| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある科学の傀儡師(エクスマキナ)

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第17話 口論

 
前書き
ん?ん!?
ヒロインが白井になりそう...... 

 
木山がアンチスキルと交戦する少し前のこと。
病院から判明した揺るぎない証拠に出動したアンチスキルは容疑者である木山春生の研究室へと踏み込んだ。
ジャッジメントである白井を中心に御坂とサソリも前に訪れたジャッジメント本部にてアンチスキルから木山の動向を探る。

「アンチスキルからの連絡です。AIM解析研究所に到着したようですが。木山も初春も消息不明だそうです」
イヤフォンとマイクがセットになったインカムを耳に掛けて白井がアンチスキルからの連絡を受ける。
その情報により深まる容疑。
ほぼレベルアッパー事件の犯人として疑いようがなくなる。
初春の安否が気になる中、御坂の顔には緊張したように強張った。

サソリは、白井にパソコンを起動してもらい、初春が抽出したレベルアッパーの音声データを元に構成された波形パターンを写輪眼で見透かしていた。
「......なるほどな......大体想定通りか」
音を使った幻術と似ている。
細かい部分は違うが......自分と波長を合わすのには充分過ぎる程に計算されて造り上げられている。

「初春さん、無事だと良いけれど」
「そうですわよ」
二人が心配そうな声を出す中
「今の所は無事だ」
サソリが画面を見ながら一瞥もせずに答えた。
「分かるの?」
「初春に持たせた砂鉄。あれにはもう一つ細工がしてある。持っている奴に衝撃やある一定の音がなった場合に自動的にオレに伝わるし、防衛の働きもする。まだ初春から力を使っているようだから無事だろうな」
「防衛の働き?」
「オレが最後くらいに殺り合った砂の忍の術を参考にさせて貰った。更に...!?」
「?!」
ピリリと携帯電話の着信のような電気刺激がサソリと御坂が感じ取り、揃って同じ方向を見た。
「何かありましたの?」
一人何か分からない白井が二人を交互にみた。
「今の何?」
同じ動作をしたサソリに御坂が訊いた。
「お前も感じたか...... どうやら砂鉄に衝撃が加わったようだ」

!!?
あの木山が初春を手にかけるとは到底考えられないが......
御坂のアンテナでは詳細に判らずにサソリの言葉に意識を集中させる。

「......かなり小さい反応だ......砂鉄を落としたみたいだな......ったく」
何があって落としたかは不明だが、その後に衝撃反応がない所をみれば、不注意で落とした可能性が高い。
防衛装置はまだ発動していない。

アイツの鈍臭さを計算に入れるのを忘れていたか......

「まあ良い」
サソリは、傀儡人形に向けてチャクラ糸を出して初春に待たせた砂鉄にチャクラを集中させる。
距離は離れているが、埋め込んだチャクラから探る。
「かなり早く移動しているようだな。速さは東向きに時速100kmくらい......走っているにしてはかなり速いな。初春と木山は足が速いか?」
サソリが顔を上げて白井と御坂を見上げた。
真顔で凄まじいことを呟いている。

はい?走るってRunの方?

「えっ!?」
一気に頭の回転が鈍った気がした。
「な、何を言ってますの?」
信じられない者でも見るように白井は目を見開いた。
「ん?」
「いや、常識的に考えて車でしょ?」
「くるま?」
前に見たことがあるリアクションをかまし、考え込むサソリ。

................

ああああー!
忘れてたー!
すっかり忘れてたわー!
サソリって戦国時代からタイムスリップ(仮)してきたんだっけー!?
車の文化知らないのー?!

驚愕のあまり御坂が頭を抱えたまま大きく仰け反って頭を支えとしてブリッジの体勢になった。
プルプルと震えたまま、足をピンっと伸ばす。
「アンタ!何よそのアンバランスな知識」
ブリッジをしているがスカートの下には短パンを穿いているのでノー問題です。
「アホみてえな格好してねえで、さっさと説明しろよ」

白井は、パソコンに向かいながら道路を時速100kmで走っている初春を想像した。
思ったよりもかなりシュールですわね......
ビュンと初春を掴んで目にも止まらぬ速さで駆け抜ける木山共々。

「はあー、機械で出来た乗り物よ」
ブリッジから起き上がり、若干疲れたように項垂れながら御坂が答えた。
「ほう、機械か......なら止められるかもしれんな」
サソリは再び傀儡を前にして自分の手の甲を合わせて、目を閉じた。
「離れていて照準を合わすのが難しいか」
眼を閉じて、コントロールに集中しようとする。

ここでサソリの車に関する知識の確認。
まず、車を知らない
何を使って走っているか知らない
更にガソリンを爆発させて動かしてい事も当然知らないわけで......

