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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)

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第20話 共闘

ジャッジメント本部でサソリに抱きつかれ、付き合えと言われたら経験豊富(お姉様との妄想)の白井には、もはや恋愛少女コミックのような展開に心臓がバッキバキとなる。
「つ、つつつつ付き合うってどういう事ですの?!」
机に置いてあったティッシュの箱を動揺からか手に掴み、哀れになる程に白井の握力でキリキリ握りつぶされている。
「そのままだろ」
『他に何か』と言いたげな感じで首を傾げる。

はいいいいいー!?
そのまま!!?
無難に翻訳しても恋人関係が成立しちゃいますよ
恋愛コミックだって、もう少し道筋を踏んでから攻略されてますのに。
大体の王道パターン
1.出逢った時、お互いの印象は最悪
2.不良に絡まれた時に男性が助けに入る
3.ヒロインが流す涙を男性が優しく慰める
4.そして、男性からの告白で付き合い
ハッピーエンド

...............ん?
お待ちなって
あれ?
あれ?
今の所、全部当てはまっています?

白井とサソリ
1.身体が人間になったという妙に痛いサソリの発言に呆れる(第一印象は最悪)
2.レベルアッパー事件により能力の底上げに成功した不良に暴力を振るわれ、サソリが助けに入る(不良から助けられる)
3.サソリの幻術に涙を流す。サソリから困りながらも対応していた(ヒロインを慰める男性)
4.サソリから「付き合え」の大胆告白(←今ココ)

この後
ハッピィィエンドゥゥゥ!?

握りつぶされたティッシュ箱が直方体から球形に近くなった。
全てを燃やし尽くしそうになる程に体温が上がっていく。
「まだお互いに知りませんのに!!そ、そんな事はまだ早い気が」
サソリは、妙にハイテンションになっている白井に首をゴキゴキ鳴らしながら
「やるか、やらねえかはっきりしてくれねぇーかな」

やるか、やらないか!?
もう次のステップですの?

「付き合いだけでは飽き足らず、そんな事まで!やはり、私の身体が目的ですわね!」
ギュッと白井は自分で自分の身体を抱き締めた。
「悪い......お前の言っている事が半分も理解出来ねえ」
そもそも噛み合ってない。
まあ、でも白井の人傀儡を造りたいから「身体が目的」という部分は強ち間違いでもないが。

「木山の所に行くからお前も付き合えって意味だ」
「あら、そうでしたの」
「何と間違えたんだよ」
「それは、ゴニョゴニョ......」

言えません
妄想でサソリと結婚して幸せな家庭を築き、二人の赤毛の子供と一緒に暮らしている所まで辿りついてしまったことなんて......
言える訳がありません

「で、でも」
「どうした。身体がキツイか?」
「いえ、お姉様の事を考えますと......サソリにあれだけの事を言われましたし」
「あー、そんな強く怒ったつもりじゃなかったんだが......」
「......涙を流していた気がしますの......」
「心弱過ぎだろ。分かった、オレが言い過ぎた」

苦手だな。
どうすれば良いか分からん。

「もう、行きますの?」
白井がサソリに質問してみる。
サソリは、身体を少しだけ揺らすと
「いや、分身が戻って来てからだな」
「ぶ、分身ですの?」

あの時に見せてもらった変な能力。
触った瞬間に消えてしまった頼りない分身に首を傾げた。

「初春に渡した砂鉄に仕込んだのは、オレの砂分身だ。初春に何かあったら直ぐさま出て戦うようにしてある」

「すぐ消えてしまうことは?」

「かなりの攻撃を受けないと消えないようにしてあるから、並の相手なら充分に殺り合える。その間、お前は木山の過去の洗い出しが出来るか?」

「多少時間が貰えれば出来ますわ」

「これほどの事をやるのは、何か訳がある。それを探っておいてくれ」

それはサソリにも言えることだった。
人傀儡を作ったことも、人を殺めたのも少年期に起きた両親の死。
サソリにも心の闇が引き金だ。

両親を殺された過去の闇が全て起因していると過言ではない。
傀儡にのめり込んだのも、両親の愛情を取り戻すためだった。
「何かがある」

サソリは確信したように呟くと白井が起動したパソコン画面を凝視した。

******

木山を撹乱する作戦の元で初春へと変化したサソリは、木山からの最も相性が悪い電撃を喰らい、その場に倒れこんだ。
「サソリさん!」
「く、来るな!
初春が動こうするが、サソリ初春は出来るだけ大きな声で初春を止めた。
ボロボロの初春の制服にビリリと電流が走り、サソリの身体へ未だにダメージを与えているのが分かる。
「惜しかったな。何を企んでいたのか知らないが......良い手だった」
木山が倒れているサソリ初春を見下ろしながら拍手した。
サソリは、痺れる手を奮い立たせて、ゆっくり印を結んだ。

頼む
まだ解けるな

サソリは、地面に微量のチャクラを走らせるが仕掛けた罠が発動しない。
雷遁で掻き消されたか......

