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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第2章~ 麗しき翡翠の都~ 第21話

5月22日―――



―――5月下旬。



ライノの花が完全に散り、新緑薫る風がトリスタの街を吹き抜ける季節……特別実習を終えたリィン達は再び、忙しい学院生活に追われていた。



武術訓練に加え、高等教育の一般授業も本格する中……士官学院ならではの専門的な授業も始まり、また男女別の授業も始まっていた。



5限目 男女別授業

(Ⅰ組/Ⅶ組合同)



女子―――栄養学・調理技術



~トールズ士官学院・調理室~



「ラウラ様にプリネ姫、それにツーヤ様……どうしてあんなクラスに行ってしまわれたのかしら。せっかくご一緒にできると楽しみにしていましたのに。」

貴族女子生徒はⅦ組の女子生徒達を戸惑いの表情で見つめ

「でも、あの貴族の子、入学試験で首席ですって?」

他の貴族女子生徒は興味ありげな表情でエマを見つめていた。



「ええ、辺境出身の平民と聞いていますけど……」

「しかし、あの銀髪の子は見ていて和みますわねぇ。うふふ、ちょっと頭を撫でさせてもらえないかしら?」

「それもそうですがプリネ姫とツーヤ様のお二方……お二方ともとても手際よく調理をなさっていますね……」

「ええ……まさに淑女の鑑ですわ。」

「―――皆さん。そのくらいにしておきなさい。わたくし達は誇り高きⅠ組。料理ごときとはいえ、あのような寄せ集めのクラスに負けるわけにはいきませんわよ?」

雑談をしている貴族女子生徒達に見かねたのか、アリサと同じ部活に入り、何故かアリサを一方的にライバル視しているⅠ組の貴族女子生徒―――フェリスは生徒達を睨んで注意した。

