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おぢばにおかえり

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第二十六話 困った子ですその八

「告白は相手に言わせること、ここ重要よ」
「わかるかしら」
「相手に言わせるの」
「そう、絶対にね」
 言葉がきつくなりました。その娘の。
「相手に言わせないと駄目よ。間違っても自分から言わないの」
「告白は男の仕事よ」
 エヴァンゲリオンみたいな言葉が出て来ました。
「そこ、忘れないことね」
「いいわね」
「言わせるの」
 何かこれも私には全くわからない世界でした。
「それってどうにも」
「どうにもこうにもよ」
「今日も彼と会うのよね」
「それはわからないわ」
 こんなことは全くわかりません。何故か今まで会うのは偶然ばかりでしたし。
「まあ会ったら」
「会ったら?」
「はったおすかも」
 本音が出て来ました。
「正直なところ」
「それが駄目なんだって」
「いつもそんなのだから彼氏できないのよ」
 またこんな話を言われました。
「男の子の前では大人しくって」
「まあちっちも大人しいけれどね」
 これはよく言われます。私は男の子でも女の子でも態度は変えないつもりですけれど。
「とにかく。いいわね」
「おしとやかにね」
「ええ」
 とにかくそんな話で終わりました。それで夕方学校から帰っていると。不意に後ろから馬鹿みたいに明るい声が聞こえてきました。
「あっ、先輩」
 この声は。
「今帰るんですか?一人ですか?」
「それがどうかしたのよ」
 その声に顔を向けて応えました。丁度学校の門の前です。
「確かにそうだけれど」
「一人でしたらどうですか?」
「どうですか?何を?」
「僕と一緒になんて」
「お断りよ」
 ぷい、と顔を背けて答えました。
「別に一人でもいいから」
「あれっ、冷たいなあ」
「ちょっと用事があるからね」
 とりあえずこう答えました。
「いいわよ、阿波野君と一緒なんて」
「あっ、いいんですか」
「ええ、いいのよ」
 また答えます。
「別にね。いいから」
「いいんでしたら」
 ここで帰ると思ったら。そはいきませんでした。
「荷物持ちますよ、荷物」
「えっ!?」
 いきなりこう言ってきたんです。本当にいきなり。
「どうしてこうなるのよ」
「荷物持ちますって」
 また私に言ってきました。
「折角のデートなんですから」
「デートってねえ」
 何かクラスで女の子達と話したことがそのまま出ています。私にとっては面白くない展開です。デジャヴューみたいなものまで感じて。
「何でそうなるのよ」
「何でって一緒に歩くんですよね」
「まだそう決めたわけじゃないわよ」
 怒った顔で言い返しました。
「全然ね。そもそも何で阿波野君と一緒になるのよ」
「それが縁ってやつなんじゃないんですか?」
 しれっとした反応でした。
「やっぱり。ですから」
「お引き寄せって言いたいのね」
「はい、それです」
 阿波野君の顔が笑顔になりました。 
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