「不発のようだな。ということは打つ手が無くなったと解釈して良いかな?」

そこへ、御坂がタクシーを降りて現場へと走ってやってきた。
「一体何が?」
御坂の視界には、心配そうに見ている初春と木山の近くで動けないで倒れている初春が映った。
「えっ?えっ?何で初春さんが二人?」
「サソリさんです!私を庇ってしまって」
「さ、サソリ?」
信じられない物でも見るように御坂の瞳孔が拡がった。
「何でアンタが居るのよ!?黒子と一緒に居たんじゃ」
サソリ初春は、痺れる身体で動ける分だけもがいている。

「なるほど......御坂美琴か。赤髪君の時間稼ぎと云った所か」
「えっ!?」
「この赤髪君は、彼女を守るために結構無茶をしていたからね」
「!?」
御坂は、苦しそうに身体を上げようとしているサソリを見て、哀しさと罪悪感が強くなる。
「ご、ゴメン......サソリ。あたしがもっと早く来ていれば、こんな事には」
途切れ途切れに言葉を絞り出すように御坂は言った。

何が守るよ
結局、サソリに助けられてばかりじゃない

砂が零れ出すと初春の姿から普段のサソリの姿へと変わった。
御坂と初春を一瞥すると口元だけを動かして嘲笑に近い笑みを向ける。
サソリの砂の身体が崩れ出して、崩壊が末端から中枢に近づいていった。

「次は本体で相手をしてやる」

そう木山に言うとサソリの身体は砂へと変わり、軽く山盛りとなっており、風で次から次へと流されて散在した。

「砂の分身体か......興味深いな」
木山がサソリだった砂の行方を眺めながら言った。
「あたしの友人に手を出しておいて、ただで済むと思わないでね」
「超能力者(レベル5)か......さすがの君も私のような相手と戦った事はあるまい。君に一万の脳を統べる私を止められるかな」

御坂はかつてない程未知数の木山を相手に汗をかく。
「初春さんは下がってて」
「は、はい」
初春の前に出て、御坂が初春の盾となる。
その姿は先程のサソリと重なった。
「もう、君は狙わないよ。レベル5に私の能力がどれほど通用するか試したいものだ」

狙う?
初春さんを?

「アンタまさか......!」
御坂が拳を握りしめた。
「赤髪君に予想外に粘られてね。倒すためにその子に狙いを付けたんだよ」

じゃあ、サソリはずっと初春さんを護りながら戦っていたってこと。
そんな人質紛いの事をされていて......
御坂には、倒れているサソリの姿が想起された。
「ごめんなさい......私がしっかりしていればサソリさんは」
御坂は、今にも泣きそうな初春の頭に手を乗せた。
「大丈夫よ。サソリは分身だったんだし。今頃ケロッとしているわよ」
「御坂さん」
「さあ、早く行って。またみんなでサソリの所に行きましょう」
「はい!」
初春を後方へと逃すと御坂は、木山とは比べものにならない大電流を走らせる。

間近で見ると私と比べものにならないな
赤髪君には、電撃に弱いことが倒す糸口になったが。
御坂美琴はどのように動くべきか

木山との戦闘が始まり、御坂は牽制と言わんばかりに頭の先から電撃を飛ばしていくが。
木山の周囲に遮蔽されるように弾かれた。
能力を使って電撃を躱したらしい。
木山は、アンチスキルの車から漏れ出しているガソリンに発火能力で火を付けると御坂へと一気に火柱を浴びせるために繰り出した。
御坂は、横移動で火柱を躱すと
「本当に能力を使えるのね。しかも......『多重能力者(デュアルスキル)』!」
白井から受け取っていた木山の能力についての説明。
半信半疑だったが、目の前に実際に居るとなると事実として受け入れるしかない。

「その呼称は適切ではないな。私の能力は理論上不可能とされるアレとは方式が違う」
腕からレーザーを出すと御坂に向けて飛ばした。
「言うなれば『多才能力者(マルチスキル)』だ」
御坂は、身体を傾けてレーザーをやり過ごすと木山にもう一度電撃を放つ。
「呼び方なんかどうでもいいわよ。こっちがやる事に変わりはないんだから」

レーザーを出している最中。
電撃を弾けるか?