「そ、そうですわね。」

「ですが、いつも料理人任せなのでなかなか勝手が……」

フェリスの注意に頷いた生徒達だったが、全く手を動かさず戸惑いの表情で食材や道具を見つめているだけだった。



「……まったく。ヒソヒソ感じが悪いわね。」

一方会話が聞こえていたアリサは眉を顰め

「まあ、我らのことが気になって仕方ないのだろう。」

アリサの言葉にラウラは苦笑しながら答えた。



「……………」

フィーはただひたすらボールの中に入っている何かを混ぜ

「ふふっ、フィーちゃん。泡立てはそのくらいでいいですよ。」

フィーの様子を見たエマは苦笑していた。



「ツーヤ、魚は捌き終えたわ。」

「わかりました。こっちもちょうど野菜を切り終えた所です。」

プリネとツーヤはそれぞれ手際よく次々と調理に取り掛かっていた。





男子――――導力端末入門



~導力端末室~



女子達が調理の授業を受けている一方男子達は導力端末の操作の授業を受けていた。

「導力端末……何とかコツは掴めてきたな。」

導力端末に座って操作していたリィンは安堵の表情で呟き

「ああ……最初はどういうものかまるで見当もつかなかったが。」

「うーん、帝国(エレボニア)でも最先端の技術みたいだからね。でも、マキアスとユーシスはすぐに操作を覚えたみたいだね?」

ガイウスと共にリィンの操作を見学していたエリオットはある事を思い出して尋ねた。



「ああ、二人とも優秀だからな。マキアスの方は以前から興味がありそうな様子だったし。」

「ユーシスは興味がなくても軽々とこなしちゃう感じだよね。そういう所がマキアスにはまた面白くないんだろうけど……」

「……だろうな。先月のB班の実習じゃ、相当酷くやり合ったんだって?」

エリオットの言葉に頷いたリィンは先月ガイウス達から聞いた特別実習の事を思い出して尋ねた。



「ああ……危うく殴り合いになる所だった。ツーヤと共に何とか止めれたが、サラ教官が来なかった危なかっただろう。」

「はあ……どうしたもんだろうね。」

「いいかげん、俺達にも何かできればいいんだけど……」

「―――リィン・シュバルツァー。」

リィン達が話し合っていると突如高慢そうな声がリィンの名を呼んだ。



「………?」

呼ばれたリィンは首を傾げ

「え……い、Ⅰ組の……」

エリオットはリィンを呼んで自分達に近づいてきた人物―――パトリックを見て驚いた。



「確か……パトリックだったな?」

「ああ、その通りだが一つ捕捉しておいてあげよう。僕のフルネームはパトリック・T・ハイアームズ。―――そう言えばさすがにわかってくれるかな?」

「えええっ!?」

「ハイアームズ……そうだったのか。」

パトリックの本名を知ったエリオットは驚き、リィンは目を丸くし

「有名な家柄なのか?」

家柄に関してわからないガイウスはリィン達に尋ねた。



「ゆ、有名も有名!ハイアームズ侯爵家といえば”四大名門”の一つだよ!まあ、ユーシスの実家よりは格はちょっと落ちるんだけど……」

「……………」

エリオットの余計なひと言を聞いたパトリックはギロリとエリオットを睨み

「あわわっ……いえ、何でもありませんっ!」

睨まれたエリオットは慌てた様子で答えた。



「フン……平民や外国人に用はない。シュバルツァー、喜びたまえ。僕の紹介で、学生会館の3階に招待してあげようじゃないか。」

「それは――――」

「学生会館の3階というと……」

「貴族生徒専用のサロンがあるっていう……」

「たかが外国の男爵とはいえ、貴族は貴族。”Ⅶ組”などという胡乱なクラスに所属してしまっている君だが……ハイアームズ家の人間たるこの僕が口を利いてやったらサロンの使用許可も下りるだろう。フフ、感謝したまえよ?」

自分の発言に驚いているリィン達を見つめながらパトリックは口元に笑みを浮かべて髪をかき上げた。



(自分がおだてられる事が大好きな典型的な三流上流貴族の情けない男ね~。)

「ちょ、ちょっと待ってくれ。(困ったな……どう断ったものか。)」

パトリックの言動を聞いていたベルフェゴールは呆れ、リィンが返事に困っていたその時

「やれやれ……こんな場所で勧誘とは。」

ユーシスが呆れた様子でリィン達に近づき、ユーシスの声を聞いたパトリックは顔色を変えた。



「あ―――」

「ユーシス……」

「ユーシス・アルバレア……!」

「ハイアームズ家の三男殿は派閥ゴッコがお好きらしい。そういう話はまず最初に俺やプリネ、それにツーヤに声をかけるのが筋じゃないのか?」

ユーシスは自分を睨むパトリックを呆れた表情で見つめて尋ね

「くっ……君は好きでサロンに来ないだけだろう!?あれほど2年の先輩たちが熱心に誘っているにも関わらず!それにあのお二方は君と違って、時々だが応じてくれるぞ!」

尋ねられたパトリックは唇を噛みしめた後ユーシスを睨んだ。



「興味がないからな。それにあの二人の場合は、両国の関係修復の為に仕方なく付き合ってやっているだけだと思うが。現にあの二人は月に数回程度しか付き合っていないと聞いているが?」

