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異世界にて、地球兵器で戦えり

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第五話 帝国以外の敵と接触する

アカツキ帝国は、エルメス占領後における基地化やインフラ整備を整えている。周辺の戦略上に有効的な村や町を占領しても、直ぐに次の行動は起こせなかった。そのため未だに帝国上層部や皇帝モルトを含めて主戦派が現在の帝国の主流であった。この遅い侵攻行動に「アカツキ帝国は、兵力がまともに揃っていない。こちらが何度も攻勢を仕掛ければ、奴らは撤退するだろう」との結論を出したのだ。

だが、実際にそれは間違いでもなかった。アカツキ帝国は帝国の支配地域を全て占領するだけの兵力を、送り込むだけの能力は今の所、存在しないのだ。何しろ未だにアカツキ帝国の隣に存在するアビス大陸が、戦乱の世が終焉に向かって各国とも復興に力を入れているが、それでも情勢が不安定であるのだ。未だに滅びた列強の貴族残党軍や人間教によるテロ組織の力が無視できない状況であり、これらの武装勢力の駆除や、未だに打倒アカツキ帝国を諦めていない人間至上主義国家も存在するので、そんな亜人国家の友好国の各国に対する援助も下げるわけにもいかないので、遠征する人数にも限りがあるからだ。

兵力不足とまではいかないが、アカツキ帝国が最終占領地点をイタリカに定めている理由も、帝国の帝都から比較的に近く、イタリカの地域が帝国領土の中でも比較的珍しい人間と亜人との共存共栄が上手くいっている地域であるうえに、ここを前線基地として定めているからだ。そしてインフラ整備を整えた土地の、民事的、国事的、軍事的に、どれだけのメリットがある事を、まだ帝国は知らない。

そのような理由があるため、現在も攻勢を仕掛けないでいる。それを知らない帝国は、未だに主戦派が主流となって無謀な攻勢計画を練っているのだった。


ーーー。

「しつこいんだよ。もう四度目だぜ」

エルメス周辺の野戦基地の一つである戦いが行われていた。アカツキ帝国討伐隊を編成して何度目かの構成を仕掛けた帝国軍だが、勇猛果敢に突撃を仕掛けてもアカツキ帝国の砲兵科の70式榴弾砲の砲撃と、機甲科の1式戦車から発射される戦車砲からの砲撃の雨のような砲撃で、次々と帝国兵は吹き飛ばされていく。例え砲撃の嵐を抜けても、次は何度に渡って張り巡らされている有刺鉄線により侵攻を妨げられ、今度は76式汎用機関銃から発射される7・62mmNATO弾やM2重機関銃の12・7mmNATO弾や68式突撃銃の6・8mmSPC弾が帝国兵の体をハチの巣にしていく。先行していたオークもゴブリンは真っ先に全滅して、その後ろに待機している人間の兵士達も関係なく殺されていく。

「いい加減にしろよな」

アカツキ帝国陸軍兵士の一人は、無謀な突撃を繰り返す帝国兵士に対して悪態をつく。こんな事を続けても無駄に被害が出る事だって、分かりきっているだろうにと心の中で愚痴を零す。そんな若い兵士の気持ちを察している古参兵士は、言葉をかける。

「嫌とは言えないよな。貴族様の命令は絶対だし、逆らって剣で殺されるか、命令を聞いて銃弾の雨でハチの巣にされるか。どっちにしろ死んでこいって事だな」

「俺、アカツキ帝国の生まれでよかったと思いますよ。」

「俺もだ」

あんな銃弾の雨の中で、生身で突撃するなんて冗談じゃないと思う。だからといって敵に同情する理由もない。彼らからすれば身勝手な理由で戦争を仕掛けたのは帝国でもあるし、俺達は正当な理由で戦争をしているのだと思う事にしたのだ。

それから一時間後。敵の攻勢は収まり、アカツキ帝国の勝利で終わった。そこには無残に敗れた敵兵士達の死体が転がっていた。比較的綺麗に原型を留めている死体は殆どなく、殆どが砲撃の衝撃で腕や体が吹き飛ばされて肉片となっていたり、腕や首だけのものもあったりなど、無残な光景の死体の山が築かれていた。


「大尉」

「いうな」

戦死した敵兵士の死体処理に駆り出されているのは、島田義弘 陸軍大尉である。趣味はアニメ鑑賞と漫画といったインドアな趣味の陸軍大尉で今年で35歳となる。三年ほど前に結婚して、今年になって子供が生まれ、少しお金を増やしたいという事もあり、ファルマート大陸遠征では特別手当が出るので、今回の遠征に参加したのである。

