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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第8話

数週間後―――







~遊撃士協会・ツァイス支部~



「キリカ、戻ったぜ。」

「レンも今日の分は終わったわよ、キリカお姉さん。」

それぞれの依頼を終えた二人は同時にギルド内に入って来た。

「二人とも、ご苦労様。カシウスさんから手紙が届いているわよ。」

「あら、パパから?」

「一体何の手紙なんだ?」

キリカから渡された手紙をルークはその場で読み始めた。



”ルークへ”………



既に知っていると思うが今、俺はエレボニア帝国で起こっているギルド襲撃事件を解決するのに指揮を執っている。だが、リベールでも怪しい動きがある。恐らくは俺をリベールから離す為に今回の襲撃事件を起こしたのかもしれん。



すでに何人かの信頼できる遊撃士達にリベールで怪しい動きをしている連中の調査を頼んだが、それでも人手が足りなくてな。そこでだ、ルーク。お前も彼らと共に手伝ってくれ。



そして、レンはレナの護衛にあててやってくれないか。もしかしたら、敵が俺やお前を警戒してレナを人質に取るかもしれん。



ただレナのほうは今すぐというわけではないだろうから、レンは機を窺ってロレントに返してやってくれ。



勿論、信頼ある遊撃士の一人にレナの護衛を任せているからある程度は大丈夫だとは思うが念には念を入れておく。



そして、ルーク。お前は俺が頼んだ信頼ある遊撃士の一人―――アガットに合流してくれ。では武運を祈る……



”カシウス・ブライト”



「……………」

第2の故郷や家族が予想外の事態に陥りかけている事を手紙の内容で知ったルークは真剣な表情で黙り込み

「お兄様どうしたの?何だか顔が怖いわよ?」

いつもと違うルークの様子に首を傾げたレンは不思議そうな表情で尋ねた。

「……レンにも関係のある事だ。読んでみな。」

「はーい。………………………」

ルークに手紙を渡されたレンは手紙の内容を隅から隅まで読んだ後呆け

「お兄様!レン、すぐにロレントに帰るわ!ママを守らないと!」

やがて我に返ると血相を変えて尋ねた。



「落ち着けって。父さんも信頼ある遊撃士に護衛を頼んでいるって書いてあるから、しばらくは大丈夫だし、いざとなればシェラザードだっている。だから今すぐ母さんに危険が迫る訳じゃないから、大丈夫だって。」

「お兄様……そうね、その通りだわ。レン、ママの事になるとつい頭に血が上っちゃったわ。」

ルークに諌められたレンはすぐに気を取り直して答え

「ま、いつもあんだけ母さんに甘えまくっているんだから仕方ないって。それよりいつも余裕な様子を見せても焦る時は焦るんだな?」

「むぅ。お兄様、レンを何だと思っているのよ?失礼しちゃうわね。」

からかいの表情で見つめられ、頬を膨らませた。



「……さて、話は終わったかしら?そろそろ私にも何があったのか聞かせてほしいのだけど。先程の会話からしてカシウスさんの奥様が狙われているみたいな話が出てきたようだけど?」

「っと、そうだな。実は……」

一般市民であるレナに危機が迫っている事にも関わらずすぐに報告しなかったことに気付いたルークは一言謝罪した後レンと共に手紙の内容を説明した。

「……そう。どうやら帝国で起こっているギルド襲撃事件はカシウスさんを引きつける”囮”みたいだったわね。」

話を聞き終えたキリカは取り乱す事もなく冷静に判断し、真剣な表情で二人を見つめた。



「どうやらそうみてぇだな。それで俺達はいつでもツァイスから離れて大丈夫か?」

「二人のおかげで溜まっていた依頼もなくなったし、それにジャンの話だとそろそろエステル達に推薦状を渡してこっちに向かわせるとのことだから人手は心配しなくていいわよ。」