「っ……もういい!シュバルツァー!とにかく考えておきたまえ!誰に付くのが、君の将来にとってプラスになるのかを……!」

ユーシスの指摘に舌打ちをしたパトリックは勝ち誇った笑みを浮かべてリィンを見つめて言ったが

「”メンフィル帝国貴族”が仕えるべき”メンフィル帝国皇族”が傍にいるにも関わらす他国の貴族に付けば、逆にマイナスになると思うがな。」

「…………」

ユーシスの言葉を聞いてユーシスをギロリと睨んだ後その場から去って行った。



「はあぁぁぁ~っ………」

「随分、賑やかな男だったな。」

パトリックが去るとエリオットは疲れた表情で溜息を吐き、ガイウスは静かな表情で呟き

「ああ……どう断ったものか迷ったよ。―――ありがとう。ユーシス、助かった。」

リィンは安堵の溜息を吐いた後助け舟を出したユーシスに礼を言った。



「フン……お前を助けたわけじゃない。……ただ、先月の実習では迷惑をかけたみたいだからな。それだけだ。」

ユーシスは鼻を鳴らして答えた後その場から去り

「先月の実習って、もしかして。」

「ああ……ケルディックでの領邦軍との揉め事についてだろう。」

ユーシスが助け舟を出した理由に心当たりがあるエリオットの言葉にリィンは頷いた。



「なるほど……実家の不始末のようなものか。お前達に改めて詫びたかったのかもしれないな。」

「へえ~、あれがきっかけでアルバレア公爵家がメンフィル帝国にケルディック地方を贈与させられたのに詫びを入れたいなんて、凄い殊勝だよねぇ。」

「ああ………正直、恨まれているか嫌われていると思っていたんだがな。プリネさんの話だと、ユーシスがプリネさんにケルディックの件で謝罪してきたらしいからな……」

ガイウスの推測を聞いたエリオットは目を丸くし、リィンは複雑そうな表情で頷いた。

「…………………」

一方リィン達の会話を聞いていたマキアスはリィンを睨んだ後目を閉じて黙り込んでいた。


H・R――



~1年”Ⅶ組”~



「今日もお勤め、ゴクローさま。明日は”自由行動日”だから存分にリフレッシュするといいわ。ただし―――来週の水曜日には”実技テスト”があるんだけど。」

「はあ……そろそろかとは思ってましたけど。」

サラ教官の説明を聞いたアリサは疲れた表情で溜息を吐いた。



「えっと……次の”特別実習”に関する発表もあるんですか?」

「ああ。来週末に先月のようにそれぞれに実習地に行き、”依頼”を達成してもらう。各自その時に備えておくように。」

エマの質問にレーヴェは頷いて答えた。



「ふう……」

「……フン……」

特別実習や実技試験の事を思い浮かべたマキアスは溜息を吐き、ユーシスは鼻を鳴らし

「ふふ、楽しみではあるな。」

「次はどこに向かうのでしょうね。」

「後はどんな依頼が出るのかも楽しみですね。」

ラウラやプリネ、ツーヤはそれぞれ静かな笑みを浮かべていた。



「それと来月の半ばだけど……各種、高等教育授業の”中間試験”ってのもあるから。」

「そ、それもあったけ……」

「中間試験……めんどくさそうな響き。」

「日々の学習の成果が試されるというわけか。」

「ま、大変だとは思うけどせいぜい学業も頑張りなさい。あたしとレーヴェがハインリッヒ教頭にイヤミを言われない程度にね。」

サラ教官の発言はその場にいる全員を脱力させた。



「そっちですか……」

「その、わからない所を教えてくれたりとかは……?」

「あー、無理無理。そういうのは両方とも専門外だから。―――HRは以上。マキアス、挨拶して。」

「……はい。起立―――礼。」

そしてホームルームが終わった。



「それじゃあね、リィン。」

「先に行くぞ。」

「ああ、二人とも部活か?」

「うん、でもよかったら晩ごはんは一緒に食べない?」

「学食続きだったからたまには街のカフェはどうかと思うんだが。」

「ああ、帰ったら寮の玄関で待ち合わせるか。」

「うんっ!」

「また後でな。」

リィンと約束をした二人はその場から去り、それぞれの部活の教室へと向かった。



「あ、あの……」

その時アリサがリィンに話しかけてきた。

「ああ、アリサ。そっちも今から部活か?」

「あ、ううん……今日は活動日じゃないけど。その、何ていうか……」

「えっと……何か話でもあるのか?」

言葉を濁すアリサの様子を見たリィンは尋ねたが

「な、なんでもないっ!それじゃあ、お先に!」

アリサは顔を赤らめてリィンを睨んだ後その場から去った。



「えっと……(何だったんだ?)」

(あら♪うふふ、これは脈アリね♪)

