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戦国異伝

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第二百五十話 信長の先陣その六

「御主は平八郎と並ぶだけの者だからな」
「本多忠勝殿とですか」
「その才が若くして途絶えてはならん」
 何があろうともという言葉だった。
「だからよいな」
「無論そのつもりです、それがしもです」
「生きるつもりじゃな」
「何があろうとも」 
 やはりだ、宗茂は強い声で言うのだった。
「それがしは生きそして」
「武勲を挙げるな」
「そうしてみせます」
「そうせよ、御主達三人の武勇があれば」
 幸村、兼続、そして宗茂のというのだ。
「先陣も大丈夫じゃ」
「即ち上様も」
「うむ、では戦になればな」
 魔界衆とのだ、その時のことも言うのだった。
「まずは戦いそしてな」
「退き」
「そこから本格的に攻める」 
 こう言ってだ、信長は。
 海の方も見た、海は今も水軍が何千もの船で進んでいる。その中には鉄甲船達もあり異様を見せている。
 その鉄甲船達も見てだ、信長は言った。
「戦はこれで最後じゃが」
「それでもですな」
「気を引き締める、そしてな」
「海もですか」
「やはり最後は海になるか」
 そこでの戦になるというのだ。
「壇ノ浦でな」
「はい、やはり」
 蘭丸も言って来た。
「魔界衆の性質からして」
「陸で負けてもな」
「海に逃れましょう」
「そうであろうな、往生際の悪い奴等じゃ」
「それも相当に」
「ならばな」
 それならばとだ、信長も言う。
「やはり海じゃ」
「そこでの戦いで、ですか」
「終わりとなるか、そしてな」
「その海の場所は」
「壇ノ浦じゃ」
「そこになりますか」
「あの場所はやはりそうした場所であろう」 
 信長は海を見つつ言った。
「最後の戦の場所じゃ」
「終わらせる場所ですか」
「かつて平家はあの海で滅んだ」
 信長の目は遠いものを見るものになっていた、それは織田家が元々は平家の血を引くとされていたこともある。
「栄華を誇ったがな」
「はい、その栄華も消え去りました」
「あの場所で完全にな」
 平家物語にある通りだ、このことは。
「そうなってしまった」
「そして今度はですか」
「魔界衆が滅びるわ」
 その壇ノ浦でというのだ。
「平家は闇ではなかったがな」
「むしろ魔界衆と戦っていました」
「左様でした」
 ここで幸村と兼続も言って来た。
「清盛公も率先されて弓を引かれ」
「それは源氏にも受け継がれていました」
 源頼朝、そして鎌倉幕府にもというのだ。
「その平家が滅んだ場所で」
「今度は魔界衆がですな」
「清盛公、そして壇ノ浦に眠り平家の方々にお見せしよう」
 是非にとだ、信長は言った。
「天下の闇が消えるその時をな」
「そして壇ノ浦で平家を倒し魔界衆とも戦った源義経公にも」
「あの方にもですな」
「驚いたわ、義経公も頼朝公に追われながらもな」
 安宅の関等を進む中でだ。 
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