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龍が如く‐未来想う者たち‐

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冴島 大河
第一章 刑期中の悲報
  第二話 大阪

 
前書き
遅れましたすみません 

 
翌日、冴島は真島と共に新幹線に乗っていた。
何だか久しぶりの感覚に思わず違和感を覚えるが、隣の真島はそんな場合ではない様子。
窓の外を眺め、ぼーっとしていた。

真島にとって桐生とは、かけがえのないライバルであり、親友でもあった。
冴島とはまた違ったその存在のおかげで、東城会という堅苦しい場所にいても耐えることができた。
自由が大好きな真島にとって、縛られるものは苦手。
1度は退いた東城会も、桐生の頼みで戻っただけ。

そんな桐生が死んだ。
そんな訃報、信じられない。
信じたくない。

真島はまた、大きくため息をつく。


「元気無いやないか、兄弟」
「阿呆、桐生ちゃんが死んだって聞いて元気でおれるワケないやろ」


それもそうだ。
真島も冴島も、互いに同じ気持ちなのだ。


「ところで、真っ直ぐ神室町向かうんか?」
「いや、まず大阪行こう思っとんねん」
「大阪?何でまた?」
「……今の東城会を、少し話しとくべきやな」


冴島は勿論、何も知らない。
半年前に刑務所から1度出たとはいえ、その半年分何が起こったのかわからない。
1度教えておいた方がいいと考え、真島は声を潜ませる。


「今、東城会は内部分裂しとる。正確には、7代目の座を狙って幹部が数人分裂しとるだけやけど」
「7代目……ということは、6代目が今ピンチやっちゅう事か」


真島は小さく頷くが、冴島はどうも気掛かりな事があった。


「ほんなら、何でお前は6代目ほって桐生捜しとんや?」
「……もし生きとったら、絶対6代目殺すための餌にされる。桐生ちゃんに会いたいのも捜す理由やけど、ワシは6代目も護りたいんや」


その言葉に、思わず鼻で笑ってしまう。
ムッとした表情の真島に、冴島は首を横に振った。


「お前、変わったな」
「あぁ?」
「ちゃんと6代目護ろうとしてるとこが、なんか昔と変わったなぁって思ってな」


図星だったのか、真島はムスッとした顔でまた窓の外を眺める。
それと同時に、電車のアナウンスが流れた。
大阪に到着した、合図だ。


「降りるで、兄弟」
「お、冴島も本気になったか?」
「俺は最初から本気や。行くで」


さらにそこから乗り継ぎ、やってきたのは大阪の中心街である蒼天堀だった。
今は昼間だから分からないが、夜になればネオンが煌めき神室町に負けない活気を見せる。
夏休みの為、この時間でも余計人が多く感じた。


「幹部捜すったって、見当はついとんのか?」
「ワシを誰やと思っとんねん。そんなん、今から探すに決まっとるやろ!」


いつも通りの真島。
思わず冴島は、大きくため息ついた。
捜すと言っても、この街は広い。
大通りだけならまだしも裏路地も多く、観光客がよく迷子になる程。
やみくもに捜したって、見つかるのに何日かかるか。


「見当つけずに歩き回るなんて、無謀だぜ兄ちゃん達」


背後からの声に、2人は同時に振り返る。
見覚えの無い姿だった。
季節に合わない黒コートに、フードで見えない顔。
横目で真島を見ると、首を傾げている。
少なくとも、東城会の幹部では無い事が確かだった。


「誰や、あんた?」
「俺は檜山(ひやま)。安心しな、同業者じゃねぇ」


檜山と名乗った男は、両手を挙げて降伏ポーズをとる。
だが安心出来るはずもなく、冴島は身構えたまま動かなかった。


「信じられないって顔してんなぁ。飼い犬はやっぱりお利口だ」
「何やて?」
「東城会という飼い主に飼われてるお前らの事を言ってんだよ、ワン公」


冴島は思わず、檜山に掴みかかる。
胸ぐらを掴んだ瞬間、被っていたフードが剥がれ落ちた。

顔が露わになる。
右眼の下に小さな傷痕をつけた、見た事もない顔だった。
……冴島だけは。


「お、まえ……さが、わ……?」


振り返れば、真島が青い顔をして立っている。
まるで亡霊を見るかのような、恐怖に満ちた顔。
真島のそんな顔を見た事は、たった1度も無かった。

檜山は掴まれた胸ぐらを振りほどき、溜息混じりに息を漏らす。


「誰の事を言ってんだ?さっきも名乗ったが、俺は檜山……」
「それにしても、佐川はんに似過ぎや。ホンマの所、誰やアンタ!?」


明らかに真島の様子がおかしい。
普段は見せない顔、泳ぐ目。
それに真島の口から飛び出した、佐川という名前。
一体過去に、何があったのだろうか。
檜山は肩をすくめ、首を横に振った。


「悪いが、アンタの言う佐川は誰か知らねぇし、俺が佐川という訳でもない。俺は檜山で、ただの情報屋だ」


何も知らない冴島は、困惑する真島がわからないでいた。
だがこのまま黙っているのも、あまりよろしくない。


「俺のツレが勘違いしたようで、すまんな檜山はん」
「いやぁ別にいいんだよ」
「でも、聞かせてくれへんか?何で俺らに近付いた?」


コートのフードを被りなおし、檜山はニヤリと笑う。
その笑みは、思わず2人に悪寒が走る程奇妙で不気味だった。


「お前に興味があったんだよ、冴島大河」


急に飛び出した冴島の名に、2人は驚くことしか出来なかった。 
 

 
後書き
次回4/27公開 
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