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剣士さんとドラクエⅧ

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66話 家系

 流石にサザンビークに到着した初日は既に夜といっても良い夕方ギリギリだったし、すぐに宿をとって英気を養うことに潰した。

 エルトは爆睡、ヤンガスも爆睡、私も爆睡、ゼシカは少しだけ買い物してたみたいで、ククールもずっと寝てたらしいね。生きてるか不安になったって宿の人に笑いながら言われたぐらいだから相当だよ……晩ご飯食べるときには起きたけど、見事なまでに無言で平らげたらマミーみたいな重い足取りで部屋に帰って寝たからなぁ……そりゃそう思われても仕方ない。

「……まだ眠い?」
「そりゃ、ね……ふあぁ……」
「……エルトってもしかして寝起き悪いの?」
「悪いって言う程じゃないけどそんなに良くはないかな、昔から」
「そういうトウカはとても良さそうね」

 毎日汗を流して元気に運動していればいつでもスッキリ爽快、じゃないの?私だって時には寝苦しいこともあるけど、身体は何時も元気いっぱいだから、自ずと寝起きも良くなる。健康的なら別にそこまで眠くなることもないし……エルトって実は睡眠不足だったりして。一応、普段から私より寝てるはずなんだけどなあ……。そういえば、人によって取らなきゃいけない睡眠時間は異なるって前世で聞いたことがあるな。それじゃあ仕方ないのかな?

 閑話休題。

「さあて……流石にサザンビーク王に謁見しようというのに、その格好で行くつもりはないよね?エルト」
「……寝ぐせは直すさ」
「井戸はあっちだよ」

 眠そうな顔はともあれ、あちこちぴょんぴょんと髪の毛の突っ立っている様子はちょっといただけないよね……。バンダナで誤魔化そうったって甘いよ。私の好きなマシュマロにホイップクリームと砂糖をぶちまけて蜂蜜をかけたみたいに。

 ……ん、私?そこんところはばっちり。同じくらい眠そうなククールとかゼシカもちゃんとしてるんだから、頑張ってほしいな……。ヤンガス?彼は彼なりに何時もどおりにしているんだからいいんじゃないかな。扱い適当だって?そんなことないさ……それに、山賊スタイルに良し悪しはないと、思う。私にはレベルが高すぎてフォローできない。

「行ったか……。で、あんまりやりたいことじゃないんだけどさ……先に言っとこうかと思って」
「ん、なんだ?」
「いや……アスカンタではやってないから、みんな戸惑うと思うんだけど……。前提として、国宝を譲れってぽっと出の旅人にいきなり言われてさ……君たちがクラビウス王なら譲るかい?」
「……あーー、アスカンタでは先に恩を売っていたからな……」
「常識的に考えて、どこの馬の骨ともしれん奴に俺のむす……うちの国宝をやれるか!ってなると思ってね……」
「……ねぇ、トウカ。あなた何言いかけたの?」
「どこの馬の骨ともしれん奴に俺の娘はやれない」
「真理でがすね……」

 痛い、痛いって、ゼシカ。足をそんなに激しく踏まないでよ。ちょっと空気を和らげようと思ってふざけただけじゃないか。わざわざ言い直さなくても良かったって?んな、理不尽過ぎるよ……。

「……こほん。でも、相手をある程度分かっているなら、話も違ってくるよね?」
「まぁ、そうよね」
「俺の聖堂騎士団としての地位は使えないのは分かってるだろうな?……ゼシカの出身でも使うのか?」
「アルバート家は大陸の違う国に知られている程の家ではないわよ……」
「そうなのか?……サザンビークの事情も分からないのに、そんなことは可能か、トウカ?」
「うん。とりあえず身分証明には充分かな……と思いたいね。私の地位を、権力をね……無理矢理、使わせてもらうよ。心底やりたくなかった方法だけど、相手の不信感を削げるならいくらでも使うさ……」