そう考えての電撃だったが、木山は涼しい顔で遮蔽し、電撃を道路上へと流す。
「!?」
「どうした?複数の能力を同時に使う事はできないと踏んでいたのかね?」

木山の立っている高速道路上に赤い炎が出現し、衝撃波を飛ばした。
御坂の足元まで来ると道路に大きなヒビが入り、高速道路が陥没し御坂と木山は下へと落下していった。
御坂は、すぐさま足先に磁力を展開し、鉄橋に垂直に立った。

すると、御坂の周囲に黒い砂を中心に砂が集まり出してフワフワとした砂の塊を発生した。
「これって?!」
サソリに渡された砂鉄だ。
御坂に加わった衝撃から周囲に自動で広がり、御坂を護る盾となる。

木山は水滴を集めて御坂へと念力を使って投げつけるが
砂の盾が自動で動いて御坂への攻撃を防ぐ。
御坂が電撃を飛ばすと砂は散り散りに消えて邪魔をしない。
あくまで御坂を守るための盾だ。

ほう、電撃の能力にはあんな使い方があるのか......

電撃はやはり遮蔽されて木山を中心に弾かれる。
「拍子抜けだな超能力者というのは。この程度のものなのか。
「まさか!電撃を攻略したくらいで勝ったと思うなっ!!」
御坂は鉄橋から一枚の鉄板を取り出して木山へと磁力の反発力で木山へ飛ばした。
「ふむ」
木山は腕から赤い色味を帯びた光を放つレーザーを伸ばし、投げ付けられた鉄板をはたき落とした。
「アリ?」
そして指からレーザーを放出すると御坂が立っている鉄橋の支柱を下部を焼き尽くした。
一瞬で物体が消失し、御坂の立っている鉄橋から鉄板が剥がれて地面へと落下していく。
激突せずにサソリの砂がフワフワと御坂を包んで衝撃を吸収した。

「もう止めにしないか?」
木山に取っては、データ採取が終わったも同然だった。
三度、同じ電撃を放ち、全て同じように弾かれてしまう御坂に軽く興味が無くなる。
砂鉄の特殊な使い方を知ることが百歩譲っての収穫に過ぎない。

これならば、先程に激闘を繰り広げた
赤髪君の方が非常に研究的には面白い戦いだった。
砂や糸などのありふれた能力を操り、独自の応用で追い詰めてきた赤髪君。
彼の底知れぬ、実力に木山は思い出し身震いをする。
電撃が苦手だと分からなければ、どんな手で来ただろうか?

「私はある事柄について調べたいだけなんだ。それが終われば全員解放する。誰も犠牲にはしない......」

「ふざけんじゃないわよっ!!」
御坂は自分で意識もせずに大きな声を出していた。
初春さんを狙って
サソリに人質まがいの卑怯な手段で追い詰めて
能力がない事で悩んでいた佐天さんを持ち上げて、突き落とす真似をしておいて!

「誰も犠牲にはしない?アンタの身勝手な目的にあれだけの人間を巻き込んでおいて人の心をもて遊んで......こんな事をしないと成り立たない研究なんてロクなもんじゃない!!そんなモノ見過ごせるわけないでしょうがっ!!!」

「ハー、やれやれ、レベル5とはいえ所詮は世間知らずのお嬢様か」
木山は、青いが純粋に真っ直ぐな御坂の言葉にため息をついた。
何か得るには、代わりに自分の何かを諦めなくてはならない。
その数が多い程、大人になる事だ。

「アンタにだけは言われたくなかった台詞だわ」
「学園都市で君達が受けている『能力開発』、アレが安全で人道的なものだと君は思っているのか?」

「!?」

「学園都市は『能力』に関する重大な何かを我々から隠している。学園都市の教師達はそれを知らずに一八○万人にも及ぶ学生達の脳を日々開発しているんだ。それがどんならに危険な事かわかるだろう?」

