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龍が如く‐未来想う者たち‐

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秋山 駿
第三章 手駒と策略
  第六話 絶望の序曲

アマリリスを出ると、宮藤の言った通り麻田が前で待っていた。
だが手ぶらで出てきた秋山を見て収穫無しだと悟り、秋山に詳しく聞く事はなかった。


「どうします?完全に手掛かり無しですけど……」


何か考えようとする度に、宮藤の言葉が頭で反響する。


『堂島大吾を渡してくれるなら、考えなくもないですよ?』


大吾を渡せば、桐生が見つかる。
だがそれは、同時に大吾を失う事にもなる。
そんな事、桐生は絶対望んでいない。


「1度、花屋の所に向かおう」
「神室町ヒルズですね、向かいましょう」


2人は神室町ヒルズに向かって、歩き出そうとした。
だがそれは、すぐに阻まれる。
黒服の集団が、天下一通り奥からぞろぞろと現れたのだ。
奥からだけではない、四方八方から秋山を取り囲むように集まってきた。
軽く見ても、50人はいる。


「組長から足止めしろとの命令やからな、殺しはしねぇ」
「へぇ、随分と優しいな」
「秋山さん、こいつら宮藤組です」


胸に光る宮藤組の代紋が、奴らの正体を物語っていた。
足止めとはどういう事なのだろうか?
ヒルズには、何かが待っているのか?


「邪魔な敵だけ蹴散らして、道を開ける事に専念しよう」
「はいっ!!」


2人は、蹴散らしながらヒルズへと急いだ。
足は痛むが、戦えない訳ではなかった。
だが足を狙われれば、その分庇わないといけない。
いつもより戦い辛い状況を乗り越え、ついに神室町ヒルズまでたどり着く。


「く、組長ぉっ!!」


叫んだのは、隣で走っていた麻田だった。
ヒルズの前には、さっきまでアマリリスに居たはずの宮藤と、銃口を突きつけられた足立の姿があった。
こちらの姿を見るなり、宮藤は不機嫌な顔になる。


「やっぱり、雑魚は使えねぇ。足止めしとけっつったのに、一般人ですら止めれねぇのかよ」
「宮藤さん、一体どういうことですか?何故足立さんが……」
「使えねぇ手駒だからだよ」


宮藤は銃口を向けたまま、足立の腹を蹴り上げた。
鈍い音が聞こえたかと思うと、声も出さないまま足立は膝を付く。
駆け寄ろうとした麻田だが、秋山はそれを力付くで止めた。
今近付けば、2人とも危ない。


「宮藤さん、足立さんも手駒だったって事ですか?」
「6代目連れて来いっつったのに、ヘマしやがってさ……やっぱり使える手駒じゃねぇと、こんな簡単な事すらこなせないんだな」


何度も何度も足立を蹴る宮藤。
反抗すればいいものの、足立はその様子を見せない。
まるで宮藤の奴隷だ。


「や、やめろぉ!!」


歯をくいしばって堪えていた麻田が、耐えきれず足立に駆け寄ろうとする。
秋山は数秒遅れて止めに入ろうと手を伸ばすが、伸ばしきった頃には既に麻田は地に膝をつけていた。
たった一瞬の出来事。
何が起こったのか、秋山も麻田もわからなかった。


「失せろ」


喜瀬とは違うが、圧倒される威圧感に思わず秋山まで膝をつける。
戦わなくてもわかった。
これが奴の本性、抗う気力すら失わせる。
ただの堅気じゃ、相手に出来ない。


「おい、そこっ!!」


警官が駆け寄ってくるのが見えた瞬間、宮藤は秋山たちを放って逃げだした。
助かった……。
心の底からそれを実感すると共に、あまりにも不甲斐なく力不足な自分に苛立ちを覚える。


「ちくしょう……」


行き場を失ったその拳は、地面へと叩きつけられる。
涙は流しはしなかったものの、悔しさのあまり警官に助けてもらうまでその場所から動けなかった。 
 

 
後書き
次回は4/25更新 
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