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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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外伝~運命の邂逅~

~国境~

「ハァハァ……」
「イリーナ、エリィ!こっちよ!」
「はい、お母様!エリィ、急いで!」
「う、うん、お姉様!」
そこには一つの家族が何者かに追いかけられているように走っていた。
その家族は理由があって家族離れ離れに暮らしていたが、年に一度だけ家族そろって食事をしていたのだ。いつものように、決まったレストランで食事をしていたのだが突如何者かにそこが襲撃されたのだ。襲撃の時、運良く家族全員逃げれたのだが襲撃者達は逃亡者に気付き、執拗に追いかけてきたのだ。

「それにしてなぜこんなことが……」
金の髪と瞳を持つ少女イリーナと姉とは逆に銀の髪と瞳を持つ少女エリィの母は息を切らせながら呟いた。
「もしかしたら、最近大陸中で流行っている幼児誘拐事件のグループの仕業かもしれないな……」
2人の父は最近の出来事を思い出し、妻の疑問に答えた。
「そんな………!」
妻は娘達の手を握り、震えた。
「もうひと頑張りしよう。あそこにある関所はメンフィル領の関所だ。噂ではメンフィル領では例の事件は起こってないそうだから、メンフィル領に亡命すれば大丈夫だろう。」
「ええ、そうね……」

その家族が逃げようとした場所は百日戦役でメンフィル帝国領となった場所であった。なぜ、メンフィル領だけ事件が起こらなかったのは、問題になっている犯罪グループが自分達の教祖になってもらうためにペテレーネを勧誘しようとして活動目的を話し
断られ、強硬手段としてその場でペテレーネを攫おうとしたが同席していたリウイ達によって討取られ、その犯罪グループの活動をプリネやリフィアにとって危険と判断したリウイによってメンフィル領と大使館があるロレントを徹底的に警戒させ、誘拐が起きても
本国から呼び寄せた夜の活動を主としている闇夜の眷属によって全て未遂に抑えられたのだ。

安堵をついている家族の所に突如どこからともなく飛んできたナイフが地面に刺さった。
「「ひっ……!!」」
突如刺さったナイフにイリーナとエリィは悲鳴を上げた。
「クッ……もう、追いついてきてしまったか!」
父は悔しげに嘆き、懐から護身用の銃を出した。
「イリーナ!エリィを連れてあそこにある関所に逃げなさい!」
「で、でもお父様とお母様は!?」
イリーナは母の言葉に驚き、2人に詰め寄った。
「お父さん達はここで2人を攫おうとしている悪者と戦うよ。」
「嫌よ!2人ともいっしょに逃げよう!?」
エリィは半泣きの顔で2人に懇願した。
「大丈夫よ。少ししたら追いつくわ。だから、2人はあそこにある関所の兵士に助けを呼んでお母さん達を助けて。」
「で、でも……」
「イリーナ、お前は賢い子だからわかるだろ……このまま逃げても絶対に捕まってしまうことに……だったら、誰かが助けを呼ぶ必要があるんだ。」
「お願い、2人とも聞きわけて……」
夫妻は娘達の手を握り諭した。
「………わかりました。でも、2人とも絶対に無茶をしないでね……」
「ありがとう、イリーナ。」
そして夫妻は2人の娘の体を抱きしめた。
「「2人ともまた、会いましょう!」」
「絶対にだよ!エリィ、早く!」
「う、うん!お父様、お母様、どうかエイドス様の加護を……」
そしてイリーナはエリィを連れて関所に向かって走った。

「……君には辛い思いをさせたね。」
「いいえ、最後にあなたといっしょだからいいのですよ。」
夫の言葉に妻は微笑み、夫と同じように懐から銃を出し襲撃者の迎撃をしようとした。
そしてついに襲撃者達が追いつき、姿を現した。
「……子供達がいないだと?陽動のつもりか、余計な真似を……」
「ふん、ならばこいつらを殺して子供達を奪うまでだ。」
「そんなことは絶対させない!」
「例えこの命果てようとも、絶対にあの子達には手出しをさせないわ!」
そして夫妻達は銃を使って襲撃者達と戦闘を始めた。


