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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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外伝~乙女の決意~(SC篇開始)

~グランセル城・客室~



「……て……ま……」

「ん………?」

ベッドの中で眠っているルークは自分を呼ぶ声に反応し

「起きて、ルークお兄様!もうすぐ朝ご飯の時間よ!」

「朝メシ……?………ふああああああ~っ。よく寝たぜ……」

ルークがベッドから起き上がって大きな欠伸をすると傍にはレンがいた。



「うふふ、お兄様が寝坊だなんて珍しいわね?そんなにお城のベッドが良かったのかしら?」

「まあな。やっぱどの王城の客室のベッドも寝心地が良くて最高だな。」

「”どの王城のベッドも”?お兄様、グランセル城以外のお城に泊まった事があるのかしら??」

ルークがふと口にした言葉を聞いたレンは首を傾げて尋ね

「あ”。ハ、ハハ……唯の言葉の綾だよ。」

尋ねられたルークは今の自分の立場を思い出し、表情を引き攣らせながら答えを誤魔化した。そしてルークは軽く身だしなみを整えた後レンと共に部屋を出て歩き出した。

「そういや昨日はティータが泊まっている部屋に泊まっていたんだっけ?」

「ええ。楽しい一夜だったわ。」

「おしゃべりに夢中で夜更かししてねえだろうな?今日からお前も正遊撃士として働くんだぞ?」

「んもう、余計なお世話よ。夜更かしなんてお肌に悪い事、レンがする訳ないでしょう?まあそういうのに無頓着なエステルだったらするかもしれないけど。」

ルークの忠告を聞いたレンは頬を膨らませて答え

「ハハ……それ、絶対に本人の前で言うなよ?」

レンの言葉を聞き、烈火の如く怒るエステルの様子を思い浮かべたルークは苦笑していた。



「―――ルーク、レン!ちょうどよかったわ!」

その時焦った様子のシェラザードと傍には重々しい様子を纏ったカシウスが走って近づいてきた。

「シェラザード?何でそんなに慌てているんだ?」

「それに二人とも何だか雰囲気が暗いわよ?」

二人の様子を見たルークとレンは首を傾げ

「今はそんな事はどうでもいいわ!ロレントに一端戻るわよ!」

「ハ?」

「??」

シェラザードの言葉を聞き、二人は再び首を傾げた。

「……先程エルナンから連絡があった。エステルがロレントに戻ってきていると。」

「あら。」

「エステルが?ヨシュアと一緒に母さんに正遊撃士になった事を報告しに帰ったのか?」

カシウスの説明を聞いたレンは目を丸くし、ルークは不思議そうな表情で尋ねた。



「「………………」」

しかし二人は何も答えず、それぞれ重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「お、おい二人とも、一体どうしたんだよ?」

二人の様子を見たルークは戸惑いの表情で尋ね

「………………………フゥン。その様子だとヨシュアがエステルに何かした……………――――いえ、大方ヨシュアの記憶が何らかの理由で蘇って、ヨシュアは何らかの理由でエステル……ううん、レン達の前から姿を消したのね?」

レンは真剣な表情で黙り込んだ後尋ねた。

「なっ!?レ、レン!?あ、あんた、まさかヨシュアの過去を最初から知ってたの……!?」

「…………………」

レンが呟いた言葉を聞いたシェラザードは驚き、カシウスは信じられない表情でレンを見つめていた。



「ちょっと考えればすぐにわかる事よ。エステルの話だとパパがヨシュアを連れ帰った時、大怪我を負っていたそうだし、レンも怪我が治るまでのヨシュアの傷を見たことがあるけど………あの傷は事故でつく傷じゃなく、”誰かに狙われてついた傷”よ。実際いくつもの刃物によってできる切り傷があったし、パパが持ち帰って来たヨシュアの荷物―――双剣には随分使い込まれていた跡があったもの。それらをまとめて出る答えは………―――ヨシュアは幼い頃からどこかの裏組織に所属して兵士……いえ、暗殺者みたいな事をしていたのじゃないかしら?ヨシュアの戦闘スタイル―――スピードで敵を翻弄し、隙を見つけて仕留めるなんて戦闘スタイル、まるで”暗殺者”みたいだもの。」

