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SAO‐戦士達の物語《番外編、コラボ集》

作者:鳩麦
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テーマ短編
  GGO番外編 節分!!

 
前書き
どうもです!

今回は、あるテーマに沿った短編を書いていこうと思います

テーマは節分。GGOを舞台に、節分と称してGGOメンバーが大暴れ、そんなお話ですw

では、どうぞ! 

 
「節分イベントだぁ?」
「そ!弾丸がマメになってて、鬼型のモンスターがねぇ」
「まあ要は其奴等に撃ち勝てば勝ちって訳よ」
「あ~!私が言いたかったぁ!」
二月の初めALO内部、森の家で、アイリの一言からそんな話になった時その場に居たのは、文字通りのGGOメンバー。アイリ、アウィン、リョウ、キリト、シノンだ。
彼女達が言うには二月二日の節分に会わせて、SBCグロッケンでちょっとした豆まき成らぬ豆撃ち節分イベントをやるらしい。アイリの言いだしで、それに参加しようと言う話だった。

「と言うわけで!GGOトップのこのメンバーで参加すれば、トータルスコアトップ間違いなしだと私は思うのです!ばんばん!!」
「机叩かないの」
「ばんばんって……まぁでも、確かに、リョウ兄ちゃんや、キリトの火力は魅力よね。五人一組って言うのもあるし」
「面白そうじゃないか。俺は出てもいいぜ」
アイリの机をバンバンと叩きながらの主張に、シノンが苦笑しながら同意し、キリトも面白がるように笑う。言いながらリョウを見た彼に、リョウは苦笑しながら肩をすくめた。

「いやまぁ良いけどよ、このメンバーって普通に反則じゃねぇ?」
GGOソロ最強決定戦で有る、BoBのトップランカー五名。そのメンバーを見渡しながら、リョウは苦笑した。

────

「相変わらずだな此処は……」
天井のモニターを見上げながら、リョウが小さく呟いた。隣に立ったシノンが、苦笑して返す。

「ま、あれから二カ月も経ってないしね」
「だな。お前今日はヘカート?」
「うん、前衛は十分過ぎるくらい居るでしょ?」
「ちげぇねぇや」
うはは、と笑いながらリョウは歩く。先頭を歩くアイリの足取りは軽い。どうやら結構今回の事を楽しんでいるご様子だ。
と、不意にリョウの耳に、すれ違う人間達の会話が飛び込んできた。

『なんだよアレ……』
『反則だろあんなの……』
『運営の連中いじめかよ……』
どうやら此方に対して言っているのではない、運営に対してブツブツ文句を言っているようだ。

『なんだぁ?』
何かザスカーがしでかしたのだろうか?そんな事を思いつつ、リョウは前を行く三人に続く。と、今度は良く似た、しかしややニュアンスの違う会話が聞こえる。

『いや、ちょ、何だよアレ……』
『え、いや反則だろあのメンバーは……』
『運営いじめかよ……』
『あれ、切り裂き少女(リッパー・ガール)だろ……?』
『良く見ろ、今日はガール“ズ”だ』
『ヘカートも居るぞオイ……』
『黒鬼(オーガ・ネーロ)……』
『あれ、ストライカーかよ……!?はじめて見たぞ俺……!』
うん、どう聞いても自分たちである。切り裂き少女とか言う物騒なのはアイリとキリト、ヘカートはシノン、黒鬼は闇風の事だとリョウも良く知っている。

『……ん?』
不意に気になって、リョウは隣を歩くシノンに尋ねた。

「なぁシノン、ストライカーって、俺の事か?」
「え?……あぁそっか、リョウは知らないんだっけ。そう、リョウの事」
納得したような顔をしてから、コクリと頷くシノンにリョウは後ろ手に首を掻きながら首を傾げる。

「何で俺がストライカー?ってかストライカーって、サッカーのあれか?」
「違う、IFV(歩兵戦闘車両)の方」
「米軍の?」
「そう」
「なんで」
「装備の火力」
端的に言うシノンに、リョウは眉をひそめた。
米軍のストライカーとは、主にICV(兵員輸送車両)等に使用される戦闘車両の系譜の一つだ。前時代、ハンヴィーを使用して移動していた歩兵に対して、より高いクオリティの機動力、火力、装甲を付与する事の出来る車両で、ICVの他にはRV(偵察車)やMGS(機動砲システム)を乗っけた高機動戦車等として利用されている、非常に汎用性に優れた車両郡である。
その基本装備は、MGSを装備しない場合、12.7mmM2重機関銃や、7.62mmM240軽機関銃、40mm 自動擲弾発射器Mk19等である。