~関所~

「ハァハァ……ついた……エリィ、大丈夫?」
「う、うんお姉様。」
2人はようやくついた関所を見て安堵をつき、イリーナはエリィを連れて関所にいる兵士に話しかけた。
「「お願いします!お父様達を助けて下さい!!!」」
「な、なんだお前達は……?」
関所を守っているメンフィル兵士達は深夜に現れた子供達とその勢いに押され戸惑った。
「今、お父様達が戦っているんです!」
「このままじゃ、2人は死んじゃうよ!兵士さん、お願い助けて!」
「ま、待て!順を追って話してくれ!」
「……何かあったのですか?」
そこに騒ぎを聞きつけた、幼いながらも関所の兵士達の慰問に来たプリネ皇女が姿を現した。
「プ、プリネ様!」
「お休みの所、申し訳ありません!」
兵士達はプリネの姿を見ると姿勢を正した。

「……構いません。その子達が何か?」
「ハッ!父を助けろと言って場所や事情も判らずどうすればいいのか、判断がつかなかったのです。」
「判りました……お二人とも何があったのか話してくれませんか?」
兵士から事情を聞いたプリネは2人に近づき事情を聞いた。
「は、はい!実は……!」
同い年に見えるプリネを見て安堵したイリーナは事情を話した。
「……なるほど。事情を話してくれてありがとうございます。」
プリネは事情を聞き、イリーナにお礼を言った後真剣な顔をして兵士に命令した。
「……今すぐ、就寝している兵士の方々を起こしてこの子達の親の救出に向かって下さい。万が一の事を考えて私も行きます!」
「し、しかし救出だけなら我々だけで十分です!プリネ様に万が一の事があったら陛下やリフィア様に顔向けできません!」
「……こう見えても、お父様達から剣術や戦い方、魔術を習っています。だから護身ぐらいできます。それにもしお二人のご両親が怪我をしていたら、私を除いて治癒術ができる方はいらっしゃいますか?」
「「そ、それは……」」
プリネの言葉に兵士達は思わず口をつぐんだ。
「絶対に貴方達から離れたりしませんので、お願いします!」
「わかりました……そこまで言うのでしたら、絶対に我々から離れないで下さい。おい、休んでいるやつら全員叩き起こしてきてくれ!」
「ああ!」
そして一人の兵士が休んでいる兵士たちを起こしに関所の中へ走って行った。

「お二人は関所の中で休んでいて下さい。」
「そんな……!そんなことできません!」
「迷惑はかけませんので連れて行って下さい!」
「「お願いします!!」」
プリネは2人の安全を考え関所の中にいるように言ったが2人は強く否定した。
「……わかりました。では絶対に私達から離れないで下さいね。」
「「は、はい!ありがとうございます!」」
押し問答している時間がなかったプリネは仕方なく2人の同行を許した。
そしてプリネは兵士達と共に助けを求めた少女を連れて2人の親が戦っているであろう場所に向かった。

そしてプリネ達が関所を出て少しした後、ある場所に夫は事切れ妻も大量の血を流して息絶え絶えになって倒れていた。
「クソ……手間をとらせやがって……」
「どうする?この先はメンフィル領だぞ?」
「構うものか。関所にいる兵士なんて数えるぐらいだろう。行くぞ!」
「「了解した。」」
そして襲撃者達は関所に向かおうとしたが、
「出でよ魔槍!狂気の槍!!」
「プリネ様に続け!弓隊撃て!!」
「「「「「オオッッ!!!」」」」
プリネが放った暗黒魔術の槍と続くように兵士達が撃った矢が襲撃者達に命中した。
「「「グハッッ!!」」」
「全員、抜刀!!!」
「「「「「オオッッ!!!」」」」
「「「ギャぁぁぁ……!!!」」」
さらにメンフィル兵士達は剣を抜き襲撃者達の命を刈り取った。
「「お父様、お母様!!」」
一瞬で戦闘が終了し、イリーナとエリィは血を流して倒れている2人に近寄った。
(こちらの男性はもう……なら女性だけでも!!)
2人の状態を見て男性はすでに死んでいると確信したプリネは女性に近づき治癒魔術を使った。
「暗黒の癒しを……闇の息吹!!」
治癒術を発動したプリネだったがその表情は芳しくなかった。
(……ダメ……傷が深すぎるし血も流しすぎている……お母様がいなくても、せめてリフィアお姉様かエヴリーヌお姉様のどちらかがいれば……)
自分では女性を助けれないと悟ったプリネは悔しげに唇を噛んだ。
そして女性はうっすらと眼を開けた。