「あ、”暗殺者”!?ヨシュアが!?」

「………………………」

レンの推理を聞いたルークは驚きの表情で声を上げ、的確な答えをついているレンの推理に驚いたシェラザードは口をパクパクさせて絶句し

「……………やれやれ。まさかたったそれだけのヒントを元に、正確な答えに辿り着くとはな。エステルもレンの鋭さを少しは見習ってほしいものだ。」

カシウスは真剣な表情で黙り込んでいた後疲れた表情で溜息を吐き

「そしてエステルはヨシュアが自分達の前から消えたという事実から逃避して、ヨシュアがいない理由はヨシュアが先に家に帰っていると思ってロレントに向かったって所かしら?」

「…………ああ。恐らくそうだろう。」

真剣な表情のレンに尋ねられ、重々しい様子を纏って頷いた。



「!?父さん、どういう事だよ!?今の話は本当なのか!?」

その時ルークが血相を変えて尋ねた。

「………今はロレントに急ぐぞ。飛行船の中で詳しい事情を話す。」

その後ルークとレンはカシウスとシェラザードと共に出発直前の貨物飛行船に事情を説明し、特別に乗せてもらい、カシウスは二人にヨシュアの事情を説明した。



かつてヨシュアはクーデター事件を陰から操っていた結社―――”身喰らう(ウロボロス)”と言われている裏組織に所属していた事。



5年前、カシウスを暗殺しようと子供である事を利用して襲って来たがカシウスは苦戦しながらも撃退し、撃退したヨシュアに”身喰らう(ウロボロス)”に所属していると思われる者達がカシウスの暗殺を失敗したことを理由に襲い掛かり、ヨシュアが瀕死の所をカシウスがわって入って襲撃者達をそのまま撃退し、家に連れ帰った事。



そしてヨシュアは5年間、”身喰らう(ウロボロス)”の手の者による暗示によって遊撃士協会に関する情報を”身喰らう(ウロボロス)”に流し続けていた事。その全てはルークを驚愕させた。



~貨物飛行船~



「…………………」

全てを聞き終えたルークは驚きの表情で絶句し

「なるほどね。――――となるとヨシュアが消えた理由は例え操られていたとはいえ、レンやエステル達を裏切ってしまった事の罪悪感に耐えられず……と言った所かしら?」

レンは考え込んだ後真剣な表情で尋ねた。

「ああ、恐らくそうだろうな。」

「………母さんはその事、知っているのか?」

レンの推測に頷いたカシウスにルークは真剣な表情で尋ね

「………レナは知らん。余計な気苦労を負わせる訳にはいかなかったし、何よりヨシュアも望まなかった。」

「そっか……………”身喰らう(ウロボロス)”。まさかその名前が出てくるなんて……!」

答えを聞いたルークは疲れた表情で溜息を吐いた後唇を噛みしめた。



「その様子だとルークはその”身喰らう(ウロボロス)”って組織を知っているのかしら?」

「ああ。とは言っても知り合いの”星杯騎士”――――イオンやアリエッタから軽く聞いたぐらいだよ。長い歴史の中、裏で”星杯騎士団”と何度も争った事がある裏組織だってな。」

「………となると、”身喰らう(ウロボロス)”とやらはかなり以前から存在していたようだな………」

シェラザードの疑問に答えたルークの話を聞いたカシウスは真剣な表情で考え込み

「今はそんな事はどうでもいいわ。それよりパパ、一つ聞きたいのだけどいいかしら?」

レンは溜息を吐いた後真剣な表情でカシウスを見つめた。



「何だ?」

「パパは”いずれこうなる事がわかっていて”、ママやレン達に黙っていたのかしら?」

「…………すまん。」

責められるような視線のレンに見つめられたカシウスは目を伏せて呟き

「父さん………」

その様子をルークは複雑そうな表情で見つめていた。



「まあ、黙っていた理由はどうであれ………―――ヨシュアもパパも”最低”よ。エステル……―――いえ、ヨシュアにとっては恋している相手で、パパにとっては大切な娘が泣くとわかっていて、黙っていたんだから。」