「あら、エステル達、もうルーアンまで来たんだ。さすがね。」

義理の姉と兄の成長度合いに感心したレンは口元に笑みを浮かべた。



「なら、大丈夫そうだな……それでアガットはどこにいるんだ?」

「アガットはルーアンで起こった孤児院の放火事件の担当をしているわ。」

「孤児院が放火!?あそこには数人の民間人がいたけど大丈夫だったのか?」

「ええ。幸い民間人には被害が出なかったわ。」

「確か院長先生と子供が数人だったわよね?それにしても何で放火なんかされたのかしら……?あそこにいる人達は恨みを買うような人達じゃないのに……もしかして愉快犯かしら?」

二人の会話を聞いていたレンは真剣な表情で考え込んでいた。



「今のところはその線で探っているそうよ。――――今からだと17:00に出る便が一番早くルーアンに到着するけど、その便の手配でいいかしら?」

「ああ、それで頼む。―――レン、母さんの事は任せたぞ。」

「ええ、ママの事はレンに任せて!」

その後ルークはキリカの手配によって飛行船でルーアンに向かった。



港湾都市ルーアン――――リベールの海の産業や商業の玄関口であり、森にある街道の先にはリベールで唯一の国際的な学術機構――――”ジェニス王立学園”がある都市にルークが到着すると既に夜になっていた。



~夜・ルーアン市内~



「もうこんな時間か……ホテルに空き部屋があるかな~?なければ、ジャンに頼んでギルドで寝かせてもらうか……」

ルークが空港から出て歩き出したその時、ルークの目の前に黒装束の男達が走り去り、更に男達を追うかのように赤毛の青年が身の丈程ある重剣を構えて走り去った。

「あれ?今のって、アガットじゃねえか!?追っている奴らはいったい……まさか手紙に書いてあった母さん達を狙う奴等か!?とにかく追わねえと!」

突然の出来事に驚いたルークだったが、すぐに自分のやるべき事を思い出してアガットの後を追って行った。





~アイナ街道~



「はあはあ……」

「な、何てしつこいヤツだ!」

市内を駆け抜け、街道を走り続けている黒装束の男達は走り続けている影響で体力がつきかけているのか、息を切らせながら走るスピードを徐々に落として行き

「おらおらおらッ!」

男達を追う赤毛の青年―――――リベールでも有数の正遊撃士の一人―――『重剣』の異名を持つアガット・クロスナーは重き重剣を持っているにも関わらず、疲労の様子は一切見せなく、どんどんスピードを上げて男達に追いついた。

「あんな大剣をかつぎながらどうして付いてこられるんだ!?」

「ハッ、鍛え方が違うんだよ……らああああああっ!」

自分の体力に男達が驚いている中、アガットは強襲攻撃を仕掛け、男達は間一髪で回避した後武器を構えた。



「クッ……これ以上は振り切れんか……」

「仕方ない、迎撃するぞ!」

「ようやくその気になってくれたみたいだな……てめぇらとの鬼ごっこもここまでで嬉しいぜ。」

迎撃の構えをした男達の行動を見たアガットは獲物を見つけた獣のように凶悪な笑みを浮かべた。

「しつこく追って来なければ、死なずにすんだものを……」

「馬鹿な奴だ……2対1で勝てると思うのか?」

「ハッ、勝てるに決まってるだろ。喧嘩は気合だ!!」

男達の嘲笑にアガットが声を上げて答えたその時

「いや、2対2だぜ。」

アガットの背後からルークが追いついてきた。



「久しぶりだな、アガット。」

「ルークか。……なんでお前がここにいるんだ?ジャンからはお前がいるなんて話は聞いてねぇぞ?」

予想外の援軍の登場にアガットは目の前にいる男達から一切目を離さず眉を顰めて尋ねた。

「父さんにお前を手伝うように頼まれてな。キリカにお前の居場所を聞いてルーアンに来たんだがちょうどがいい所に蜂合わせたようだな。」

「チッ、あのオッサンめ。俺に黙って余計な真似を。……おい、まさかとは思うがいつもお前の傍にいたあの菫色の髪のガキも来ているのか?」

ルークの説明を聞き、口元に笑みを浮かべているカシウスの姿を思い浮かべたアガットは舌打ちをした後、かつて幼いながらも一対一の勝負で圧倒的な戦いで自分を破った事があり、遊撃士協会が特例を認めているレンの姿を思い浮かべて忌々しそうな表情をして尋ねた。