更に分身の術など御坂達とは違い独特の能力を使います。
能力者と発動箇所は離れており、難しいとおっしゃってます。

急激に止められた車が横転し、炎上する車内に取り残される初春が頭に過ぎった。

「「いやいや、ストップストップストップストップ!!!」」
白井がサソリの仕掛けを発動しようとしている手を掴み。
御坂が後ろから羽交い締めにした。
「おい、何すんだ!?」
「ちょっと待って!アンタ止め方分かるの?」
「ん?!適当に動いている部品を止めれば止まるだろ」
羽交い締めと手を抑えられているが本人は首を傾げて、後ろの御坂を首だけ向ける。
「そんな単純ではありませんわ!下手しますと爆発炎上ですわよ!!」
「え?そんな危ねえもんで移動してんの?!」
無知の恐怖......

結果的に御坂達の活躍により幸いにも少しだけエンジンルームに入るだけに留まりました。

図らずもサソリの手を握ってしまっている白井は顔を赤らめながらも自分に

これは初春を守るため仕方ないこと
そう、仕方ないこと
決して下心があって掴んでいるわけではない
手を離すと恐ろしいことをする子供を抑えるため

念仏のように口から何度も諳んじた。

「ん?止まったか?」
羽交い締めにされたサソリが怪訝そうな顔をして上方向に目線を上げる。
「嘘!?遅かった!?」
御坂と白井は互いに見合った。
「いや、違うな......自主的に止まったみてえだ」
すると白井がアンチスキルと連絡を取り合うためのインカムから音声が入り注意、警戒をする。
白井が手を離すのを確認すると御坂も羽交い締めからサソリを解放した。
「どうやらアンチスキルが木山の元に到着したみたいですわ」
アンチスキルからの報告を聴いて少し安堵したように息を吐き出した。
「どうやら初春は無事みたいですわ」

よし、あとは木山を捕まえて取り調べをし、意識不明者の恢復だ。
武装したアンチスキルに女性である木山が敵うはずがない。

しかし、御坂は何か嫌な予感を感じ取り言った。
「私も出るわ。ジッとしてんの性に合わないし」
「お姉様っ!?」
「サソリ。さっきの磁場反応があった所の近くね?」
「.........」
サソリは、考える素振りを見せながら御坂を睨み付けた。
「黒子とサソリはここに居て情報を回してちょうだい」
御坂はサソリの視線をものともせずに木山の所へ行こうとした。
白井は引き止めるために咄嗟に口を出すが。
「初春もジャッジメントのはしくれですの!いざとなれば自分の力で......多分何とか......運が良ければ......その」
後半になるに従って声がデクレシェンド(段々弱く)。

初春の鈍臭さを真に知っている白井は、お世辞にも大活躍して事件解決を成し遂げる初春がイメージできない。
「でっ、ですが。単なる一科学者にすぎない木山にアンチスキルを退ける術はないかと......」
「何千人もの昏睡した能力者の命を握られているのよ。そう上手くいかないかもしれないわ。それに、何か嫌な予感がするのよね......」
「ならなおの事、ここはジャッジメントの私が......」
御坂が白井の脇腹に触れた。
電流のような痛みが身体中を駆け抜ける。
「おぐっ!!?」
「そんな状態で動こうっての?」
「おねっ、お姉様!気付かれて」
「当たり前でしょ。アンタは私の後輩何だから、こんな時くらい「お姉様」に頼んなさい」
最高にイケメンなセリフを吐いた御坂に顔を真っ赤にする白井。

やはり、あんな目つきの悪い子供より崇高なるエース。
お姉様以外にありえませんわ。

「お、お」
「?」
「おねーさまー!!」
とフライングタックルをかますために飛びつこうとするが、手で白井の頭を叩いて止めた。
「そーじゃないっ」
「あう」
と白井の頭をポカンと叩いた後に妙な殺気を放ち、頬杖を突いているサソリを優しく見つめる。
「サソリも大人しくしているのよ」
「......お前一人でいくつもりか?」
「そうよ」
頬杖を突いていたサソリが声を一段と低くして
「少し待て、オレも行く」
「大丈夫よ!ケガしてんだからアンタは大人しくしていなさい!」
仲間を危険に晒すのも性に合わない、御坂は、サソリに向けて強く言い切った。