「......なかなか面白そうな話じゃない。アンタを捕まえた後でゆっくりと調べさせてもらうわっ!!」

御坂が地中にある砂鉄を集めて、鋭利に尖らせると一斉に木山へと攻撃した。
木山は微動だにせず、念力で瓦礫を持ち上げて鋭利になった砂鉄を受け止めていく。

「調べる......か。それもいいだろう」
そして誰にも聞こえないような声で
「君が関わっているのも少なくはないしな......」
と呟いた。
「だが......それもここから無事に帰れたらの話だ」
アルミ缶に触れて投げ上げた。
御坂は、見覚えのある缶に気づく。
エネルギーが充填し大規模な火炎を出しながら爆発した。

咄嗟に金属のガラクタを集めて、爆発の衝撃を躱すが、砂鉄の盾がまだしても展開していた。

サソリの砂鉄にさっきから助けられてばかり

煙が辺りに立ち込める中、木山の目の前に突如として黒髪の人形が出現し、腕を突き出した。
「!?」
木山は、反射的に後方へ飛び移ると改めて人形を見る。

「あれって......」
御坂も金属のガラクタの中から人形を見上げた。
佐天さんの部屋にあった人形?

人形は宙に居て揺れると頭を突き出して前傾姿勢になると木山との距離を詰めた。
そして腕を振り上げると、多数の刃物をのぞかせる。
木山は腕を前に出して、炎を出す。
刃物と炎がぶつかりあって火の粉となり御坂と木山の周囲に降り注いだ。

御坂から見れば、人形の背後には蒼いチャクラ糸が伸びており、視線で追って後ろを向く。
御坂の少し後ろに車椅子に座り、糸を伸ばしているサソリと白井が立っていた。
「おっ!気づいたか」
「お、お姉様!」
御坂は、サソリを見てバツが悪そうに下を向いた。
白井が御坂の隣へとサソリを移動させる。
気まずそうに俯く御坂にサソリは軽く腕にデコピンをした。
「いた」
「......これでさっきの件はチャラだ。オレも言い過ぎた」
「あたしもゴメン」
仲直りを軽くすると、歴戦の友のように御坂とサソリは勝気な笑みを零す。

「白井、お前は初春の所へ行け」
「その身体で大丈夫ですの?」
「心配いらねえよ。それに初春が重要な物を持っている」

サソリの仕掛けた傀儡人形の攻撃を躱すて木山は、人形の口を無理やり開かせるとアルミ缶を放り込んだ。
「!」
「ちっ!行け白井!」
「大丈夫よ黒子。サソリの事はあたしがやるから。初春さんの方を頼んだわ」
「わ、分かりました。無理をなさらないでください」

二人一組が基本
御坂とサソリ
白井と初春に分かれての最終局面へ臨む。

白井は、空間移動で初春の居る陥没した高速道路上に移動した。

アルミ缶の爆弾が人形の口内で爆発し、仰け反る姿勢になるがすぐさま体勢を整えて、黒い煙を吐き出す。

「そんなにヤワに造ってねえよ」

誰かのおかげでな......

折角開いた口なのでサソリは手の甲に手を重ねると傀儡人形から黒い砂が漏れ出した。
グニュグニュと流動的に姿を変える黒い砂は、クナイのように形を変えると木山に向けて投げつけた。
「くっ!」
木山は、衝撃波を発生させる砂鉄を削り落とした。
「あれは!?」

この人形は。
後ろに居るのは赤髪君か......
『次は本体で相手をしてやる』
その言葉通りなら、本人だろうな。
車椅子に座っているのが、気になるがより警戒をせねばならない

人形の背後にサソリがいるのを見つけ、木山は電撃をバチバチ出し始めた。

サソリの弱点である電撃をサソリに向けて放った。
迫る電撃にサソリは、ニヤリと笑うと
御坂が腕を出して電撃を弾き飛ばす。

無言の内に御坂とサソリはアイコンタクトを取った。

サソリの双眸には写輪眼がはめ込まれていた。
クルクルと瞳の巴紋が回転している。

「来るぞ」
サソリが視線を向けた先には、ヨレヨレの白衣を身に付けた木山だ。
木山は腕からレーザーを出すとサソリ達に向けて放つ。
写輪眼で分析を開始するが
「血継限界か」
瞬時に判断を下すと傀儡を操り、砂鉄を集めると巨大な三角錐を作りだし、自分達を守る。

