フィー。教えてくれてありがとう。それとゴメンな。聞き出すような真似をして。」

「気にしてない。それより、マキアスを助けるなら早く入った方がいいと思う。」

「ああ、そうだな。」

「よし―――中に入るか。」

そしてリィン達は詰所の地下区内への潜入に成功し、牢屋を見つけた。 
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