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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第31話

宿屋の受付で部屋をとったエステル達は一端自由行動にした。シェラザードとオリビエは果実酒を飲みかわし、エステルとリフィアは釣りで勝負をして楽しみ、ヨシュアとプリネはそれぞれ宿屋のベランダにあるテーブルの傍にある椅子に座り読書をし、またエステルとプリネは使い魔達を召喚し自由に遊ばせ、エヴリーヌは適当な場所で日向ぼっこをして昼寝をした。楽しい時間はすぐに過ぎ、気がつくと夕方になっていた。



~ヴァレリア湖・夕方~



「ふ~、もう夕方か……」

「む?もう、そんな時間か。」

魚をまた釣ったエステルは辺りが夕焼けにそまっているのに気付き、リフィアはそれに気付いて残念そうな表情をした。

「うん!なかなかの戦果ね。」

「むむむ……余が勝負事で負けるとは。次はこうは行かないぞ!」

「ふふ~ん♪いつでも受けて立つわよ♪」

エステルが釣った魚の数と自分が釣った魚の数を見てリフィアは唸り、エステルは得意げな表情をした。

「見て見て、ヨシュア、プリネ。こ~んなに釣っちゃったわよ!」

「ふふ、凄いですね。」

読書をしているヨシュア達に自慢するために振り向いたエステルだったが、そこにはプリネしかいなかった。

「あり?ヨシュアは?」

「ヨシュアさんでしたら、先ほど席を立ってどこかに行きましたよ。」

「ふ~ん。……あれ、これって……」

机に近づいたエステルはテーブルの上に置いてある本――『実録・百日戦役』を見つけた。

「あら。先ほどヨシュアさんが読んでいた本ですね。」

「じゃあ、ヨシュアの忘れものじゃない。いつも澄ましてるクセに割と抜けてるトコがあるのよね~。仕方ない、あたしが届けてやるか。」

「私達はエヴリーヌお姉様を起こして先に宿屋で待ってますね。」

「うん、わかった。」

そしてエステルはヨシュアを探して歩き周った。



~外れの桟橋~



そこにはヨシュアが無言で寂しそうに佇んでいた。

「よっ、少年。こんなところで何をたそがれておるのかね?」

「はは……たそがれてなんかいないけどね。もう、釣りはいいの?リフィアと勝負していたんじゃないの?」

エステルの声のかけかたに苦笑しながらヨシュアは振り向いた。

「うん、夕食の時間が近いから切り上げてきちゃった。もちろん、あたしの勝利でね♪あ……そうだ。」

エステルはヨシュアに先ほど見つけた本を差し出した。

「も~、読書するとか言って置きっぱなしにしちゃってさ。それに美人でスタイル抜群、おまけに器量よしと女の子として完璧な上、皇女様なプリネといっしょに読書をする機会なんて滅多にないわよ~。せっかく気を効かせて話しかけなかったのに、ヨシュアったら読書に夢中でプリネには一回も話しかけないなんて勿体ないわね~。そんなんだから可愛い彼女ができないんだよ?」

「余計なお世話だよ。そういうエステルだって皇女様と釣りで勝負するなんて、釣り勝負の中では前代未聞じゃないのかい?」

エステルのからかいの言葉にヨシュアは溜息をついた。

「まあいいや。……ちょうど読み終わったばかりでさ。目が疲れたから気分転換に散歩してたところなんだ。」

「こーら。」

ヨシュアの様子に溜息をついたエステルは近付いた。

「な、なに?」

エステルが近付きヨシュアは珍しく焦って一歩下がった。



「まーた1人だけでなにか溜め込もうとしてるな?分かるんだってば、そーいうの。」

「………………………………」

エステルの言葉にヨシュアは口を閉ざした。

「大体ね、フェアじゃないわよ、ヨシュアだって、あたしが落ち込んだ時には慰めるクセに……あたしじゃ父さんみたいに頼りにはならないと思うけど……それでも、こうやって一緒にいてあげられるんだから。」