「5.56mmアサルト、20mmグレネードランチャー、何よりM2。BoBの後しばらく話題だったよ。あの人間ストライカーは何だって」
「ひでぇなオイ」
苦笑しながらリョウは肩をすくめて言う。そんな彼の様子を見ながら、シノンは溜息をついて言った。

「まぁ、あながち間違って無い気がするけど」
そんな事を言っていると、アイリが受付に辿り着いた。

「すみませーん!イベント参加お願いしまーす!」

────

イベントのルールはこうだ。
自分達は、五階建て、コの字型の陣地を防衛すること。
攻撃側は鬼型Mobで、コのへこみの方に向けてやってくる。
敵の数は難易度の設定で選べるのだが、今回は勿論最高難易度、HELLだ。
戦闘開始から敵勢力到達までは一定時間の猶予があるので、その間に迎撃態勢を整える。
尚、支給品はいくらかの爆薬等で、弾薬は特別製の豆。数は本来の予備弾層を含めた最大数の三倍らしい。
他、ステージ内にもいくらかの装備はあるとの事。

「つまり、思いっきり派手に撃ちまくれと」
「そう言う事ね。楽しそうじゃない」
「私はあんまり意味ないけど」
「俺も弾丸はあんまり使わないからなぁ」
「でもこれバッテリーも三倍じゃない?」
アイリの言葉にそういうことか!等と驚いているキリトに苦笑しつつ、リョウは装備を確認する。シノンのさっき言った装備一式がその中にある。共にBoBを駆け抜けた大切な愛銃達だ。なんだかんだ今回はDE等は出番はなさそうだが。

『久々にあばれますかぁ』
そんな事を思いつつ、転送ポートへとたどり着いた。

「えー、此処からステージに飛びます。入ったら、先ずみんな集まって装備。其れから敵を観察して、作戦を立てましょう。それじゃあみんな、がんばっていこー!」
「「「「おぉー!!」」」」

────

「うわぁ……凄い数……」
「これは、ちょっと異常ね」
「道理で弾薬の気前が良い訳だ……」
「こういう事だったのか……」
アイリ、ヤミ、リョウ、キリトがそろって並んで双眼鏡を覗き込み、そんな事を呟いた。
隣でヘカートのスコープを覗きこんでいたシノンが、呆れたような声で言う。

「それで?どうする?狙撃してみる?」
「いいえ、今は良いわ。どう考えても焼け石に水……先ずは作戦を考えないと」
双眼鏡から目を外し、髪をかき上げながらヤミがそんな事を言う。
事前の通達通り、ステージはコの字型をした五階建ての建物、と言っても両左右のビルにはトタンやコンクリート詰めがされており、侵入できない。敷地面積は、およそ200m四方と言ったところか。そのコの字のへこみ部分に向けて、500匹近い数の鬼が接近していた。

「んじゃどうするよ、リーダー?何か対応策でも?」
「別に、策ってほど大したものじゃないけど。集まってくれる?」
「あぁ」
「うんっ!」
「えぇ」
「おう」
ヤミを中心に、全員が部屋の中央に集合する。今回集まったメンバーのリーダーになったのは、最もGGOでのパーティプレイ歴の長いヤミだった。まぁそうでなくても、現実で生徒会長などやって居る彼女である。リーダー事には、割と向いているのだ。

「さっきも言ったけど、あの数相手じゃ、中途半端な火力を変に中距離から当てても焼け石に水よ。でも、向こうだって武装してる。余り向こうから飛んでくる弾を受け続けてる訳にも行かない。から」
「から?」
「火力を順番に重ねて、ごっそりごっそりって殲滅するわ」
「おぉー」
「いいじゃねぇか。景気良く行こうぜ」
アイリやリョウが楽しげに言うのを呆れたように見ながらヤミは説明を続ける。

「それじゃ、今から指定するポイントに……」

────

其れから数分。各々が其々建物の中で隠れながら、敵群の接近を待ちかまえていた。敵はどう言う訳か正面から来ていて、コの字の外側に当たる壁には窓が無い。つまり、敵の機動はコの内側のみで有り、そこに来た敵をせん滅するのに火力を集中させるのはたやすいのだが……逆に言うと、それ以外に殆ど迎撃方が取れないと言う意味でもある……まぁ、今回はこの際構いはしない。

「各員、配置に付いた?」
『こちらアイリ。オッケーだよー!』
『此方キリト、オーケーだ』
『此方も、準備完了』
無線機の向こうから帰ってきた返答に、彼女は小さく頷いた。既に敵群は眼と鼻の先まで近づいて来ている。およそ二分もすれば攻撃開始だ。

