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戦国異伝

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第二百四十九話 厳島その四

「御主はもう少しじゃ」
「落ち着けと」
「そうじゃ、言っておくぞ」
「権六殿はいつも権六殿ですな」
「わしは変わらぬ」
 こう返すのだった、羽柴に。
「古い頑固者と言えばそれまでだがな」
「いやいや、それがです」
「よいというのか」
「はい、剽軽な権六殿は」
「想像出来ぬか」
「それがしの様な権六殿は」
「どんな権六殿じゃ」
 横から滝川も驚いた声で言う。
「それは」
「そうでありますな」
「そうじゃ、考えられぬ」
「ですから」
「わしも権六殿はこれでいいと思う」
「生真面目で」
「それが権六殿じゃ」
 柴田だというのだ。
「堅苦しいのがな」
「そうか」
「はい、それがしから見ても」
 滝川もこう言う。
「否定出来ませぬ」
「そうか、しかしな」
「それが権六殿です」
「そうなるのじゃな」
「はい、それはこれからもかと」
「わしは曲げぬ」
 決してという口調であった。
「己の信じることをな」
「左様ですな」
「わしは古いと言われてもな」
「武士であられますな」
「上様にお仕えする」
「忠義の」
「そうでありたい」
 これからもというのだ。
「上様がご幼少の頃は揺らぎかけたが」
「何でもあの頃の上様は」
「大層暴れ者でな」
「それがしが仕える様になる頃よりも」
「遥かにじゃ」
 吉法師と呼ばれていた頃の話である。
「もう大層でな」
「それで、ですな」
 羽柴も言って来た。
「上様は果たしてと思われていたのですな」
「織田家の主に相応しいとな」
「そう思われていましたな」
「それはわしもでな」
 林通勝もここで言って来た。
「果たしてこの方は大丈夫かと思ったが」
「それが」
「うむ、暴れられるが」
「それと共にだったのですな」
「随分と学問もされていてな」
 様々な書を読んでいることも知ったのだ、その信長が。
「それでな」
「上様に対するお考えをあらためられたと」
「そうであった」
「我等はな」
 二人で言うのだった。
「そしてあらためてじゃ」
「上様に忠義を誓ってじゃ」
「今に至るのじゃ」
「かれこれ二十年は前か」
「でしたな、あの頃はです」
 丹羽も出て来て言う。
「とてもここまでなるとは」
「うむ、わしは最初からこの方ならと思っておったが」
 佐久間も言うのだった。 
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