「いや、レンはレンで別の事を父さんから頼まれているから一緒には来ていない。」

「ったく、いくら戦闘能力が高いからって、ガキにまで関わらせるとか、何を考えていやがるんだよ、あのオッサンは。―――まあいい、どうやらテメェらにとっては旗色がさらに悪くなったようだな?」

ルークの話を聞いて眉を顰めたアガットはすぐに気を取り直して劣勢になった自分達の敵である黒装束の男達を不敵な笑みを浮かべて見つめた。

「クッ、どうする?」

「どうもこうもない、迎撃するのが一人増えただけだ。行くぞ!」

そして男達は自分達の追跡者達を始末する為にそれぞれ爪を思わせるような鋭い刃を付けた手甲を構えて突撃の構えをした。するとその時



「秘技―――裏疾風!!」

「え――――」

「な――――」

ルークが電光石火の速さで男達の背後を駆け抜けると共に剣で斬り付け

「斬ッ!!」

「ぐあっ!?」

「ぎゃあっ!?」

斬撃による衝撃波を放って怯ませた。するとその時アガットは炎を思わせるような赤き闘気を全身に纏い、跳躍して怯んでいる男達の目の前に重剣を叩きつけた!

「ふおらあぁぁぁ!フレイムスマッシュ!」

「「ぐあああああっ……!!」」

重剣が叩きつけられた際に発生した衝撃波に呑みこまれた男達は悲鳴を上げながら地面に膝をついた。



「ハ?もう終わりか?あまりにもあっけなさすぎねぇか??父さんが警戒している連中だから、一体どんな連中かと警戒していたんだが……」

男達のあっけなさにルークは目を丸くし

「フン、陰でコソコソして、挙句の果てには尻尾を巻いて逃げるような負け犬根性丸出しの奴らだ。そういう奴らは総じて弱いと決まっているもんだ。――――さてと。こいつらをギルドに連れて行って、洗いざらい白状させるぞ。」

