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戦国異伝

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第二百四十九話 厳島その二

「海の流れも色々ある様じゃな」
「はい、ここは島も実際に多くの」
「海の流れもな」
「所々、季節によってです」
「変わるのじゃな」
「瀬戸内全体がそうですがこの辺りは特にです」
「そうなっておるな」
「左様です」
 村上もこう信長に話す。
「何ともややこしいところです」
「そして厳島といえば」
 ここで言ったのは隆元だった、毛利家の嫡男である。
「我等にとっては厳島明神と共に思い入れのある場所です」
「あの島で勝ったからのう」
「陶晴賢に」
 大内家の重臣であり当時その主家を牛耳っていた彼とだ。
「勝ってそしてです」
「そこからじゃったな」
「我等は大きくなれました」
「それ故にじゃな」
「はい、あの島はです」
「思い入れがある場所じゃな」
「そうなのです」
 隆元は笑って話す、そしてだった。
 元春と隆景もだ、信長にこうしたことを言った。
「あの島で戦うとなるとです」
「大軍を一気に相手に出来ます」
「魔界衆の者達の戦の場にもなり得ますが」
「しかし、かと」
「あの者達はまつろわぬ者達じゃからな」
 信長はこのことから話した。
「あそこに入ることはな」
「厳島明神を嫌い」
「そしてですな」
「それは出来ない」
「そういうことですな」
「あの者達は結界でも乱れていれば入って来るが」
 比叡山なり高野山なりだ、寺社でもそこが乱れていればというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「そこが乱れていなければ」
「入っては来られない」
「だから厳島にも」
「そうじゃ、だから厳島には来ぬ」
 そこが乱れていないからというのだ。
「あの者達はな」
「しかもです」
 ここで言ったのは信忠だった。
「あの者達は屋島、一ノ谷で多くの兵を失いました」
「傷は深いな」
「ですからここで攻めて来ることは」
「無理じゃ」
 まさにというのだ。
「だから厳島に来られてもな」
「それでもですな」
「攻めては来れぬ」
 それは無理だというのだ。
「あの者達はな」
「そうですな、それでは」
「今は参拝をする、そしてその後でな」
「広島に戻り」
「最後の戦の用意じゃ」
「上様、広島城と安芸の主な城全てにです」
 丹羽が言って来た。
「兵糧と武具、弾薬を運び込んでいます」
「そうじゃな」
「四十万の軍勢が優に戦えるだけの」
「ならばじゃ」
「はい、戦になろうとも」
「問題はない」
 こう言うのだった、信長も。 
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