「さてと......」
サソリは三角錐の砂鉄を崩すと上空へと持っていき、細長く鋭利な刃先へと変形させた。

砂鉄時雨

夥しい数の砂鉄状の刃物が木山に降りかかる。

これも先程受けた技。
木山は衝撃波を飛ばして、砂鉄を弾き飛ばしていく。
人形は、更に腕の装甲を剥がすと札のようなものが現れるとボンと煙を出して、多数の腕が一斉に木山へと向かって行った。
木山は、バックステップで多数の腕から逃げようとするが縦横無尽に動くためになかなか振り切れない。
木山は、レーザーを出すと伸びてくる多数の腕へと突き出した。
プスプスと木が焦げる匂いが辺りに立ち込める。
木山の居る所にぽっかりと人形の腕が開けていく。


「......御坂、合図を出したら攻撃できるようにしておけ」
「分かったわ」
サソリは掌を下に向け、少し上に上げる動作をした。
木山に向け多数の腕の中から筒状の物が出現し、仕込まれたクナイをグルリと放った。
「!?」
木山は地面を踏みしめて衝撃波を飛ばし、サソリの傀儡ごと吹き飛ばした。
多数に伸びた腕と傀儡が弾き飛ばされる中で立った一つの腕だけが木山の方を向いていた。
隙をみて放たれたのはクナイ。
その後ろからロープが付いている。
木山は、能力を使おうとしたが大規模な能力を使ったすぐ後には少しだけ能力が使えない時間があった。

予想通り
不意打ちに近い形を取ってしまえば、能力の発動が遅れるな

ロープ付きクナイは、木山の身体に巻きつくと両手の自由を奪う。
「御坂!」
バランスを崩した木山に御坂が走り出して、電流を流した拳を振りかざす。
「イッケェェー!!」
電撃を充填した拳が正確に木山の肢体を貫いたように見えたが、人間に当たった感触がなく地面に突き立てしまう。
電流に周囲の金属が反応してカタカタと音が鳴った。

「!?」
どうして?
よく見ると木山より少しだけ離れた場所を殴っていた。
「危なかった。少しだけズレていたらモロに食らっていた所だ」
木山は、弾き飛ばされたクナイを拾うとロープを切り出した。

写輪眼で見ていたサソリは、瞳に力を込めた。
「そういうことか」

偏光能力(トリックアート)

サソリが出現してから木山は警戒して自分自身に使っていたネットワーク上の能力だ。
御坂との焦点を狂わせて攻撃を逸らした。
サソリの攻撃の時には、写輪眼で正しい場所を映していたが、御坂には少しだけズレた場所へ焦点を結ばせていた。

「この距離では躱せるかな」
ロープからの呪縛から離れた木山は、御坂に向けてアルミ缶を投げつけた。

「えっ......」
「ちっ!」

サソリが反応して傀儡を飛ばし、御坂の身体を持ち上げると高速で横へと翻させる。
操者のサソリから人形が離れたのを確認すると木山は、再び電撃を溜め始める。

それも木山の計算の内
早めに赤髪君を潰しておかなければ
御坂美琴という壁が無くなった君に電撃のサービスだ

腕を動かしているサソリに向かって木山が最大出力の電撃を放つ。
迫る電撃に御坂は、ハッと人形に捕まりながら息を飲んだ。
サソリからは、キィィィンという妙に高音が漏れ出す。
バチンという硬いもので殴られるような音の後にサソリの乗っていた車椅子が電撃による衝撃で飛び上がり、黒ずむ。

しかし、吹き飛ばされる車椅子にはサソリは乗っていなかった。
「ククク......やっときたか」

無残に転がる車椅子の隣に突如として黒い影が高速で移動してきた。

黒い影は二足歩行をすると顔を上げる。

計算通りにいった

黒い影の正体であるサソリだが、その雰囲気は以前とは別物に近い。
写輪眼を宿した瞳に白目の部分が真っ赤になった眼をしている。

それは木山が使っているレベルアッパーと同じ副作用のように見えた。
「あっ......あ!?」
木山の顔に焦りと動揺の顔が浮かんだ。

「お前がどれだけの数を使っているか知らねえが......数が多ければ良いってものじゃねえ、問題は質だ」

サソリが印を結び出すと身体中からチャクラが炎のようにまとわり付いた。
周囲の岩にピシッとヒビが入る。
 
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