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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第10話

ツァイス市中の導力停止現象から一夜明け、博士は改めて黒のオーブメントを調べていたが温泉で有名なエルモ旅館から温泉を汲み上げる導力ポンプが故障し、女将が博士に直しに来てほしいと依頼したのだがオーブメントを調べている博士は忙しく、代わりにティータが行くことになりその護衛にエステル、ヨシュアがつく事になった。



一方レンは二人がいない間に別の依頼を受ける事となり、翌日には依頼人をリベールと東方の大国、カルバードを結ぶ国境―――”ヴォルフ砦”まで護衛する依頼を受け、ツァイス市から離れていた。



そして依頼人を護衛するレンと入れ替わりになるかのように昨日エルモ温泉にある宿で一泊して来たエステル達がリベール通信のカメラマン―――ドロシーと共にツァイス市に到着すると、騒ぎが起こっているに気付き駆けつけて事情を聞けば、謎のガスが突如発生しまたラッセル博士の姿が見えないことに気付き、博士の捜索とガスの発生原因を探すために同行を強く希望するティータを連れて煙が充満している工房の中に入った。



~ツァイス市・中央工房~



「うわっ……これは確かに煙っぽいわね。……でも、そんなに息苦しくないのはなぜかしら?」

工房内は辺り一面煙に包まれていた。

「このモヤは……多分、撹乱用の煙だと思う。フロアのどこかに発煙筒が落ちていると思う……」

「へっ?」

「ど、どうしてそんなものが……?」

ヨシュアの推測を聞いた二人は首を傾げたり不安そうな表情をした。

「―――それより今は博士の安否が大事だ。博士を探そう。」

「……そうね。博士はやっぱり3階の工房室にいるのかしら?」

「う、うん……たぶんそうだと思うけど……」

そして3人は3階の工房室に入ったがそこにはだれもいなく、機械だけが空しく動いていた。



「誰もいない……ていうか、どうして機械だけが動いているわけ?」

「と、とりあえず機械を止めなくっちゃ。」

エステルが首を傾げている中、ティータは空しく動き続けている機械を止めた。

「ふう……おじいちゃん……どこにいっちゃったのかな?」

「もしかして既に避難したのかしら?」

「博士もそうだけど……”黒の導力器”も見当たらない。これはひょっとすると……」

ティータがエステルと共に周囲を見回している中、ある事に気付いたヨシュアは真剣な表情になった。



「フン、ここにいやがったか。」

「エステル、ヨシュア!?それにティータまで……!何でお前らがここにいるんだ!?」

その時アガットとルークが部屋に入って来た。

「ア、アガット!?それにルーク兄まで!?」

「一体二人がどうしてこんな所に……?」

「そいつはこっちのセリフだぜ。騒ぎを聞いて来てみりゃまた、お前らに先を越されるとはな。ったく半人前のくせにあちこち首突っ込みすぎなんだよ。」

「こ、こんの~……あいかわらずハラが立つわねぇ!」

アガットの自分達を馬鹿にするような言葉を聞いたエステルはアガットを睨み

「ったく、子供扱いしていたレンに力の違いを見せつけられた件があったのにまだ懲りてねぇのかよ?」

ルークは呆れた様子で溜息を吐いた。

「るせぇ!あの時はちょっと調子が悪かっただけだ!」

ルークの口から出た自分にとって忌々しい話を出されたアガットはルークを睨んだ。



「あの……お姉ちゃん達の知り合い?」

「アガットさんって言ってね。ギルドの先輩ブレイサーなんだ。」

「ふえ~、そうなんだ。えっと、じゃあルークさんと同じお姉ちゃん達の遊撃士さんなの?」

アガットの正体をヨシュアから聞いたティータは目を丸くして尋ね

「ううん。アガットは確かC級だってジャンさんから聞いた事があるから、A級のルーク兄の方が断然上よ!」

「エステル……本人を目の前にそんな事を口にしない方がいいよ……?」

ティータの質問に胸を張って答えたエステルの話を聞いたヨシュアは冷や汗をかいてアガットを見つめた。



「おい、ちょっと待て。どうしてガキがこんなところにいやがる?」

その時一般人であり子供であるティータの存在に気付いたアガットはティータを睨み