「さて、と……」
「しっかし節分イベがこれとは。変な事考えるよなぁザスカーも」
「其れを言ったら、そもそもアメリカの会社のザスカーが、何で節分なんかにイベント企画するのかの方が割と疑問だけど」
苦笑しながら言ったリョウに、肩を竦めながらヤミが答える。リョウとヤミは、同じ位置での待機になって居た。といっても、いざとなればヤミは動きまわることになるかもしれないが。
座って敵群へ向けてM2の銃口を向けるリョウが苦笑しながら言う。

「ちげーねぇ。あんまり世界観にも似合ってねぇしな」
「別に正月にもこんなイベントがあった訳じゃなかったのに、あの会社、どうにも気まぐれで動いてる節があるのよね……なんかどっかの作家の出資でイベント開催したりするし」
「あぁ、これみたいなチーム戦のあれな」
リョウが思い出したように言いつつ、不意に懐からガムを取り出す。

「……?なに、ガムなんて持ってたの?」
「ん、あぁ。意外と色々売ってんだぜ、煙草、ガム、ビスケット、チョコバー。レーションなんかも一通り」
「良く調べるわね、メインでプレイしてるゲームでも無いのに」
「ま、趣味程度にな。お前こそ調べないのかよ?女子は甘味(スイーツ)が好きなんだろ?」
首を傾げるリョウへ、ヤミは呆れたように返した。

「マースのチョコナッツバーをスイーツに含める女の子なんて、今の世の中じゃ早々居ないわよ」
「そいつは残念。食うか?」
「止めておくわ。物を口に詰めながらだと走りにくいのよ」
「そうかい」
そう言って、リョウはガムを口に入れて食べ始める。アイリが鋭い声で言った。

「来るわよ。リョウ」
「All right.んじゃ、お出迎えと行きますか」
そう言うリョウの隣で、ヤミがインカムに手を添える。

「各員、始めるわ。合図と同時に起爆。同時に攻撃よ。アイリと弟君はマガジンが空っぽになるまで撃って、後は予定通りに、首尾よくね」
『了解だ。タイミングはよろしく頼む』
『了解』
『りょーかい!あ、ヤミ、合図は例の奴でお願いねー!』
「はいはい」
やれやれと首を振って、ヤミは自身の銃を持ち直す。既に敵は、中に話の中にまで侵入を始めていた。玄関までは、もう200mもないだろう。

「各員、撃ち方用意!」
『『『『……!』』』』
リョウはM2を。ヤミはキャリコを構え、其々アイリはXM8を、キリトはリョウから貸し与えられたXM29を構える。
シノンは屋上で起爆装置を持つと、敵の動きをじっと見つめる。

踏み込んだ敵は、既に正面入り口60m手前まで迫って居た。だが、此方は隠蔽(ハイディング)状態にある為。まだ補足はされておらず、彼等は更に近づいてくる。
50m……40m……

攻撃(おには)ー……!」
35m……30m……25m……!

開始(そと)ーっ!!!」

「ッッ!!!」
シノンが息を詰めて起爆装置をカチカチとニ回打ち鳴らすと同時。ズガァァァァァアアアアアアアアアアンッッッ!!!!と、まるで雷鳴のような音を響かせて、一斉に鬼たちの足元に仕掛けられていたプラズママインと、彼等の眼前に合ったクレイモア地雷が起爆した。大豆と同じ薄いこげ茶色のプラズマと、クレイモア内に仕掛けられた無数の鉄球……もとい、煎り豆が飛び散り、一気に無数の鬼を吹き飛ばす。と、同時に、

()ぇ!!!!!」
「ッ!!」
「おぉっ!」
「いっけぇ!!」
合計四人のフルオート射撃が一斉に火を噴いた。
口径の別なる無数の弾丸……ではなく豆が鬼たちを次々に打倒し、鬼の前衛は一気に崩れる。其処に容赦なく追加の弾丸が降り注ぎ、鬼達は更に混乱した様子を見せた。
身体を晒すもの、もしくは一部の見えている者たちは次々にアイリ、ヤミ、キリトの放つ弾丸を叩き込まれ、運よく遮蔽物に隠れる事が出来た鬼も、リョウのM2がその遮蔽物ごと薙ぎ払う。

「撃て撃て撃ちまくれ!!」
「向こうに構え直す暇を与えないで!弾膜を張り続けて!」
『アイ、マム!』
『うりゃあああ!』
「っ、ヤミ、戦闘車両(テクニカル)、数2、敵後方700mくらいから来る』
一人だけ沈黙していたシノンが突然鋭い声でけれど静かに言った。彼女の持つエネミー探知専用のレーダーに敵影が掛かったのだ。ヤミが即座に叫ぶ。