「イリー……ナ……エ……リィ……」
「「お母様!!」」
母親の目が覚めたことに気付いたイリーナとエリィは母に何度も呼びかけた。
「よ……かった……無事で……」
「気をしっかり持って下さい!今、目を閉じたら死んでしまいます!」
「あ……な……た……は……?」
薄れゆく意識の中、娘以外の声の持ち主を見て、呼びかけているのがイリーナと年が同じくらいの少女に気付き聞いた。
「メンフィル軍の者です!」
「メン……フィル軍……よ……かった……お願い……しま……す……私達はもう……無理です……だか……ら
この子達……の……こと……を……お願い……しま……す」
「わかりました……私の名はプリネ・マーシルン!闇夜の眷属を束ねる名においてお二人は責任を持って守ります!」
「マーシルン……!よかった………!」
母親はプリネがメンフィル王家の者だと知り、イリーナとエリィが王家に保護されたことに安心し涙を流し2人の名を呼んだ。
「イリーナ……エリィ……よく聞き……なさい……」
「お母様しっかり!」
「言うことなんでも聞くから死んじゃやだ!」
「ごめんね……お父さんと……お母さんは……先に……エイドス様の……所に……行くね……だから……
この人の……言う事を……よく聞きなさい……2人とも……幸せに……な……ってね……」
そして女性は事切れ目を閉じた。
「お父様、お母様……?嘘でしょう……ねえ……返事を……してよ……」
「うっ……ひっく……おとうさま、おかあさま……」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ……!!!」」
雲ひとつなく月明かりとメンフィル兵士の持つ照明の許で2つの亡き骸によりそった少女達の泣き声が響いた……


その後、イリーナとエリィの両親を兵士の手を借りて手厚く葬ったプリネは2人を連れて関所に戻った。
~翌日~
「落ち着かれましたか?」
「……はい。お父様とお母様の御墓を建ててくれてありがとうございます……」
「う……ひっく……ありがとうございます……」
プリネの言葉に2人は沈みながらも答えた。
「……あの、あなたは本当にメンフィル帝国の皇女様なのですか?」
顔を下に向けイリーナはポツリと呟いた。そしてその疑問にプリネは答えた。
「ええ……ご紹介が遅れ申し訳ありません。メンフィル皇女、プリネ・マーシルンです。」
「ひっく……エリィ・マグダエルです……」
「エリィの姉のイリーナ・マグダエルです……」
「イリーナ!?」
「あの……私の名に何か……?」
「……いえ。特に何もありません。(金の髪に金の瞳……おまけに名前がイリーナ……それによく見ると肖像画のイリーナ様に似ているような……まさかね……)」
プリネはイリーナの名を聞いた後、驚きイリーナの容姿を見て父親の目的の人物だと一瞬思ったがその考えを打ち消した。

「……ひょっとしてリウイ皇帝陛下と親しいですか?」
「え、ええ。リウイ・マーシルンは私の父ですが……」
イリーナの疑問にプリネは戸惑いながらも答えた。
「だったらお願いします!私達の家族を無茶苦茶にした人達を処罰するために軍を動かすようリウイ皇帝陛下にお願いして下さい!!
このお願いを聞いて頂けるのなら私にできることならなんでもします!」
「落ち着いて下さい。貴女達は今回の事件の終結と貴女達の親戚の方を見つけるまで
ロレントの大使館で保護するつもりですから、その時お父様と会わせますのでお父様に直接言って下さい。」
「はい、ありがとうございます……」
そしてプリネは2人を連れて兵士に守られながらロレントの大使館への帰途についた。