「ああ………先程シェラザードにも同じような事を言われて叱られな。」

「そう。―――さすがはシェラお姉さんね。」

「ええ、女の立場として当然言うべきでしょう?」

疲れた表情で溜息を吐いたカシウスの答えを聞いて頷いたレンに視線を向けられたシェラザードは口元に笑みを浮かべて頷いた。

「お兄様はパパやヨシュアみたいな”最低”な男の人にならないでよ?勿論レンはお兄様はそんな男性にならないって信じているから、最初から心配していないけど。」

「ハ、ハハ……勿論だぜ。」

そして無邪気な笑顔を浮かべてレンに視線を向けられたルークは瞬時にかつての自分を思い出し、大量の冷や汗をかきながら渇いた声で笑いながら答え

「やれやれ………女性は怒らせたら本当に恐ろしいな……」

その様子を見ていたカシウスは疲れた表情で溜息を吐いた。



その後貨物飛行船はロレントに到着し、ルーク達は実家に急いで向かった。



ルーク達が貨物飛行船に乗る少し前、一足早くロレントに戻ったエステルは飛行船で出会った七耀教会の神父―――ケビン・グラハムと共に実家に戻って来ていた。



~ブライト家~



「へ~。ここがエステルちゃんの家か。なんちゅうか、あったかそうな雰囲気の家やね。」

ブライト家に到着した七耀教会の神父―――ケビンは家から漂う雰囲気に感心していた。

「えへへ、そうでしょ?あたしと、父さんと、お母さんにルーク兄とレン………それにヨシュアとの思い出がいっぱいに詰まった場所なんだから。」

「なるほどなー。で、そのヨシュア君ってのが一足先に帰ってきているわけか?」

「うん、間違いないわ。ついて来て、紹介するから。」

ケビンの言葉に頷いたエステルは家の中へ入って行き

「どんな野郎か知らんが、罪作りなやっちゃ。ふう……」

その様子を見守っていたケビンは真剣な表情になった後家の中に入って行った。



「ただいま~、ヨシュア!ねえ、帰って来てるんでしょ!?」

「あら、エステル。お帰りなさい。」

エステルが家に入ると台所で食器を洗っていたレナが笑顔で出迎えた。

「あ、お母さん!ただいま~!ねえ、ヨシュアはどこ?」

「ヨシュア?一緒に帰って来たんじゃないの?」

「……………………あはは、帰って来てるに違いないじゃない!お母さんに帰って来た連絡もしないなんて、薄情な奴ね~。全く、ここはお姉さんとして叱ってあげなくちゃね!」

レナの答えを聞いたエステルは笑顔が固まった後、気を取り直して2階に上がって行った。

「エステル……?」

愛娘から感じる違和感にレナが首を傾げたその時、ケビンが家の中に入って来た。



「……そうだ。あたしの部屋にいる可能性もゼロじゃないよね……?やばっ、下着とか出しっぱなしにしてたかも……」

ヨシュアの部屋に行こうとしたエステルは自分の部屋に入った。

「………………………………。よかった……。出しっぱなしにしてなくて。まあ、ヨシュアだったら、あたしの下着なんか見たって平然としてるだろうけど……。………………………………」

フラフラしながらエステルは自分の部屋を出た後、ヨシュアの部屋のドアの前に立ち

「ヨシュア……入るね?」

ノックした後、エステルはヨシュアの部屋に入った。

「………………あ。」

しかし部屋の中には誰も存在せず、それを見たエステルはようやく現実に戻って来た。

「あは……そっか…………あたし……バカだ……」

現実に戻ったエステルはその場で崩れ落ち

「カレシ……おらんみたいやな」

「エステル………………」

同時に真剣な表情のケビンと悲痛そうな表情をしたレナが部屋に入って来た。



「それともアレか。いったん帰って来てからまた街にでも出かけたとかか?」

「……ううん…………」

「ふう……。やっと目ぇ、醒めたみたいやね。」

エステルがようやく現実を見ている事を確認したケビンは安堵の溜息を吐いた。

「………………………………。そうよ、ホントはね、ちゃんと分かってたんだ……。ヨシュアは行っちゃったって……。家に戻ってるはずないってちゃんと分かっていたんだよ……」