「了解、対応任せる!」
『了解。視認した』
皆と離れて屋上に居たシノンは、静かに返答した。ヘカートのスコープを覗き込むと、中央に目標をとらえる。距離600。

『やれる!?』
「心配ない。“至近”よ」
そう言うと、彼女は少し息を止め、一秒だけ溜め、引き金を引く。
他の銃よりも明らかに重々しい。大砲染みた銃声が轟き、12.7mm豆が空気を切り裂き飛翔する。其れは狙い違わずテクニカルの窓ガラスを撃ち抜き運転席へ飛び込むと、車体が大きく揺れ、横転、炎上。

「次」
其れを確認することも無く射線を右にずらす。マズルフラッシュが見えたのだろう。二台目はその針路を大きく左にずらしたが……

「(遅い)」
再び銃声。彼等の車と、シノンが放つ12.7mm豆。どちらの動きが早く正確かなど、最早言うまでも無いことだ

『ターゲットダウン。引き続き警戒に当たる』
「了解、いい腕ね!」
飛んで来た弾丸を躱しながら、ヤミが言った。敵の前衛部隊はほぼ完全に壊滅させたものの、まだまだ大量の敵がいる。散発的にでは有るが反撃も飛んで来ていた。

「弟君!アイリ、残マガジン幾つ!?」
『えっと、えっと……』
『グレネードが4、ライフルが6!Fivesevenも聞きます!?』
「満タンじゃなかったら怒るわよ!アイリ!」
『ライフルが5個!』
「はい良く出来ました!」
答えを聞いて即座にヤミは何かしらをブツブツとつぶやくと、即座にインカムのスイッチを押しこむ。

「5分後に突撃よ!撃ち続けて、準備しておいて!」
『準備ってなんのー!?』
「心の!」
言いながらヤミは鬼たちに向けて発砲を続ける。抵抗が徐々に激しくなってきているのを、彼女は感じていた。

「予想してたより、体勢の立て直し早くねぇ!!!?」
「そう!?別にこの程度なら問題にはならない位だとっ!思うけど!!」
頭を隠してから、キャリコの引き金を引きづづけ、ヤミは怒鳴る。
元々、戦力差が大き過ぎるのは分かって居たことだ。テクニカルは潰せたわけだし、これより撃ちこまれる銃弾が多くても特に問題は無い。

「(いやまぁ問題はあるけど……)」
予想していたよりは小雨だ。やはり初めの一当てが効いているのだろう。
加えて言うのなら、ヤミは隣でフラッシュを焚きまくられているかのようにチカチカと顔を照らされるリョウをみて思う。

「(此奴よね……)」
この女のような顔をした男の持つ重機関銃の火力が、敵の頭を完全に押さえつけている。ALOでも力づくだが、GGOにしてもこの男は本当にバカみたいな火力だ。

「バ火力か……」
「あぁ!?何か言ったか!?」
「別に何も!!!」
怒鳴り返しつつ、片手のキャリコの弾層が空になる。交換のために一度身体をひっこめ、マガジンを外した途端に、左の壁面が爆発した。

「ッ……!リョウ!ランチャー!」
「わぁってるよ!」
ドンドンドンドン!!と重々しい音を響かせながらリョウがM2の銃口を高速で旋回させる。動こうと思えば動けるが、それでもこの銃を持ちながらの移動はどうしても低速に成る。距離を取って居るためグレネードを投げ込まれたりはしないが、それでもグレネードランチャーのような武装は脅威だった。

「ヤミベルト変えるぞ!援護しろ!」
「言われなくてもするわよ!!」
「そりゃぁどうも!」
言うが早いがリョウの射撃が止まる。と同時に、ヤミが身体を出して撃ちまくり始めた。自分たちの方に銃口を向けている鬼だけを的確に撃ち抜いて行く。が、流石に数が数である。対応しきれずに再び身体を隠す。

「早くしてよ!」
「うるっせぇな急いでんだよこれでも!」
はずした弾を放り出して傍らのベルトから新しいベルトを取り出し、開いた弾層の上に乗せるリョウが、ヤミの言葉に怒鳴り返してくる。再び身体を晒して発砲。上からもシノンが数発、援護をしてくれている。

「シノン!弾まだ残ってる!?」
『ヘカートで無くて良いなら、十分』
無線の向こうからシノンの平淡な声が返ってくる。今日のシノンにはヘカートの他に、FR-F2も持ってきてもらった。必要に応じて使うライフルを切り替えてもらっている状況だが、狙撃による援護が受けられるとなるとやはり安心感が違うと言う物だ。

「終わったぞ!」
「ッ!」
リョウの声と同時に、ヤミは身体を隠す。即座に聞きなれた重低音の射撃が再開され、進行してくる鬼が次々にポリゴンへと変わった。

「(そろそろね……)アイリ!弟君!準備良い!?」
『はい!』
『待ってましたー!』
鬼達も大分体勢を立て直しつつあるようだ。恐らくだが、突撃しようとするような動きも見える。突撃されると、数の差で押し切られ、此方は敗北する羽目になるだろう。故に、それよりも前に。

