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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第3話

~旧校舎~



「……クッ………何が起こったんだ……?」

「いきなり床が傾いて……」

「……やれやれ。不覚を取ってしまったな。」

「ここは……先程の建物の地下か。」

「フン……下らん真似を。」

プリネ達が下に降りたその頃地面に倒れていた生徒達は次々と起き上がり、少しすると銀髪の少女やプリネとツーヤが坂を下りて来て着地した。

「……ふぅ。」

「とりあえず、全員無事のようですね………――って、あら?」

地面に着地した少女は溜息を吐き、プリネは周囲を見回してある人物を見つめて目を丸くし

「リ、リィンさん??」

プリネが見つめたある人物―――リィンの状態を見たツーヤは戸惑い

「はああ~っ………心臓が飛び出るかと思ったよ。リィンは大丈夫――――へ………」

エリオットは起き上がった後リィンに視線を向けて呆けた。

(………これは。)

リィンの状態は金髪の女子の胸がリィンの顔に押し付けられている状態で地面に倒れ、顔に胸を押し付けられているリィンは固まっていた!

「ううん……何なのよ、まったく………あら……………」

その時目が覚めた金髪の女性はぼやいた後自分とリィンの状態を見て顔を赤らめて固まり

「……その……何て言ったらいいのか。」

リィンは恐る恐る言った。するとその時金髪の女子は起き上がり

「えっと……とりあえず申し訳ない。でも良かった。無事で何よりだった―――」

そして起き上がったリィンが金髪の女子に近づいたその時、女子はリィンの頬に思い切り平手打ちをした!



「あはは……その、災難だったね。」

平手打ちをされた部分を手で抑えているリィンをエリオットは苦笑しながら見つめ

「ああ……厄日だ。」

見つめられたリィンは溜息を吐いて言ったが

「フフ、でも内心得したなと思っているのではないですか?」

「確かにその可能性は高そうですね………」

「そ、そんな事はこれっぽっちも思っていません!!」

微笑みながら言ったプリネと苦笑しながら頷いたツーヤの言葉に慌てて答えた。

「それにしてもここは一体……」

そして気を取り直したリィンは周囲を見回して戸惑い

「うん……何か置かれてるみたいだけど。」

リィンの言葉にエリオットが頷いた。するとその時何かの音が鳴りはじめた。

「わわっ……!?」

「これは………」

音に気付いたエリオットやリィンは驚いた後他の生徒達のようにオーブメントを取り出して見つめた。

「入学案内書と一緒に送られてきた……」

「携帯用の導力器か。」

生徒達がオーブメントを見つめたその時

「―――それは特注の”戦術オーブメント”よ。」

オーブメントからサラ教官の声が聞こえてきた!

「この機械から……?」

「つ、通信機能を内蔵しているのか……?」

「ま、まさかこれって……!」

声が聞こえたオーブメントに生徒達は驚き

「基本、”エニグマ”の機能を持っているようね。」

「恐らくそうでしょうね………まあ、クオーツはいつものように対応していないでしょうから、また集め直しでしょうけど……」

プリネは冷静な表情でオーブメントを見つめ、ツーヤは苦笑していた。

「ええ、エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で開発した次世代の戦術オーブメントの一つ。第五世代戦術オーブメント、”ARCUS(アークス)”よ。」

「ARCUS(アークス)………」

「戦術オーブメント………魔法(アーツ)が使えるという特別な導力器のことですね。」

サラ教官の説明を聞いたリィンは呆け、眼鏡の女子は呟いた。

「そう、結晶回路(クオーツ)をセットすることで魔法(アーツ)が使えるようになるわ。……まあ、異世界の連中はオーブメントなしでアーツとは異なる魔法を撃てるようだけど………今はその話は置いておいて、各自受け取りなさい。」

そしてサラが説明を終えると灯がともり、そこは広間となっていて、それぞれの台座に荷物と宝箱が置かれていた。

「君達から預かっていた武具と特別なクオーツを用意したわ。それぞれ確認した上で、クオーツをARCUSにセットしなさい。」

リィン達に説明をし終えたサラ教官は一端通信を切り、その場は無言に包まれたが

「ふむ………とにかくやってみるか。」

「まったく……一体なんのつもりだ。」

「……………」

「フフ、まさか入学早々こんな事をやらされるなんてね。」

「あたし達がいると知って、余計な悪戯をしていないといいのですが……」

生徒達は次々と動き出して自分達の荷物の元に向かって行き

「俺のは……あれか。」

「僕のはあっちだ……行ってくるね。」

リィンやエリオットも動き出して自分達の荷物の元に向かい、リィンは荷物の目の前に置かれてある宝箱を開け、そこに入っているマスタークオーツを見つけ、サラ教官の指示に従ってオーブメントにセットした。

「……………これは………」

それぞれがマスタークオーツをセットするとオーブメントは不思議な光を放った。

「君達自身とARCUSに共鳴・同期した証拠よ。これでめでたく魔法(アーツ)が使用可能になったわ。他にも面白い機能が隠されているんだけど……ま、それは追々って所ね。―――それじゃあさっそく始めるとしますか。」