「……ひっ……」

アガットの睨みに悲鳴を上げたティータはエステルの背中に隠れた。

「ちょ、ちょっと!なに女の子を脅かしてんの!?」

そしてエステルはアガットの行動を咎めるかのようにアガットを睨んだ。



「………………………………。チッ……。言いたいことは山ほどあるが後回しにしといてやる。それで、一体どうなってるんだ?」

「はい、実は……」

ヨシュアはアガットとルークにラッセル博士の姿が見当たらないことや発煙筒が置いてあった事等を説明した。

「博士が!?」

「フン、発煙筒といい、ヤバい匂いがプンプンするぜ。時間が惜しい……。とっととその博士を捜し出すぞ!」

「うん!」

「了解です。」

「……おじいちゃん……」

そしてルークとアガットを加えたエステル達がある階層に入った時、聞き覚えのない声で怪しげな会話が聞こえてきた。



「……待たせたな。最後の目標を確保した。」

「よし……それでは脱出するぞ。」

「用意はできてるだろうな?」

「今の声は……!」

「急ぐぞ、エレベーターの方だ!」

エステル達が武器を構えてエレベーターに向かうとそこにはルークやアガットが対峙し、またエステル達にとってもかつて対峙した事のある黒装束の男達が拘束したラッセル博士と共にエレベーターに乗ろうとしていた。

「いた……!」

「てめえらは……!」

「お前らはっ!って事はこの騒ぎはお前らの仕業か!」

「お、おじいちゃん!?」

「むっ……アガット・クロスナーにルーク・ブライト!?」

「面倒な……ここはやり過ごすぞ!」

エステル達に気付いた男達はラッセル博士を連れてエレベーターの中に入った。

「逃がすか、オラァ!」

男達を逃がさないかのようにアガットは重剣を構えて走り出し

「秘技―――裏疾風!!」

ルークは走り出すアガットを追い抜いて電光石火の速さでエレベーターに向かったが、一足遅くエレベーターの扉は閉まった。



「クソ……間に合わなかったか!」

「また、逃がしちまった!」

「そ、そんな……どうしておじいちゃんを……」

アガットとルークが悔しそうにしている中、大好きな祖父が攫われた事にティータは表情を青ざめさせていた。

「とにかく非常階段で下に降りましょう。このまま中央工房から脱出するつもりみたいです。」

「ああ、逃げるとしたら、町かトンネル道のどちらかだ。急ぐぞ、ガキども!」

「言われなくても!」

そしてエステル達は手分けして地下道、街中を探したが黒装束の男達は親衛隊の軍服に着替え逃げたことしかわからず、博士は見つからなかった。



~ヴォルフ砦~



エステル達がラッセル博士の捜索に街中を奔走している中、レンは依頼人をヴォルフ砦に送り届けた。

「どうもありがとう。また機会があったら、よろしくな、お嬢ちゃん。」

「はい。道中お気を付けて下さいね。」

レンが依頼人を見送ると依頼人と砦の門から出てきた大柄な身体の髭面の男性がすれ違い、レンに近づいてきた。



「小娘。こんな所で一人で何をしている?まさか親とはぐれたのか?」

「うふふ、心配してくれてありがとう、おじさん。でも大丈夫よ。レンはこう見えて、おじさんの”同業者”よ。」

男性に話しかけられたレンは男性の胸につけられてある正遊撃士の紋章に一瞬視線を向けた後答え

「”同業者”?――――!なるほど。という事はお前が噂に聞くカシウスの娘の一人にしてリベールの”小剣聖”か。これは失礼した。」

レンの答えを聞いた男性は眉を顰めた後レンの服の胸の部分に付いている準遊撃士の紋章に気付いてレンの正体を一瞬で察して苦笑しながら答えた。

「うふふ、この見た目だから勘違いされても仕方ないわ。―――レン・ブライトよ。おじさんの名前は?パパを知っているようだけどパパのお知り合いかしら?」

「俺の名はバダック・オークランド。お前の父親とはある事件で知り合ってな。そのカシウスの頼みによって、少しの間になるがリベールに滞在する事となった。」

こうして男性―――バダックと出会ったレンは道案内も兼ねてバダックと共にツァイス市に戻る事となり、街道をバダックと共に歩きはじめた。 
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