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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ソードアート・オンライン】編
  136 〝予選(トーナメント)〟


SIDE 《Teach》

総督府地下20階。そこが〝BoB〟参加プレイヤーの待機場所で、俺達4人の他にも数多(あまた)もの〝BoB〟参加プレイヤーが居る。……そのプレイヤー総数なんか、数えるにも一苦労になりそうであり──仮想世界とは云え、〝地下〟なので、その圧迫感たるや一入(ひとしお)のものである。

「ティーチ君とキリト君はどこのブロックだった?」

「俺は〝L〟だった。……キリトは?」

「俺は〝D〟ブロック」

ピーチからの問いになんとなし俺が答え、俺がキリトに質問を向ければキリトもまたなんと無しに答える。

……一オンラインゲーム──それも接続料だけでそれなりのお金を取られるオンラインゲームにしては、〝それなり〟の人数が〝BoB〟に参加していた。……しかしそのゲーム──〝【ガンゲイル・オンライン】〟と云うゲームの性質上からしたら〝一対一(サシ)〟だけで〝最強のガンナー〟を決めるのは(いささか)か盛り上がりに欠ける様で、予選で〝一対一〟の個人戦を──本戦ではバトルロイヤルで優勝者を決めると云ったような塩梅となっている。

トーナメントはA~Oのアルファベット──計15の数に分かたれていて、その上位2名までが〝本戦(バトルロイヤル)〟まで勝ち抜ける。……とどのつまり、〝BoB〟に()いてはは珍しい事に〝ふるい(バトルロイヤル)〟と〝本戦(トーナメント)〟が逆になっていると云う事である。

「壮観だなぁ…」

「そうね」

シノンとトーナメント表の前に並び立ち、〝予選〟のトーナメント表をざっと見流せば、その人数は軽く見つもっても400人近くもの人数が名を(つら)ねていた。……そこから〝BoBの本選〟へと駒を進められるのは各グループの上位2名──数にして30人であり、倍率にして10倍以上で──〝本戦〟への進出は狭き門となることは自明の理だろう。

(ほう…?)

試合──〝予選〟トーナメントの待機広場には沢山の人間が居るのは前述した通りではあるが、俺はその参加プレイヤー達を見ていると中々に面映(おもは)ゆい気持ちになる。

……俺の目についたのは〝情報戦〟を行っているプレイヤー達だった。……云うまでもなくここには沢山の〝BoB〟参加プレイヤーが居る──のにも(かか)わらず、〝既に武装を見せているプレイヤー達〟を見ては気分を高揚させる。

〝うっかり敵に情報を与える〟と云う行為は戦略的には下の下だが、その情報が〝敵に与えたい情報〟だったとしたら、それがどうだろう? ……それはもう立派な〝心理戦〟や〝情報戦〟と云う盤外戦術にもなりえるからだ。

……しかしながら〝心理戦や情報戦(それら)〟を意図的に行えているのは──瞳の奥の方に理知的な輝きがあるのはほんの一握り程度で、他の大半は慢心や虚栄心を映した〝自分はこんなレア武器がドロップしました〟──などとこれでもかと見せ付けている、シノンやピーチ曰くの〝愚物〟であった。

閑話休題。

……ちなみに俺達4人はシノンとピーチから聞いた定石(セオリー)通りに武器や防具は装備していない。〝どうせ試合開始前に装備を調えられるのなら、それまでは情報(カード)は伏せておこう〟──と云うワケだ。……この場所を見る限り、大勢のプレイヤーが主武器(メインアーム)を伏せているので、やはり〝メインは伏せる〟と云う選択肢が定石(セオリー)なのだろう。

また閑話休題。

その後は大した出来事も無く、各々の──行くべき場所に散っていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……っと…」

転移特有の一瞬だけの酩酊(めいてい)感の後、辺りの風景が指定されていた転移場所──コンクリートやらリノリウムやらかは判らない質感の石材で閉ざされていた空間からジメッとした生暖かい風が頬を撫でる様な空間に転移させられた事を自覚した。

「……えらく目に優しいステージだな…」

辺りを見渡す──までもなく視界端から端までが鬱蒼とした木々の緑色に、そう自らに対するガス抜きを兼ねつつ冗句を交えながらごちてはみるものの、〝常在戦場〟を心掛け──〝ここが既に戦場である〟と云う意識もちゃんと忘れない。

(……視られているな)

〝気配察知〟。……それはアインクラッドでのトップランカー達の殆どが使えていた〝システム外スキル〟で、方向は右斜め後ろ。距離にして大体300メートルと云った所に相手──トーナメント表に載っていた名前で呼ぶとしたら《Annsatsu》の存在を感知した。

……そんな〝気配察知〟ではあるが、俺の場合はそこに〝見聞色の覇気〟が加わるので、相手の位置すらも詳しく判ってしまう。

「……お、動くか?」

どうにもアンサツさんはスコープか何かでこちらを覗きながら戦略を立てていたようで、その作戦タイムも終わったらしくアンサツさんの〝気配〟がずんずんとこちらに寄って来ているのが察知出来る。現在進行形で。