アガットは鼻を鳴らした後ルークと共に男達に近づこうとした。

「!?待て、誰か他にもいるぞ!」

「何っ!?」

目の前にいる男達とは別の気配を感じたルークが警告し、警告を聞いたアガットは表情を厳しくした。



「ほう?さすがはカシウス・ブライトが養子として引き取っただけはあるな。」

するとその時仮面を付けた黒装束の男が男達の背後から現れた。

「い、いつのまに……全然気配を感じなかったぞ……」

「お前、何者だ。(コイツ、かなり強いな……強さはアッシュクラスか……?)」

新手の登場にアガットは驚き、ルークは厳しく表情で新手を睨み

「た、隊長!?」

「来て下さったんですか!」

自分達にとって心強い味方の登場に男達は嬉しそうな表情で声を上げた。



「仕方のない連中だ。定時連絡に遅れた上こんなところで遊んでいるとは。」

「も、申し訳ありません。」

「いろいろと邪魔が入りまして……」

「なるほどな、テメェが親玉って訳か?」

仮面の男に対して丁寧に話している男達の様子を見たアガットは仮面の男が男達のリーダーと判断し、表情を厳しくして仮面の男を睨んだ。

「フフ。自分はただの現場責任者にすぎない。――――部下達の非礼は詫びよう。ここは見逃してもらえないか?」

「ハ……?」

「はあ?今、なんて言った?」

そして仮面の男の口から出た予想外の言葉に男の敵対者である二人は目を丸くした。



「見逃して貰えないかと言った。こちらとしても遊撃士協会と事を構えたくないのでね。」

「アホか!んな都合のいい話があるか!」

「そうだぜ!大体そんな事を頼むくらいなら、最初から怪しい事をするんじゃねえ!」

「やれやれ……悪くない話だと思ったんだが……お前達、ここは自分が食い止める。早く合流地点に向かうがいい。」

自分の提案を一蹴した二人の答えを聞いた男は溜息を吐いた後男達に指示をした。

「は、はい!」

「感謝いたします、隊長!」

指示を聞いた二人は立ち上がってその場から走り去り

「逃がすか、おらあ!」

アガットは追撃をかけようとしたが仮面の男が立ち塞がった。



「…………」

「てめえ……フン、まあいい。こっちには2人いるしな。おいルーク、お前はさっきのやつらを追え。」

「……いいのか?そいつ、かなり強いぞ。」

「ハッ!こんな奴、俺一人で十分だ。さっさと行け!」

「わかった。気をつけろよ。」

援護は不要と言い張ったアガットの言葉に頷いたルークは走り去った男達を追おうとし、ルークの行動に気付いた仮面の男は立ち塞がろうとしたが

「オラァ!お前の相手は俺だ!」

「ムッ……」

アガットが攻撃を仕掛けて男の行動を阻み、その隙にルークは駆けだした。



「ハア……ハア……どうにか無事に撤退できそうだな。」

「ああ、後で隊長にお礼を言っておかないとな。」

一方仮面の男に助けられた黒装束の男達は後ろを振り返り、追撃者がいない事を確認した後、立ち止まって安堵の溜息を吐いた。しかし

「魔神拳!!」

「「!?」」

突如背後から襲ってきた衝撃波に気付き、散開して回避した。

「ば、馬鹿な!?」

「何故貴様がここにいる!?隊長はどうしたんだ!?」

自分達を攻撃した相手―――ルークを見た男達は驚き

「役割分担ってやつだ。2人でわざわざ一人を相手にする訳ないだろ?」

「ク、クソ!どうする?」

「森に逃げ込むぞ!森の中に入ればこっちのものだ!」

再びルークに背を向け、木が生い茂っている森に向かって走り出した。

「逃がすかよっ!」

男達の行動を見たルークは抜刀の構えで一瞬で男達の前方へと駆け抜けて抜刀し



「―――七の型奥義!無想覇斬!!」

「「ぎゃあああああああっ!?」」

無数の刃を発生させて男達を地面に倒れさせた!

「ぐうっ!?」

「何なんだ、今のは……!?」

「さてと。とっとと拘束しちまうか……」

自分の奥義を受けて呻き声を挙げている男達にルークが近づこうとした。

「それは困るな。」

「!?お前は!アガットはどうしたんだ!?」

背後から近づいてきた仮面の男に気付いたルークは振り返って血相を変えた。



「フフ、あの者なら軽くいなした。」

「チッ、やるっていうならかかって来いよ。」

「……………」

剣を構えたルークに応えるかのように男は金色に輝く長剣を構えた。



「そこだっ!!」

男が剣を振ると竜巻のような衝撃波がルークを襲い

「!!」

ルークは側面に跳躍して回避し

「空波――――」

一歩前に踏み込んだ瞬間、男に詰め寄り

「絶風撃!!」

強烈な突きを放った!

「フッ!」

至近距離で放たれた突きに対し、男は剣で受け流した。

「―――破砕剣。ハァァァァァァッ!!」

「貫く閃光!翔破!裂光閃!!」

そして二人はそれぞれ閃光のような速さで武器を繰り出して互いの攻撃を相殺していた。

「ハアッ!!」

連撃を終えた男は跳躍して強烈な一撃を与えようとし、ルークは迎撃の構えをしたが

「フッ。」

「!?粋護陣!!」

男は懐から手榴弾を取り出してルーク目掛けて投擲し、投擲された手榴弾に気付いたルークは闘気による結界を展開した。すると結界に手榴弾が命中した瞬間、辺りは煙に包まれた!



「クソ、やられた!煙幕か!」

「フフ、さすがに迷いを捨てきれていない”重剣”と違う”焔”をまともに相手にしている時間は生憎ながらなくてな。―――機会あれば、その時に改めて仕合せてもらおう。」

煙幕による煙が消えると男や倒れている男達の姿は無かった。

「チクショウ、逃げられた!!」

みすみすと敵を逃がした事に悔しさを感じたルークは拳で思わず地面に叩きつけた。



「どうやら逃がしちまったようだな……」

その時アガットが追いついてきた。

「アガット……―――すまん!3人共、逃がしちまった。」

「気にすんな。あの仮面野郎を逃がした俺に一番責任がある。――――それより奴等をこのまま追うぞ!まだ、そう遠くには行ってないはずだ!」

「ああ!」

そしてルークとアガットは再び走り出し、男達の行方を追い始めた………

 
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