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おぢばにおかえり

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第二十七話 デートじゃないのにその六

「先生が言ってましたよ」
「そうなの」
「ええ。何か変わった考えだなあって」
「そうかしら」
 変わってると言われると首を傾げてしまいます。
「私は別に」
「変わってないですか?」
「普通じゃないの?」
 本気でそう思います。
「これは私が天理教の家にいるから思えるのかも知れないけれど」
「天理教独特の考えですよ」
 阿波野君の反論です。
「これって」
「そうなるのね」
「ええ。僕聞いたことないですから」
「けれどあれでしょ?」
 阿波野君のことは本人からも聞いているのであえて問い返しました。
「阿波野君も信者さんのお家の子供なのよね」
「ええ、そうですけれど」
 返事は返っては来ました。
「一応は」
「一応はって三代目だったんじゃないの?」
「よく覚えてますね」
 阿波野君は私の言葉に目を少し丸くさせました。
「そんなことまで。僕も最近まで知らなかったのに」
「あれっ、そういえば」 
 自分でもここで何故か覚えていることに気付きました。
「何で覚えてるのよ、こんなこと」
「たまたまですか?」
「そうだと思うけれど」
 自分でもそれが不思議でならないです。ちなみに私はこの時お見舞いのドーナツを持っていました。駅前のミスタードーナツで買ったものです。阿波野君には果物を持ってもらっています。
「何でこんなこと覚えてるんだろ」
「ひょっとして僕のことが気になるとか?」
「悪い意味でね」
 このことについては自分でもはっきりとわかりました。
「気になって仕方ないわね、確かに」
「随分と言われるなあ、僕も」
「言われて当然でしょ、何処までいい加減なのよ」
「いい加減ですか?」
「自覚しなさい、自覚」
 少しきつく言いました。
「自分のそうしたくせ性分をね」
「自覚してますって、ちゃんと」
「全然そうは見えないけれど」
 ジロリ、と横にいる彼を見ての言葉です。丁度信号の手前です。ここを渡ればもう病院です。詰所から近いので行き来がとても楽です。
「お気楽なんだから」
「これでも物事を深刻に考えたりするんですけれどね」
「嘘は絶対に駄目よ」
 そうじゃなければ自分がわかっていないとしか思えない言葉でした。
「それはね。注意しておくわよ」
「本当なんですけれど」
「どうだか。とにかく」
「とにかく?」
「三代目なのね」
「実質ですけれどね」
 その辺りは少し曖昧な返事でした。
「そうなんですよ、実は」
「御祖父さんか御祖母さんからの代?」
「いえ、大叔母からです」
「大叔母さんから」
「うちの祖父ちゃんのお姉さんでして」
 結構離れた関係、いえ近いでしょうか。どうもその辺りは微妙に感じました。
「僕にとっては御祖母ちゃんみたいな人なんです」
「そうなの」
「凄く優しくて。いつも可愛がってもらってるんですよ」
「そんなになの」
「ええ。もう赤ん坊の頃から」
 阿波野君にもそんな親戚の人がいることが少し驚きですけれど。それでも納得できるものもあります。そうした親戚の人はよく見てきたからです。 
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