(……こんなに急いで距離を詰めてくるって事は、狙撃手(スナイパー)って訳でも無さそうだ)

アンサツさんは狙撃点(シュートポイント)を探している様な素振りも無いので、一先ずはそう当たりを付けては俺もこれからの立ち回り方を考える事にした。……その為にもまずは脳内で現時点での俺の武器や地形に関する情報を脳内でピックアップしていく。

(武器は〝ライトセイバー〟≪スコーピオン≫に、後は幾つかの〝グレネード類〟か…)

「……まぁなるようになるか」

そう呟きながら〝ライトセイバー〟──正式名称“カゲミツG4(カラー:クリムゾンレッド)”を抜き放つ…と同時に〝弾道予測線に合わせて〝ライトセイバー〟を振り、俺の身体を貫かんと飛来してきた弾の全てを斬り伏せる〟。

……俺と同じく──否、下手したら俺以上の超人的な反応速度を持っているキリトと共に開発した、〝システム外スキル〟──〝銃弾斬り〟。シノンやピーチ曰くの〝理論上可能だがまず試す様なやつが居ない浪漫(トンデモ)技〟であるらしい。

(……今みたいに銃口が見えてるなら十分イケるハズなんだがなぁ…)

そんなこんなで幾らか銃弾を斬り落としていると、アンサツさんからの銃弾の嵐が止む。一瞬だけ撤退したかと思ったが、改めてアンサツさんの気配を探ってみれば近くの樹の後ろに──俺から見えない位置に身体を、息を潜めているのが判る。

……息を潜めてその場から動かない事から察するに、どうやら、アンサツさんはここで俺を()す事にしたらしい。

(そもそもなんですぐに特定されたか──ああ、〝あれ〟か)

アンサツさんの居る方向──またはアンサツさんが来たと思われる方向をアンサツさんから意識を逸らさないようにしながら目を一瞬だけ上の方向に動かせば、そんな疑問もすぐに氷解する。

先ほど〝目に優しいステージだな〟──なんて冗談を溢した通り、このステージは〝緑色〟一色である。……しかし真っ平らな平地ではなかった様で、なだらかな勾配(こうばい)もあった。

アンサツさんの居る方向を見れば、緩やかな上り坂気味になっていて、〝地の利〟で云えばアンサツさんが有利だったのである。……これでアンサツさんが狙撃手(スナイパー)だったのなら、殺気で狙撃のタイミングを感知しながらの──それなりに厳しい戦闘になっていただろう。

……今となっては〝仮定(たられば)〟の話でしかないが。

閑話休題。

アンサツさんは、リロードが終了した様で、何時でも銃撃出来る様にと銃口をこちらに向けてきた。

(さて戦法は決まった)

内心そうごちては腰元にマウントしてあるグレネードに手を掛ける。

「……ふんっ、ぬらばぁっ!!」

……そして、そのグレネードをアンサツさんが居る場所に思いっきり──それこそ、思わず〝RISE(ライズ)〟を発動させるつもりで天高くブン投げる。……そんな俺のいきなりの動作にアンサツさんは驚愕したのか、銃撃を止めた。

……もの凄い勢いで上昇しているグレネード見ては俺から目を外し──〝空白〟を作ってしまう。

(今…っ!)

一瞬の〝空白〟。……しかし俺からしたら、その〝一瞬〟だけで行動を起こすのは難しくはなかった。

「疾っ!」

未だに天高く上昇していっているグレネードを見上げているアンサツさん。……そう隙を作る様に仕向けた俺がそんなアンサツさんの隙を見逃すはずも無く、腰を屈めてはアンサツさんからの射撃に対して俺の身体の面積を狭め──〝敏捷〟寄りのステータスに身を任せ一気にアンサツさんの元に近付き、(あらかじ)め抜刀? しておいた〝ライトセイバー〟でアンサツさんを腰の辺りで断割してやる。

「……っと」

消えるアンサツさんを見ながら、先ほど投げた──狙い目通りに降ってきたグレネードを〝手で〟キャッチする。……先ほど俺が投げたグレネードは安全ピンを抜いていなかったので爆発はしない。……とどのつまりグレネードは陽動だったと云うわけだ。

(……〝暗殺(アンサツ)〟と云うならなんで狙撃手(スナイパー)にならなかったんだか…)

俺を讃えるかの如くでかでかと示されている勝利者(ウィナー)表示を見ながらそんな益体もない事を考えていると、またもや最早〝お馴染み〟と云っていい──転移特有の浮遊感が俺を襲った。……これが〝BoB予選トーナメント〟初戦の一幕だった。

……そんなこんなで、無事平穏──とはいかず、それなりのトラブルはあったものの、〝BoB〟初心者である俺とキリトは──そして、〝BoB〟経験者であるピーチ、シノンも〝本選(バトルロイヤル)〟にまで駒を進める成功する。

SIDE END 
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