去って行くアリサの様子をリィンは戸惑いながら見つめ、ベルフェゴールはからかいの表情で見つめていた。

「ふむ……また何かしでかしたのか?」

そこにラウラが近づいてきた尋ねた。



「いや、全然そんな心当たりはないんだけど。ハッ、でも気付いてないだけでまた失礼なことをやったとか……」

「ふふ、冗談だ。―――明日の自由行動日だがまた旧校舎の地下に入るのか?」

「ああ、学院長にも頼まれているし、軽く回るくらいはすると思う。」

「ならば私も遠慮なく呼ぶがいい。一応、部活はあるがそちらを優先するつもりだ。」

「……わかった。遠慮なく呼ばせてもらうよ。」

「うん、それではな。」

心強い申し出をしたラウラもその場から去って行った。



「マキアスは”チェス部”だったよな。それとも図書館で自習するのか?」

その時まだマキアスが席に座っている事に気付いたリィンは話しかけたが

「……………」

マキアスは何も答えず立ちあがり

「―――僕が放課後どう過ごそうが君になんの関係がある?」

リィンを睨んで尋ね返した。



「いや………ひょっとして何か怒らせるような事でもしたか?」

「別に。あっさりと騙された僕が間抜けだっただけさ。」

「あ………」

マキアスの言葉を聞いたリィンは旧校舎での自己紹介の時、自分の身分を誤魔化した事を思い出した。



「すまない、あれはその騙そうとしていたわけじゃ……」

「言い訳は結構だ。この際、君が貴族であるかどうかは関係ない。だが、嘘をつく人間を信用することはできない―――ただ、それだけのことだ。」

「マキアス……」

(器の小さい男ね~。)

リィンを睨んだ後去って行く様子のマキアスをリィンは申し訳なさそうな表情で見つめ、ベルフェゴールはつまらなそうな表情をしていた。そしてマキアスが教室を出ようとしたその時、慌てた様子で走って教室に入りかけたエマとぶつかりかけた。



「きゃっ……ご、ごめんなさい。」

「……いや。気にしないでくれ。」

「えっと……お邪魔しちゃいました?」

去って行く様子のマキアスを見たエマはリィンを見つめて尋ねた。



「いや……そんな事はないよ。委員長はどうしたんだ?」

「その、机に参考書を忘れてしまったんです。……ふう、ありました。」

リィンの問いかけに答えたエマは自分の机に近づいて机の中にあった参考書を取り出して鞄に入れた。



「参考書か……どの教化のものなんだ?」

「ええ、これです。」

「へえ、さすが委員長。あれ、でも中等数学って……日曜学校の範囲内だよな?委員長の成績でもそんなものが必要になるのか?」

「いえ、フィーちゃんに数学を教えてあげる約束をしていて……街の本屋さんで、良い参考書を見つけたので買っていたんです。」

「なるほど……」

エマの話を聞いたリィンは感心した様子でエマを見つめた。



「いけない、フィーちゃんを待たせるんでした。リィンさん、私はこれで。」

「ああ、それじゃあ。」

そしてエマはその場から立ち去ろうとしたが出入り口の所で立ち止まり

「―――リィンさん。心配しないでください。」

「え。」

「マキアスさん、リィンさんの事を嫌っているわけではないと思います。きっかけさえあれば……リィンさんの思いを素直に伝えれば、ちゃんとわかってくれますから。」

「あ……」

リィンに助言をした後去って行った。



「……思いを素直に伝えればちゃんとわかってくれる、か。委員長に言われたら不思議とそんな気になってくるな……(俺も行くか。帰る前に学院内を一回りしていいかもしれない。)」

そしてリィンは学院内を一回りした後寮に戻る為に校門を出ると青年が声をかけてきた。



~校門~



「―――よう、後輩君。」

声をかけられたリィンが振り向くと以前出会ったバンダナの青年がリィンに近づいてきた。

「あなたは……もう賭け(ギャンブル)には付き合いませんよ?」

青年と出会った時の賭けを思い出したリィンは呆れた表情で首を横に振った。



「ハハ、別に騙し取るつもりじゃなかったんだがな。―――そうそう。あれ、どうやったかわかったか?」

「…………………」

「別に50ミラくらい、すぐに返してもいいんだが。それを答えてからの方が納得できるんじゃねーか?」

「そうですね……(多分、あのトリックには何かコツがあるはずだ。おそらく決めてとなるのは―――)――投げたコインをどちらの手でも掴まずにそのまま落下させた……そして、地面に置いたバッグの口に落としたんじゃないですか?」