「突撃隊抜剣!内部に切りこんで思いっきり暴れなさい!」
『了解!!』
『Ja(ヤー)!!!』
キリトとアイリの二人が持っていたアサルトライフルを捨て、各々の光剣を抜き放つ。ちなみにだが、キリトの光剣はカゲミツG4と言う一般的に市販されている光剣なのに対し、アイリの物はツキカゲG7。改造版のキリトの物より性能の良い光剣だ。
もう片手には、それぞれFive-sevenと、MP7がある。二か所で二人が笑うと同時、ヤミが叫んだ。

突撃(チャージ)!!GOGOGO!!」
「オォッ……!」
「ひゃっほー!!!」
建物の左右から、二つの影が一気に飛び出した。それに反応するように、鬼側から迎撃の弾丸が無数に打ち出されたが……

「セァッッ!!」
「うりゃああ!!」
それらを全て、二人の剣士はぶった切りながら前に進む。

「あいっ変わらずの出鱈目具合ね……」
「そういやぁ!一時期、あれの真似しようとする奴居たんだって!?」
「えぇ!大体は挫折したけどね!!」
苦笑しながら言うヤミに、リョウはニヤリと笑う。

「で、そのしなかった一例、が!」
「あの子って訳よ!!あ、FFしないでよ!?」
「しねぇよ舐めんな!さっさと行け!」
怒鳴りながら自身も突撃したヤミを見送り、リョウは撃ちまくる。一見無茶苦茶に撃っているように見えて、その照準は的確にキリトとアイリに当たらないように配慮されているのが分かった。

「そのまま続けて!」
『『アイ、マム!』』
それと同時にキリトとアイリが敵群に飛び込む。

「イっちゃえぇええええ!!」
「セィッ!!」
光剣に触れたそばから鬼達が四散する。しかも飛び込んだのは敵中のど真ん中だ。取り戻されかけた鬼たちの統制が一気に崩れ、キリトやアイリに銃口が向く。しかし……

「フッ!」
右手を振り抜き切り裂いた光剣を腰だめにしつつ、キリトは左のFive-sevenを腕を交差させるように前方に向け、二発程発砲する。
目と首元に命中した豆は狙い違わず目の前の鬼を怯ませ、キリトは左腕を跳ね上げると即座に右の光剣を左から横一線。その勢いを殺すことなく振り向き、接近していたライフルの弾丸を迎撃する。

「ほーら、撃ってきても良いんだ、よっと!!」
踏み込んで即座に、右からの一閃が鬼の一匹を切り裂く。即座にアイリは静動を掛け、後方に向かって飛び出すと、今度は左からの一閃でもう一匹を切り裂く。そのままアイリは飛び上がると、空中で逆さまに、かつ独楽のように回転しながら、周囲に向けてMP7を乱射。着地と同時に、更に走り込み、腕を首に巻くように肩に担いだ剣を、相手の首に向けて振り切る。
二人が非常に素早く動き回り、かつ周囲に居るのが全て味方なお陰で、誤射の危険性がある鬼達は碌に発砲する事が出来ない。しかもそちらに構っていると……
アイリを狙っていた鬼の一匹が、突然倒れ、ポリゴン片となって消えた。

「Hey sweet!!こっちにもいんだから無視すんなよ!!」
乱射される12.7mm弾が彼等の身体を肉片にしてしまう。

「(良い感じね)フッ!」
遮蔽物から身体を出したヤミが、キャリコを連射した。即座に何匹かの鬼がヤミの方を向き、彼ら式のライフルを乱射してくるが、其処にもう彼女はいない。黒い風の如く走る彼女を追うように、彼女が行き過ぎた後に弾丸が着弾したが、あくまで後である。弾着は彼女を追うばかりであり、彼女自体には一発の弾丸も着弾しない。そんな事をしている間に、その鬼達にも12.7mmが降り注ぐ。

「援護も上々、か……器用な奴」
小さく笑ってそんな事を言いながら、ヤミは再び急制動を掛けてキャリコを構えて乱射する。その時だった。

『ヤミ、警告。遠方3000にハインド』
「!?」
言われて即座にヤミはビルで囲まれていない側の空を仰ぎ見た。遠く、遥かかなたに黒い点が見える。確かに、ガンシップだ。ロシア製のMi-24 [ハインド]である。

『おいおいどうなってやがる!あちらさんのバックにゃ北国の皆様でも着いてんのか!?』
「知らないわよ!黙ってて!」
リョウの怒鳴り声に噛みつくようにヤミも怒鳴り返す。