「何度も思いますけど、この世界の連中は本当に狂気じみてますよね」

「まあな。気持ちは分からなくもない」

部下である清水 孝 陸軍伍長。隊長の島田と同じ趣味であると同時に上下関係をあまり気にしない島田の気質もあり、親しく喋っている。

「早いとこ仕事を終わらせるぞ」

「了解です」

装備されている甲冑や剣や槍といった武器や防具に、個人的な持ち物を分けた後に、埋葬地に死体を持っていく。比較的綺麗な死体は埋葬で済まされるが、殆ど原型を留めていない死体は、火葬で燃やしていた。いくら敵対しているとはいえ、死体の片づけなどやりたくもないが、死体をそのままにしておく事も出来ないので、仕方ないといった感じに死体を片付けていく。

「ん?」

死体とは思えない綺麗な状態で残っていた女性が仰向けで倒れていた。ショートヘアーの銀髪の綺麗な女傑風の女性だ。

「かわいそうですね。戦争がなかれば、良い人生も送れたでしょうね」

「運ぶぞ清水」

「了解です隊長」

そして女性の体を持ち上げようと思った時であった。

「う……」

微かに声が聞こえた。

「清水。何か言ったか?」

「いえ、自分は何も」

再び銀髪女性を見る。そして、女性の心臓当たりの胸に耳を置いて確認する島田。心臓がドクンドクンと鳴る音が聞こえたのだ。

「生きている!」

「隊長!」

「ああ、衛生兵を呼んで来い!」

「はい!」

島田は臨時に建設された野戦病院に向かう。そして医師に見せると、衝撃波で頭を強く打ちつけ、脳震盪を起こしただけで命に別条がないと判断され、打撲や捻挫もあるが、骨には異常は見つからなかったそうだ。

「あれだけの砲撃と銃弾の雨でよく生きてたな」

「凄く運の良い女性でしたね」

食堂にて晩飯を食べながら、生き残った女性について話し合う島田と清水の二人。そのとき、一人の士官が声をかけてきた。

食堂では今日の生存者についての話で持ち切りであった。

「だいぶ噂になってるな」

「あれだけの攻撃の中を脳震盪と打撲と捻挫だけで済まされて生きているんですから、それは噂にもなりますよ」

その翌日の昼に生存者の銀髪女性が目を覚ましたので、第一発見者の島田も事情聴取に参加する事になった。数名の士官に囲まれながら事情聴取は始まった。

「ファルマート大陸遠征部隊、アカツキ帝国陸軍大尉の島田義弘」

「私は、ブルーム王国所属のダルト・フ・ブルーム王の四女のアナだ」

お互いに自己紹介をする。ちなみに言語が、アビス大陸に使われていた言語に似ていたので、そのため理解は直ぐに出来るようになっている。

「何故他国の軍が我がアカツキ帝国に攻撃を仕掛けた?」

「我がブルーム王国は帝国の属国だ。帝国の要望を断る事は出来ない。」

そして事情聴取は続く。ブルーム王国は南西に位置する小国の一つで、今回の討伐隊に帝国の命令で指揮系統に組み込まれて戦う羽目になったとの事だ。

「そして、帝国軍に組み込まれた私達ブルーム王国軍は、貴様らの攻撃で帝国軍と同様に全滅した。」

淡々と喋っているが、その表情は苦々しい表情であった。

「どうして王族の貴女が戦っていた?」

「私は側室の子供だ。故に、王位継承も低い私は必然的に軍人となるべく育てられた。だが、軍人となるべく育てらた理由は、王族に男性が一人しか生まれなったのもある」

まさか他国の王族が捕虜となるとは思わなったようだ。話を聞く限りに、島田以外の士官達の顔は苦い表情だ。厄介な人間が捕虜になってしまったと。

「現在は、我々は帝国と戦争中です。帝国に組しています貴方を捕虜として扱います。ですが、王族ですので士官待遇の扱いをさせていただきます」

「奴隷として扱わないのか?」

「我が国は、そんな事はしません」

「変わっているな。いくら側室の女といっても、王族を奴隷とすれば、そちらの国にも箔がつくだろう」

「そんな恥知らずな行為は、我が国の元帥閣下は行いません」

そこに、事情聴取に参加していた陸軍士官が断言するように呟く。それから事情聴取終了後は、捕虜であるが、相手は小国ながらも王族であるため士官部屋を用意させた。その後は、外出も第一発見者の島田と清水の同行ならば、しても良いとの事になった。これを聞いたアナは……

「同じ帝国でも、貴殿達は随分と違うのだな。貴殿達の温情に感謝する」


こうして他国の王族の四女を捕虜として捕らえたのであった。





 
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