ヨシュアの隣に来たエステルは優しい笑顔でヨシュアに言った。

「…………………………………………ごめん…………」

エステルの言葉にヨシュアは辛そうな表情で謝った。

「こういう時には、ありがとう、でしょ?ヨシュアって頭はいいけど肝心なことが分かってないんだから。」

「はは、本当にそうだな。ありがとう……エステル。」

エステルが教えたことにヨシュアはようやく笑い、お礼を言った。

「うむうむ、苦しゅうない。あ……そうだ!ハーモニカを1曲。お礼はそのあたりでいいわよ。」

「おおせのままに……『星の在り処』でいいかな?」

ハーモニカを取り出したヨシュアはなじみ深い曲でいいか尋ねた。

「うん。」

エステルが頷き、桟橋を支えている木の柱に座ったのを見て、ヨシュアはハーモニカを吹き始めた。



~~~~~~~~~~~♪ 

ヨシュアのハーモニカの曲は儚げながらも耳に残る曲で、シェラザードやオリビエ、プリネ達を含めヴァレリア湖の客達も耳を傾けて聞いていた。ちなみにヨシュアのハーモニカの曲にプリネは驚いた表情で聞いていた。



「えへへ、なんでかな。ハーモニカの音って夕焼けの中で聞くとなんだか泣けてくるよね。」

ヨシュアがハーモニカを吹き終わるとエステルは目元についていた涙を拭った。

「………………………………相変わらず……何も聞かないんだね。」

「………………………………あは……約束したじゃない。話してくれる気になるまであたしからは聞かないってね。」

エステルから目をそむけているヨシュアにエステルは苦笑して言った。

「それに5年も経つんだもん。なんか、どーでも良くなったし。」

「そう……5年もだよ。どうして何も聞かずに一緒に暮らせたりするんだい?あの日、父さんに担ぎ込まれたボロボロで傷だらけの子供を……昔のことをいっさい喋らない得体の知れない人間なんかを…………どうして君たちは受け入れてくれるんだい……?」

エステルの前向きな言葉にヨシュアは不思議に思い、真剣な表情でエステルを見た。

「よっと………そんなの当たり前じゃない。だってヨシュアは家族だし。」

ヨシュアの言葉を気にせず、腰を上げて立ったエステルは事も無げに言った。

「………………………………」

エステルの言葉にヨシュアは呆気にとられたような表情をした。

「前にも言ったけど、あたし、ヨシュアのことってかなーり色々と知ってるのよね。本が好きで、武器オタクで、やたらと要領がよくて……人当たりはいいけど、他人行儀で人を寄せつけないところがあって……」

「ちょ。ちょっと……」

どんどん自分のことを言うエステルにヨシュアは制しようと声を上げたが

「でも、面倒見は良くて実はかなりの寂しがり屋。」

「………………………………」

エステルの言葉に口を開いたまま黙った。



「もちろん、過去も含めて全部知ってるわけじゃないけど……それを言うなら、父さんやお母さんの過去や出会いだってあたし、あんまりよく知らないのよね。だからと言って、あたしと父さんやお母さんが家族であることに変わりはないじゃない?多分それは、父さん達の性格とか、クセとか、料理の好みとか……そういった肌で感じられる部分をあたしがよく知ってるからだと思う。ヨシュアだって、それと同じよ。」

言いたいことを言い終えたエステルは満面の笑みを浮かべてヨシュアを見た。

「………………………………本当に……君には敵わないな。初めて会った時……飛び蹴りをくらった時からね。」

「え……。そ、そんな事したっけ?」

ヨシュアの言葉にエステルはたじろいだ。

「うん、ケガ人に向かって何度もね。」

「あ、あはは……幼い頃のアヤマチってことで。」

ハッキリ言ったヨシュアにエステルは苦笑しながら言った。

「はいはい。……ねえ、エステル。」

「なに、ヨシュア?」

「今回の事件、絶対に解決しよう。父さんが捕まっているかどうか、まだハッキリしてないけど……。それでも、僕たちの手で、絶対に。」

「うん……モチのロンよ!」

ヨシュアの真剣な言葉にエステルは元気良く頷いた。

「ふふ……そろそろ宿に戻ろうか?食事の用意もできてる頃だろうし。」

