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アントリアン=プク

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第六章

「エストニアから来た人が出てな」
「ええ、優勝ね」
「そうしていくのよね」
「最近よく来るな、あっちの人達」
 そのエストニア人達がというのだ。
「すっかり馴染みになったな」
「もうね、すっかりね」
「そうなったわね」
「お隣同士だけれど」
「そうなったわね」
「ああ、だから今度の祭りもな」
 それもというのだ。
「またエストニアから来た人が催し独占だろ」
「我が国とエストニア急に仲良くなったわね」
「もう兄弟みたいね」
「それで悪い気はしないし」
「むしろお友達が増えたみたいでね」
「エストニアの可愛い娘がいれば」
 ヘルデンはこんなことも言った。
「是非彼女にしたいな」
「それでこの服着た我が国の女の子って言わないの?」
「スオミの」
「御前等見てると思わないさ」
 これが兄の妹達への返事だった。
「スオミ娘は癖が強いからな」
「あら、そう言うの」
「私達みたいな可愛い娘捕まえて」
「やっと見分けつく様になったのに」
「それでそう言うの?」
「その変な前向きさ見たらね」
 ここで友人達も言う。
「どうしてもね」
「そう見えるわよね」
「あんた達変に前向きだから」
「しかも実際見分けつきにくいし」
「それだとね」
「そう思えるわよ」
 こう二人に言うがだ、それでもだった。
 二人は全く悪びれずにだ、兄にも友人達にも言った。
「見分けつくようになったしいいじゃない」
「服の色でね」
「じゃあ何の問題もなし」
「しかも女が強いとそれだけ国も守れるじゃない」
「じゃあいいじゃない」
「それで何の問題もなしよ」
「本当に強いな、まあそれでもな」
 ヘルデンはあくまでタフな妹達に呆れながらもだ、それでも言ったのだった。
「祭りは楽しもうな」
「よし、それじゃあね」
「催しも出ましょう」
「エストニアの人達が出ても優勝を勝ち取る気持ちでね」
「楽しみましょう」
「ああ、ただ金は出さないからな」
 妹達に金をせびられるのは先読みして返した。
「御前等で何とかしろよ」
「やれやれね、ケチなお兄ちゃんね」
「器が小さいわ」
 二人はそんな兄にアメリカ人の様に肩を竦めさせて返した。
「そんなのじゃ立派な人になれないわよ」
「スオミを守れないわよ」
「そう言ったら底なしに食って遊ぶからな」 
 どちらも際限がないからだというのだ。
「前以て行っておくんだよ」
「本当にやれやれね」
「全く、私達の兄ながら情けないわ」
「けれどまあとにかく」
「折角服も着たしね」
「お祭り行きましょう」
「皆でね」
 完全に二人のペースでだった、オルガとロッタは兄も友人達も祭りに連れて行った、そして催しも楽しむのだった。色違いの民族衣装を着たうえで。


アントリアン=プク   完


                       2016・4・25 
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