「(どうする……?どうする……!)」
既に此方は身をさらしているのだ。このままいけば味方もろとも吹き飛ばされる恐れもある。おまけに建物から援護しているリョウやシノンは火力を保ったままでは碌に動くことも出来ない。だがあのままあの位置に居ては、確実に建物ごと粉微塵にされるだろう。

「彼奴に関しては状況が許せば其れも愉快だろうけど……!」
『おいなんか言ったか!?』
「別に何も!」
『ヤミ、ヤミ』
と、不意に耳元に、妙に落ち着いたアイリの声が聞こえた。彼女は今敵に囲まれたままの筈だが、その声には息切れ一つ無い。

「何!?何か良いアイデアでもある?」
『うん!簡単だよ!シノンが何とかしてくれるよ!』
「え?」
シノンが?どう言う事か……そう考えた時には、殆ど無意識の内にヤミは口を開いていた。

「……シノン?」
『何?』
「貴女、ヘリ落とせる?」
『問題無い』
「…………」
さも当然のように言った彼女に軽く呆れつつ、ヤミは苦笑して言った。

「じゃあ命令。接近するハインドを迎撃して」
『了解』
その一言で、ヤミはハインドの問題は解決したと確信した。即座に自分の役目を果たしに戻り、シノンもまた、自らの役割を果たすためにヘカートを覗きこむ。

「…………」
目算で距離は2500程。其れがドンドンと距離を詰めて来ている。
変に弾丸を当てた所で、効果は無い。狙うべきはただ一点のみ。其処に正確に必殺の一弾を叩き込まなければならない。

「…………」
距離2000。
しかし、この距離まで近づかれた時点で、彼女にとっての其れは児戯に等しくなった。身体の中心線上の先に、ハインドのコックピットが映り込む。収縮するバレッドサークルが、シノンの視線の先でゆっくりと、一つの小さな光点となり……

「…………っ」
引き金を絞ると同時、轟音が巨大な豆を打ち出した。其れは虚空を切り裂き、1700m以上の距離を瞬き一つの間に駆け抜け、そして……突然コントロールを失ったヘリが、奇妙な機動を取りながら地面へとキスをすると、大きな花火となって消えた。

「……ターゲット、ダウン。援護射撃を再開する」
『ヒューッ!Nice Jobシノン!クールだなオイ!』
『さっすが!思った通りだね!おっと!』
無線の向こうで騒ぐ仲間達に、シノンは小さく微笑み、もう一丁のスコープを覗きこんだ。

────

数分後……

「後少しよ!押し切って!」
『了解ッ!』
『Ja!!』
『そろそろM2切れるぞ!』
『こっちもたま切れ……豆切れよ』
既に敵の数は少なくなり、最期の一段が散発的に攻勢を続けるのみとなって居た。そんな時だ。

『……ヤミ、再度警告』
「えぇ!?今度は何!?」
『……戦車(ウラジーミル)
「はぁぁっ!?」
シノンの言葉に、再度ヤミが叫んだ。今度はヤミからは見えなかったが、時速50km近いスピードで接近する車体が間違いなく捕えられていた。ロシアの主力戦車の一つである、T-90[ウラジーミル]である。

『おいマジでボルシチさん達いるぞアレ!』
『みたいだね……どうする?』
「どうするって……!」
頭をガリガリと掻きながら、目の前の最後の鬼を打倒し、ヤミは怒鳴った。

「こっちは全員制圧!アイリ!」
『こっちも終わったよー!』
『此方も完了!』
「一旦こっちに来て!シノンはその場で待機!」
『了解』
言うが早いが、シノンを除いた四人のメンバーが集まる。ヤミと三人が顔を突き合わせた所で、ヤミが口を開いた。

「聴いての通り戦車が接近中よ。歩兵の最大の敵こと陸上の王者様がね。どう見てもラスボス、つまりこれを倒せば終わりだけど……」
「対戦車装備なんて持ってきてねェぞ」
「光剣も流石に戦車の装甲丸ごと切れるのかは……」
「多少切ってもなんともならないだろうしねー」
「そうね。所で……」
言いながらヤミは、懐から長方形の年度のような物を取りだした。

「此処にあまりモノの高性能爆薬(セムテックス)とプラズマグレネードがあります。ちょっとした考えがあるんだけど。乗る?」
三人が、目を見合わせた。

────

「いい!?手筈の通りに、止めて、壊すのよ!」
全速力で走る四人の中でヤミが怒鳴り、彼等は走る。目標は勿論、疾走するT-90だ。

「向こうが最高速の砲弾を撃ってくるならその速さはマッハよ!砲塔が発光したらすぐ対応して!」
「はいっ!」
「はーいっ!」
言いながら二人は光剣を展開し、全速力で走る。
と言っても、この二人は対物ライフルの弾すら迎撃するのだ。そちらの方がよっぽど早いので反応出来ないと言う事は無いだろうが、まぁ今回は弾がデカイ。と、そんな事を思っている内に……いきなり、此方に向いていたT90の砲塔が発光した。