 あ。今まさに思い出したかのようにゼシカが手を打つ。

「……まぁ、いきなりやって来た奴が『私はトウカ=モノトリアです』なんて行っても信じ難いから、不本意だけどサザンビークのヴェーヴィット家当主に話を通すけど。少しだけ協力してもらわないと……あぁ行きたくないなぁ……あいついるだろ……」
「……は?」
「ん、どうしたのククール?」
「ト、トウカお前モノトリアだったのか?」
「あぁ……言ってなかったっけ?ゼシカには言ったから言ったつもりだったよ……ボクはご存知、トウカ。本名トウカ=モノトリア……モノトリア家長子さ」

 うっかりしてたな……すっかりしてたつもりだったのにな。私のことをなんだと思ってたかは分からないけど、モノトリア家は……有名、だからなあ。取り敢えずトロデーンではその名前を知らない人はいなかったし、前にサザンビークに来た時は……義父上と義母上の威光だろうけど、丁寧な扱いをされたし。そりゃびっくりするよね……。

「……、あぁ、モノトリアの騎士か」
「それ、アンタちょっと気づくの遅過ぎないかしら」
「ただいま……って、何の話してるの?」

 みんなでたむろしている宿の部屋に戻ってきたエルトがきょとんとしている。……髪の毛、直せてよかったね。この前は直したとか言いながら直ってなかったからちょっと心配してたんだ。

「トウカの兄貴のすごさを知らなかったククールが戸惑っているだけでがすよ」
「……そう」
「聞いてよエルト。ボク、うっかり家名教えるの忘れてたんだ」
「……、そう。知ってしまったからにはこれまで以上に胃薬が必要だね……」
「おい、エルト」
「……家族ぐるみで僕に気軽に接してくれるほど優しい人達だから要らないか……」

 ……、その話は今から乗り込むモノトリアの分家、ヴェーヴィット家の「あいつ」だけは当てはまらないからしないほうがいいような。あいつ、無駄に魔力が高いから結局罰則の魔法効かなかったんだよね……頑張って義叔父上と義叔母上が「抑えて」くださってるからまだ行く気するだけで。

 ちなみに、モノトリアを名乗ることを許さなくなっただけで、義叔父上と義叔母上は「名前の継承権」をなくしただけでそれなりに交流があるよ。義母上の実の妹が義叔母上だし。まぁもっぱら手紙ばっかりみたいだけど。名前の継承ってすごいよ。私、魔法が使えないのに魔法みたいなことが出来るんだから……。私自身に魔力はなくても流れてる血は本物の「モノトリア」だからね。……ご先祖様は自分の血にどんな魔法をかけたんだろう……。何十代か何百代かしらないけどよくもまあ、「強制力」……効力が続いてるもんだよ。

「ともあれ、ちょっとお城に行く前に行きたいんだよね……ヴェーヴィットに」
「……まあ、着いて行くけど」
「おい、そっちこそ話を通さなくて大丈夫なのか?」
「うん、平気」

 平気じゃないのは向こうの気分と私の気分だけだからいいとする。言わないけど。

 ……もし、「あいつ」に魔法で殺されそうになったら容赦なく「強制力」を行使するけど、まあ……構わないよね。権力の次に使いたくない方法だけど。

  
 

 
後書き
魔法がある世界ならそれぐらい……。

「強制力」について簡単にいえば一族の中で序列を作って魔法で登録して、上の人間の「命令」に従うしかない……みたいな感じです。トウカが行使できるのは使用条件に魔力の有無がないからです。命令しなかったら強制力はないので普段は使いません。

暴走するライティアがトロデーンに襲撃してこなかったのもそれが原因です。「トロデーンに行くな」ですから闇の遺跡には来てますが。命令の甘さと監視の低さは仕様です。因みに物理的にトウカはライティアを素手で封殺出来ます。魔法は使わせなければいいのです。 
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