驚いているリィン達にサラ教官は説明をし終えた後リィン達に言った。するとその時閉じられていた扉が開いた。

「そこから先のエリアはダンジョン区画になってるわ。わりと広めで、入り組んでいるから少し迷うかもしれないけど……無事、終点までたどり着けば旧校舎1階に戻ることができるわ。ま、ちょっとした魔獣なんかも徘徊してるんだけどね。―――それではこれより士官学院・特科クラス”Ⅶ組”の特別オリエンテーリングを開始する。各自、ダンジョン区画を抜けて旧校舎1階まで戻ってくること。文句があったらその後に受け付けてあげるわ。何だったらご褒美にホッペにチューしてあげるわよ♪」

その後リィン達はそれぞれ集まって互いの顔を見回して黙りこんだ。



「え、えっと………」

無言の空間にエリオットが戸惑った表情で呟き

「……どうやら冗談という訳でもなさそうね。」

金髪の女子は真剣な表情で呟き

「フン………」

ユーシスは鼻を鳴らした後先へと進む通路に歩きかけたが

「ま、待ちたまえ!いきなりどこへ……一人で勝手に行くつもりか?」

マキアスが制止の声を上げて尋ねた。

「馴れ合うつもりはない。それとも”貴族風情”と連れだって歩きたいのか?」

「ぐっ……………」

そしてユーシスに尋ね返されたマキアスは唸り

「まあ―――魔獣が恐いのであれば同行を認めなくもないがな。武を尊ぶ帝国貴族としてそれなりに剣は使えるつもりだ。貴族の義務(ノブレス=オブリージュ)として力なき民草を保護してやろう。」

「だ、誰が貴族ごときの助けを借りるものか!」

さらにユーシスの挑発ともとれる言葉に怒鳴った後通路に近づき

「もういい!だったら先に行くまでだ!旧態依然とした貴族などより上であることを証明してやる!」

ユーシスを睨んで言った後先へと進み

「……フン。」

ユーシスは鼻を鳴らした後マキアスの姿が見えなくなった後、一人で通路の先へと進み始めた。

「…………………」

去って行く二人を見ていたリィンは黙り込み

「……えっと………」

「ど、どうしましょう……?」

エリオットや眼鏡の女子は戸惑い

「―――とにかく我々も動くしかあるまい。念のため数名で行動することにしよう。そなたと、そなた。私と共に来る気はないか?」

青髪の女子は提案をした後、眼鏡の女子と金髪の女子に視線を向け

「え、ええ。別に構わないけど。」

「私も………正直助かります。」

視線を向けられた2人は頷いた。

「それに、そなたも―――」

2人の返事を聞いた青髪の女子は銀髪の女子に視線を向けると、銀髪の女子は一人で歩き出して通路の先へと進んで行き

「ふむ………?―――まあいい。後で声をかけておくか。後は………貴女達も私と共に来ますか?プリネ姫、ルクセンベール卿。」

銀髪の女子の行動を見た青髪の女子は不思議そうな表情をした後、プリネとツーヤに尋ねた。

「その前に………私の事はどうぞ気軽な呼び方―――呼び捨てで呼んでもらって構いませんし口調も普段通りで話して貰って構いません。先程も言いましたがこの学院にいる間はできるだけ皇女扱いは止めてほしいですし………私達自身、できれば同じクラスの皆さんとも親しくしたいと思っていますので。」

「あたしも呼び方や口調、接し方は皆さんと同じでいいですし、名前で呼んでもらって構いません。……というかそっちの方でお願いします。正直、”ルクセンベール卿”と呼ばれる事自体、あまり慣れていませんので………」

「ふむ………?2人がそれでいいのなら、そうさせてもらおう。それで話を戻すがどうする?」

「せっかくのご好意はありがたいのですが、色々と試したい事がありますので私達は別行動をさせてもらいます。」

「あたし達は2人だけで大丈夫ですので、そちらはそちらで頑張って下さい。」

そして青髪の女子に尋ねられたプリネとツーヤはそれぞれ答え

「で、でも……女子がたった2人で魔獣がいる場所を歩き回るなんて危険ですよ?」

眼鏡の女子は不安そうな表情で尋ねた。

「フフ、心配は無用です――――」

眼鏡の女子の言葉を聞いたプリネは鞘から『聖剣ジークリンデ』を抜いて構え、プリネに続くようにツーヤも鞘から『竜神刀アルフ・カティ』を抜いて構え

「お父様達に鍛えて頂いているので大丈夫ですし、既に魔獣との戦闘経験はあります。」

「あたしもプリネさんの親衛隊長として共に戦った事が何度もあるから大丈夫ですよ。」

それぞれ微笑みながら言った。

「し、親衛隊長!?そ、それにあの”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”が剣を扱うなんて……!」