「うん、お腹ペコペコ~。しっかりゴハンを食べて真夜中に備えなくちゃね。」

そしてヨシュアとエステルが宿に戻ろうとした時、ヨシュアは何かの気配を感じて足を止めた。



「!エステル、気をつけて!」

「ふえ!?」

いつでも戦闘ができるようにヨシュアは双剣を構えたが、エステルは驚いて周囲を見渡した。すると湖の底から巨大で翼を持つ竜らしき生物が大きな水音を立て、現れた。

ザッパーーーーーン!!

「な!!」

「り、竜!?」

湖の底から現れた竜のように見える生物を見て、2人は驚いて声を出した。

「まさか、噂が本当だったなんて……もしかして、この竜?がプリネ達が言ってた”水竜”なのかな?」

「………みたいだね。どうする、エステル?」

水竜と思わしき生物を見上げたエステルは呟き、ヨシュアは頷いた後武器の構えを解かず、どうするかエステルに聞いた。

「どうするって……どうしようかしら??」

ヨシュアの言葉にエステルは判断がつかず、首を傾げた。すると水竜は長い首を動かし、エステルに顔を近づけた。

「エステル!!」

エステルに近づく水竜にヨシュアは焦って双剣を構えて声を出した。

「待って、ヨシュア。」

焦って攻撃をしようとするヨシュアにエステルは片手で制した。エステルの言葉通り、近付いてきた水竜の顔はエステルの目の前で止まり、エステルを見つめた。



「あたしに何か用?」

自分を見つめている水竜にエステルは言葉をかけた。

「……………………」

しばらくエステルを見つめていた水竜はエステルから感じる僅かな懐かしい魔力やエステルの雰囲気に、水竜が子供の頃に出していた鳴声でエステルに甘えた。

「………ク―…………」

水竜が感じた僅かな魔力とは水竜がかつて契約した主と同じ魔力だったのだ。なぜ、エステルにかつての主の魔力が僅かながら感じたのは、水竜と同じ主に仕えたことのあるパズモと契約した際、パズモに残っていたかつての主の僅かな魔力がエステルの魔力と混ざっていたのだ。

「わぁ、見た目によらず結構可愛い鳴声ね♪」

一方理由がわからないエステルは水竜の鳴声に喜び、手を出した。すると水竜は懐くようにエステルの手に顔を擦りつけた。

「ふふ、くすぐったいわよ♪」

「やれやれ、相変わらず凄いな。エステルは……」

エステルと水竜のやりとりにヨシュアは安心して武器を収めた後、水竜と仲良くしているエステルを感心した表情で見た。そしてある事を考えたヨシュアはエステルに聞いた。



「エステル、もしかしてその水竜の言葉がわかるの?」

「ううん。契約している訳でもないし、この子の言葉はわかんないわよ。でも、なんとなくこの子は悪い子じゃないって感じるのよね……」

答えたエステルは水竜の頭を優しく撫でた。エステルに撫でられた水竜は気持ちよさそうに甘えるような鳴声を出した。

「ク―♪」

「ふふ、ここが気持ちいいのね……よしよし……」

少しの間エステルは水竜を撫でて遊んだ。そしてしばらくするとヨシュアは口を開いた。

「……エステル、名残惜しいとは思うけど。」

「うん、わかってる。ゴメンね、あたし達はもう行かないとダメなんだ。いつかまた会いに来るから、その時はいっぱい遊んで上げるね!だからそれまで、良い子にして大人しく待っているのよ?」

エステルの言葉を理解した水竜は名残惜しそうにエステルを見た後、エステルから離れて、静かに湖の底に潜った。



「……さて、シェラ姉達のところに行こう、ヨシュア。」

水竜が潜った場所を見続けたエステルはヨシュアに宿に戻るよう、促した。

「それはいいけど、さっきの水竜をシェラさん達にどう説明しようか?」

「見たまんまのことを伝えればいいじゃない。少なくとも人を襲うような子じゃないでしょ。」

「……そうだね。じゃあ、行こうか。」

「うん!」

そしてエステル達は宿に戻って行った。

「……………………………………」

水竜とのやりとりをラヴィンヌ山道からエステルを観察していた狐らしき生物が見ていたことには気付かずに……

 
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