「っ!おぉっ……!」
直後、キリトが光剣を縦に一閃した。彼の腕に飛んでも無い重さが伝わる。が、彼はそのまま腕を振り切り……直後に、四人の後方二カ所で爆発が巻き起こる。

「ヒューッ!やるねぇ!楽勝じゃん!」
「いや、言っとくけど相当怖いからなこれ!」
叫んだリョウにそう文句を言いながら、四人は疾走する。現在の最大速度は、リョウがジャンプシステムで進める最大速度。ヤミからすると大分遅かったが、それでも両断した砲弾の爆発に巻き込まれずに進めるくらいの速度はある。

「次来るよ!」
「ッ!」
更に一発。またしてもキリトがそれを真っ二つに両断し、四人はそのまま進む。と、砲塔上部を見て、アイリが鋭く叫んだ。

「あ、機関銃が動いてる!撃ってくるよ!?」
「ちょ、俺流石に弾丸迎撃しながらは……」
「大丈夫よ、シノン!」
『了解』
ヤミの言葉に、無線の向こうで冷やかな声がする。そのニ秒後には、走行中のT-90の上部に搭載されていたKord重機関銃が、弾層部分のド真ん中を打ち抜かれ、爆散した。

「シノンの奴今日頼りになるなぁ!」
「何時も頼りになるよ~!」
「わっと!」
リョウの言葉をアイリが楽しげに訂正し、キリトの肩を乗り越え前に出ると、次の瞬間飛んで来た砲弾を切り裂いて着地、そのまま走る。

「ちょ、そう言うの止めて下さいよ先輩!」
「あっはは!ごめんごめん!でもキリトくんダメだよ?先輩は禁止!」
そんな事を言っている間に、既にT-90の巨体は彼等のすぐ眼前まで迫って居た。ヤミが叫ぶ。

「はいはい前見て!全員、予定通りにやって、行くわよ!」
「「「おぉっ!」」」
言うが早いが、キリトとアイリが左右に分かれる。キリトを追うように砲塔が右に旋回するが、遅い。

「おっ……らぁあああああ!!」
「うっ……りゃぁああああ!!」
同時に、左右の履帯に向けて剣を振った。
高速で回転する履帯では有るが、二人は光剣と言う実体剣とは違う剣の性質を生かして、二本の履帯を一閃に切り裂いていく。結果、左右の履帯を滅茶苦茶にされた車体は黒煙を上げながら地面を摺り、停止する。其処へ……

「よっと!」
走り込んできたヤミが車体の上に乗り、その上何かを置いた。
彼女は即座に車体の上から離れ、少し走ると、左手に持っていたスイッチを押した。直後、戦車の真上で爆炎が上がり、車体が黒煙に包まれる。

「これで……!」
車体上部にある、乗務員用のハッチが吹き飛んだ筈だ。其処に、リョウがグレネードを投げ込む手はずになっている。だが、振り向いた彼女は、目を見張った。

「うっそ……」
戦車の装甲が、健在だったのだ。表面は焼け焦げ、砲塔上部にている物の、ハッチは閉じたままだ。あれではグレネードを投げ込むのは難しい。
それに、気を取られたのが不味かった。自分に砲塔が向いている事に気が付くのが、一瞬だけ遅れたからだ。

「やばっ……ぁッ!!」
直後に轟音が響き、走り出していた彼女のすぐ後ろで溜弾が起爆し、吹き飛ばされた身体が地面にたたきつけられた。

「ぅっ……!く、この……ッ」
生きてる。奇跡的に。
そんな事を思いながら、何とか立ち上がりともかく一度離れようとする。が、強烈な違和感が下半身から伝わり、ヤミは自分の足を見て、苦笑した。

「……これ、新手の苛めかしら?」
左足がひざ下から無くなって居た。どうやら運とやらに見放されたらしい。自分は脚だけが取り柄だと言うのに、脚を取られては何もできやしないではないか。しかもよりによって戦車の目の前で。これ以上ないほど最悪である。

「はぁ……後は自分たちで何とかしてよ、四人とも」
砲塔が再び彼女の方を向き、火を噴く。
彼女の居た場所が爆炎と共に吹き飛び……

「いや指揮官が先に死んじゃ不味いだろ」
「……え」
其処から数メートル離れた場所に、彼女を抱えたリョウが着地した。肩と膝の裏に腕を通している、所謂、アレだ、横抱き(お姫様だっこ)である。