「あ。………そう言えば”蒼黒の薔薇”って”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”が常に連れ歩く護衛だって噂で、”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”自身、”覇王”やメンフィルの有名な将軍達直々に鍛え上げられて達人級の剣の腕を持っているっていう噂だったよね………?」

二人の言葉を聞いた金髪の女子は驚き、エリオットはある事を思い出して呟いた。

「確かにそんな噂を聞いた事があったな……………しかし……2本とも見事な名剣だ。さぞ名のある名工が鍛え上げたのであろう。」

「な、なんていうか………剣自身から神々しい雰囲気みたいなものを出しているような気がするんだけど……?」

「………こうして見ているだけでも、祈りを捧げたくなるな…………」

「………………………」

青髪の女子は頷いた後、二人が持つ剣にそれぞれ視線を向けた後感心し、エリオットは驚き、長身の男子は静かな口調で呟き、眼鏡の女子は真剣な表情で二人の持つ剣を見つめ

「フフ、この剣を鍛え上げたのが有名な方である事は当たっていますね。」

青髪の女子の言葉を聞いたプリネは微笑み

「では皆さん、また後で会いましょう。」

ツーヤはその場にいる全員を見回して微笑んだ後、プリネと共に通路の先へと進み始めた。



「では、我らは先に行く。男子ゆえ心配無用だろうがそなたらも気を付けるがよい。」

そして二人が去ると青髪の女子はリィン達に視線を向けて言い

「あ、ああ……」

女子の言葉を聞いたリィンは頷き

「そ、それでは失礼します。」

「…………フン。」

眼鏡の女子は頭を下げ、金髪の女子はリィンを睨んで鼻を鳴らした後青髪の女子と共に通路の先へと進み始めた。

「……………はあ…………………」

女子達が去るとリィンは疲れた表情で溜息を吐き

「あはは、すっかり目の仇にされちゃったみたいだね。」

エリオットは苦笑しながらリィンを見つめて言った。

「ああ、後でちゃんと謝っておかないとな………―――それで、どうする?せっかくだから俺達も一緒に行動するか?」

「うんっ、もちろん!……というよりさすがに一人だと心細いよ。」

そして気を取り直したリィンの言葉にエリオットは頷いた後苦笑し

「異存はない。オレも同行させてもらおう。」

長身の男子も頷いた。その後リィン達はそれぞれの武器を構えて、互いの武器を見せ合った。

「ガイウス・ウォーゼルだ。帝国に来て口が浅いからよろしくしてくれると助かる。」

長身の男子―――ガイウスは名乗り

「そうか……ガイウスもやっぱり俺やプリネさん達と同じ留学生だったか。」

「あれ?リィンも留学生だったんだ。」

ガイウスの名乗りを聞いたエリオットは目を丸くした後興味深そうな表情でリィンを見つめて言い

「ん?あ、ああ。……リィン・シュバルツァーだ。こちらこそよろしく。」

エリオットの言葉を聞いたリィンは若干戸惑いの表情を見せて頷いた後ガイウスに名乗り

「エリオット・クレイグだよ。それにしても……その長いのって、武器なの?」

エリオットも名乗った後不思議そうな表情でガイウスが持つ武器――――十字になっている槍を不思議そうな表情で見つめて尋ねた。

「ああ、これか。」

「十字の槍……」

「へえ……何だかカッコイイね。」

「故郷で使っていた得物だ。そちらもまた……不思議なものを持っているな?」

リィンとエリオットの言葉に答えたガイウスはエリオットが持つ武器―――魔導杖に視線を向けた。



「あ、うん、これね。」

「杖……?いや、導力器(オーブメント)なのか?」

「新しい技術を使った武器で”魔導杖(オーバルスタッフ)”って言うんだって。入学時に適性があるって言われたから使用武具として選択したんだけど……」

「なるほど。そんなものがあるのか。」

「俺も聞いたことがないな……」

エリオットの説明を聞いたガイウスは納得し、リィンは考え込み

「うーん、何でもまだ試験段階の武器なんだって。それで……リィンの武器はその?」

エリオットは答えた後リィンの持つ武器―――刀に視線を向けた。

「ああ――――」

「それって……剣?」

「ツーヤが持っている剣と似ているようだが……」

リィンが持つ刀をエリオットとガイウスは不思議そうな表情で見つめ

「これは”太刀”さ。」

リィンは答えた後刀を前に出して、二人に刀身を見せた。

「うわあぁぁ………キレイな刀身……」

「……見事だな。」

刀身を見たエリオットは驚き、ガイウスは静かに呟いた。

「東方から伝わったもので切れ味はちょっとしたものだ。その分、扱いが難しいからなかなか使いこなせないんだが。」

「え~、何だかすごくサマになってたけど……」

「ふふ、せいぜい当てにさせてもらおうか。さて―――オレたちもそろそろ行くとしようか?」

「ああ、警戒しつつ慎重に進んで行こう。まずはお互いの戦い方を把握しておかないとな。」

「うん………!」

こうしてリィンはエリオットとガイウスと共に通路の先へと進み、迷宮の攻略を始めた………………… 
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