~ロレント郊外・メンフィル大使館内会議室~

そこではリウイやファーミシルスとルース、ペテレーネ、カーリアン、そしてリフィアがシェラの報告を聞いていた。
「……以上になります。子供達の誘拐の阻止はできたのですが、襲撃の際両親などに被害が出、孤児になる子供が増加しています。」
「……そうか。孤児となった子供達のための孤児院や心の治療が必要だな……癒しの女神(イーリュン)の信者達に協力を呼びかけてくれ。……ティアに信者達の先頭に立つよう俺から頼んでおこう。……誰かティアに至急城に戻るよう手配してくれ。」
「ハッ!!」
リウイの命令にルースはイーリュンの信者へ協力の要請とレスペレント地方で母の遺志を継ぎ皇女と云う身分でありながらイーリュンの信者として活動しているリウイと幻燐戦争でペテレーネと共に衛生兵として活躍したイーリュンの信者であったティナ・パリエの娘、ティア皇女をミルスに呼び戻すために会議室から出て行った。そして入れ替わるようにプリネが会議室に入って来た。
「お父様、お母様。プリネ・マーシルン、ただいま戻りました。」
「戻ったか、プリネ。」
「お帰りなさい、プリネ。」
「よく戻ったのプリネ。余とエヴリーヌも首を長くして待っておったぞ。」
「ありがとうございます、リフィアお姉様。あの……帰って早々にお願いがあるのですが……」
優しく迎えた両親にプリネは言いづらそうに願いを言った。
「お前が頼み事とは珍しいな……言ってみろ。」
「はい、実は……」
そしてプリネは関所で起こった出来事、孤児になった2人の少女を保護するようにリウイに頼んだ。
「……そうか。いいだろう、例の事件の終結とその2人の縁者が見つかるまでここで世話をする。みな、いいな?」
「リウイ様が決めたのなら従うまでです。」
「私もファーミシルス様と同じ意見です、リウイ様。」
「別にいいわよ。」
「妹の頼みを聞くのも姉として当然のことじゃ!」
「皆さん……ありがとうございます!」
全員から2人の滞在の許可を言われプリネは笑顔になりお礼を言った。
「あの……それから、保護した姉妹の姉の方がお父様に頼みがあると。」
「俺にか?……まあいい、会って話をしよう。その2人を呼んでくれ。」
「はい。……いいですよ、入って来て下さい。」
プリネの言葉を聞いて会議室のドアが開けられ、そこに立っていたのは緊張しているイリーナとその後ろに隠れているエリィだった。

イリーナとリウイが目を合わせた時、それぞれに衝撃が走った。
(な……イリー………ナ……!?いや、ただ似ているだけかもしれんが……この雰囲気は………!?)
(何……?この愛しい気持ちと胸の高まりは……?私、この人に会ったことあるの……?)
2人は見つめあいしばらくの間、沈黙が流れた。
「リウイ?何、その娘をボーっと見てるのよ?もしかして小さい子が趣味になったの?」
「バカを言うな……プリネ、その二人が話に出ていた例の姉妹か?」
カーリアンの言葉に我に帰ったリウイは気を取り直しプリネに聞いた。
「はい。二人ともこの方が私のお父様であちらにいる女性が私のお母様です。」
「あの……もしかして、そちらの方はアーライナ教の聖女様ですか?」
エリィはプリネが紹介した女性を見て、新聞で載っていた異教を広める聖女だと気付き震えながら聞いた。
「あの……お願いですからその呼び名はやめて下さい……本当に恥ずかしいのですから……」
「お母様はゼムリア大陸でアーライナ教の神官長を務めております。巷では”闇の聖女”とも呼ばれています。」
「プリネまで……お願いだからその呼び名はやめて……」
「ふふ、ごめんなさいお母様。でもお母様は私にとって女性の鑑だもの。」
「もう、この娘ったら……」
娘にまで恥ずかしい呼び名を言われペテレーネはやめるように言い、プリネは上品に笑いながら謝った。

「本当に聖女様なのですか!お願いします、奇跡の力でお父様とお母様を生き返して下さい!」
エリィはペテレーネに詰め寄り懇願した。
「申し訳ありませんが、私が使える魔術で人を生き返す魔術は使えません。イーリュンの神格者の方でしたら可能かもしれませんが、
魂と体が離れている以上、例え蘇生魔術を使っても生き返らせません。人を生き返すのはとても高度な事ですから……」
「そう……ですか……」
ペテレーネの言葉にエリィは暗い顔になり顔を下に向けた。
「さて……自己紹介をしようか。プリネの父でこの大使館を指揮している、リウイ・マーシルンだ。」
「プリネの母、ペテレーネ・セラです。何か困ったことがあれば遠慮なく私に言って下さい。」
「カーリアンよ♪よろしくね♪」
「メンフィル大将軍、ファーミシルスよ。武芸を学びたいのなら教えてあげてもいいわよ。」
「メンフィル機工軍団団長シェラ・エルサリス。」
「そして余こそが!メンフィル次期皇帝、リフィア・イリーナ・マーシルン!大事な妹の頼みじゃ、何か頼みたいことがあれば余に言ってみるがよい。願いにもよるが、余の器の大きさを見せてやろう!」
それぞれが自分の名を言った後、リフィアのフルネームを聞いた時エリィとイリーナは驚いた。
「「え……イリーナ……!?」」
「どうした、余の名が不服か?」
「いえ……私といっしょの名前だなと思って……紹介が遅れ申し訳ありません。イリーナ・マグダエルです。」
「エリィ・マグダエルです……」
2人は自分達とは身分が遥かに違う者達に恐縮しながら自分の名を言った。