「そっか……」

「でもね……この部屋が最後だったから……。他に、ヨシュアの居場所なんてあたしには思いつかなかったから……。だから……ここでおしまい。あたしはもう……二度とヨシュアに会えないんだ……」

「エステル………!」

絶望に陥っているエステルを見ていられなかったレナは思わずエステルを抱きしめた。

「お母さん……!ヨシュアと会えなくなっちゃったよ……!う、ううっ………」

「………そう………………」

涙を流して泣いているエステルを慰めるように、レナはエステルの背中を優しく撫でた。



「………………………………。諦めるの、早ないか?」

「…………?」

その時ケビンの口から出た言葉の意味がわからなかったエステルは泣き止んでレナから離れて、立ち上がってケビンを見つめた。

「所詮、運命なんちゅうもんは女神にしか見えへんシロモンや。そんなもんに縛られた気になって諦めるのは早すぎるで。大事なんは、エステルちゃんが何をどうしたいって事とちゃうか?」

「で、でも……。ヨシュアを捜そうにも何の手がかりもないし……」

「いや、そうでもないやろ。そのカレシがどんなヤツかオレは知らへんけど……。何のきっかけもなしに姿を消すヤツなんておらんで。」

「……え…………」

「最近、カレシの言動や態度で何かおかしなことはなかったか?もしくは、カレシに関係ありそうな奇妙な出来事が起こったりとかな。ずっと一緒にいたキミにしかわからんことやで。」

「……あ……!」

ケビンに言われたエステルは頭の中に思い当たる節を思い出し、声を上げた。



「ああっ……!ヨシュアがおかしくなったのはあの休憩所に戻ってから……。……うそ……どうして?なんであたし……あの時あった人が思い出せないの?」

自分の記憶の一部が欠落している事に気付いたエステルは混乱し

「だ、大丈夫か?めっちゃ顔色悪いで。」

「エステル?どこか具合が悪いの?」

「う、うん……大丈夫……」

ケビンとレナに声をかけられ、我に返った。

「そっか……。ヨシュアの目的は悪い魔法使いを止めること……。あの時、あたしがあった人がその魔法使いだとするなら……。それがクーデターを影から操っていたのと同じ人物なら……。悪い魔法使いは、まだリベールで何かをしようと企んでいるはず……。じゃあ、あたしが遊撃士として魔法使いの企みを阻止できたら……。……ひょっとしたら……」

「……よく気付いたな。」

そしてエステルが自分の為すべき事に気付いたその時カシウスがルーク達と共に部屋に入って来た。



「父さん、シェラ姉!?それにルーク兄とレンも!?ど、どうしてここに……?」

「……悪い、エステルちゃん。定期船を降りる時、ギルドの王都支部に連絡させてもらったわ。」

「え……」

意外な人物が通報した事に驚いたエステルはケビンを見つめた。

「まったく驚いちゃったわよ。あんたを捜してギルドに行ったらちょうど連絡が入ってくるんだもの。で、あわてて先生とルーク達と一緒に出発直前の貨物飛行船に乗ったわけ。」