「な、ちょ……き、桐ケ谷君なに、を……」
「は?いや、リアルで呼ぶの止めろよ。さっきのキリトになってんぞ?」
「い、いやそうじゃなくて……」
言っている内に、顔が凄まじい勢いで熱くなるのを、ヤミは自分で察していた。

「ん?なんだよ顔赤……あぁ、あれか!?柄にも無く恥ずくなってるとか?」
「うっさいのよこの馬鹿ァ!!」
「ごブッ!」
拳で突き上げ、リョウの首が上へ振れた。飛んでくる砲弾を躱しながら、リョウが怒鳴る。

「ってぇな!てめぇ助けられといてその態度かよ!」
「誰も頼んでないわよ!て言うか、良いから降ろしなさいよ顔近いのよ!」
「お前の脚が健在ならとっくに落としてるんですけどねぇ!?」
怒鳴り合いながら砲弾を躱すリョウは、いよいよもってうっとおしくなったのか。唐突に真上に飛んだ。

「jump!」
「きゃッ……!」
ボンっ!と音を立てて、リョウの身体がT-90の方へ向けて吹き飛ぶ。追いすがるように砲塔がその姿を追うが……

「ちょっとごめん、ねっ!」
「大人しくしててくれ、よっと!」
アイリが運転席と思われるハッチの真上から光剣を突きさし、キリトが砲塔部を一閃。砲塔がガランっと音を立てて落ちる。と、

「っ!」
リョウが車体の真上に着地すると、ヤミの下半身だけを降ろしてしゃがみこんだ。

「ち、ちょっとどうする気!?」
「こうすんだよ!」
言うが早いが、リョウはハッチの掴めそうな場所をひっつかむと、思いっきり引いた。

「オォ……羅ぁっ!!」
「……うゎ……」
バキャンッ!と金属の折れる音がして、リョウの左手から丸いハッチが吹き飛ぶ。彼はそのまま脇に持っていたプラズマグレネードのスイッチをニ回押すと、ハッチの中に落とし、

「飛ぶぞッ!」
「うぇっ、ひゃぁっ!」
ボンっ!とう再び音を立てて戦車の上から飛び去った。直後……

「BOM!!」
ボンっ!と文字通りの音を立てて、陸の王者は内側から吹き飛んだのだった。

「うっし、どうよ!」
「…………」
ニヤリと笑ったリョウを見て、ヤミはポカンとその顔を眺める。しかし少しすると、小さく微笑んで呆れたように言った。

「私が爆弾置いた意味は?」
「ま、テストって事で」
「……馬鹿にしてるわよ、まったく」
こうして、彼等の節分イベントは終わった。

────

「…………」
風巻杏奈は一人、縁側で絵法巻きを食べていた。節分にある一定の方角を向いて絵法巻きを食べると言うのは昔からある習慣だが、今年の方角がたまたま自宅の縁側と同じ方角だったのだ。

「……ん、御馳走様」
一本丸ごとを黙々と食べ終えて、彼女は庭を眺める。冬場であり位夜の住宅街。遠く、近所の家から「鬼はー外―!」と言う子供の声が聞こえて来るのが聞こえていた。

「は-っ、疲れたわね……」
ふと、今日の戦闘の事を思い出す。
大変では有ったが、終わってみれば割と楽しかったと言えよう。久々に思いっきり撃ちまくれたし、アイリも終わった後は満足げだった。
ヘリや戦車には流石に驚いたが、ヘリはシノンが見事な腕前で何とかしてくれたし、戦車は……

「……っ!」
不意に最後の“アレ”を思い出しかけて、杏奈は首をブンブンと振る。

「(あぁもう!何て失敗……!私の馬鹿、馬鹿!)」
自分で自分の頭を抱えながらうんうんうなり、最期に小さく溜息を吐く。
頭の中にちらつく、すぐ目の前でみたあの男の顔を振り払うように、傍らにあった豆を投げた。

「鬼はー外―……!」
ぱらぱらと音を立てて、豆が暗闇に消える。これで、今日の失敗のような厄が払われることを祈ろう。そう思いながら畳の上に寝転がって、顔は朱いまま、けれどほんの少しだけ微笑んで、呟いた。

「福はーうちー……」

外伝 節分 END
 
 

 
後書き
はい、いかがだったでしょうか?

GGOへんで登場した武器やキャラクターを今一度活躍させたいと去年個人的に書いた短編だったのですが割と良い具合にやりたいことが出来た作品となったので投稿させていただきました。

珍しくヤミがヒロイン感出せてたかな、と思いますw

ではっ!

2016年節分 鳩麦 
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