「何!?」
「え……!?」
「嘘!?」
「な……!?」
「………」
「ほう……」
リウイ達はイリーナの名を聞き、驚愕しイリーナを見た。
「あの、プリネ様も私の名を聞いて驚いたのですが何かあるんでしょうか?」
リウイ達の反応を見てイリーナはオロオロした。
「…………………いや、その名は我らにとって特別な名でな。驚かせてすまなかったな。」
しばらくの間、黙っていたリウイだったが気を取り直し理由を言った。
「リウイの言う通りじゃ。その名はリウイの正妃で人間でありながら闇夜の眷属との共存を願った者の名前じゃ。国民達や余にもその思いを忘れぬよう余の名につけられたのがその名なのじゃ。……余とイリーナ様と同じ名を使うその心意気、気にいったぞイリーナ!我らマーシルン家に仕えてみないか?お主を余やプリネ専属の者として重用してもよいぞ。」
「え……そんな……私のような者が王族の方達に仕えるなんて恐れ多い事を……」
イリーナはリフィアの言葉にうろたえた。
「リフィアお姉様……この方も混乱していますからそれぐらいで……」
「プリネの言う通りだ……まだ幼い者に仕えるよう言うのは酷だ。王族であるお前が言ったら断れなくなるだろう。」
「そうか?いい考えじゃと思ったんじゃがな。」
リウイとプリネに諌められリフィアは残念そうな顔をしつつ引き下がった。
「……さて、プリネの話では俺に何か願いたいことがあるそうだな?」
「そうでした……お願いします!お父様とお母様の仇を取って下さい!」
「仇だと?」
そしてイリーナはリウイに事情を話した。

「………そうか、いいだろう。その願い確かに聞き届けた。」
「本当ですか!?」
「そろそろこちらも本格的に動くべきか迷っていた所だ。ペテレーネを攫おうとした時点で奴らを野放しにした俺たちにも多少その責はあるしな……」
「ありがとうございます!!」
リウイの言葉にイリーナは頭を下げた。
「……ペテレーネ、客室の用意を。プリネ、お前はこの2人の相手をしてやれ。」
「承知しました、リウイ様。」
「はい、お父様。それでは失礼します、2人とも行きましょう。紹介したい方もいますし。」
「「は、はい!」」
「余も行くぞ、プリネ。」
ペテレーネは2人の滞在用の部屋を用意するために出て行き、プリネは姉妹を伴ってリフィアと共に出て行った。

「……それで、あのイリーナという少女、いかがなさいますか?」
「私もあの子の容姿を見たけど、雰囲気とか髪や瞳とかイリーナ様そっくりじゃないの?」
リフィア達が完全に離れたのを見計らってファーミシルスとカーリアンはリウイに聞いた。
「………………しばらくは様子見だ。ファーミシルス、お前はあの少女の産まれた年、家族を調べてくれ。」
「ハッ!」
「シェラ、例の事件、これ以上被害が出ぬよう夜の見回りの兵達を本国から呼び寄せさらに増やせ。犯人を見つけた際、前のように殺害でかまわないが、できれば生け捕りにするように指示をしてくれ。」
「御意。」
「リウイ様、件の組織はどのようにつぶしますか?」
ファーミシルスはリウイの命令を受けた後、今後の方針を聞いた。
「例の誘拐組織は一斉につぶす必要がある。そのためには彼女に協力の手紙を書かなければな……」
「手紙って誰に書くの?」
カーリアンはリウイの手紙の相手を聞いた。
「セリエルだ。彼女とメルの力は今回の事件の解決の鍵となる。」
「そっか、動物達に聞くのね。リウイ、一斉攻撃する時私も混ぜてね。子供達を攫うなんて趣味の悪いやつ、私は気にいらないもの。」
「ああ。」
イリーナの必死の願いを受けたメンフィル帝国は事件解決に向けてついに動き出した……! 
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