サソリは明らさまに不機嫌な表情になり
「お前な、前に言ったが......二人一組で動けと言っただろう。木山がどんな行動に出るか分からんのに突っ込むのはバカがすることだ」
サソリの上からの目線の注意に御坂はイラッとしたように眼を開いて、口を開いた。
「は?」
明らかに空気の流れが両者の間で変わり、凍りついた。
サソリは気にせずに淡々と次々と問いを発した。
「木山は、レベルアッパーで何をしようとしている?」
「......それは......」
「どうして初春を連れて逃げている?」
「人質として?」
「何で人質を取った?何処に向かっている?」
「う!!そ、それは......」
サソリの容赦ない問いに御坂は側にあった机に腕を叩きつけた。

「じゃあ、どうすれば満足なわけ!?車椅子無しじゃ満足に移動できないアンタを連れて何になんの!?残念だけどあたしは守り切れないわよ!」

御坂は大股でサソリに近づくと胸ぐらを掴んで無理矢理立たせた。
「お、落ち着いてくださいお姉様......」
白井が怒鳴る御坂を落ち着かせようとするのだが、サソリの小馬鹿にしたような態度が気に入らないようでキリキリと奥歯を噛み締めながら電撃を強くする。

無理矢理立たされと身体がダラリと力なく突っ立っているサソリは、写輪眼を使わないように注意しながら御坂の首を真っ直ぐ見つめた。
「......絶対に勝てるのか?」
「えっ!!?」
「絶対に勝てるって保証があるのか、
お前?」
「そんなのやってみないと分からないでしょ!」
「呆れた奴だ。佐天や初春だけじゃなくて、白井やオレまでも危険に晒すつもりか?」
サソリは、胸ぐらを掴んでいる御坂の腕を掴んで手首の関節を逆方向に捻りあげる。
「痛っ!?」
予想外の反抗に御坂は捻りあげられた腕を摩りながら、車椅子に座るサソリを見下ろす。
「木山の目的もロクに分からんクセに、何が一人で行ってきますだ」
「......で、でも!何かあってもあたしの能力なら大丈夫よ。少なくともアンタよりは動けるし!」
御坂は、持ち前の負けん気でサソリに食いかかるが。
「木山に戦いに行きました。ロクに調べてませんが、自信があります......っでお前が倒されたら、殺されたらどうすんの?誰が後始末をする?」

「え、えっと......」
「別に二人一組って助け合うとかそんなんじゃねーからな!一人が倒されたら、もう一人は後始末するか戻って仲間に相手の情報を伝えるかどうかを考えて行動しなきゃいけねぇんだよ」

厳しい忍の世界を思い出しながら、サソリはかなり厳しい口調で御坂を叱責した。
御坂は悔しそうに拳を震わせている。
「お前が一人で行って、倒されて......誰が相手の情報持って帰るんだよ!オレと白井は相手の事が分からないまま殺り合わなくちゃいけなくなるだろ!そこしっかり考えろよ!」

再び、机をドンと叩き鳴らして御坂はバチバチと電撃を発生させる。
初めてのサソリの本気の叱りに少し涙目になりながら、鼻をすする。
「うっさいわね......勝てば良いんでしょう、勝てば文句ないんでしょ!」
御坂は、サソリを睨みつけると無言のまま扉を開けて、怒りをぶつけるように力一杯扉を叩き閉めた。
「お、お姉様!」
「白井、ほっとけ」
「な、何もあんな言い方をしなくても......」
「あそこまで頭悪いとは思わなかった......まだガキだな」

全部独りで出来ると思ってやがる
その考えが自分の命取りになるぞ

轟音に近い扉の開閉の音がジャッジメント本部に鳴り響き、その後対比効果で恐ろしい程の静寂が部屋中に重く伸し掛かる。

き、気まずいですわ......
あんなに怒ったお姉様もそうですが
サソリも怒るとかなり怖い......

