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若返り

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2部分:第二章


第二章

「平和平和と言いながら」
「はい、そうですよね」
「やってることはゴロツキじゃ。正しいとか言いながらおかしな奴等と組んでいる」
「そうですよね。あんなのは昔はいませんでした」
「教師連中もじゃ。悪くなった」
 今度は学校への批判だった。
「あそこまで質の悪い教師はおらなかった」
「それに対して何か言えれば」
「いいのじゃがなあ」
「左様」
 そしてだった。ここで三人目の声がしてきた。
「その通り。その言葉しかと受け取った」
「んっ!?」
「誰ですか?」
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ」
 こんな言葉も出て来た。
「世を正さんとするその志見事」
「だから誰なのじゃ?」
「お金はありませんけれど」
「安心せよ、泥棒ではない」
 それは否定してきた。
「我は仏」
「仏!?」
「仏様ですか」
「名を不動という」
 二人の前に後ろに紅蓮の炎を背負った憤怒の顔の男が出て来た。服は粗末であり腰布がある程度だ。口からは牙が見えている。そして右手には剣がある。その彼が出て来たのであった。
「不動明王だ」
「お不動さんですか」
 お婆さんはその憤怒の仏の姿を見て声を聞いて述べた。
「またどうしてここに」
「元々ここに来るつもりだった」
 不動明王はこんなことも言ってきた。
「実はだ」
「実はですか」
「そう、夫婦で百歳まで生きることができた」
 まずはここから話すのであった。
「そして結婚して八十年じゃな」
「はい、そうです」
「その通りです」
「これは非常にめでたいことだ」
 それを認めての言葉であった。
「そしてだ。それで金でも幸せでも与えようと思っていたのだが」
「そういうものは別に」
「いりませんし」
 しかしお爺さんとお婆さんの返答は無欲なものだった。
「もう老い先短いですし」
「お金なんか必要なだけあればいいですし」
「幸せと災いは互いに同じ程度あるものですから」
「そういうものは別に」
「その無欲さもよし」
 明王は二人のそうしたところも気に入ったのであった。
「それではだ」
「それでは?」
「何かあるのですか?」
「ある。それでだ」
「それで?」
「何か?」
「そなた達の悪を憎む気持ちは十分にわかった」
 そして出て来た言葉はこれだった。
「さすればじゃ」
「さすればですか?」
「どうするのですか?」
「そなた等に力を与える」
 明王は二人に対して話した。
 
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