「全くもう。エステルのせいで、滅多に食べられないお城の朝食を逃しちゃったじゃない。」

「お、おいおい、レン。少しはエステルを気遣ってやれよ。」

呆れた様子で溜息を吐いたレンの言葉を聞いたルークは表情を引き攣らせ

「あら、気遣っているからこそいつもの調子で接しているのよ?」

レンは小悪魔な笑みを浮かべてウインクをした。

「あ………」

「まあ、そういう訳だ。ケビン神父といったか?連絡してくれて本当に助かった。礼を言わせてくれ。」

「……ありがとうございます。」

「いや~、とんでもない。部外者が出しゃばったりしてホンマ、すんませんでしたわ。」

カシウスとレナから感謝の言葉を述べられたケビンは苦笑しながら答えた。



「あ、あの……。父さん、あたしね……」

「判っている。……深入りするなと言ったのはただの俺のエゴだ。男としての、父親としての論理をお前に押し付けただけにすぎん。そう、シェラザードに叱られてな。」

「シェラ姉……」

「ふふ、あたしも今回は全面的にあんたの味方よ。」

「勿論、俺もお前の味方だぜ、エステル。」

「うふふ、手のかかる”お姉ちゃん”を助けるのが賢くて可愛い”妹”の役目だものね♪」

「ルーク兄、レン………」

自分を気遣い、助力を申し出たシェラザードやルーク達の言葉にエステルは胸がいっぱいになった。



「フフ、私もシェラちゃん達と一緒でもちろん貴女の味方よ?エステル。」

「お母さん…………」

「……それとあなた?」

「な、なんだ?レナ。」

レナに呼ばれたカシウスは表面上は穏やかなレナの声に突如恐怖感が襲って来て、微妙に手を震わせ始め

「………後で私からも言いたい事や聞きたい事がい・ろ・い・ろと!あるので、忘れないで下さいね?ア~ナ~タ~?」

「…………ハイ…………」

凄味のある愛妻の笑顔で微笑まれたカシウスは為す術もなく降参を認め、肩を落として頷いた。



(………な、何やろ?オレが怒られた訳やないのに、こっちにまで震えが来てしまう……!ってこの感覚はルフィナ姉さんが怒った時と同じ感覚やんけ!…………というか下手したらルフィナ姉さんの上を行く怖さや………!とんでもない人や……!)

(さ、さすがレナさんね…………先生、ご愁傷様です………)

(女って、マジで怖ええ~……!)

(うふふ、レンも見習っていつかママみたいな素敵なレディにならないとね♪)

王国の”英雄”を尻にしくレナの様子をケビン達はそれぞれの想いを抱えて見つめていた。

「覚悟はしていたが……あいつが居なくなったことが思っていたよりも堪えたらしい。だから、せめてお前だけは危険な道を歩かせたくなかった。命と引き替えにお前を救おうとしたレナのようになって欲しくなかった。……だが、そういう風に考えるのはお前にも、レナにも失礼だったな。今更ながらに思い知らされたよ。」

「父さん……」

「フフ……そうね。……でもあなた?私は今でもこうして生きているのだから、命と引き換えにこの娘を救ったなんて事を言わないで頂戴。」

「………そうだな。ルークには改めて感謝しないとな。」

「――勿論、レンもお兄様にはすっごく感謝しているわよ?お兄様がレンを迎えに来てくれたお蔭で、レンは幸せだもの。」

「ハハ、感謝したいのは俺の方だぜ。父さん達からは色々と大切な物をもらっているしな。」

感謝の言葉が自分に向けられる事になれていないルークは恥ずかしそうな表情で答えた。



「……軍を立て直すため俺はしばらく身動きが取れん。おそらく奴等の狙いはそこにもあったのだろうが……。今度こそ、俺はお前のことをロクに手助けもできんだろう。それでも、決意は変わらないか?」

「……うん。あたし、まだまだ未熟だけど、それしか方法はなさそうだから……。だからあたし、やってみる。『身喰らう蛇』の陰謀を阻止してきっとヨシュアを連れ戻してみせる!」

「うふふ、レン達の事を忘れないでよ、エステル?」

「ああ。俺もブライト家の一員としてヨシュアを連れ戻す事に全力で手伝うぜ!」

「二人とも……ありがとう!」

レンとルークの力強い言葉を聞いたエステルは明るい表情になった。

「そうか……。ならば何も言うことはない。遊撃士として……それから1人の女として。お前は、お前の道を行くといい。」

「……父さん……」

自分が進む道を認めてくれたカシウスにエステルは思わず抱きついた。

「あたし……あたし……」

「そうだ……。大事なことを言い忘れていた。」

「え……?」

「エステル、どうか頼んだぞ。ヨシュアを―――あの馬鹿息子を連れ戻してくれ。」

「……あ…………。うん……わかった……。またこの家で……みんなで一緒に暮らすためにも……。絶対にヨシュアを連れ戻すから……!」



こうしてエステルはヨシュアを連れ戻す決意をした……………! 
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