チラッとサソリを横目で様子を伺う(真正面から見る勇気はない)
普段と変わらない態度に変わり、黙ったまま落ちた傀儡を拾い、中身を見ている。

今、まさに二人っきりであるが......
あんなに怒ったサソリと同じ部屋には息の詰まる思いだ。
いっその事、ここから出て行きたい。
でも、こんな時になってアンチスキルの情報が錯綜しているようで連絡が鳴り止まない。

木山が能力を
木山がなぎ倒していく
何人倒されている

後ろで人形を弄るサソリのカチャカチャという音だけが聞こえてきては、バレないように息を深く吐いた。

ジャッジメントとして何かをしましょう。
錯綜している情報を整理してお姉様に伝えないとイケですわ。

インカムからの情報を抽出し、パソコンのメモにまとめていく。
木山、能力、多数、負傷者多数、爆発、炎、水流、砂、赤い髪の子供(←!?)、応戦、車を止めた、手裏剣(←!?)

??!
何処かで見たことあるような容姿と特徴が聞こえてきて、首を傾げる。
まあ、集中できて来たから良い。

「あっ!そうだった」
サソリが声を出すと傀儡を机の上に置いて、キコキコと車椅子を回して白井の後ろまでくるとゆっくり立ち上がり。

バサッ
白井の背中に覆い被さるようにし、腕を首に回した。完全に座っている白井にサソリは身体を預けるように抱きついたのだ。
「ピギョワアアアアア!な、なななな何を!!」
「鶏かお前」
女性が憧れる後ろから男性が抱きついてくる、いわゆる「バックハグ」をサソリが白井に対して行った。

予想外過ぎますわぁぁぁ!
な、何が起きましたの!?

直に感じるサソリの体温と吐息を感じ、一気に沸点を超えてプラズマとなって彼方へと消え去りそうになる。
最初は抵抗するが先ほどのサソリの怒りを目撃してしまったので、身体が反応してしまい大人しくなってしまう。

「前にお前にくっ付かれた時に写輪眼が収まったから、またくっ付けばなくなるかと思ってな」
「だ、だからって女性にこんな事をしたららら!セクハラで訴えられますわぁぁ!!」
椅子を左右に振って現状最大の抵抗を見せる。
「別にお前以外にしねえし」
更にトドメの一言。
「うぐい!!?」

魂が抜けたようにへなへなと力が抜けて、椅子の背もたれに真っ白になって深く座る。
サソリも大人しくなった白井の頭にアゴを乗せる。
「..........怒ってませんの?」
イマイチ、この状態に移行した経緯が分からないので白井は声に出した。
「ん?御坂のことか......別に怒ってねぇよ。ただ強いって意味を履き違えているなあと思ってな」
頭の骨伝導でサソリの声がいつもり身体の内部に反響する。

あの怒鳴りようで怒ってないとは......

「確かに御坂は強い。それは認める。だがな、全部独りでやろうとするとぶっ壊れるぞ」
「あまりお姉様を責めないでくださいな。人の事になると今回のように自分を蔑ろにしてでも解決しようと動きますので.......そ、そこが魅力といいますが」
首から伸びているサソリの腕を握りながら、白井は弱々しく言った。

「......少し言い過ぎたか」
サソリは珍しく落ち込んだ声を出し、白井の背中へと顔を埋めた。
「!!?」
白井はどうすれば良いのか分からずに手を前に出して上下左右にワチャワチャ動かす。
慰めた方が良い?
いや、ここは静かにしておいた方が......
殿方ってどうすれば気が晴れますのー!!?

すると、サソリは顔を上げて
「......収まらんか」
瞬きを意識して行い、写輪眼を静めるようにするが全く効果が出ない。
「やはり、こんな変な方法じゃねえか。悪かったな」
サソリは白井から抱きつくのを止めて車椅子に乗り、傀儡の場所まで戻ると、作業の続きを開始し始めた。
一通り確認し終わったようで目の前に傀儡を立たせた。

ああ、どういう訳か毒が全部抜かれている
砂鉄の時も毒が無かったから、もしやと思ったが.....
作るにしても調合比率表が必要だ
面倒だな

白井が関心の外に弾き飛ばされたが、白井は座り込んだまま収まらない心臓の強き拍動と向きあっていた。
はあはあ
ううううー、どうすれば良いんですのー!
お姉様とサソリ......揺れる乙女心。
ポカポカと頭を叩いて、冷静に展開しようとする。
この短期間で感情の起伏を最大から最小までツマミを動かしてしまったようで身体がしんどいしんどい......

「なあ、白井」
サソリが声を掛けた。
「な、何ですの!!?」
顔を真っ赤にしているのを悟られないように後ろ向きのまま返事をする。
「オレに付き合え」
「......はい?」
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