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破壊ノ魔王

作者:紅蓮刃
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一章
  18

空中都市 ファルアルーエ

飛空挺の開発にも使われる浮遊石を使い空に揺らぐ街。美しく、王族の住む城があるこの土地はマーテルの雄大な葉と一番近づける場所と有名な大都市である


「つっても、陸からそんな離れてねぇけどな。雲の上ですらねぇ」

「こら!夢も希望もない!それより城だぁ~!はじめてみたぁ~」


そこの入口に退屈そうなゼロと興奮を抑えきれないシルクはいた。この大都市にて行われる飛空挺運転技術試験を受けるためにだ
たとえまだ街に入っていなくても、ゼロは常に周りを警戒する。直接的に何らかを仕掛けてくる貧民がいないかわりに、ここには大勢の軍人がいる。一般人ならともかく、軍人でゼロの顔を知らないものはいない。


「あんまりはしゃぐな。目立つだろうが」

「あ……ごめん。でも大きいねー。城って。近くで見てみたいな」

「無駄にデカイ只の家だろ」


他の寂れた街ならばともかく、このような大都市でましてや王族の住むような王都では、国それぞれの法がある。世界政府の定めたそれとはまた別に


「いいか。お前は試験を受けに来たのであって、ここに住むやつじゃねぇ。この国ではそういうやつから金をとる」

「えぇええ!??」

「入国審査。ほら、受けてこい。受けてねぇやつは牢屋いきだぞ」

「え?ゼロは??」

「俺は行ったら死亡だよ」

「ですよねー」


シルクが振り替えるとそこにゼロの姿はなく、ため息つきながら子供ひとりで関所をくぐった。そこには人が大勢いて、順番に名前を呼ばれる。シルクは初めての雰囲気の冷や汗を流した。


「ねぇ、見てあの子……」

「1人なのかな?」


子供ひとりで関所で番号を待つ
周りが不審に感じるのは無理もなく、さまざまな目線がシルクに向けられた。同情、不信感、疑い、哀れみ。しかしそのどれも気にすることはない。緊張でそれどころではないのだ


「158番のかた」

「!!」


シルクは急いで受け付けに向かい、偽の個人証をだした。受付はその写真とシルクの顔を照らし合わせ、専用の機械にいれる。そして尋ねるのだ


「なぜこの街に?」


決まりきった質問にシルクは胸を張ってこたえた


「試験を受けるため!飛空挺の試験をです」


つづいて試験申し込みの受領証をだす。怪訝な顔をする受付だが、それも確かに本物。こんな子供でも試験を受けることができるのか、と怪しむ


「……あのー、ぼくこれでも二十歳ですよ。個人証にも書いてあるけど」

「え!?」


作ったようなドヤ顔でシルクはもう一枚の紙を出す。眉間にはっきりとシワを刻んだ受付は、それをゆっくりと受けとる


「……診断書」


若化障。年をほとんどとらなくなる一種の症例。これだけをきくと良いものに思えるが、その反面寿命が通常の半分以下になるという原因不明の病。遺伝性で言い方を変えれば生まれつきのものであり治療法はない

……と云われる病の診断書。もちろんのこと偽造書類。その病気事態もあるかどうか、シルク本人は知らない。全てゼロの仕組んだことだ


「……ほら、長く生きれないから、早く叶えたいと思ったんですよ。あっという間に死んでしまうぼくでも、高い空から世界を見るって夢は……大きすぎるけど叶えたいと思って。そのためにきました」


入国、可


胸に堂々と入国証をつけて、こそこそと人混みを避けて歩く。そして人の目のないところで、大きく息を吐き出す
シルクは、この演技に命を懸けていたのだ。審査が通らなければこの街から突き落とす、とどこかの誰かに真面目な顔で言われていたのだ。


「随分とだれてんじゃねぇか」


だれかさんとは、もちろんのことこの人である


「…………ねぇ、ゼロ。どうやって入国審査通ったの?」

「あぁ、これか。欲しいものは奪い取れっていう盗賊の精神にならってみた」


ちなみに殺して奪った、のではない
奪われた本人も恐らく気づいていないのではないだろうか


「……ぼくのもそうしてくれたらよかったのに」

「お前は試験のときに提出するんだよ。俺はそもそも街中なんか歩けねぇし、時間をおいてすり替えていくつもりだ。そうでもねぇと流石に騒がれるからな」


ゼロは戦闘だけでなくスリまでプロ。おまけに試験の内容がわかるくらいに頭も良し。シルクはため息をついた。犯罪者でなければ、ゼロほどの天才はいなかっただろうにと


「これからどうするの?」

「まずは試験の手続きをしてこい。専用の宿舎があるはずだから、お前はそこで準備してろ。俺は軍の動きを見てくる」

「それ危ないんじゃない?」

「リスクはある。試験のこともあって警備は厳重になってるはずだからな。でも、気になるんだよ」

「なにが?」


ゼロは夜空を見上げた


「……平和すぎ。俺がここまで軍のやつらに放置されるなんて早々ねぇからな。さてさて、どんな理由があるのやら」



 
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