リィンは青年との賭けの状況をよく思い出した後尋ねた。



「クク……やるねぇ。答えるのも素早かったし、ちょっと驚いたぜ。」

「それじゃあ……」

「ああ、正解だ。約束通り50ミラはきっちり返してやるよ―――」

そしてリィンの答えに満足した青年はポケットを探った。しかし

「……悪ぃ。10ミラしか入ってねーわ。」

ポケットの中身を確認した後申し訳なさそうな表情でリィンを見つめた。



「はあ……まあいいですよ。50ミラくらい、大した額じゃありませんし。」

「お、そうか?だったらありがたく―――」

リィンの答えを聞いた青年が嬉しそうな表情で答えかけたその時

「―――こらこら。いたいけな後輩に厚かましくたかろうとするんじゃない。」

ハスキーな声が聞こえてきた。



「おっと。現れやがったな。」

「え………」

声が聞こえた方向に二人が振り向くとライダースーツを身に纏った娘が導力で作られた何かの乗り物を押しながら近づいてきた。



(自転車……いや、導力仕掛けみたいだけど。それにこの人は……)

娘の立ち振る舞いから只者ではない事を悟っていたリィンが真剣な表情で娘を見つめたその時

「――リィン君だね。トワとジョルジュから君のことは色々聞いているよ。先月の”特別実習”でも見事、活躍したそうじゃないか。」

娘はリィンにウインクをした。



「よくご存知ですね……リィン・シュバルツァーです。よろしくお願いします、先輩。」

「ああ―――アンゼリカ。アンゼリカ・ログナーだ。よろしく頼むよ、リィン君。」

「!四大名門、”ログナー侯爵家”の……!」

娘―――アンゼリカが名乗るとリィンは驚きの表情でアンゼリカを見つめた。



「ハハ、さすがに知っていたかい。その当主である侯爵の不肖の娘といったところかな。まあ、こんな格好で好き勝手させてもらっているからとっくに勘当されていそうだけど。」

「お前の場合、格好というより風紀上の問題な気もするんだが。しかしゼリカ。こんな時間から遠乗りかよ?」

アンゼリカの説明を聞いた青年は呆れた後尋ねた。



「ああ、導力エンジンの強化がやっと終わってくれたからね。帝都あたりまでひとっ走りしてくるかな。」

「やれやれ、相変わらず勝手気ままに生きてやがんな。」

「フフ、君にだけは言われたくないけどね。」

青年の言葉に口元に笑みを浮かべて答えたアンゼリカは導力でできた乗り物らしき物に跨り、エンジンをかけた。



「(やっぱり跨るのか……)こ、これは……」

その様子を見ていたリィンは驚き

「フフ、それじゃあ。いずれ私も依頼を出すからぜひ応じてくれると嬉しいな。」

アンゼリカは導力の乗り物を動かしてその場から去って行った。



「あ………」

「クク、ずいぶんと度肝をぬかれたみたいだな。今のは『導力バイク』ってジョルジュが組み上げたものだ。なかなかロックだろ?」

呆けている様子のリィンを面白がるかのような表情で見つめている青年は説明をした。

「ええ……まるで鉄の馬みたいだ。一般に普及している乗物じゃないですよね?」

「ああ、”ルーレ工科大学”で試作されていたものをジョルジュが完成させてな。パーツの資金はゼリカが提供して俺とトワも制作を手伝ったんだぜ?」

「へえ、やっぱり随分と手がかかってるんですね―――そういえば、トワ会長やジョルジュ部長と親しいんですか?アンゼリカ先輩も二人から話を聞いたと言ってましたけど……」

目の前の青年が自分の知る人物達と知り合いかのように話す事に不思議に思ったリィンは尋ねた。



「ま。全員クラスは違うが1年の時からの腐れ縁でな。っと……そういや言い忘れてたか。―――2年Ⅴ組所属、クロス・アームブラストだ。よろしくな、リィン後輩。それじゃお先に~。」

そして青年―――クロウは名乗った後寮へ向かって歩き出し

「アンゼリカ先輩にクロウ先輩か……トワ会長やジョルジュ部長も大した人だったし……―――士官学院の2年はやっぱり大物揃いみたいだな。」

リィンも寮に向かって歩き出した。 
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